黒猫の棲むところ
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#241 [イリア]





 第二話:日と陰と




⏰:09/03/25 04:58 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#242 [イリア]



ザ―――………


つい先程まで小雨だった雨は
私たち3人が
テントに向かう途中で

本格的な雨となり、降り出した。

⏰:09/03/25 04:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#243 [イリア]



狐「あーあーあー!!
だから僕は言ったんだよ、
場所を変えようって。」


猫「今更言うなよ、
お前の本気モードが
いつまで続くか不安だったんだ。
俺が説明するのは
かったるいからな。

あの場所でさっさと、
お前に説明して欲しかった。」


⏰:09/03/25 04:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#244 [イリア]



狐「よく言うよ、本当。
大体、僕はいつでも本気モード!
いい加減なことは
するな、言うな、見せるな……
……母上様の、遺言さ♪」


猫「立派な母親だ。
まぁそんな遺言も虚(ムナ)しく、
息子はこんな奴に
育っちまった訳だけど。」


⏰:09/03/25 05:00 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#245 [イリア]



狐「ねぇ、最近冷たくない?
ネコくん僕に対して冷たくない?

――…時に七衣ちゃん、
さっきから一言も
喋らないけど、大丈夫?」


七「―…ハァッハァッ…ハァッ…
―――ッッ!!大丈夫な訳…ッッ!!」





ないでしょ――――ッッ!!!!!


⏰:09/03/25 05:01 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#246 [イリア]



雨が降り出すのに比例して
黒猫さんと狐さん、
二人の歩くスピードは速くなり
いつしか(私にとっての)
全力疾走にまで
走るスピードは上がっていた。


⏰:09/03/25 05:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#247 [イリア]



狐「あれ?
どうしたのそんなに息切れして?」


雨にできるだけ当たらないよう
木の葉っぱの下に入り、
私たちは一旦走るのを止めた。

⏰:09/03/25 05:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#248 [イリア]



七「――…ハァッ…ハァッ…
…走るの…速い、です……」


猫「フフン、これだから人間は。」


七「わ、悪かったですね!
人間で!//」


⏰:09/03/25 05:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#249 [イリア]



狐「まぁまぁお二人とも。
ごめんね七衣ちゃん、僕ら
雨が降ると周りが
少し見えなくて…」


七「ハァッ…ハァッ…はぁ…。」


⏰:09/03/25 05:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#250 [イリア]



狐「基本的に
妖はみんなそうだから気をつけて。
普段は優しくても、
雨に触れると
性格が変わる妖もいるから。」


狐さんが言った、

そんなに雨が苦手なんだ。

人間の私には、
まだまだ理解しにくいことだけど…


⏰:09/03/25 05:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#251 [イリア]



狐「まぁ何かあっても
七衣ちゃんは僕が守るから
ノープログレムだけどねっ★」


七「……はぁ」


⏰:09/03/25 05:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#252 [イリア]



猫「狐、こいつは、俺が拾った。
必要以上に近づくな。」


七「私、拾われたんですか。」


猫「失礼、スカウトした。大道具に。
――……着いた、あそこだ。」


⏰:09/03/25 05:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#253 [イリア]




七「―…うわぁ」



⏰:09/03/25 05:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#254 [イリア]



そこは森を少し
抜けたところにある荒地。

綺麗な布で大きなテントが
張られている。
すぐそばには

物を運ぶ用だろうか、
馬が数匹繋がれていた。


⏰:09/03/25 05:09 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#255 [イリア]



七「―…十分、大きいですよ」


猫「そう?普通だと思うけど。
それより一つ、
あんたに言っておきたいことが―…」

⏰:09/03/25 05:09 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#256 [イリア]





ザッ――……





土を蹴る音がした。

⏰:09/03/25 05:10 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#257 [イリア]



気づくと誰もいなかったはずの
テントの前に、

少女が1人立っている。


⏰:09/03/25 05:10 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#258 [イリア]



狐「…あらぁ、
麗(レイ)ちゃんただいま★
お迎えなんて、珍しいねー♪
だから今日は雨なのかな?
なんちゃってー」




麗「――…さっきから
ずっと、思ってた」


⏰:09/03/25 05:11 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#259 [イリア]



麗、と呼ばれた人が声を出す。

黒猫さんほどではなくても
よく響く、透き通った声だった。


⏰:09/03/25 05:11 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#260 [イリア]



七「……?」


麗「何か…雨の匂いに混じって、
…嫌な感じがすると…」


七「…あの…どういう…?」






麗「ッッ!!!!黙れ!!!雨原!!!」

⏰:09/03/25 05:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#261 [イリア]




ザッ!!


土を蹴る音。
さっきより、ずっと速く。

刃の先を向けられる。



って、はッ――……ッッ??!!


⏰:09/03/25 05:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#262 [イリア]









キ―――ン


刃と刃がぶつかった。
私の目の前にいる人はもちろん…


⏰:09/03/25 05:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#263 [イリア]



猫「―――……いきなり
切りかかってくるとは、予想外。
そんなに熱くなるなよ
たかが、雨原だろ?
今の俺たちにとっちゃ、
大した敵でもない」


麗「黙れ!地に墜ちたか、猫!
今でこそ憎む理由はなくとも
過去の傷…
…そう簡単には、消えない!
そこをどけ!!」


⏰:09/03/25 05:15 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#264 [イリア]




猫「…女を相手にするのは、
嫌いなんだ、悪いけど。

特に、明日の舞台で
姫君を演じてなさる
その美麗なお顔に、
傷などつけれますまい」



⏰:09/03/25 05:15 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#265 [イリア]



黒猫さんが舞台がかった口調で
麗と呼ばれた人に言った…




―…その時

⏰:09/03/25 05:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#266 [イリア]




?「待て待て待て待て待てい!!」



テントのほうから
大きな声が聞こえた。


⏰:09/03/25 05:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#267 [イリア]



七「?」

猫「…」

麗「…」

狐「おや、まぁ」



テントの中からは
金色の髪の少年が出てきた。


⏰:09/03/25 05:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#268 [イリア]



狐「狼(ロウ)くん、ただいま♪
ってゆーか、声がでかくて
近所めいわ…「猫!貴様!
何様のつもりだ!
今すぐ麗のそばから離れろ!
半径15メートル以上だ!」


⏰:09/03/25 05:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#269 [イリア]



猫「もう、煩(ウルサ)いよお前」

狼「何?!もう一回言ってみろ!!」

猫「もう、煩いよお前。」

狼「そのまま言うな!!!
相変わらず腹の立つ奴だ!!!!

麗!!怪我はないか??!!!」


⏰:09/03/25 05:18 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#270 [イリア]



そう言うと狼という人は、
私たちのほうに走ってきた。


⏰:09/03/25 05:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#271 [イリア]



狼「麗、雨が降ってるから
外には出るな、と
言っただろう?」

麗「うるさい触るなどっか行け」




狐「嫌われた〜♪」

猫「嫌われたー」


⏰:09/03/25 05:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#272 [イリア]



狼「黙れ貴様ら!!!
…それにしてもなんか、
変な匂いが……ん?
何だお前、見ない顔だな。
新入りか?」


七「は、はいっ?!」


私はいきなり声をかけられ
若干声が裏がえりながら答える。

⏰:09/03/25 05:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#273 [イリア]



狼「何、そう堅くなることはない。
お前もあれだろう?
麗に憧れて入団した口だろう?
いや、分かる。とても分かるぞ。
こんな美人、世界中探しても
二人とはいないだろう。うん。

…それにしても匂うな。
お前ら匂わないのか?
これは確か…雨原の…」


ビクッとする。
しかし―……


⏰:09/03/25 05:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#274 [イリア]



「あ?そんなことより新入、
お前ところどころ怪我してるな。

小さな怪我でもばい菌が入ると
どえらいことに…ん?血?
……………
……………



――ッッ!!!!お前、雨原????!!!!!」


⏰:09/03/25 05:22 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#275 [イリア]



猫「長げぇよ」

麗「遅せぇよ」

狐「…君の将来が
本気で心配だよ、狼くん…」


⏰:09/03/25 05:23 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#276 [イリア]


第一話:opening
>>1-222

第二話:日と陰と[更新中]
>>241-275

感想板:
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4322/


絵は書けませんでしたが、
簡単なプロフィールを
のせさせてもらいました(^ω^)
感想・アドバイス
お待ちしてます(´;ω;`)★

⏰:09/03/25 05:28 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#277 [イリア]


>>274

 ×〜…新入、
 ○〜…新入り

 すいません(゚д゚)

⏰:09/03/25 12:55 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#278 [イリア]


>>275から

⏰:09/03/25 12:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#279 [イリア]



狼「やかましい!麗以外!!

―…大体、
どうしてこんなところに
雨原が…」





キッ!

麗さんが狐さんを睨む。

⏰:09/03/25 12:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#280 [イリア]



麗「狐ッッ!!!!」

狐「え?僕?」


麗「当たり前だ!
何のつもりか知らないが、
こんな奴拾ってくるなんて
お前以外に――…「俺だよ」」


黒猫さんの声が
麗さんの言葉を遮る。

⏰:09/03/25 13:00 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#281 [イリア]



麗「―…猫が?」

猫「俺が、拾った。
正確にはスカウトした、だけど。
狐は関係ない」



麗「――……スカウト…?」



麗さんの声が
さっきより2オクターブは
低くなる。

⏰:09/03/25 13:01 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#282 [イリア]




……うん、なんか。

なんかもの凄い
勘違いをされてる気がする。



⏰:09/03/25 13:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#283 [イリア]



七「で、でも私…」


狼「貴様ぁ!
何故今更女をスカウト?!
確かにうちの劇団に女は少ないが、
麗さえいれば特に不都合はな…」


麗「…ご不満、ってわけだ」


⏰:09/03/25 13:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#284 [イリア]



雨はさっきよりも緩くなり
雨音に邪魔をされることのない
麗さんの声は、
全てが耳に響いてくる。


⏰:09/03/25 13:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#285 [イリア]



麗「…そういうことでしょ、猫。
私が最近 本番での失敗が多いから
新しい子を連れてきた…

いいわよ別に、仕方ないわ。
情だけで役が貰えるほど、
甘い劇団は嫌い。」


狼「何を言う!
失敗なんてまったく…」

麗「黙ってよ、狼。」


⏰:09/03/25 13:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#286 [イリア]



狼「いや黙らん!!
猫!!お前が連れてきた女と、麗。
どちらの演技が
この劇団に相応しいか、
今から勝負をしよう!!!!」


⏰:09/03/25 13:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#287 [イリア]



――……ちょっと、ちょっと、
ちょっと、ちょっと、ちょっと。

何か話がおかしな方向に…


私は誤解を解いて欲しくて、
黒猫さんのほうを見る。


⏰:09/03/25 13:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#288 [イリア]




クスッ…


私と目が合うと黒猫さんは
それこそ女性と見間違うほど妖艶に、
私に微笑んだ。


⏰:09/03/25 13:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#289 [イリア]



何この笑い…

もしかして……




すると黒猫さんは少しかがみこみ、
私の耳元で小さな声を出す。


⏰:09/03/25 13:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#290 [イリア]











猫「――…ご自分の紹介は

ご自分でどうぞ、姫」


⏰:09/03/25 13:08 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#291 [イリア]



その甘く優しげな
舞台用であろう声に
思わず顔が赤らむ。



って違うでしょ!//
誰が姫だよ!///

しかもスカウトなんて言うから
二人とも変に誤解して―……


⏰:09/03/25 13:09 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#292 [イリア]



狼「……ィ…おい!聞いてるか女!
勝負の内容は――ッッ!!」


言えってか。
私に言えってか!///

相変わらず黒猫さんは
心底おかしそうにしながら
私を見つめている。


⏰:09/03/25 13:09 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#293 [イリア]



狼「―じゃあさっそく、
今から「違います!!////」」



今度は私の声が響いた。

響いたっていうか、
轟(トドロ)いたっていうか。


⏰:09/03/25 13:10 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#294 [イリア]



狼「……何が違う!!」

七「こ、こ、これ以上話が
大きくなる前に、
言っときたいんですけど!!//」


⏰:09/03/25 13:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#295 [イリア]



狼.麗「?」


七「私…私、女優としてスカウト
されたんじゃないんです!!//」


⏰:09/03/25 13:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#296 [イリア]





―――…………言ってしまった//


黒猫さんと狐さんは
口に手をあて、
声を出さずに笑っている。


⏰:09/03/25 13:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#297 [イリア]



麗「―…何のつもりだ?
苦し紛れの言い訳か?

なら、何なんだ。猫はお前を
なんのつもりで…「お、お、大道具!」」


⏰:09/03/25 13:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#298 [イリア]



今度こそ本当に
私の声があたり一面に轟く。

麗さん、狼さんが
呆然と私を見ているのが分かる。


⏰:09/03/25 13:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#299 [イリア]



七「も、もしくはお茶くみ!
あ!あと、
狐さんのアシスタントってのも
アリみたいです!!//

何のアシスタントかは
知らないんですけど!!//」


⏰:09/03/25 13:15 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#300 [イリア]



カァ…―


言ってすぐ、恥ずかしくなる。

別に恥ずかしくなる必要は
ないのかもだけど、
大道具にスカウトされた私って…涙


⏰:09/03/25 13:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#301 [イリア]



猫「アハハハハハハ!!」


狐「ぎゃーはっはっはっ!!!
いいねーいいねー七衣ちゃん★
あ、ちなみに僕は
監督 兼 脚本家だから♪」


⏰:09/03/25 13:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#302 [イリア]



伏せていた目線を上げる。

黒猫さんはいつの間にか
私の前から横に移動してて、
麗さんともろに目があった。


⏰:09/03/25 13:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#303 [イリア]



麗「―…大道具……?」


七「…あ…はい、私演技とか…
やったことないし…」


猫「そう、大道具…クスッ
いいだろ?ちょうど
人出も足りてないし。」


⏰:09/03/25 13:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#304 [イリア]



麗「――……」


狼「何だ、大道具か。
どうりでオーラがないと思った。」



あ、何かこの人 素で失礼。

⏰:09/03/25 13:18 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#305 [イリア]



狼「しかし!猫!お前はいつから
大道具のスカウトマンになった??!!」


猫「フフン、こいつ記憶がないんだ
自分のこと、名前しか覚えてない」



七「あ、七衣です。」

⏰:09/03/25 13:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#306 [イリア]



狼「え、そんなわざわざ…
俺は狼だ。好きに呼んでくれ!!

―……じゃ、なく!!!!!!!!」



キ――ン…


この人、声大きいよ…


⏰:09/03/25 13:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#307 [イリア]



狼「だ、そうだ!麗!!
やはりこの劇団の
トップ女優はお前しかいない!!
当たり前だがなッ!!!!」


猫「どう?麗。
雨原だけど、よく
働いてくれるみたいだよ」



そんなこと一言も
言った覚えありませんけど。


⏰:09/03/25 13:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#308 [イリア]



麗「…でも…雨原…」


猫「俺たちもこいつも、
妖に嫌われてる点では同じだ。
面倒は俺が見る。」


⏰:09/03/25 13:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#309 [イリア]



狐「ほらほら!ネコくんが
ここまで言ってるんだし、
いいじゃない別に。

それに雨原一人抱えたところで
潰れるほど、
うちの劇団は弱くないよ♪」


⏰:09/03/25 13:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#310 [イリア]



みんなの視線が麗さんに
向けられる。


…色々あって、今初めて
ちゃんと顔見るけど…

綺麗な人だなぁ。


⏰:09/03/25 13:22 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#311 [イリア]



狼さんだって
黒猫さんとは違うタイプの
美男子だし。

この劇団には
美男美女しかいないのかな。


⏰:09/03/25 13:23 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#312 [イリア]



猫「――…麗?」


黒猫さんがまた
綺麗な声を響かせる。



―…みんなが演技してるとこ、
見てみたいな。


⏰:09/03/25 13:24 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#313 [イリア]



麗「――……ッッ!!

…好きにしろ………」




ザッ

そのまま私たちを追い越し、
麗さんは
林のほうに歩いて行く。


⏰:09/03/25 13:24 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#314 [イリア]



狼「おい!麗!待て!!

…それじゃあな、新入り!
そこの悪魔に喰われない用、
注意しろよ!!」


⏰:09/03/25 13:25 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#315 [イリア]



猫「何それ?俺のこと?」


狼「お前以外に誰がいる、この性悪。

ふっ、まぁいいさ。お前はせいぜい
この女のお守りでもしてるんだな。

次の舞台の主役は、
必ずや俺と麗が頂く!!!!!!」


⏰:09/03/25 13:26 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#316 [イリア]



そう言うと狼さんは
麗さんの後を追い
林の中に走って消えた。


⏰:09/03/25 13:26 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#317 [イリア]



猫「ほざいてろ、カス。」

黒猫さんがその言葉を
いい終わると同時に、
テントの中から
大きな拍手が聞こえた。



中から続々と人が出てくる。


⏰:09/03/25 13:27 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#318 [イリア]



「いやぁ凄かったね!」

「今日の麗ちゃん機嫌悪いから
 気にしないほうがいいよっ」

「狼は相変わらず、
 馬鹿だよな〜」

「ね〜本当に雨原一族なの〜?」

「大道具!おもしろ〜い///」



一斉にみんなが私に話しかけてきた。


⏰:09/03/25 13:29 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#319 [イリア]



七「え?え?…え?」


猫「…そんな一斉に
喋るなよ、話は聞いてたな?」


⏰:09/03/25 13:30 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#320 [イリア]



「聞いてた聞いてたっ★
僕らは別に、雨原一族
敵だとは思ってないしねー」

「裏切り上等☆
一緒に悪い妖を
退治しましょ♪」


予想外の反応に
思わず笑みがこぼれる。


⏰:09/03/25 13:31 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#321 [イリア]



狐「ね♪とりあえず、
雨原ってだけで
君を嫌いになるような人は、
ここにはいないよ☆」


七「…み、みなさん
半妖なんですか?」


「そーだよ〜ん♪」


⏰:09/03/25 13:31 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#322 [イリア]



狐「あ、そうそう」

狐さんが言う。


⏰:09/03/25 13:31 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#323 [イリア]



狐「僕やネコくんみたいに、
動物の名前で呼ばれてる子もいるし

麗ちゃんみたいに
普通の名前で呼ばれる子もいる。

まぁそこら辺は適当だけど、
とりあえずみんな半妖なんだ」


⏰:09/03/25 13:32 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#324 [イリア]



難しい…

みんな動物名で呼ばれてるかと
思ってた。
あぁでも狐さんにしても
狐の半妖なんて
たくさんいるだろうし、
名前がなくて不便じゃないのかな?


…でも今は、そんなことより…


⏰:09/03/25 13:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#325 [イリア]



…そっか、みんな半妖か…



―…ちょっと不安。


⏰:09/03/25 13:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#326 [イリア]



猫「…フン、まぁ人間は
あんただけだけど、
雨原一族なんて妖に近いもんだし
気にしなくていいんじゃない?」


慰めてるつもりなのか、
黒猫さんが私に言う。


⏰:09/03/25 13:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#327 [イリア]



狐「そうそう!
ぶっちゃけ能力一族なんか
見た目以外は妖だよね〜」

七「能力一族?」


⏰:09/03/25 13:36 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#328 [イリア]



狐「うん。あ、知らないか。

雨原一族みたいな
特殊な力を持つ一族のこと。

雨を呼べたりするなんて
もう普通の人間じゃないもんね〜」


⏰:09/03/25 13:36 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#329 [イリア]



「他にも炎を操れる火日谷一族や
風を操れる風宮一族なんかがあるよ」


―…なんか、改めて

凄い世界に
来ちゃったな。


⏰:09/03/25 13:37 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#330 [イリア]



狐「はいはいはい!」


パンパンパン


声に合わせて狐さんが
手を叩く。


⏰:09/03/25 13:37 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#331 [イリア]



狐「お喋りはそこまで!
みなさん明日が何の日かお忘れ?

…明日から一週間、この街で
講演するんでしょ!
練習しなくていいのかな?

それとも台詞(セリフ)全部
覚えたのかなあ…?」


⏰:09/03/25 13:38 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#332 [イリア]



全員「―…ッッ!!ま、まだ……汗」



狐「じゃあ、早く練習!
雨も上がった!!
10分後に裏テント前集合!」


全員「は、はい!団長!!」


⏰:09/03/25 13:38 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#333 [イリア]



その声と同時に
みんなバタバタと
テントの中に入っていく。


⏰:09/03/25 13:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#334 [イリア]



猫「フフン、あいつらに
覚えるような台詞、あったっけ?」


狐「君は本当に毒舌だねぇ。」


⏰:09/03/25 13:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#335 [イリア]



七「…狐さんて、
本当に団長だったんですねぇ…」


何気なく言った私の一言に
狐さんが泣きそうな声をあげる。


⏰:09/03/25 13:40 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#336 [イリア]



狐「七衣ちゃん?!
それ、どういう意味??!
僕、団長に見えない??!涙」


七「あ、ごめんなさいごめんなさい!
見えました!今、見えました!

―…ところで」


⏰:09/03/25 13:41 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#337 [イリア]



林を見つめてみる。

帰ってくる気配はない。


⏰:09/03/25 13:42 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#338 [イリア]



七「―…麗さん、戻ってきませんね。

狼さんも追いかけてったままだし…」


⏰:09/03/25 13:42 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#339 [イリア]



猫「フン、まぁあんたが
気にすることないよ、
麗は人間が嫌いなだけ。」


狐「そしてロウくんは、
麗ちゃんが好きなだけ。

大丈夫あの二人なら
明日の台詞も完璧だろうし、
もしさっきみたいな鬼が出ても
ロウくんがいれば何とでもなる」


⏰:09/03/25 13:43 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#340 [イリア]



七「…はぁ」


猫「ほら、それより狐。10分だ。
さっさと行け、来い七衣。
一通りテントの中説明しとく」


⏰:09/03/25 13:44 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#341 [イリア]



狐「あーはいはい。
そんなに僕が邪魔ですか。
いいもん、いいもん。

じゃあ後でね七衣ちゃん♪
気楽にね…これからは」




⏰:09/03/25 13:44 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#342 [イリア]






狐「…ここが君の、家なんだから。」



家…
狐さんのその一言に、
自然と顔がほころぶ。

⏰:09/03/25 13:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#343 [イリア]



狐「僕のことは兄だと思って
何でも相談してくれたまえ、妹よ!!」


猫「父の間違いじゃないの?
行くぞ、七衣」


⏰:09/03/25 13:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#344 [イリア]



私は狐さんに軽く会釈し、
黒猫さんの後を追った。


⏰:09/03/25 13:46 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#345 [イリア]



第一話:opening
>>3-222

第二話:日と陰と[更新中]
>>241-275
>>279-344

†感想板†
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4322/

感想・アドバイス
お待ちしてます(゚∀゚)★


⏰:09/03/25 13:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#346 [イリア]


>>344から

⏰:09/03/25 22:42 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#347 [イリア]



赤く滑らかな布をめくり
黒猫さんがテントの中に入る。

私も後を追い、入ってみる。

七「―…うわぁ…」


⏰:09/03/25 22:42 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#348 [イリア]



見えたのは、本当にテントの中かと
疑いたくなるほど、広い空間。

ちゃんとたくさんの区切りもある。


⏰:09/03/25 22:43 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#349 [イリア]



七「――…広いんですね…」


猫「普通の家みたいだろ?
うちの劇団の大道具、
腕が良くてさ。
何でもできるんだよな。
ほら、この仕切り。
1人1人個室が与えられるんだ。」


⏰:09/03/25 22:43 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#350 [イリア]



コンコン…

黒猫さんが、仕切りを軽く叩く。
廊下のようなものがあり
左右に扉が見える。


七「―…移動劇団、でしたよね…?」


⏰:09/03/25 22:44 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#351 [イリア]



猫「そう、滞在期間は
短くて一週間。
長くて一月くらいかな。
同じとこにずっといるのは」
危険だし。」

七「…毎回こんな
ばかでっかい
テント建てるんですか?」


⏰:09/03/25 22:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#352 [イリア]



猫「建てなきゃ、寝るとこないけど?」

黒猫さんがクスッと笑う。


⏰:09/03/25 22:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#353 [イリア]



猫「…って、言っても
俺たち役者はノータッチだけどな。
大体は稽古してる間に、
大道具の奴らが建てる。」


七「―…大道具…」


猫「あんたも次から、頑張って?」


黒猫さんがまた笑う。


⏰:09/03/25 22:46 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#354 [イリア]



…てか、無理でしょ!
だってもうテントじゃないもん!
家だよ、家!!

こんなの移動するたびに
建ててる大道具の人って一体……


⏰:09/03/25 22:47 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#355 [イリア]



猫「そうそう、
アスタリスク劇団はあんた入れて56人。
そのうち15人が役者で
12人が役者のマネージャー。

んで、狐が監督 兼 脚本家。
後はみんな大道具だけど、
男ばっかだから気をつけろよ」


⏰:09/03/25 22:47 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#356 [イリア]



―…いや、男ばっかって!

力仕事だからな〜と言う
黒猫さんの声が聞こえる。


何で私スカウトされたんだろ?
力とかないんですけど…
しかも、男の人ばっかって…


⏰:09/03/25 22:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#357 [イリア]



無意識に半泣きになった私を見て
黒猫さんが目を細める。





猫「―…ねぇ、七衣?」

七「え?あ、はい?」


⏰:09/03/25 22:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#358 [イリア]



少し上を見上げ、
黒猫さんと目を合わせる。



猫「…大道具って、大変だと思わない?
女の子がする仕事じゃないよ」


⏰:09/03/25 22:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#359 [イリア]



そう言うと黒猫さんは
私の横の壁に手をつけ、
私は黒猫さんと壁に
挟まれた感じになった。


⏰:09/03/25 22:49 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#360 [イリア]







―……って、近い近い近い!!!!///


⏰:09/03/25 22:49 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#361 [イリア]



すぐ目の前にある綺麗な顔に

鼓動が速まり、
頬が熱くなるのが分かる。


⏰:09/03/25 22:49 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#362 [イリア]



赤くなっているだろう顔を
見られたくなくて、

私は自分の顔を慌てて下に向けた。


⏰:09/03/25 22:51 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#363 [イリア]



猫「…クスッ…何で下見るの…?」

七「―…ッッ////べ、別に?
そ、それより近いんですけど。」


⏰:09/03/25 22:51 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#364 [イリア]



猫「――……2回」

七「え?な、何がですか?」

猫「……3回」

七「だ、だから何の回数ですか?!//
全然意味が…」


⏰:09/03/25 22:51 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#365 [イリア]



猫「…4回。

あんたがどもった回数。
あんた、よくどもるよね、
役者には向いてないかな」


そう言って黒猫さんはまた笑う。


⏰:09/03/25 22:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#366 [イリア]



カァ―


今度こそ本当に顔が赤くなった。

七「べ、別に私だって
いっつもどもってる訳じゃないし!
てゆーか、誰がどもらせてると…」

猫「―…誰?」

七「……//」


⏰:09/03/25 22:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#367 [イリア]



綺麗な顔が覗き込んでくる。

上を見れば、唇が
触れてしまいそうな距離。


⏰:09/03/25 22:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#368 [イリア]



七「だ、誰でもありませんよ!//

それより近いです!!近い!!!//」






猫「――……失礼、姫」


⏰:09/03/25 22:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#369 [イリア]



黒猫さんが私から少し離れる。

…少しだけ、寂しく感じた。


⏰:09/03/25 22:54 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#370 [イリア]



猫「――…何?」


私の顔を見て、黒猫さんが言う。


⏰:09/03/25 22:55 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#371 [イリア]



七「あ……その!!
姫っていうのやめてくれません?!

私に姫に似合いませんし…///」


少しでも寂しくなったなんて
知られたくなく、
私は慌てて
今思っただけのことを言う。


⏰:09/03/25 22:55 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#372 [イリア]



>>371

×私に姫に〜…
○私に姫は〜…

 すいません(´;ω;`)


⏰:09/03/25 22:56 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#373 [イリア]



猫「―…なら、あんたも
俺のこと黒猫さん、っての
辞めるくれる?」


七「…え?」


予想外の返答に、思わず聞き返す。


⏰:09/03/25 22:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#374 [イリア]



猫「―…なんていうか、
他人行儀だよね。
そりゃ確かに
好きに呼べとは言ったけど。

猫、でいいよ」


七「…え…いや、
呼び捨てはちょっと…」


⏰:09/03/25 22:58 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#375 [イリア]



猫「何で?」


七「だって私のほうが年下っぽいし…」


⏰:09/03/25 22:58 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#376 [イリア]



猫「あんた、何歳だっけ?」


七「…よく覚えてないけど…
16くらい……?」


猫「本当だ、俺は18だから。
まぁ、別にいいよ?」


⏰:09/03/25 22:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#377 [イリア]



七「私がよくないです!!//
………じゃあ」


また、目をそらしてしまう。

私が麗さんみたいに綺麗だったら
ちゃんと目を見て話せるのかな?


⏰:09/03/25 22:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#378 [イリア]



七「―…猫さん、って呼びます。」


黒猫さんは少し不満そうに
鼻を鳴らしたが、
まぁ今はいっか、と言うと
私を置いて歩き出した。


⏰:09/03/25 23:00 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#379 [イリア]



七「あ、待って下さい!!」


猫「これが言いたかっただけなんだ。
黒猫さんて、呼びづらそうで。

あんた、風呂入ってきなよ。
そこを左にずっと行くと
大浴場があるから。
着替えは劇団の服が
置いてあると思うし。」


⏰:09/03/25 23:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#380 [イリア]



何で移動テントの中に
風呂があるんだよというつっこみは
とりあえず置いておいて…

歩き出す黒猫さんに質問をする。


⏰:09/03/25 23:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#381 [イリア]



七「…あの!!
ずっと気になってたんですけど!!」


猫「?」


七「―…何で初めて会ったとき、
あんなに傷だらけだったんですか??」


⏰:09/03/25 23:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#382 [イリア]



黒猫さんが足を止める。

ゆっくりと私のほうに振り向いた。


⏰:09/03/25 23:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#383 [イリア]



七「…あ…言いたくなかったら、
いいんですけど……」


風が吹く。

あ、やっぱりここは
テントの中なんだ。
自然なままの、風を感じる。


⏰:09/03/25 23:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#384 [イリア]



七「…………?」




猫「―…何でだったかな。

まぁ、あんたには関係ないよ」


⏰:09/03/25 23:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#385 [イリア]



関係ない



その言葉を聞いたとき、
何故か懐かしい感じがした。

その後すぐ、さっきよりも
ずっと大きい寂しさを感じ、
思わず下を向く。


⏰:09/03/25 23:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#386 [イリア]



分かってる。私と猫さんは
さっき会ったばっかりで。

まだお互いのこと
ほとんど知らなくて。


私は猫さんのこと

もっともっと知りたいけど、

猫さんはそんなこと、望んでなくて。


⏰:09/03/25 23:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#387 [イリア]



私と猫さんは

関係あることより

関係ないことのほうが



ずっと、ずっと多くて。


⏰:09/03/25 23:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#388 [イリア]



ポン


私の頭の上に、手が置かれる。


⏰:09/03/25 23:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#389 [イリア]



猫「―…悪い、言い方きつかった?
そんな顔すんなよ…」


どんな顔をしてるんだろう。

そういえば私の顔って、
どんなんだったっけ?


⏰:09/03/25 23:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#390 [イリア]



猫「…あの怪我は、
もう大丈夫なんだ。
あんたが川で癒やしてくれたから。
気にしなくていい…


…そういう意味だよ」


⏰:09/03/25 23:08 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#391 [イリア]



もう、大丈夫。

今はそれだけ知ってれば
十分なのかも知れない。


⏰:09/03/25 23:08 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#392 [イリア]



七「…うん…」


そう考えると、少し寂しさが消える。

口元を緩めた私を見て、
黒猫さんもクスッと笑う。


⏰:09/03/25 23:08 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#393 [イリア]



猫「ほら、さっさと風呂行け。
結構広い大浴場だけど
誰か入ってないか
一応確認しろよ?」


七「…はいっ!」


⏰:09/03/25 23:09 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#394 [イリア]



猫「じゃ、俺も稽古見てくるわ。
いま大道具の奴らが飯作ってるから
今から風呂入れば丁度いいよ。」


七「大道具って…
…ご飯もつくるんですか?汗」


猫「クスッ 別名、何でも屋」


大変そうだ…


⏰:09/03/25 23:10 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#395 [イリア]






猫「まぁ、まだ何も
分かんねーだろうし、

姫君が湯浴みを終えられた頃に
お迎えに上がりますよ」



七「また、姫って言った。」


⏰:09/03/25 23:11 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#396 [イリア]



猫「今度は、姫君だよ」


猫さんが笑う。


じゃ、後で
そう言って猫さんがまた歩き出す。
私も言われたとおり
左ひ向かって歩く。


⏰:09/03/25 23:11 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#397 [イリア]



>>396

×左ひ向かって歩く。
○左に向かって歩く。

 すいません(・ω・`)


⏰:09/03/25 23:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#398 [イリア]







猫「――……七衣!」


七「?」


猫さんは入り口の布をめくりながら
私の名前を呼んだ。


⏰:09/03/25 23:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#399 [イリア]






猫「―……やっぱあんた、
俺のマネージャーにするわ。」


七「……ふぇっ?」


⏰:09/03/25 23:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#400 [イリア]



猫「さっき役者が15人、
マネージャーが12人って
言っただろ。あれ、
俺と狼と麗は
マネージャーなんかいらねって言って
つけてなかったんだ。

…でもやっぱ、いたほうが便利かな。
色んな劇を、同時に
練習することもあるし
スケジュールとか覚えんのたるくて。
遅刻したら狐がうるさいし。

――……だから」


⏰:09/03/25 23:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#401 [イリア]



そこまで言って猫さんは
一度呼吸をする。



猫「…あんたに任せるわ」



七「…はぁ………えッッ?!!」


⏰:09/03/25 23:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#402 [イリア]



猫「フフン、よく考えたらさ。
あんたみたいなひょろっちぃ奴、

大道具になんか回したら
俺が怒られるし。」


⏰:09/03/25 23:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#403 [イリア]



喜んでいいのか。
慌てればいいのか。


私が猫さんのマネージャー…?

でも猫さんて確か
この劇団で一番人気じゃ……?


⏰:09/03/25 23:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#404 [イリア]



猫さんがまた、クスッと笑う。


猫「じゃ、よろしく、マネージャー♪」



七「え―――ッッ??!!」


⏰:09/03/25 23:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#405 [イリア]



私の驚きの声も虚しく、
猫さんはヒラリと手をふると

今度こそ本当に
テントから出て行った。


⏰:09/03/25 23:18 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#406 [イリア]




猫さんのマネージャー…
猫さんのマネージャー…??//


できるのかな、私に。

まぁ大道具よりは
向いてるかなあ。


⏰:09/03/25 23:18 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#407 [イリア]



そんなことを考えながら足を進める。

すると 大浴場、と書かれた看板が
前のほうに見えた。


⏰:09/03/25 23:18 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#408 [イリア]



…さっきの川の水を
持ってきてるのかな。

ってゆうか、大浴場て
本当にホテルみたいだなー


⏰:09/03/25 23:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#409 [イリア]



赤いシルクののれんを
くぐり、中に入る。

服を脱ぐと、狼さんの言うとおり
いたるところから
少量の血が出ていた。


⏰:09/03/25 23:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#410 [イリア]



いつの傷だろう。
まったく覚えてない。


初め目覚めたときの
他人の血を体につけていた
自分を思い出し、
今更ながら怖くなる。


⏰:09/03/25 23:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#411 [イリア]



全部、全部思い出す日がきたとき、

私は今と変わらず
猫さんや狐さんと
いられるのだろうか。


⏰:09/03/25 23:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#412 [イリア]



服を全部脱ぎ終わると、
タオルだけ持って
浴槽に繋がる扉を開ける。


⏰:09/03/25 23:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#413 [イリア]



湯気であまり見えなかったが
広いことは分かる。

私が扉を開けたことにより
中の温度が下がり、
少しずつ中の様子が
露(アラワ)わになった。


⏰:09/03/25 23:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#414 [イリア]



七「―…うわー広いっ
やっぱ絶対
この劇団お金持ち……」


ガタンッ!!!




浴槽の近くで音がする。
不思議に思いその方向を見ると―…


⏰:09/03/25 23:22 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#415 [イリア]







七「――……あ……」


知ってる人の顔。

だけど、体には無数の痣(アザ)。


⏰:09/03/25 23:22 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#416 [イリア]








七「――…麗さん……?」


麗「――…???!!!」


⏰:09/03/25 23:23 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#417 [イリア]



向こうも突然のことに
相当驚いているようだ。

数秒目を合わせたあと、
私は麗さんの体の痣を見る。


⏰:09/03/25 23:23 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#418 [イリア]



七「―…それ…痣ですよね…?
…大丈夫ですか……?」


麗「―…ッッ!!……黙れ…!!」



やはり怒ってる。


⏰:09/03/25 23:23 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#419 [イリア]



ど、ど、どうしよう。

出たほうがいいかな、でも…!!


⏰:09/03/25 23:24 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#420 [イリア]



七「本当に大丈夫ですか…?
誰か…呼んできましょうか?」



麗「…うるさいッッ!!
私に話しかけるな!!人間!!!!」


⏰:09/03/25 23:25 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#421 [イリア]




タッ



麗さんが走って私の横を通り、

浴室から出ていく。


⏰:09/03/25 23:25 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#422 [イリア]



――……誰か入ってないか
一応確認しろよ―……



今更、さっきの猫さんの言葉が
頭に響く。


⏰:09/03/25 23:25 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#423 [イリア]



あの痣、いつのだろう。

誰かに言ったほうがいいのかな。






…また、麗さんに嫌われちゃった。


⏰:09/03/25 23:26 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#424 [イリア]



同い年くらいの女の子。

仲良くなりたいけど、
いまいちどうすればいいのか
分からない。


⏰:09/03/25 23:26 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#425 [イリア]





七「―…波乱万丈な、1日だ。」


私はそう言って、湯船にはつからず

シャワーだけ浴びると浴室を出た。


⏰:09/03/25 23:27 📱:W61P 🆔:☆☆☆


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