冴えない男とキャリアウーマン。
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#1 [先輩] 10/06/14 03:07
「おい田中!ちょっとこっち来いっ!ったくお前はだなぁ…」
「…はい。…はぁ…」
あぁあ。
今日も、怒られてやんの。
いつになったら、成長するんだぁ?
にしても、相変わらず冴えない顔だねぇ。。。
#131 [先輩]
今日の午後は、澄み渡った青空で、息抜き日向ぼっこには最適の条件。
のどかな屋上で、心地よい風を感じながら、お気に入りのカフェモカを片手に、しばしの休息にふけっていた。
ふいに非常扉が開く気配がして、振り替えると、また立っている。
すぐに、背中を向けて、気づかないふりをした。
「お疲れ様です」
「あ。お疲れ様。休憩?」
「はいっ。」
気持ちのよい風にのって、タロウがつけたラークの匂いが私の所まで届いた。
:11/06/02 02:10
:P02B
:☆☆☆
#132 [先輩]
ここ最近、いや、あの休日からここまで。
いくらなんでも、避けられていた事に気づいているはず。
微妙な沈黙が私達を包んだ。
ここで、くだらない話をしたり、笑いあったり、何気無い休息をわけあうのに。
何かを話さなければいけない事だけは、わかる。
何を話そうか、何を言おうか、一人悶々と考える。
恐らく、この一本の煙草を消すと彼はあの非常扉をまた抜けるだろう。それは、ここに私がいるから。それでいいんだろうか?
:11/06/02 02:19
:P02B
:☆☆☆
#133 [先輩]
「あのっ」
「んー?なに?」
話しかけてきたのはタロウ。
ドキバクしてるのを、平然とした顔で答えるのが私。
「斎藤さんの件で、ひとつだけ確認したい事があるんですが?今いいですか?」
「えー?なに?どの件?」
なんだ。
仕事の事か。
なにも、今仕事の話しなくてもさ。
…少々、ヘコむ。
:11/06/02 02:24
:P02B
:☆☆☆
#134 [先輩]
「斎藤さんって、彼氏いたんですね。」
「………は?」
昼下がりの屋上での確認事項は、言葉を理解するのに数秒を要した。そして、理解して出た返事は、たった一声。
例えるならば、昼下がり、のんびり公園を散歩していた鳩が、突然、豆鉄砲をくらって、何が起きたか理解できず、ただ驚いて、咄嗟にポウッっと鳴いた感じ?
「いや、は?じゃなくて。なんですかぁ?その顔!」
タロウは、豆鉄砲をくらった鳩の顔にぶははと笑った。
慌てて顔面の筋肉を動かして顔を整えた。
:11/06/02 02:37
:P02B
:☆☆☆
#135 [先輩]
「こっちこそっ!仕事の件かと思ったら、関係ないし、おまけに、そんな質問なんだもの!驚くに決まってんじゃないっ。なに?その馬鹿馬鹿しい確認事項は!」
自分でも体温が上がり、赤面するのがわかる。
カフェモカをぐびりと飲んで、くたびれたポーチから煙草を出して、火をつけた。
「あれ?動揺してます?わっかりやすーいっ♪」
「してないっ!からかうな!知らない!」
:11/06/02 02:42
:P02B
:☆☆☆
#136 [先輩]
「で?どうなんですか?」
急にそんな、真顔で言われるとカフェモカが喉につまるじゃない。へらへら笑って聞いてよ。だったら私もへらへら笑えるのに。
やめてよ。その顔は。
「なぁに?そんなに重要事項なわけぇ?」
それでもへらへら笑ってみる。
笑え。君も笑ってよ。
「まぁ。なんとなく?」
二本目の煙草に火をつけた彼が、妙に大人びて見えた。
:11/06/02 02:48
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:☆☆☆
#137 [先輩]
いない。
彼氏なんて。
嘘はついてない。
恵司は彼氏じゃない。
でもさ
彼氏…なんて。
そんな定義、誰が決めたんだろうね。
欲しがるよね?
その定義。
いらないって思ってた。
関係ないって。
でも
やっぱ必用だよね。
でないと、その恋が始まってるのか、終わってるのか、わかんないもんね。
そーだよねー…
:11/06/02 03:08
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:☆☆☆
#138 [先輩]
「長らくいないよ?淋しい生活だぁ。早くお嫁に行きたいよぉ。」
煙草をクシャリと消して、ポーチのチャックを閉めた。
それをスーツのポケットに無理矢理ねじ込む。
入りきれなかったくたびれた鼠がひょっこり顔を出していた。
「嫁って。なんすかそれ?にしても、斎藤さんは彼氏がいるって聞いたんですけどねー?」
タロウは、あのあどけない笑顔で言う。
「まじでぇ?誤報だねそれは。誰が私を貰ってぇーって感じだよ?」
:11/06/02 03:18
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:☆☆☆
#139 [先輩]
「じゃ、俺が斎藤さんを貰ってあげますよっ!うち実家、農家っすけど?」
「まじか?米でも芋でもキャベツでも、何でも作っちゃうよぉ〜?」
「よしっ!じゃぁ〜。そんな斎藤さんには、家付き畑付きじっちゃんばっちゃん付き。おまけに軽トラ贈呈!!どうだっ!」
「やったぁ♪世間では核家族が深刻化と言われているのに、いきなり大家族。さらには庭付きならぬ畑付き。規模でかくないっ?おまけに、夢のマイカーゲットじゃん!すごい好条件!」
「じゃ、そうゆう事で、俺の嫁さんなってくださいね♪ハニー♪」
「ぷっ…なにそれっ。くだらなーいっ!」
:11/06/02 03:37
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#140 [先輩]
久しぶりに、心の底から笑えているような気がする。
目の前で無邪気に笑うタロウに、私自身も素直に笑えるんだから不思議だ。
「よーし。じゃ、これで私の未来は安泰だぁね?」
「はいっ。どんとこいですよっ♪」
二人、ふはふはと笑いながら、非常口を開けて、廊下に戻る。
真っ直ぐに伸びた廊下の途中、自動販売機で、お茶を買った。
喉が乾いた、なのに小銭がないと、駄々をこねるタロウに、仕方なく、お茶を一本ご馳走する。
倍返しでと無理矢理約束をこじつけて、私達はフロアに戻った。
やっぱり
タロウちゃんは、出来ない後輩。
田舎育ちの、可愛い坊や。
勝手にドギマギして悩んで、自分は、なんて小さなハートだったんだろう。
あと
背中に女子社員の視線が刺さってるなんて、痛くも痒くもない。
全く気にしない自分は、心臓に毛が生えているんだろう。
そう思うことにした。
:11/06/02 03:53
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