SAYONARA BLUE
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#1 [hi] 10/10/13 03:16
 
「これで何回目だよ。」

彼は、憲(けん)は、呆れきった顔をして、大きな溜め息をついた。

ホテルのロビーに座った。
私は、急いで来た手前、息もまだ整っていなくて。

「仕事、仕事、仕事。
もう、いい加減にしてよ。」

もうそろそろだと、薄々感じてた。
これが初めてじゃないから。

#6 [hi]
憲が扉を出て行く。
あー、本当におしまいだ。

背が高くてがっしりしていて、頼りがいがあるところも。
無邪気な笑顔も。
手料理作ってくれたり。
具合悪いとき看病してくれたり。

⏰:10/10/13 03:18 📱:D704i 🆔:AY3Aw2.g


#7 [hi]
ワンピースの裾を握りしめて、一生懸命涙こらえた。

してもらってばっか。
なんにもしてあげられなかった。

なのに、最後の最後に出たのがあんな言葉だなんて。

「ありがとう」って。
「今まで本当にありがとう」って言うべきだった。

⏰:10/10/13 03:18 📱:D704i 🆔:AY3Aw2.g


#8 [hi]
自分は本当に最低だ。

夢、夢、夢。
一心不乱、無我夢中で、夢を追いかけてるけど、失うもののが本当は大切なものなんじゃないかって。
時々不安に思うけど、改めて思った。

カバンからハンカチを出す。
憲のことで泣けなくて、夢のこと、自分のことで涙がこぼれ落ちる。
本当に情けない。

⏰:10/10/13 03:19 📱:D704i 🆔:AY3Aw2.g


#9 [hi]
時計を見ると、もう23:00。
明日も朝から仕事。
そう思うと、すっと涙も引っ込んで、今まで何が悲しかったのかさえ分からないくらい。
切り替えの速さが取り柄。
平然とした顔で席を立つ。

あ。
男の人とぶつかった。
ハンカチがひらひらと落ちてく。

⏰:10/10/13 03:19 📱:D704i 🆔:AY3Aw2.g


#10 [hi]
「あ、ごめんなさ…」

何も言わず渡される。
失礼な人だと思った。
ぶつかったのに謝りもしないで。

「どーも。」
軽くお辞儀をして、さっとハンカチを取った。

⏰:10/10/13 03:19 📱:D704i 🆔:AY3Aw2.g


#11 [hi]
どう帰ったのか、よく覚えてない。
気付いたらもう朝で、いつも通り出勤していた。

夢。

⏰:10/10/13 03:20 📱:D704i 🆔:AY3Aw2.g


#12 [hi]
私の夢は、アパレル販売員として成功すること。
成功っていうことが、どういうことかいまだに自分でもよくわからないけど。
夢を追いかけて三年目。
21歳の冬。
もうすぐ店長になることが決まってる。
年上の人が部下だなんて、と、断り続けてたけど、やっぱりやってみたくて、引き受けた。
また新しいスタート。
仕事は順調すぎるくらい、順調。

⏰:10/10/13 03:20 📱:D704i 🆔:AY3Aw2.g


#13 [hi]
その日帰ったら、部屋がぐちゃぐちゃだったことに驚いた。
早番で早く帰れたから、深夜の居酒屋バイトもなかったから、早速部屋の片付け。
元々きれい好きだから、めったにこんなにぐちゃぐちゃにならないけど、心の中がぐちゃぐちゃなときは、部屋もぐちゃぐちゃ。

⏰:10/10/13 03:21 📱:D704i 🆔:AY3Aw2.g


#14 [hi]
「…あ。」

パンフレットの中にチケット。
パスポート探すの忘れないように置いておいたんだ。

店長になるお祝いに、忙しくなる前に、憲と1泊2日韓国旅行に行く予定だった。

明後日の便。

⏰:10/10/13 03:21 📱:D704i 🆔:AY3Aw2.g


#15 [hi]
 
探してた。ずっとずっと。

恋愛なんて邪魔臭い。
そう思ってた時期もあったけど、やっぱり1人きりは嫌で。

寂しさを埋める相手が欲しかったんじゃない。

お互いを尊重しあえる、切磋琢磨して高めあえるような、そんな関係。

そして彼も同じ気持ちだった。
もしかしたら、私の勘違いで、寂しさを埋める相手だったのかもしれないけど。

⏰:10/10/14 02:33 📱:D704i 🆔:.P4Sk.N.


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