君の片思い

小学校から中学校まで、
君は人気者だった。

かっこよくない。
チビ。
頭も悪い。
運動神経もそんなに。
だから女子からモテてはいなかったけど、

ただおもしろい。

それだけであんなに人気者だった君を、
忘れたことはなかったよ。

玲奈な吹奏楽部だから、
放課後はバラバラだけど、
それ以外の時間はいつも一緒にいた。

玲奈のモテ具合は、
すぐに伝わってきた。
とにかく男子が寄ってくる。
男の先輩ともすごく仲良し。

そして、仲良しの私は玲奈に片思いしてる男子から相談を受ける受ける。

さらに、玲奈を諦めた男子に私は異様にモテた。

生涯一番モテた時期だった。
おこぼれ達ばかりに。

夏休み―――

二年生になると、
部活はかなり本腰を入れるようになった。

夏休み中も、お盆以外はずっと練習があった。

それでも祭りや花火大会にはゆかたちや玲奈と行きまくった。
玲奈と２人で行ったある日の祭りで、私はすごい話を聞いた。
なんと彼氏はいないと言っていた玲奈に彼氏がいた。
それは･･･石川先輩だった。

人ごみから少しそれた木の下で、玲奈は全て話してくれた。

玲奈「隠しててごめん。」
私「いやっ、それは別に気にせんといて！」
玲奈「隠してたんはな･･･」

下を向いたまま玲奈が語ったこと。

石川先輩から告白されたのは、去年の夏。その時、玲奈には違う中学に通う彼氏がいたけど、私立の中学に通う彼氏とはうまくいってなくて、
石川先輩にOKした。
優しいと思っていた石川先輩は、優しかったけど、女たらしだった。

石川先輩は、
玲奈以外にもう一人彼女がいた。それを知った玲奈は別れを告げたらしいけど、石川先輩が拒んで、これからは絶対玲奈だけだと宣言したから、許した。

でも、どうやら怪しい。
きっとまだもう一人とつながっている。
でも玲奈も石川先輩が大好きで、嫌いになれず、別れもできない。

玲奈「･･･そんな関係やから、石川先輩と付き合ってるって誰にも言えんかってん。
玲奈、
やっぱ遊ばれてるんかなぁ？」

「遊ばれてる！！」
とは言えんかった。
だって断言できんし、そんなこと言ったら玲奈が傷つく。

私「好きなんやったらもう少し信じてみよっ？」

玲奈「あ、ありがとう。」

玲奈が泣いた。
私は軽く頭をなでた。

こんな可愛い玲奈でも、
こんな辛い思いせなあかんなんて。
私は余計に恋愛というものが恐ろしく感じた。

慰めるために、
玲奈を笑わせようとした。

私「私こないだまで石川先輩のこと好きやったから、玲奈うらやましいってぇ～♪(笑)」

玲奈「え？そうやったん？
じゃあなおさら黙っててゴメン！！」

私「ううん、大丈夫！
もういつの間にか好きでもなんでもなかったから！！
かっこよすぎて、
見てるだけで良かったし(笑)」

玲奈は笑って、
元気になった。

この日を境に、
私と玲奈はさらに仲良くなった。

夏休みが終わって、
始業式の時。
大変なことが起きた。

背の順で整列し、見慣れた隣近所を見渡しても、
･･･いない。
チビの代表、翔平がいない。

キョロキョロしていたら、
ななめ後ろあたりから誰かが鼻で笑ってる。
振り返ると、翔平がいた。

翔平はピースしてきた。
夏休みの間に翔平は成長して、前から二番目になってた。

何年も守り通してた先頭から、私より先に抜け出した。

式が終わり、
教室に戻る途中で翔平と会った。
翔平は、どや顔で私を見た。

部活でほぼ毎日会ってたけど、気付かんかった。
私より小さかった翔平が、
私より少し高くなってた。

私「伸びたね。」
翔平「成長期やからね。
んじゃっ。(笑)」

中学二年の夏は、
周りもみんな変わってた。
背が伸びたり、
日焼けしてたり。

懐かしいね。

そして秋が過ぎ、冬休みが過ぎ、季節はまた春になった。

中学三年生―――

ゆかたちとも相変わらず仲良く、玲奈ともより仲良く、
部活も順調に、

私たちは少しずつ大人に近づいていった。

中学三年生になると、
恋人のいる子が増えたり、
初体験を済ませる子もちらほらいた。

三年生は、玲奈とゆかと翔平が同じクラスになった。
私はすごく嬉しかった。

三年生になってすぐ、
私はおかしな噂を耳にした。

――私と翔平が付き合ってるって･･･？

玲奈「玲奈も聞いた！
吹奏楽部で噂なってたよ！」
ゆか「小学校から仲良いし、
もう付き合っちゃったらいいんじゃない？(笑)」
私「い、いややぁ。」

私は、一年の時に翔平から告白まがいなことを言われたって誰にも言ってなかった。

言ったら、余計にからかわれそうやし、
私が翔平好きとか誤解されたくなくて。