ワタシを見つけて

　
ねぇ、先生。

私のこと…忘れてない？

まだあの場所には行けてないよ
今も変わらずにあるのかな…

時間は確実に流れてゆくけど

私はまだ

立ち止まったまま。

　
「今年も私は千歩のボディーガードかぁ。」

クラス分けの張られた掲示板をぼんやりと眺めながら呟いた

そう
千歩は学校一、二を争う美少女
その上天然ちゃんで言い寄る男は数知れず

そんな男達にはびくともしない千歩

なぜなら彼氏一筋だから。

「圭ちゃんに言われてるもんね！」

　
圭ちゃんとはまさに千歩の彼

ひとつ年上の優しい圭くん

たまに三人で遊びに行ったりするんだけど

他校で可愛い可愛い千歩のことが心配なのか、見張りを頼まれている私。

「圭くん見掛けに寄らず心配性だよね。」

「だよねぇ。そこも好きなんだけどね！

…そんなことより、祈は構わず今年こそ素敵な彼氏を見つけるのよ！！」

隣でガッツポーズを作ってみせる千歩

　
「私はいいの！
てか早く教室イコ？始業式そうそう怒られんのヤダ。」

「もうっ！！

祈は可愛いんだから彼氏のひとつやふたつ作んなきゃ勿体ないのに。」

いえ…校内一の美人さんに言われましても。オホホ

とりあえず急いで教室に向かう二人

　
「―イタッ！」

途中、スーツの男にぶつかった

「すっ、すいません！」

怪訝そうな顔の男に私はとりあえず謝った

すると男はそのまま何も言わずスッと通り過ぎて行った

　
「なにあれっ」

態度の悪い男に苛立つ

「…でも、ちょっとイケメンだ立ったよ（笑）」

千歩は笑って言う

「セールスかなにかの人かなぁ。スーツ着てたし。意外と若かったよね？」

彼氏に一途ながらもイケメンには敏感な千歩

「顔なんかちゃんと見てなかったし。」

そのとき。
ＨＲの始まる鐘がなった

「や、やばいよ祈。急ごう！」
ダッシュで階段を駆け上がる二人

息を切らしながら

シーンとした教室のドアを勢いよく開けると

一気にみんなの視線の的

「…ぉはょぅござぃます……」
か細い声で挨拶をする

千歩の方を見ると、やっちまったって顔で舌をだしていた

　
「おーい、お前ら新学期そうそう遅刻かぁ？」

聞き慣れない低い声が響いた

パッと教卓の方に顔を向けると見覚えのある人が。

いや、スーツが。

　
しばらくその見覚えのあるスーツに見とれていると横にいた千歩に肘を突かれた

(祈！この人さっきのセールスマンだよっ

…やっぱりイケメン………)

いや、そこかよ！

小声で話す千歩に心の中で思わずツッコミを入れてしまった

　
だけどたしかに整った顔

無造作に整られた髪

黒ぶちの眼鏡

少し着崩したスーツ

とても学校の先生には思えない…が………？

どちらかと言えば

ホスト的な…………。

　