僕に誓う
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#1 [まや]
君に決して
伝えることの出来ない気持ちを
僕が抱いていると君が知ったら
君は一体
どんな顔をするのかな
“僕に誓う”
:09/03/13 16:45 :W61T :☆☆☆
#2 [まや]
:09/03/13 16:50 :W61T :☆☆☆
#3 [まや]
湿った涼しい夜風が頬を撫でる
窓からは黄色い満月が
俺とあいつがいる
この部屋を静かに照らしていた
:09/03/13 16:52 :W61T :☆☆☆
#4 [まや]
バシッ…
何かを叩いたような
甲高い音が部屋の中で響いた
「…最低」
:09/03/13 16:53 :W61T :☆☆☆
#5 [まや]
俺は痛みが走った左頬を撫でた
「痛って…」
「タカシ、ホント最低…!」
あいつは涙ぐみながら俺にそう言った
:09/03/13 16:55 :W61T :☆☆☆
#6 [まや]
「…だからちげーつってんだろ」
舌打ち混ざりに俺は言った
ズキンと口の中で
血の味がした
(唇切れてるし…)
それに気付くと俺は
もう一つ舌打ちを打った
:09/03/13 16:56 :W61T :☆☆☆
#7 [まや]
「違くない…!だって私見たんだから、
昨日女の人と歩いてたとこ!」
「だからそんなの人違いだっつの…」
「浮気しないって、信じてたのに…!」
「だから違うっつってんだろ!」
:09/03/13 16:58 :W61T :☆☆☆
#8 [まや]
いつまでも続くこの論争に嫌気がさす
でも
こいつが言うことは合っている
俺は幾度となく
こいつじゃない別の女を抱いたことがある
:09/03/13 16:59 :W61T :☆☆☆
#9 [まや]
それも何人も…
今までバレなかったことが不思議な位だ
:09/03/13 17:00 :W61T :☆☆☆
#10 [まや]
だかそれが案の定、今日バレてしまった
だけど俺は
その女達を別に本気で愛したわけではないし
これからもずっと
関係を続けようとは心底思っていない
:09/03/13 17:01 :W61T :☆☆☆
#11 [まや]
その場その日限りの関係
だから俺が今こんなに責められるのも
納得いかなかった
責任を感じてなどいないからだ
:09/03/13 17:03 :W61T :☆☆☆
#12 [まや]
こんな俺はつくづく酷いやつなんだろな、と少しでも思った自分がいたことは
自分の理性でもみ消した
「もう…いい」
しばらくするとあいつは下向き加減でそう言った
:09/03/13 17:05 :W61T :☆☆☆
#13 [まや]
「もう…いいや」
あいつは疲れ切った様な声で言った
「おい…」
「さよなら」
部屋のドアが大きな音をたてて閉まった
:09/03/13 17:07 :W61T :☆☆☆
#14 [まや]
あいつのヒールの音が遠くに消えていく
俺は追いかけなかった
あいつにも非があると思っていたから
そんな事を思いながら
俺は部屋で一人煙草を吹かしていた
しばらくすると俺の携帯が鳴った
:09/03/13 17:08 :W61T :☆☆☆
#15 [まや]
どうせあいつからだろう
そう思い、着信も見ず
電話に出た
「もしもし」
「…俺
マサトだけど」
「んだよ、お前かよ」
あいつじゃない男の声に
俺はなぜかため息が漏れた
:09/03/13 17:09 :W61T :☆☆☆
#16 [まや]
マサトとは俺の幼なじみだ
そして俺の彼女のあいつとも仲がいい
俺とあいつが付き合い出すまで
普通に俺たち三人で仲が良かった
今でもよく遊んだり、一緒に何処かに出かけにいくくらいに…
:09/03/13 17:11 :W61T :☆☆☆
#17 [まや]
「で、何の用だよ」
「…あいつの事に決まってんだろ」
俺はその言葉に苛立ちを覚えた
「…あっそ」
「お前……………あいつ泣かせてどうすんだよ…!なんで追いかけてやらねーんだよ!」
:09/03/13 17:13 :W61T :☆☆☆
#18 [まや]
マサトの怒声がこの静かな部屋に
携帯を通して響いた
「…うっせーな…、てめぇには関係ねーだろ!」
息を荒くして俺は言った
:09/03/13 17:15 :W61T :☆☆☆
#19 [まや]
「……………分かった」
マサトは静かに呟いた
「お前があいつを傷つけることしかできないなら…
あいつは俺がもらう」
:09/03/13 17:18 :W61T :☆☆☆
#20 [まや]
変な意地が有った俺は
あいつを呼び止めることもせず、涙も拭ってあげる事も出来ず
あいつの大切さに気付かない俺は
「勝手にしろ」
この時俺はそう答えた
答えてしまった…
:09/03/13 17:20 :W61T :☆☆☆
#21 [まや]
口の中に
血の味が広がる
俺は切れた唇の傷を噛みしめていた
:09/03/13 17:21 :W61T :☆☆☆
#22 [まや]
朝
窓の隙間から
眩しい光が俺を照らした
俺は知らないうちにソファで寝てしまっていたようだ
:09/03/13 22:58 :W61T :☆☆☆
#23 [まや]
「朝か…」
寝癖のついた頭を触りながら
俺は立ち上がった
ぐいっと背伸びをする
「おーい、朝めし…」
人気のないこの部屋に俺ははっとした
:09/03/13 23:00 :W61T :☆☆☆
#24 [まや]
「…ち、」
あいつのいない寂しさか
それともただの苛立ちだったのか分からないが
俺はまた一つ舌打ちを打った
ふとテーブルに目を向ける
そこには見慣れた字で書かれた手紙があった
:09/03/13 23:01 :W61T :☆☆☆
#25 [まや]
"タカシへ"
ホントはこんな手紙など
置いていって
欲しくはなかった…
:09/03/13 23:02 :W61T :☆☆☆
#26 [まや]
"タカシが寝ている間に
荷物を取りに来ました
まだ残ってる私の荷物は捨てて構いません
そして
今まで長い間ありがとね
こんな私と一緒にいてくれて本当にありがとう
:09/03/13 23:03 :W61T :☆☆☆
#27 [まや]
ホントはね、
昨日私が出て行ったときタカシに追いかけてきて欲しかった
だけどきっとそんなのは一方的な私の好きだけじゃ
無理な事なんだよね"
手紙をもつ俺の手が
微かに震える
:09/03/13 23:04 :W61T :☆☆☆
#28 [まや]
"いつからこうなっちゃったのか
ツラいから分かりたくもないけど
タカシ、私ね
私は本当に貴方が大好きでした
:09/03/13 23:05 :W61T :☆☆☆
#29 [まや]
貴方は偽りでも
私は貴方が大好きでした
今までありがとう
さよなら"
「…っ」
手紙の最後に
書いてあったあいつの
名前を指でなぞった
:09/03/13 23:06 :W61T :☆☆☆
#30 [まや]
その字は滲んでいた…
「あいつ、
泣きながらこんな手紙…書いてんじゃねーよ…」
:09/03/13 23:08 :W61T :☆☆☆
#31 [まや]
ツラいなら書くなよ
ホントはさよならなんて言いたくねーなら
書くなよ
こんな手紙残して行くなよ
一人だけ最後に寝てる俺の顔見て
さよならなんてすんなよ
:09/03/13 23:10 :W61T :☆☆☆
#32 [まや]
俺は最後にお前の泣き顔しか
見てねーんだぞ
笑えよ…
マサトじゃなくて
俺の前で
笑っていてくれよ…
:09/03/13 23:11 :W61T :☆☆☆
#33 [まや]
俺は何度もその手紙を読み返した
泣きながら何度も何度も読み返した
あいつは一方的な私の好きだなんて
言っていたけど
そんなの大嘘だ
:09/03/13 23:12 :W61T :☆☆☆
#34 [まや]
あいつは俺を愛していて
そして
俺もまた
あいつを愛していたから
:09/03/13 23:13 :W61T :☆☆☆
#35 [まや]
変な意地とプライド
それらが邪魔して追いかけられなかったあの夜
俺はこれから一生後悔するだろう
でもそれが俺の罰だ
愛している人を傷つけた俺への罰
:09/03/13 23:14 :W61T :☆☆☆
#36 [まや]
その罰ならいくらでも
受ける覚悟はある
だけど
だけど頼むから
俺からあいつを
奪わないでくれ
:09/03/13 23:16 :W61T :☆☆☆
#37 [まや]
あいつを失ってから
あいつの大切さに
気付いた
俺は馬鹿野郎だ
君をこんなに
愛していたのに…
:09/03/13 23:17 :W61T :☆☆☆
#38 [まや]
しばらくして
あいつはマサトとつきあい始めた
:09/03/13 23:17 :W61T :☆☆☆
#39 [まや]
だけれど俺たちは大人だからだろうか
関係がギコチナくなることはなかった
ただそれはマサトとだけで
あいつと会うことはなかった
:09/03/14 15:57 :W61T :☆☆☆
#40 [まや]
「おいマサト今日飲みに行こうぜ」
仕事終わり
俺はよく街や駅でマサトと会う
そういった日は2人で飲みに行くのがよくあることだった
「あー悪ぃ、今日は帰るわ」
「はあ?なんだよ、なんかあんのか?」
「ちがくて…あいつがいっから」
:09/03/14 15:59 :W61T :☆☆☆
#41 [まや]
マサトは苦い表情をしながらも
そう言った
「…あーそっか、じゃあ早く帰ってやれな」
「…悪ぃ」
マサトはあいつのために寄り道などしないで
家に帰るのだ
俺はあいつのためにそんな努力をしたことが
あっただろうか
:09/03/14 16:01 :W61T :☆☆☆
#42 [まや]
あいつのためにどうにかしようとした事があっただろうか
でもどれも全て
もう遅いのだ
:09/03/14 16:01 :W61T :☆☆☆
#43 [まや]
でもどれも全て
もう遅いのだ
マサトの携帯はふと気付くとよく鳴っている
着信はあいつからだ
:09/03/14 16:04 :W61T :☆☆☆
#44 [まや]
俺と飲んでいる最中にも必ず一回はかかってくる
マサトもまた
よくあいつに電話をかけていた
お互いに仲が良いのが目に見えて分かった
でもマサトは俺のまえでは絶対にマサトからあいつに電話などしない
俺への気遣いなのだとすぐに気付いた
:09/03/14 16:09 :W61T :☆☆☆
#45 [まや]
(…優しすぎんだよ)
そんな事もよく考えた
マサトはたまに電話に出ないときもあるが
出るときは席をはずす
しかし少し遠くいるにも関わらず
俺は耳が冴えて、会話は時々耳元に届いた
:09/03/14 16:14 :W61T :☆☆☆
#46 [まや]
他愛のない話をしているのだろう
携帯越しに聞こえたあいつの声は
明るく笑っていて
俺の心を締め付けた
:09/03/14 16:14 :W61T :☆☆☆
#47 [まや]
その携帯越しに会話をしていたのは今まで俺だったのに…
そう思っても全て遅い
遅いんだ…
:09/03/14 16:15 :W61T :☆☆☆
#48 [まや]
なあ、お前はいつか
俺じゃない男とひとつになって
幸せになって
大きな愛を
小さな命を
育むんだろ?
:09/03/14 16:18 :W61T :☆☆☆
#49 [まや]
なあ、俺は
お前の忘れる術を
知りもしないんだよ
ずっとお前といて
幸せがすぐ隣にあったから
不幸の忘れかたを
知らないんだよ
:09/03/14 16:21 :W61T :☆☆☆
#50 [まや]
だから俺は
君を忘れはしないだろう
君との思い出を
忘れはしないだろう
君の愛し方も
忘れはしないだろう…
:09/03/14 16:22 :W61T :☆☆☆
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