黒猫の棲むところ
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#241 [イリア]
:09/03/25 04:58 :W61P :☆☆☆
#242 [イリア]
ザ―――………
つい先程まで小雨だった雨は
私たち3人が
テントに向かう途中で
本格的な雨となり、降り出した。
:09/03/25 04:59 :W61P :☆☆☆
#243 [イリア]
狐「あーあーあー!!
だから僕は言ったんだよ、
場所を変えようって。」
猫「今更言うなよ、
お前の本気モードが
いつまで続くか不安だったんだ。
俺が説明するのは
かったるいからな。
あの場所でさっさと、
お前に説明して欲しかった。」
:09/03/25 04:59 :W61P :☆☆☆
#244 [イリア]
狐「よく言うよ、本当。
大体、僕はいつでも本気モード!
いい加減なことは
するな、言うな、見せるな……
……母上様の、遺言さ♪」
猫「立派な母親だ。
まぁそんな遺言も虚(ムナ)しく、
息子はこんな奴に
育っちまった訳だけど。」
:09/03/25 05:00 :W61P :☆☆☆
#245 [イリア]
狐「ねぇ、最近冷たくない?
ネコくん僕に対して冷たくない?
――…時に七衣ちゃん、
さっきから一言も
喋らないけど、大丈夫?」
七「―…ハァッハァッ…ハァッ…
―――ッッ!!大丈夫な訳…ッッ!!」
ないでしょ――――ッッ!!!!!
:09/03/25 05:01 :W61P :☆☆☆
#246 [イリア]
雨が降り出すのに比例して
黒猫さんと狐さん、
二人の歩くスピードは速くなり
いつしか(私にとっての)
全力疾走にまで
走るスピードは上がっていた。
:09/03/25 05:02 :W61P :☆☆☆
#247 [イリア]
狐「あれ?
どうしたのそんなに息切れして?」
雨にできるだけ当たらないよう
木の葉っぱの下に入り、
私たちは一旦走るのを止めた。
:09/03/25 05:04 :W61P :☆☆☆
#248 [イリア]
七「――…ハァッ…ハァッ…
…走るの…速い、です……」
猫「フフン、これだから人間は。」
七「わ、悪かったですね!
人間で!//」
:09/03/25 05:04 :W61P :☆☆☆
#249 [イリア]
狐「まぁまぁお二人とも。
ごめんね七衣ちゃん、僕ら
雨が降ると周りが
少し見えなくて…」
七「ハァッ…ハァッ…はぁ…。」
:09/03/25 05:05 :W61P :☆☆☆
#250 [イリア]
狐「基本的に
妖はみんなそうだから気をつけて。
普段は優しくても、
雨に触れると
性格が変わる妖もいるから。」
狐さんが言った、
そんなに雨が苦手なんだ。
人間の私には、
まだまだ理解しにくいことだけど…
:09/03/25 05:05 :W61P :☆☆☆
#251 [イリア]
狐「まぁ何かあっても
七衣ちゃんは僕が守るから
ノープログレムだけどねっ★」
七「……はぁ」
:09/03/25 05:06 :W61P :☆☆☆
#252 [イリア]
猫「狐、こいつは、俺が拾った。
必要以上に近づくな。」
七「私、拾われたんですか。」
猫「失礼、スカウトした。大道具に。
――……着いた、あそこだ。」
:09/03/25 05:06 :W61P :☆☆☆
#253 [イリア]
:09/03/25 05:07 :W61P :☆☆☆
#254 [イリア]
そこは森を少し
抜けたところにある荒地。
綺麗な布で大きなテントが
張られている。
すぐそばには
物を運ぶ用だろうか、
馬が数匹繋がれていた。
:09/03/25 05:09 :W61P :☆☆☆
#255 [イリア]
七「―…十分、大きいですよ」
猫「そう?普通だと思うけど。
それより一つ、
あんたに言っておきたいことが―…」
:09/03/25 05:09 :W61P :☆☆☆
#256 [イリア]
:09/03/25 05:10 :W61P :☆☆☆
#257 [イリア]
気づくと誰もいなかったはずの
テントの前に、
少女が1人立っている。
:09/03/25 05:10 :W61P :☆☆☆
#258 [イリア]
狐「…あらぁ、
麗(レイ)ちゃんただいま★
お迎えなんて、珍しいねー♪
だから今日は雨なのかな?
なんちゃってー」
麗「――…さっきから
ずっと、思ってた」
:09/03/25 05:11 :W61P :☆☆☆
#259 [イリア]
麗、と呼ばれた人が声を出す。
黒猫さんほどではなくても
よく響く、透き通った声だった。
:09/03/25 05:11 :W61P :☆☆☆
#260 [イリア]
七「……?」
麗「何か…雨の匂いに混じって、
…嫌な感じがすると…」
七「…あの…どういう…?」
麗「ッッ!!!!黙れ!!!雨原!!!」
:09/03/25 05:12 :W61P :☆☆☆
#261 [イリア]
ザッ!!
土を蹴る音。
さっきより、ずっと速く。
刃の先を向けられる。
って、はッ――……ッッ??!!
:09/03/25 05:13 :W61P :☆☆☆
#262 [イリア]
キ―――ン
刃と刃がぶつかった。
私の目の前にいる人はもちろん…
:09/03/25 05:13 :W61P :☆☆☆
#263 [イリア]
猫「―――……いきなり
切りかかってくるとは、予想外。
そんなに熱くなるなよ
たかが、雨原だろ?
今の俺たちにとっちゃ、
大した敵でもない」
麗「黙れ!地に墜ちたか、猫!
今でこそ憎む理由はなくとも
過去の傷…
…そう簡単には、消えない!
そこをどけ!!」
:09/03/25 05:15 :W61P :☆☆☆
#264 [イリア]
猫「…女を相手にするのは、
嫌いなんだ、悪いけど。
特に、明日の舞台で
姫君を演じてなさる
その美麗なお顔に、
傷などつけれますまい」
:09/03/25 05:15 :W61P :☆☆☆
#265 [イリア]
黒猫さんが舞台がかった口調で
麗と呼ばれた人に言った…
―…その時
:09/03/25 05:16 :W61P :☆☆☆
#266 [イリア]
?「待て待て待て待て待てい!!」
テントのほうから
大きな声が聞こえた。
:09/03/25 05:17 :W61P :☆☆☆
#267 [イリア]
七「?」
猫「…」
麗「…」
狐「おや、まぁ」
テントの中からは
金色の髪の少年が出てきた。
:09/03/25 05:17 :W61P :☆☆☆
#268 [イリア]
狐「狼(ロウ)くん、ただいま♪
ってゆーか、声がでかくて
近所めいわ…「猫!貴様!
何様のつもりだ!
今すぐ麗のそばから離れろ!
半径15メートル以上だ!」
:09/03/25 05:17 :W61P :☆☆☆
#269 [イリア]
猫「もう、煩(ウルサ)いよお前」
狼「何?!もう一回言ってみろ!!」
猫「もう、煩いよお前。」
狼「そのまま言うな!!!
相変わらず腹の立つ奴だ!!!!
麗!!怪我はないか??!!!」
:09/03/25 05:18 :W61P :☆☆☆
#270 [イリア]
そう言うと狼という人は、
私たちのほうに走ってきた。
:09/03/25 05:19 :W61P :☆☆☆
#271 [イリア]
狼「麗、雨が降ってるから
外には出るな、と
言っただろう?」
麗「うるさい触るなどっか行け」
狐「嫌われた〜♪」
猫「嫌われたー」
:09/03/25 05:20 :W61P :☆☆☆
#272 [イリア]
狼「黙れ貴様ら!!!
…それにしてもなんか、
変な匂いが……ん?
何だお前、見ない顔だな。
新入りか?」
七「は、はいっ?!」
私はいきなり声をかけられ
若干声が裏がえりながら答える。
:09/03/25 05:20 :W61P :☆☆☆
#273 [イリア]
狼「何、そう堅くなることはない。
お前もあれだろう?
麗に憧れて入団した口だろう?
いや、分かる。とても分かるぞ。
こんな美人、世界中探しても
二人とはいないだろう。うん。
…それにしても匂うな。
お前ら匂わないのか?
これは確か…雨原の…」
ビクッとする。
しかし―……
:09/03/25 05:21 :W61P :☆☆☆
#274 [イリア]
「あ?そんなことより新入、
お前ところどころ怪我してるな。
小さな怪我でもばい菌が入ると
どえらいことに…ん?血?
……………
……………
――ッッ!!!!お前、雨原????!!!!!」
:09/03/25 05:22 :W61P :☆☆☆
#275 [イリア]
猫「長げぇよ」
麗「遅せぇよ」
狐「…君の将来が
本気で心配だよ、狼くん…」
:09/03/25 05:23 :W61P :☆☆☆
#276 [イリア]
:09/03/25 05:28 :W61P :☆☆☆
#277 [イリア]
>>274 ×〜…新入、
○〜…新入り
すいません(゚д゚)
:09/03/25 12:55 :W61P :☆☆☆
#278 [イリア]
:09/03/25 12:57 :W61P :☆☆☆
#279 [イリア]
狼「やかましい!麗以外!!
―…大体、
どうしてこんなところに
雨原が…」
キッ!
麗さんが狐さんを睨む。
:09/03/25 12:59 :W61P :☆☆☆
#280 [イリア]
麗「狐ッッ!!!!」
狐「え?僕?」
麗「当たり前だ!
何のつもりか知らないが、
こんな奴拾ってくるなんて
お前以外に――…「俺だよ」」
黒猫さんの声が
麗さんの言葉を遮る。
:09/03/25 13:00 :W61P :☆☆☆
#281 [イリア]
麗「―…猫が?」
猫「俺が、拾った。
正確にはスカウトした、だけど。
狐は関係ない」
麗「――……スカウト…?」
麗さんの声が
さっきより2オクターブは
低くなる。
:09/03/25 13:01 :W61P :☆☆☆
#282 [イリア]
……うん、なんか。
なんかもの凄い
勘違いをされてる気がする。
:09/03/25 13:02 :W61P :☆☆☆
#283 [イリア]
七「で、でも私…」
狼「貴様ぁ!
何故今更女をスカウト?!
確かにうちの劇団に女は少ないが、
麗さえいれば特に不都合はな…」
麗「…ご不満、ってわけだ」
:09/03/25 13:02 :W61P :☆☆☆
#284 [イリア]
雨はさっきよりも緩くなり
雨音に邪魔をされることのない
麗さんの声は、
全てが耳に響いてくる。
:09/03/25 13:03 :W61P :☆☆☆
#285 [イリア]
麗「…そういうことでしょ、猫。
私が最近 本番での失敗が多いから
新しい子を連れてきた…
いいわよ別に、仕方ないわ。
情だけで役が貰えるほど、
甘い劇団は嫌い。」
狼「何を言う!
失敗なんてまったく…」
麗「黙ってよ、狼。」
:09/03/25 13:04 :W61P :☆☆☆
#286 [イリア]
狼「いや黙らん!!
猫!!お前が連れてきた女と、麗。
どちらの演技が
この劇団に相応しいか、
今から勝負をしよう!!!!」
:09/03/25 13:05 :W61P :☆☆☆
#287 [イリア]
――……ちょっと、ちょっと、
ちょっと、ちょっと、ちょっと。
何か話がおかしな方向に…
私は誤解を解いて欲しくて、
黒猫さんのほうを見る。
:09/03/25 13:06 :W61P :☆☆☆
#288 [イリア]
クスッ…
私と目が合うと黒猫さんは
それこそ女性と見間違うほど妖艶に、
私に微笑んだ。
:09/03/25 13:07 :W61P :☆☆☆
#289 [イリア]
何この笑い…
もしかして……
すると黒猫さんは少しかがみこみ、
私の耳元で小さな声を出す。
:09/03/25 13:07 :W61P :☆☆☆
#290 [イリア]
:09/03/25 13:08 :W61P :☆☆☆
#291 [イリア]
その甘く優しげな
舞台用であろう声に
思わず顔が赤らむ。
って違うでしょ!//
誰が姫だよ!///
しかもスカウトなんて言うから
二人とも変に誤解して―……
:09/03/25 13:09 :W61P :☆☆☆
#292 [イリア]
狼「……ィ…おい!聞いてるか女!
勝負の内容は――ッッ!!」
言えってか。
私に言えってか!///
相変わらず黒猫さんは
心底おかしそうにしながら
私を見つめている。
:09/03/25 13:09 :W61P :☆☆☆
#293 [イリア]
狼「―じゃあさっそく、
今から「違います!!////」」
今度は私の声が響いた。
響いたっていうか、
轟(トドロ)いたっていうか。
:09/03/25 13:10 :W61P :☆☆☆
#294 [イリア]
狼「……何が違う!!」
七「こ、こ、これ以上話が
大きくなる前に、
言っときたいんですけど!!//」
:09/03/25 13:12 :W61P :☆☆☆
#295 [イリア]
狼.麗「?」
七「私…私、女優としてスカウト
されたんじゃないんです!!//」
:09/03/25 13:12 :W61P :☆☆☆
#296 [イリア]
―――…………言ってしまった//
黒猫さんと狐さんは
口に手をあて、
声を出さずに笑っている。
:09/03/25 13:12 :W61P :☆☆☆
#297 [イリア]
麗「―…何のつもりだ?
苦し紛れの言い訳か?
なら、何なんだ。猫はお前を
なんのつもりで…「お、お、大道具!」」
:09/03/25 13:14 :W61P :☆☆☆
#298 [イリア]
今度こそ本当に
私の声があたり一面に轟く。
麗さん、狼さんが
呆然と私を見ているのが分かる。
:09/03/25 13:14 :W61P :☆☆☆
#299 [イリア]
七「も、もしくはお茶くみ!
あ!あと、
狐さんのアシスタントってのも
アリみたいです!!//
何のアシスタントかは
知らないんですけど!!//」
:09/03/25 13:15 :W61P :☆☆☆
#300 [イリア]
カァ…―
言ってすぐ、恥ずかしくなる。
別に恥ずかしくなる必要は
ないのかもだけど、
大道具にスカウトされた私って…涙
:09/03/25 13:16 :W61P :☆☆☆
#301 [イリア]
猫「アハハハハハハ!!」
狐「ぎゃーはっはっはっ!!!
いいねーいいねー七衣ちゃん★
あ、ちなみに僕は
監督 兼 脚本家だから♪」
:09/03/25 13:16 :W61P :☆☆☆
#302 [イリア]
伏せていた目線を上げる。
黒猫さんはいつの間にか
私の前から横に移動してて、
麗さんともろに目があった。
:09/03/25 13:17 :W61P :☆☆☆
#303 [イリア]
麗「―…大道具……?」
七「…あ…はい、私演技とか…
やったことないし…」
猫「そう、大道具…クスッ
いいだろ?ちょうど
人出も足りてないし。」
:09/03/25 13:17 :W61P :☆☆☆
#304 [イリア]
麗「――……」
狼「何だ、大道具か。
どうりでオーラがないと思った。」
あ、何かこの人 素で失礼。
:09/03/25 13:18 :W61P :☆☆☆
#305 [イリア]
狼「しかし!猫!お前はいつから
大道具のスカウトマンになった??!!」
猫「フフン、こいつ記憶がないんだ
自分のこと、名前しか覚えてない」
七「あ、七衣です。」
:09/03/25 13:19 :W61P :☆☆☆
#306 [イリア]
狼「え、そんなわざわざ…
俺は狼だ。好きに呼んでくれ!!
―……じゃ、なく!!!!!!!!」
キ――ン…
この人、声大きいよ…
:09/03/25 13:19 :W61P :☆☆☆
#307 [イリア]
狼「だ、そうだ!麗!!
やはりこの劇団の
トップ女優はお前しかいない!!
当たり前だがなッ!!!!」
猫「どう?麗。
雨原だけど、よく
働いてくれるみたいだよ」
そんなこと一言も
言った覚えありませんけど。
:09/03/25 13:20 :W61P :☆☆☆
#308 [イリア]
麗「…でも…雨原…」
猫「俺たちもこいつも、
妖に嫌われてる点では同じだ。
面倒は俺が見る。」
:09/03/25 13:21 :W61P :☆☆☆
#309 [イリア]
狐「ほらほら!ネコくんが
ここまで言ってるんだし、
いいじゃない別に。
それに雨原一人抱えたところで
潰れるほど、
うちの劇団は弱くないよ♪」
:09/03/25 13:21 :W61P :☆☆☆
#310 [イリア]
みんなの視線が麗さんに
向けられる。
…色々あって、今初めて
ちゃんと顔見るけど…
綺麗な人だなぁ。
:09/03/25 13:22 :W61P :☆☆☆
#311 [イリア]
狼さんだって
黒猫さんとは違うタイプの
美男子だし。
この劇団には
美男美女しかいないのかな。
:09/03/25 13:23 :W61P :☆☆☆
#312 [イリア]
猫「――…麗?」
黒猫さんがまた
綺麗な声を響かせる。
―…みんなが演技してるとこ、
見てみたいな。
:09/03/25 13:24 :W61P :☆☆☆
#313 [イリア]
麗「――……ッッ!!
…好きにしろ………」
ザッ
そのまま私たちを追い越し、
麗さんは
林のほうに歩いて行く。
:09/03/25 13:24 :W61P :☆☆☆
#314 [イリア]
狼「おい!麗!待て!!
…それじゃあな、新入り!
そこの悪魔に喰われない用、
注意しろよ!!」
:09/03/25 13:25 :W61P :☆☆☆
#315 [イリア]
猫「何それ?俺のこと?」
狼「お前以外に誰がいる、この性悪。
ふっ、まぁいいさ。お前はせいぜい
この女のお守りでもしてるんだな。
次の舞台の主役は、
必ずや俺と麗が頂く!!!!!!」
:09/03/25 13:26 :W61P :☆☆☆
#316 [イリア]
そう言うと狼さんは
麗さんの後を追い
林の中に走って消えた。
:09/03/25 13:26 :W61P :☆☆☆
#317 [イリア]
猫「ほざいてろ、カス。」
黒猫さんがその言葉を
いい終わると同時に、
テントの中から
大きな拍手が聞こえた。
中から続々と人が出てくる。
:09/03/25 13:27 :W61P :☆☆☆
#318 [イリア]
「いやぁ凄かったね!」
「今日の麗ちゃん機嫌悪いから
気にしないほうがいいよっ」
「狼は相変わらず、
馬鹿だよな〜」
「ね〜本当に雨原一族なの〜?」
「大道具!おもしろ〜い///」
一斉にみんなが私に話しかけてきた。
:09/03/25 13:29 :W61P :☆☆☆
#319 [イリア]
七「え?え?…え?」
猫「…そんな一斉に
喋るなよ、話は聞いてたな?」
:09/03/25 13:30 :W61P :☆☆☆
#320 [イリア]
「聞いてた聞いてたっ★
僕らは別に、雨原一族
敵だとは思ってないしねー」
「裏切り上等☆
一緒に悪い妖を
退治しましょ♪」
予想外の反応に
思わず笑みがこぼれる。
:09/03/25 13:31 :W61P :☆☆☆
#321 [イリア]
狐「ね♪とりあえず、
雨原ってだけで
君を嫌いになるような人は、
ここにはいないよ☆」
七「…み、みなさん
半妖なんですか?」
「そーだよ〜ん♪」
:09/03/25 13:31 :W61P :☆☆☆
#322 [イリア]
:09/03/25 13:31 :W61P :☆☆☆
#323 [イリア]
狐「僕やネコくんみたいに、
動物の名前で呼ばれてる子もいるし
麗ちゃんみたいに
普通の名前で呼ばれる子もいる。
まぁそこら辺は適当だけど、
とりあえずみんな半妖なんだ」
:09/03/25 13:32 :W61P :☆☆☆
#324 [イリア]
難しい…
みんな動物名で呼ばれてるかと
思ってた。
あぁでも狐さんにしても
狐の半妖なんて
たくさんいるだろうし、
名前がなくて不便じゃないのかな?
…でも今は、そんなことより…
:09/03/25 13:34 :W61P :☆☆☆
#325 [イリア]
:09/03/25 13:34 :W61P :☆☆☆
#326 [イリア]
猫「…フン、まぁ人間は
あんただけだけど、
雨原一族なんて妖に近いもんだし
気にしなくていいんじゃない?」
慰めてるつもりなのか、
黒猫さんが私に言う。
:09/03/25 13:34 :W61P :☆☆☆
#327 [イリア]
狐「そうそう!
ぶっちゃけ能力一族なんか
見た目以外は妖だよね〜」
七「能力一族?」
:09/03/25 13:36 :W61P :☆☆☆
#328 [イリア]
狐「うん。あ、知らないか。
雨原一族みたいな
特殊な力を持つ一族のこと。
雨を呼べたりするなんて
もう普通の人間じゃないもんね〜」
:09/03/25 13:36 :W61P :☆☆☆
#329 [イリア]
「他にも炎を操れる火日谷一族や
風を操れる風宮一族なんかがあるよ」
―…なんか、改めて
凄い世界に
来ちゃったな。
:09/03/25 13:37 :W61P :☆☆☆
#330 [イリア]
狐「はいはいはい!」
パンパンパン
声に合わせて狐さんが
手を叩く。
:09/03/25 13:37 :W61P :☆☆☆
#331 [イリア]
狐「お喋りはそこまで!
みなさん明日が何の日かお忘れ?
…明日から一週間、この街で
講演するんでしょ!
練習しなくていいのかな?
それとも台詞(セリフ)全部
覚えたのかなあ…?」
:09/03/25 13:38 :W61P :☆☆☆
#332 [イリア]
全員「―…ッッ!!ま、まだ……汗」
狐「じゃあ、早く練習!
雨も上がった!!
10分後に裏テント前集合!」
全員「は、はい!団長!!」
:09/03/25 13:38 :W61P :☆☆☆
#333 [イリア]
その声と同時に
みんなバタバタと
テントの中に入っていく。
:09/03/25 13:39 :W61P :☆☆☆
#334 [イリア]
猫「フフン、あいつらに
覚えるような台詞、あったっけ?」
狐「君は本当に毒舌だねぇ。」
:09/03/25 13:39 :W61P :☆☆☆
#335 [イリア]
七「…狐さんて、
本当に団長だったんですねぇ…」
何気なく言った私の一言に
狐さんが泣きそうな声をあげる。
:09/03/25 13:40 :W61P :☆☆☆
#336 [イリア]
狐「七衣ちゃん?!
それ、どういう意味??!
僕、団長に見えない??!涙」
七「あ、ごめんなさいごめんなさい!
見えました!今、見えました!
―…ところで」
:09/03/25 13:41 :W61P :☆☆☆
#337 [イリア]
:09/03/25 13:42 :W61P :☆☆☆
#338 [イリア]
七「―…麗さん、戻ってきませんね。
狼さんも追いかけてったままだし…」
:09/03/25 13:42 :W61P :☆☆☆
#339 [イリア]
猫「フン、まぁあんたが
気にすることないよ、
麗は人間が嫌いなだけ。」
狐「そしてロウくんは、
麗ちゃんが好きなだけ。
大丈夫あの二人なら
明日の台詞も完璧だろうし、
もしさっきみたいな鬼が出ても
ロウくんがいれば何とでもなる」
:09/03/25 13:43 :W61P :☆☆☆
#340 [イリア]
七「…はぁ」
猫「ほら、それより狐。10分だ。
さっさと行け、来い七衣。
一通りテントの中説明しとく」
:09/03/25 13:44 :W61P :☆☆☆
#341 [イリア]
狐「あーはいはい。
そんなに僕が邪魔ですか。
いいもん、いいもん。
じゃあ後でね七衣ちゃん♪
気楽にね…これからは」
:09/03/25 13:44 :W61P :☆☆☆
#342 [イリア]
狐「…ここが君の、家なんだから。」
家…
狐さんのその一言に、
自然と顔がほころぶ。
:09/03/25 13:45 :W61P :☆☆☆
#343 [イリア]
狐「僕のことは兄だと思って
何でも相談してくれたまえ、妹よ!!」
猫「父の間違いじゃないの?
行くぞ、七衣」
:09/03/25 13:45 :W61P :☆☆☆
#344 [イリア]
:09/03/25 13:46 :W61P :☆☆☆
#345 [イリア]
:09/03/25 13:53 :W61P :☆☆☆
#346 [イリア]
:09/03/25 22:42 :W61P :☆☆☆
#347 [イリア]
赤く滑らかな布をめくり
黒猫さんがテントの中に入る。
私も後を追い、入ってみる。
七「―…うわぁ…」
:09/03/25 22:42 :W61P :☆☆☆
#348 [イリア]
見えたのは、本当にテントの中かと
疑いたくなるほど、広い空間。
ちゃんとたくさんの区切りもある。
:09/03/25 22:43 :W61P :☆☆☆
#349 [イリア]
七「――…広いんですね…」
猫「普通の家みたいだろ?
うちの劇団の大道具、
腕が良くてさ。
何でもできるんだよな。
ほら、この仕切り。
1人1人個室が与えられるんだ。」
:09/03/25 22:43 :W61P :☆☆☆
#350 [イリア]
コンコン…
黒猫さんが、仕切りを軽く叩く。
廊下のようなものがあり
左右に扉が見える。
七「―…移動劇団、でしたよね…?」
:09/03/25 22:44 :W61P :☆☆☆
#351 [イリア]
猫「そう、滞在期間は
短くて一週間。
長くて一月くらいかな。
同じとこにずっといるのは」
危険だし。」
七「…毎回こんな
ばかでっかい
テント建てるんですか?」
:09/03/25 22:45 :W61P :☆☆☆
#352 [イリア]
猫「建てなきゃ、寝るとこないけど?」
黒猫さんがクスッと笑う。
:09/03/25 22:45 :W61P :☆☆☆
#353 [イリア]
猫「…って、言っても
俺たち役者はノータッチだけどな。
大体は稽古してる間に、
大道具の奴らが建てる。」
七「―…大道具…」
猫「あんたも次から、頑張って?」
黒猫さんがまた笑う。
:09/03/25 22:46 :W61P :☆☆☆
#354 [イリア]
…てか、無理でしょ!
だってもうテントじゃないもん!
家だよ、家!!
こんなの移動するたびに
建ててる大道具の人って一体……
:09/03/25 22:47 :W61P :☆☆☆
#355 [イリア]
猫「そうそう、
アスタリスク劇団はあんた入れて56人。
そのうち15人が役者で
12人が役者のマネージャー。
んで、狐が監督 兼 脚本家。
後はみんな大道具だけど、
男ばっかだから気をつけろよ」
:09/03/25 22:47 :W61P :☆☆☆
#356 [イリア]
―…いや、男ばっかって!
力仕事だからな〜と言う
黒猫さんの声が聞こえる。
何で私スカウトされたんだろ?
力とかないんですけど…
しかも、男の人ばっかって…
:09/03/25 22:48 :W61P :☆☆☆
#357 [イリア]
無意識に半泣きになった私を見て
黒猫さんが目を細める。
猫「―…ねぇ、七衣?」
七「え?あ、はい?」
:09/03/25 22:48 :W61P :☆☆☆
#358 [イリア]
少し上を見上げ、
黒猫さんと目を合わせる。
猫「…大道具って、大変だと思わない?
女の子がする仕事じゃないよ」
:09/03/25 22:48 :W61P :☆☆☆
#359 [イリア]
そう言うと黒猫さんは
私の横の壁に手をつけ、
私は黒猫さんと壁に
挟まれた感じになった。
:09/03/25 22:49 :W61P :☆☆☆
#360 [イリア]
:09/03/25 22:49 :W61P :☆☆☆
#361 [イリア]
すぐ目の前にある綺麗な顔に
鼓動が速まり、
頬が熱くなるのが分かる。
:09/03/25 22:49 :W61P :☆☆☆
#362 [イリア]
赤くなっているだろう顔を
見られたくなくて、
私は自分の顔を慌てて下に向けた。
:09/03/25 22:51 :W61P :☆☆☆
#363 [イリア]
猫「…クスッ…何で下見るの…?」
七「―…ッッ////べ、別に?
そ、それより近いんですけど。」
:09/03/25 22:51 :W61P :☆☆☆
#364 [イリア]
猫「――……2回」
七「え?な、何がですか?」
猫「……3回」
七「だ、だから何の回数ですか?!//
全然意味が…」
:09/03/25 22:51 :W61P :☆☆☆
#365 [イリア]
猫「…4回。
あんたがどもった回数。
あんた、よくどもるよね、
役者には向いてないかな」
そう言って黒猫さんはまた笑う。
:09/03/25 22:52 :W61P :☆☆☆
#366 [イリア]
カァ―
今度こそ本当に顔が赤くなった。
七「べ、別に私だって
いっつもどもってる訳じゃないし!
てゆーか、誰がどもらせてると…」
猫「―…誰?」
七「……//」
:09/03/25 22:52 :W61P :☆☆☆
#367 [イリア]
綺麗な顔が覗き込んでくる。
上を見れば、唇が
触れてしまいそうな距離。
:09/03/25 22:53 :W61P :☆☆☆
#368 [イリア]
七「だ、誰でもありませんよ!//
それより近いです!!近い!!!//」
猫「――……失礼、姫」
:09/03/25 22:53 :W61P :☆☆☆
#369 [イリア]
黒猫さんが私から少し離れる。
…少しだけ、寂しく感じた。
:09/03/25 22:54 :W61P :☆☆☆
#370 [イリア]
:09/03/25 22:55 :W61P :☆☆☆
#371 [イリア]
七「あ……その!!
姫っていうのやめてくれません?!
私に姫に似合いませんし…///」
少しでも寂しくなったなんて
知られたくなく、
私は慌てて
今思っただけのことを言う。
:09/03/25 22:55 :W61P :☆☆☆
#372 [イリア]
>>371×私に姫に〜…
○私に姫は〜…
すいません(´;ω;`)
:09/03/25 22:56 :W61P :☆☆☆
#373 [イリア]
猫「―…なら、あんたも
俺のこと黒猫さん、っての
辞めるくれる?」
七「…え?」
予想外の返答に、思わず聞き返す。
:09/03/25 22:57 :W61P :☆☆☆
#374 [イリア]
猫「―…なんていうか、
他人行儀だよね。
そりゃ確かに
好きに呼べとは言ったけど。
猫、でいいよ」
七「…え…いや、
呼び捨てはちょっと…」
:09/03/25 22:58 :W61P :☆☆☆
#375 [イリア]
:09/03/25 22:58 :W61P :☆☆☆
#376 [イリア]
猫「あんた、何歳だっけ?」
七「…よく覚えてないけど…
16くらい……?」
猫「本当だ、俺は18だから。
まぁ、別にいいよ?」
:09/03/25 22:59 :W61P :☆☆☆
#377 [イリア]
七「私がよくないです!!//
………じゃあ」
また、目をそらしてしまう。
私が麗さんみたいに綺麗だったら
ちゃんと目を見て話せるのかな?
:09/03/25 22:59 :W61P :☆☆☆
#378 [イリア]
七「―…猫さん、って呼びます。」
黒猫さんは少し不満そうに
鼻を鳴らしたが、
まぁ今はいっか、と言うと
私を置いて歩き出した。
:09/03/25 23:00 :W61P :☆☆☆
#379 [イリア]
七「あ、待って下さい!!」
猫「これが言いたかっただけなんだ。
黒猫さんて、呼びづらそうで。
あんた、風呂入ってきなよ。
そこを左にずっと行くと
大浴場があるから。
着替えは劇団の服が
置いてあると思うし。」
:09/03/25 23:02 :W61P :☆☆☆
#380 [イリア]
何で移動テントの中に
風呂があるんだよというつっこみは
とりあえず置いておいて…
歩き出す黒猫さんに質問をする。
:09/03/25 23:03 :W61P :☆☆☆
#381 [イリア]
七「…あの!!
ずっと気になってたんですけど!!」
猫「?」
七「―…何で初めて会ったとき、
あんなに傷だらけだったんですか??」
:09/03/25 23:03 :W61P :☆☆☆
#382 [イリア]
黒猫さんが足を止める。
ゆっくりと私のほうに振り向いた。
:09/03/25 23:03 :W61P :☆☆☆
#383 [イリア]
七「…あ…言いたくなかったら、
いいんですけど……」
風が吹く。
あ、やっぱりここは
テントの中なんだ。
自然なままの、風を感じる。
:09/03/25 23:04 :W61P :☆☆☆
#384 [イリア]
七「…………?」
猫「―…何でだったかな。
まぁ、あんたには関係ないよ」
:09/03/25 23:04 :W61P :☆☆☆
#385 [イリア]
関係ない
その言葉を聞いたとき、
何故か懐かしい感じがした。
その後すぐ、さっきよりも
ずっと大きい寂しさを感じ、
思わず下を向く。
:09/03/25 23:05 :W61P :☆☆☆
#386 [イリア]
分かってる。私と猫さんは
さっき会ったばっかりで。
まだお互いのこと
ほとんど知らなくて。
私は猫さんのこと
もっともっと知りたいけど、
猫さんはそんなこと、望んでなくて。
:09/03/25 23:06 :W61P :☆☆☆
#387 [イリア]
私と猫さんは
関係あることより
関係ないことのほうが
ずっと、ずっと多くて。
:09/03/25 23:06 :W61P :☆☆☆
#388 [イリア]
:09/03/25 23:07 :W61P :☆☆☆
#389 [イリア]
猫「―…悪い、言い方きつかった?
そんな顔すんなよ…」
どんな顔をしてるんだろう。
そういえば私の顔って、
どんなんだったっけ?
:09/03/25 23:07 :W61P :☆☆☆
#390 [イリア]
猫「…あの怪我は、
もう大丈夫なんだ。
あんたが川で癒やしてくれたから。
気にしなくていい…
…そういう意味だよ」
:09/03/25 23:08 :W61P :☆☆☆
#391 [イリア]
もう、大丈夫。
今はそれだけ知ってれば
十分なのかも知れない。
:09/03/25 23:08 :W61P :☆☆☆
#392 [イリア]
七「…うん…」
そう考えると、少し寂しさが消える。
口元を緩めた私を見て、
黒猫さんもクスッと笑う。
:09/03/25 23:08 :W61P :☆☆☆
#393 [イリア]
猫「ほら、さっさと風呂行け。
結構広い大浴場だけど
誰か入ってないか
一応確認しろよ?」
七「…はいっ!」
:09/03/25 23:09 :W61P :☆☆☆
#394 [イリア]
猫「じゃ、俺も稽古見てくるわ。
いま大道具の奴らが飯作ってるから
今から風呂入れば丁度いいよ。」
七「大道具って…
…ご飯もつくるんですか?汗」
猫「クスッ 別名、何でも屋」
大変そうだ…
:09/03/25 23:10 :W61P :☆☆☆
#395 [イリア]
猫「まぁ、まだ何も
分かんねーだろうし、
姫君が湯浴みを終えられた頃に
お迎えに上がりますよ」
七「また、姫って言った。」
:09/03/25 23:11 :W61P :☆☆☆
#396 [イリア]
猫「今度は、姫君だよ」
猫さんが笑う。
じゃ、後で
そう言って猫さんがまた歩き出す。
私も言われたとおり
左ひ向かって歩く。
:09/03/25 23:11 :W61P :☆☆☆
#397 [イリア]
>>396×左ひ向かって歩く。
○左に向かって歩く。
すいません(・ω・`)
:09/03/25 23:12 :W61P :☆☆☆
#398 [イリア]
猫「――……七衣!」
七「?」
猫さんは入り口の布をめくりながら
私の名前を呼んだ。
:09/03/25 23:13 :W61P :☆☆☆
#399 [イリア]
猫「―……やっぱあんた、
俺のマネージャーにするわ。」
七「……ふぇっ?」
:09/03/25 23:13 :W61P :☆☆☆
#400 [イリア]
猫「さっき役者が15人、
マネージャーが12人って
言っただろ。あれ、
俺と狼と麗は
マネージャーなんかいらねって言って
つけてなかったんだ。
…でもやっぱ、いたほうが便利かな。
色んな劇を、同時に
練習することもあるし
スケジュールとか覚えんのたるくて。
遅刻したら狐がうるさいし。
――……だから」
:09/03/25 23:14 :W61P :☆☆☆
#401 [イリア]
そこまで言って猫さんは
一度呼吸をする。
猫「…あんたに任せるわ」
七「…はぁ………えッッ?!!」
:09/03/25 23:16 :W61P :☆☆☆
#402 [イリア]
猫「フフン、よく考えたらさ。
あんたみたいなひょろっちぃ奴、
大道具になんか回したら
俺が怒られるし。」
:09/03/25 23:16 :W61P :☆☆☆
#403 [イリア]
喜んでいいのか。
慌てればいいのか。
私が猫さんのマネージャー…?
でも猫さんて確か
この劇団で一番人気じゃ……?
:09/03/25 23:17 :W61P :☆☆☆
#404 [イリア]
猫さんがまた、クスッと笑う。
猫「じゃ、よろしく、マネージャー♪」
七「え―――ッッ??!!」
:09/03/25 23:17 :W61P :☆☆☆
#405 [イリア]
私の驚きの声も虚しく、
猫さんはヒラリと手をふると
今度こそ本当に
テントから出て行った。
:09/03/25 23:18 :W61P :☆☆☆
#406 [イリア]
猫さんのマネージャー…
猫さんのマネージャー…??//
できるのかな、私に。
まぁ大道具よりは
向いてるかなあ。
:09/03/25 23:18 :W61P :☆☆☆
#407 [イリア]
そんなことを考えながら足を進める。
すると 大浴場、と書かれた看板が
前のほうに見えた。
:09/03/25 23:18 :W61P :☆☆☆
#408 [イリア]
…さっきの川の水を
持ってきてるのかな。
ってゆうか、大浴場て
本当にホテルみたいだなー
:09/03/25 23:19 :W61P :☆☆☆
#409 [イリア]
赤いシルクののれんを
くぐり、中に入る。
服を脱ぐと、狼さんの言うとおり
いたるところから
少量の血が出ていた。
:09/03/25 23:19 :W61P :☆☆☆
#410 [イリア]
いつの傷だろう。
まったく覚えてない。
初め目覚めたときの
他人の血を体につけていた
自分を思い出し、
今更ながら怖くなる。
:09/03/25 23:20 :W61P :☆☆☆
#411 [イリア]
全部、全部思い出す日がきたとき、
私は今と変わらず
猫さんや狐さんと
いられるのだろうか。
:09/03/25 23:21 :W61P :☆☆☆
#412 [イリア]
服を全部脱ぎ終わると、
タオルだけ持って
浴槽に繋がる扉を開ける。
:09/03/25 23:21 :W61P :☆☆☆
#413 [イリア]
湯気であまり見えなかったが
広いことは分かる。
私が扉を開けたことにより
中の温度が下がり、
少しずつ中の様子が
露(アラワ)わになった。
:09/03/25 23:21 :W61P :☆☆☆
#414 [イリア]
七「―…うわー広いっ
やっぱ絶対
この劇団お金持ち……」
ガタンッ!!!
?
浴槽の近くで音がする。
不思議に思いその方向を見ると―…
:09/03/25 23:22 :W61P :☆☆☆
#415 [イリア]
七「――……あ……」
知ってる人の顔。
だけど、体には無数の痣(アザ)。
:09/03/25 23:22 :W61P :☆☆☆
#416 [イリア]
:09/03/25 23:23 :W61P :☆☆☆
#417 [イリア]
向こうも突然のことに
相当驚いているようだ。
数秒目を合わせたあと、
私は麗さんの体の痣を見る。
:09/03/25 23:23 :W61P :☆☆☆
#418 [イリア]
七「―…それ…痣ですよね…?
…大丈夫ですか……?」
麗「―…ッッ!!……黙れ…!!」
やはり怒ってる。
:09/03/25 23:23 :W61P :☆☆☆
#419 [イリア]
ど、ど、どうしよう。
出たほうがいいかな、でも…!!
:09/03/25 23:24 :W61P :☆☆☆
#420 [イリア]
七「本当に大丈夫ですか…?
誰か…呼んできましょうか?」
麗「…うるさいッッ!!
私に話しかけるな!!人間!!!!」
:09/03/25 23:25 :W61P :☆☆☆
#421 [イリア]
タッ
麗さんが走って私の横を通り、
浴室から出ていく。
:09/03/25 23:25 :W61P :☆☆☆
#422 [イリア]
――……誰か入ってないか
一応確認しろよ―……
今更、さっきの猫さんの言葉が
頭に響く。
:09/03/25 23:25 :W61P :☆☆☆
#423 [イリア]
あの痣、いつのだろう。
誰かに言ったほうがいいのかな。
…また、麗さんに嫌われちゃった。
:09/03/25 23:26 :W61P :☆☆☆
#424 [イリア]
同い年くらいの女の子。
仲良くなりたいけど、
いまいちどうすればいいのか
分からない。
:09/03/25 23:26 :W61P :☆☆☆
#425 [イリア]
七「―…波乱万丈な、1日だ。」
私はそう言って、湯船にはつからず
シャワーだけ浴びると浴室を出た。
:09/03/25 23:27 :W61P :☆☆☆
#426 [イリア]
:09/03/25 23:28 :W61P :☆☆☆
#427 [める◆z..07vKEZg]
あっがれ〜\(^O^)/
あげときまっす☆゙
:09/03/26 21:32 :N906imyu :☆☆☆
#428 [むー]
あげー
:09/03/27 12:07 :SH903i :☆☆☆
#429 [イリア]
>>427メル様★
>>428むー様★
(´;ω;`)
(´;ω;`)
(´;ω;`)←
あげ有難うございます!
密かにむちゃくちゃ憧れてたので、
もう嬉しすぎて半泣きです!←
携帯のメモ帳に
先に打ち込んでるんですが、
書き出したら
止まんなくなっちゃって(゚∀゚)笑
今から大量(?)に更新します!
あげ有難うございました★★
:09/03/27 12:29 :W61P :☆☆☆
#430 [イリア]
:09/03/27 12:30 :W61P :☆☆☆
#431 [イリア]
浴室から出ると、
まだ猫さんの姿はなかった。
傷にしみそうで、
お湯には浸かってない。
猫さんと別れてから
まだ15分くらいなので
迎えはまだだろう。
:09/03/27 12:31 :W61P :☆☆☆
#432 [イリア]
七「勝手に外 出てていいかなー
でも猫さん迎えにきてくれるって
言ってたし……
……それにしても」
:09/03/27 12:32 :W61P :☆☆☆
#433 [イリア]
自分の着ている服を見る。
着てた服はボロボロだったので、
言われたとおり
置いてある服を借りた。
そこには、アスタリスク劇団☆!!と
大きな文字で書かれてある。
:09/03/27 12:32 :W61P :☆☆☆
#434 [イリア]
七「…恥ずかしいTシャツだな…
まぁ借りてるし文句は言えないけど」
壁に背をつけ、座りこむ。
ふと、さっきの麗さんを思い出した。
:09/03/27 12:33 :W61P :☆☆☆
#435 [イリア]
あの痣…舞台の練習でついたのかな?
だとしたら、あんまり
人に言わないほうがいいのかな…
余計なことして…
:09/03/27 12:33 :W61P :☆☆☆
#436 [イリア]
七「…これ以上、
嫌われたくないしなぁ…」
狼「誰にだ?」
七「誰って、麗さん―…」
――……ん?
:09/03/27 12:33 :W61P :☆☆☆
#437 [イリア]
上を見上げる。
金髪赤目の、知ってる顔。
七「―…ッッ?!!狼さん??!!」
慌てて立ち上がる。
:09/03/27 12:34 :W61P :☆☆☆
#438 [イリア]
狼「―…おい!新入り!!
お前声が大きいぞ!!
俺が何かしたと思われるではないか!」
――いや、狼さんのほうが、大きいし。
:09/03/27 12:34 :W61P :☆☆☆
#439 [イリア]
七「…あ、すいません…って、
何してるんですか?
ここ女湯の前ですよ?」
私が問う。
すると狼さんは
腕を組みかえながらこう言った。
:09/03/27 12:35 :W61P :☆☆☆
#440 [イリア]
狼「いや、何。
あのあと雨が降りそうだったから
すぐ麗をつれて帰ってきたんだ。
まだお前らが入り口で喋くってたから
裏口から入ったがな。
それで、麗はすぐ風呂に行ったんで
もうすぐ飯だし、迎えにきた。」
:09/03/27 12:36 :W61P :☆☆☆
#441 [イリア]
そう言うと狼さんは
ニカッと笑って、白い歯を覗かせる。
七「……本当に狼さんは、
麗さんが好きなんですねぇ」
狼「ふん!当たり前だ!!
あいつは俺にとっての
運命の人だからな!!」
:09/03/27 12:36 :W61P :☆☆☆
#442 [イリア]
―…いいなぁ。
こんなかっこ良くて、
一途な人に想われてる麗さんは
幸せものだと思う。
:09/03/27 12:37 :W61P :☆☆☆
#443 [イリア]
七「麗さん、綺麗ですもんね」
狼「そうだろうそうだろう??!!
まぁ俺は顔に惚れてるわけじゃ
ないけどな!!
あいつの人間性に惚れてる!!」
口もとがほころぶ。
狼さんて本当、真っ直ぐだ。
:09/03/27 12:37 :W61P :☆☆☆
#444 [イリア]
狼「―…ところで、さっきの。
まぁあんまり気にするなよ。
最近麗は…元気ないから」
そう言うと狼さんは
悲しそうな顔をした。
七「…元気がない?」
:09/03/27 12:37 :W61P :☆☆☆
#445 [イリア]
狼「あぁ、あいつ本当は
もっと笑う奴なんだ。
でも最近はまったく笑わないし、
食欲も少ない。…心配でな。
過保護かもしれんが、
そういうときは、
出来るだけ離れたくない。」
狼さんが意志ある強い瞳で私を見た。
:09/03/27 12:39 :W61P :☆☆☆
#446 [イリア]
狼「新入りも、
最初は大変かもしれんが
必ず仲良くなれる。
まぁ積極的に話しかけることだな!!」
:09/03/27 12:39 :W61P :☆☆☆
#447 [イリア]
狼さんが笑う。
……この人だったら、
麗さんの痣のこと知ってるかな?
もし知らないなら、
教えといたほうがいいよね。
:09/03/27 12:39 :W61P :☆☆☆
#448 [イリア]
七「――……あの、狼さん……」
麗「狼ッッ!!!!!!」
:09/03/27 12:40 :W61P :☆☆☆
#449 [イリア]
遠くのほうで声がした。
その声の持ち主は、ゆっくりと
私たちのほうに歩いてくる。
:09/03/27 12:40 :W61P :☆☆☆
#450 [イリア]
七「―…麗さん。」
狼「おぉ!何だ麗!!
もう風呂から出てたのか!!
迎えにきてたんだ、飯にしよう!!」
狼さんが満面の笑みで、
麗さんに話しかける。
:09/03/27 12:40 :W61P :☆☆☆
#451 [イリア]
麗「―…狐があんたを呼んでる。
明日からの舞台の台詞(セリフ)で
少し変更があったの。
すぐに裏テント前に来てって。」
:09/03/27 12:41 :W61P :☆☆☆
#452 [イリア]
狼「何?!またか!!!
舞台は明日だぞ!!
今更 台詞の変更とは、狐め…
では、先に行っとく!!
ちょうどいい、麗!!
新入りを飯場まで
案内してやってくれ!!
今日もいつも通り
川の近くの広場だ!!」
:09/03/27 12:42 :W61P :☆☆☆
#453 [イリア]
そう言って狼さんは
私をチラッと見て微笑むと
走ってテントの外に向かった。
:09/03/27 12:43 :W61P :☆☆☆
#454 [イリア]
私と麗さんを、仲良くさせようと
してくれてるのかな?
でも、猫さんが迎えにきてくれるし、
どうしよう…っていうか
:09/03/27 12:43 :W61P :☆☆☆
#455 [イリア]
:09/03/27 12:44 :W61P :☆☆☆
#456 [イリア]
麗さんは一言も喋らない。
どうしようどうしよう。
私から喋っていいかな?
でも今さっき
私に話しかけるな!!って
怒鳴られたばっかだし……
:09/03/27 12:44 :W61P :☆☆☆
#457 [イリア]
:09/03/27 12:44 :W61P :☆☆☆
#458 [イリア]
七「……あの…麗さん?
私は、猫さんが
迎えにきてくれるって言ってて…
入れ違いになったら困るし、
ここで待ちます…だから先に、
どうぞご飯に「喋ったか?」」
麗さんと私の声が重なる。
:09/03/27 12:45 :W61P :☆☆☆
#459 [イリア]
七「…は、はい?…何を…?」
麗「私の体の痣のこと、
狼に喋ったのか?」
:09/03/27 12:45 :W61P :☆☆☆
#460 [イリア]
いやそれは、喋ろうとしたら
麗さんがきたので…
七「…話してませんけど…」
麗「――…」
:09/03/27 12:45 :W61P :☆☆☆
#461 [イリア]
麗さんは不思議な顔をしている。
悲しいような、安堵(アンド)したような。
:09/03/27 12:46 :W61P :☆☆☆
#462 [イリア]
七「麗さん…?」
麗「…何でもない。
話すなよ、ただの怪我だから。
絶対に、誰にも言うな。」
:09/03/27 12:46 :W61P :☆☆☆
#463 [イリア]
そう言うと
さっきの表情とは別人のような顔で
私を睨み、歩き出す。
:09/03/27 12:47 :W61P :☆☆☆
#464 [イリア]
七「…あ、待って!!」
麗「……?何だ……」
七「な、七衣です!!」
麗「……は?」
:09/03/27 12:48 :W61P :☆☆☆
#465 [イリア]
七「な、名前!!
七衣って言います!!!!
今日からこの劇団で
お世話になります!!
あ、それから
大道具のはずだったんですけど
今さっき、猫さんの
マネージャーになりました!!」
:09/03/27 12:48 :W61P :☆☆☆
#466 [イリア]
:09/03/27 12:48 :W61P :☆☆☆
#467 [イリア]
麗「―…だから、何なんだ。
お前が大道具だろうと、
猫のマネージャーだろうと…
私には関係ない」
七「そうなんですけど…」
:09/03/27 12:49 :W61P :☆☆☆
#468 [イリア]
麗「狐がお前を、この劇団に
入れることを認めた。
反対はしない。だけど
私には関わるな」
冷たい麗さんの声が響く。
その目に、顔に、
思わず怯(ヒル)んでしまいそうになる。
:09/03/27 12:49 :W61P :☆☆☆
#469 [イリア]
最初は大変かもしれんが
必ず仲良くなれる――………
さっきの狼さんの声が頭に響く。
:09/03/27 12:50 :W61P :☆☆☆
#470 [イリア]
―…ここで諦めたら、
せっかく優しい言葉をくれた
狼さんに申し訳ない!!!!
:09/03/27 12:50 :W61P :☆☆☆
#471 [イリア]
七「―…!!…麗さんッッ!!!!」
麗「…何だ…まだ何か「私!!」」
麗さんの声に、私の声を被せる。
失礼かもしれないが、今は
この気持ちだけ、早く伝えたい。
:09/03/27 12:51 :W61P :☆☆☆
#472 [イリア]
七「―…麗さんに認めて貰えるよう、
頑張りますね!!それでもし麗さんが
私のこと認めてくれたら……」
一度、言葉を切る。
前にいる綺麗な人は、
私を不思議そうに見つめている。
:09/03/27 12:52 :W61P :☆☆☆
#473 [イリア]
麗「認めて、くれたら?」
七「……認めてくれたら……
…私と、友達になって下さい!!!!」
:09/03/27 12:52 :W61P :☆☆☆
#474 [イリア]
私の声がテント内に響く。
稽古やら食事作りやらで
みんな出払っているらしいので、
気にしない。
:09/03/27 12:53 :W61P :☆☆☆
#475 [イリア]
麗「……………は?」
七「えっとえっと!!!
私、本当に何も覚えてなくて!!!!
友達もいなくて!!寂しいんです!!!!
今の私の友達って、
猫さんと狐さんと…狼さんは
まだ分かんないけど…
このくらいで!!!!/////」
:09/03/27 12:53 :W61P :☆☆☆
#476 [イリア]
言ってしまったあとに
恥ずかしさが込み上げてくる。
そもそも友達って、
こんな風になるもんだっけ?///
:09/03/27 12:54 :W61P :☆☆☆
#477 [イリア]
:09/03/27 12:54 :W61P :☆☆☆
#478 [イリア]
:09/03/27 12:55 :W61P :☆☆☆
#479 [イリア]
七「―…あの、麗さん…?」
麗「―…何故」
七「え?」
:09/03/27 12:55 :W61P :☆☆☆
#480 [イリア]
麗「何故私に、そこまで拘(コダワ)る?
狼に何か言われたか?それとも狐?
―…私と関わっても
何も得るものはない。」
:09/03/27 12:55 :W61P :☆☆☆
#481 [イリア]
麗さんが、冷たく言い放つ。
でも、どうしてだろう。
何で、何で。
:09/03/27 12:56 :W61P :☆☆☆
#482 [イリア]
:09/03/27 12:57 :W61P :☆☆☆
#483 [イリア]
七「―…麗さん綺麗だから」
思わず私は、声を出す。
麗「………え?」
:09/03/27 12:57 :W61P :☆☆☆
#484 [イリア]
七「…同い年くらいの女の子。
友達になりたいと思うの
そんなにおかしいですか?
それに……麗さん、綺麗だから。」
:09/03/27 12:57 :W61P :☆☆☆
#485 [イリア]
笑ってみる。
麗さんが演技してるところ
本当の笑顔でいるところ
見てみたいんです。
言葉には出さない。
だけど心で思う。
:09/03/27 12:58 :W61P :☆☆☆
#486 [イリア]
七「…って、駄目ですよね…
とにかく、認めてもらえるよう、
がんばり「綺麗なんかじゃない」」
:09/03/27 12:59 :W61P :☆☆☆
#487 [イリア]
七「……え…?」
麗「…綺麗じゃない、私。
―……話はそれだけか?くだらない」
七「……あ……」
:09/03/27 12:59 :W61P :☆☆☆
#488 [イリア]
麗「私はお前を認めない。
何かあったら、
すぐにここから追い出す。
覚悟しておけ、雨原。」
そう言って麗さんは、また歩き出す。
:09/03/27 12:59 :W61P :☆☆☆
#489 [イリア]
まだ言いたいことはたくさんあるけど…
少しだけ、喋ってもらえた。
今は、それだけで。
麗さんの姿がテントの外に消える。
:09/03/27 13:00 :W61P :☆☆☆
#490 [イリア]
――……綺麗じゃない。
確かにそう聞こえた。
綺麗じゃない?
麗さんが綺麗じゃなかったら
この世界に綺麗な人なんて
いないんじゃないかな。
:09/03/27 13:00 :W61P :☆☆☆
#491 [イリア]
口は悪いが、根はいい子。
森の中での狐さんの言葉を思い出す。
:09/03/27 13:01 :W61P :☆☆☆
#492 [イリア]
確かに口は悪いかも。
でもどこか優しそうで、
立ち居振る舞い、全てが綺麗な人。
……仲良くなれたらいいなぁ。
:09/03/27 13:03 :W61P :☆☆☆
#493 [イリア]
っていうか、私も麗さんみたく
綺麗になりたいなー
―…そうしたら猫さんとも…
目を見て、話せるのに。
:09/03/27 13:03 :W61P :☆☆☆
#494 [イリア]
フゥ………
ため息をつく。
少しだけ眠い。
壁に背をつけ、ズルッと座り込んで
瞳を閉じる。
:09/03/27 13:04 :W61P :☆☆☆
#495 [イリア]
―――…………
――――……………
暗い、暗い、
ここはどこだろう?
あたり一面に広がる、
闇と、血の匂い。
体がいやに軽い。
これは、夢?
:09/03/27 13:04 :W61P :☆☆☆
#496 [イリア]
:09/03/27 13:05 :W61P :☆☆☆
#497 [イリア]
七「?」
歌声…
後ろを振り返る。
するとそこには闇の中に
黒く大きい、檻(オリ)が見えた。
:09/03/27 13:05 :W61P :☆☆☆
#498 [イリア]
:09/03/27 13:06 :W61P :☆☆☆
#499 [イリア]
歌っている。
二人は手を繋ぎ、
暗い暗い檻の中で
あの唄を、歌っている。
:09/03/27 13:06 :W61P :☆☆☆
#500 [イリア]
雨の音 風の声 聴いて
揺りかごを揺らして
早く私を迎えにきて――……
:09/03/27 13:07 :W61P :☆☆☆
#501 [イリア]
:09/03/27 13:07 :W61P :☆☆☆
#502 [イリア]
苦しくなる。
何故、こんな気持ちになるの。
どうしてこんな暗い場所で、
あなたたちは、笑っているの。
この闇は何。
この甘い甘い、血の香りは何?
:09/03/27 13:08 :W61P :☆☆☆
#503 [イリア]
誰だろう?
もう少しだけ近づいてみようか。
そうしたら、
もっとはっきり見えるかも。
:09/03/27 13:09 :W61P :☆☆☆
#504 [イリア]
唄が聞こえる方向に
足を一歩踏み出す。
女の子が、私を見つめた。
七「……え?」
思わず声を出す。
:09/03/27 13:09 :W61P :☆☆☆
#505 [イリア]
こっちを見て、
楽しそうに笑う少女は…
七「―――………私……?」
:09/03/27 13:09 :W61P :☆☆☆
#506 [イリア]
男の子の顔は、ぼやけていて見えない。
何、何なの?
ここは、どこ?
幼い私に向かって、手を伸ばす。
:09/03/27 13:10 :W61P :☆☆☆
#507 [イリア]
グィッ
するとすぐに
誰かに意識を掴まれ
引き戻される。
意識が遠のく。
:09/03/27 13:10 :W61P :☆☆☆
#508 [イリア]
:09/03/27 13:11 :W61P :☆☆☆
#509 [イリア]
引き戻される直前に
顔の見えない、男の子の声が響いた。
ズキッ
七「痛ッッ!!」
:09/03/27 13:11 :W61P :☆☆☆
#510 [イリア]
:09/03/27 13:12 :W61P :☆☆☆
#511 [イリア]
七「―――……痛………」
猫「――……??!!……オイ!!!!」
七「?」
:09/03/27 13:12 :W61P :☆☆☆
#512 [イリア]
目の前で、
夢の中の男の子とは違う少年が
私を心配そうに覗き込んでいた。
:09/03/27 13:13 :W61P :☆☆☆
#513 [イリア]
七「―…?猫さん…」
猫「オイ…あんた、大丈夫か?」
風が吹き抜けるテントの中。
見覚えのある景色。
ついさっきまで麗さんと
話をしていた場所。
:09/03/27 13:14 :W61P :☆☆☆
#514 [イリア]
七「……………」
あれは、どこだったんだろう。
あの檻も、あの暗さも。
何故か私を、懐かしくさせる。
:09/03/27 13:14 :W61P :☆☆☆
#515 [イリア]
猫「…オイ、聞いてる?」
七「…私…どうしたんですか?」
猫「それは俺が聞いてるの。
迎えにきたらさ、あんた
座り込んで、うなされてるし。」
:09/03/27 13:15 :W61P :☆☆☆
#516 [イリア]
うなされてた…
そうか私、寝ちゃったんだ。
猫「―…嫌な夢でも、見てたわけ?」
七「……嫌な夢……?」
:09/03/27 13:15 :W61P :☆☆☆
#517 [イリア]
分からない。
分からない。
――……僕は君を、守りたい
あの男の子の声だけが、
鮮明に頭に響き続ける。
:09/03/27 13:16 :W61P :☆☆☆
#518 [イリア]
深い闇と、甘い血の香り。
そんな場所で
屈託(クッタク)なく笑っている
幼い私の顔。
:09/03/27 13:16 :W61P :☆☆☆
#519 [イリア]
猫「―…気分悪い?
医者呼ぼうか?」
猫さんの綺麗な声が聞こえる。
心配してくれてるのかな。
:09/03/27 13:16 :W61P :☆☆☆
#520 [イリア]
七「―…変な夢…見て…」
猫「…変?」
七「はい…でも、もう大丈夫です。
ただの夢ですよね。ごめんなさい。」
:09/03/27 13:17 :W61P :☆☆☆
#521 [イリア]
アハハ、と笑ってみせる。
そう、夢なんだ。
今の私には、関係ない。
:09/03/27 13:17 :W61P :☆☆☆
#522 [イリア]
猫「―…夢と現実は、必ず繋がってる」
七「………え?」
:09/03/27 13:19 :W61P :☆☆☆
#523 [イリア]
猫「繋がってるんだ。
――……俺は、そう思う。」
猫さんの顔がかすむ。
少し悲しそうな顔に胸が痛む。
:09/03/27 13:19 :W61P :☆☆☆
#524 [イリア]
:09/03/27 13:19 :W61P :☆☆☆
#525 [イリア]
七「―…猫さん…」
猫「……?何?」
七「―…私がちゃんと、
全部思い出したとき…
それでも私は、私だから…」
:09/03/27 13:20 :W61P :☆☆☆
#526 [イリア]
風が吹いている。
記憶をなくす前も私は
この風を感じれていたのかな。
:09/03/27 13:20 :W61P :☆☆☆
#527 [イリア]
七「―……今と変わらず、
傍(ソバ)で笑ってくれますか?」
:09/03/27 13:21 :W61P :☆☆☆
#528 [イリア]
猫さんが驚いた顔をした。
瞬間、いま自分が聞いたことに
焦りと恥ずかしさを感じる。
:09/03/27 13:21 :W61P :☆☆☆
#529 [イリア]
七「……ッッ!!///いえ、別に!!
なに聞いてんだろ私、寝ぼけてる!!//
忘れて下さい//忘れ―…「あんたが」」
猫さんの声。
変わらない、甘い、甘い声。
:09/03/27 13:22 :W61P :☆☆☆
#530 [イリア]
猫「―…あんたが変わらないなら、
俺も変わらない」
その声に、表情(カオ)に
今日一日だけで
どれだけ鼓動を速めさせられただろう。
:09/03/27 13:22 :W61P :☆☆☆
#531 [イリア]
猫「―…行こう、もう飯の時間だ」
猫さんは私の腕を引っ張り立たせると
そのまま外に歩き出す。
:09/03/27 13:23 :W61P :☆☆☆
#532 [イリア]
猫さんの手のひらに、
確かな熱を感じる。
私たちは生きていること。
ここは夢じゃないということ。
目の前の人の優しさに、
溺れてしまってるということ。
:09/03/27 13:24 :W61P :☆☆☆
#533 [イリア]
確かなことは少ないけれど、
少しずつ、増えてきた。
私たちは布をめくり、外に出る。
さっきまでの雨はどこかに消え、
紅い夕日が顔を見せていた。
:09/03/27 13:25 :W61P :☆☆☆
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