黒猫の棲むところ
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#351 [イリア]



猫「そう、滞在期間は
短くて一週間。
長くて一月くらいかな。
同じとこにずっといるのは」
危険だし。」

七「…毎回こんな
ばかでっかい
テント建てるんですか?」


⏰:09/03/25 22:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#352 [イリア]



猫「建てなきゃ、寝るとこないけど?」

黒猫さんがクスッと笑う。


⏰:09/03/25 22:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#353 [イリア]



猫「…って、言っても
俺たち役者はノータッチだけどな。
大体は稽古してる間に、
大道具の奴らが建てる。」


七「―…大道具…」


猫「あんたも次から、頑張って?」


黒猫さんがまた笑う。


⏰:09/03/25 22:46 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#354 [イリア]



…てか、無理でしょ!
だってもうテントじゃないもん!
家だよ、家!!

こんなの移動するたびに
建ててる大道具の人って一体……


⏰:09/03/25 22:47 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#355 [イリア]



猫「そうそう、
アスタリスク劇団はあんた入れて56人。
そのうち15人が役者で
12人が役者のマネージャー。

んで、狐が監督 兼 脚本家。
後はみんな大道具だけど、
男ばっかだから気をつけろよ」


⏰:09/03/25 22:47 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#356 [イリア]



―…いや、男ばっかって!

力仕事だからな〜と言う
黒猫さんの声が聞こえる。


何で私スカウトされたんだろ?
力とかないんですけど…
しかも、男の人ばっかって…


⏰:09/03/25 22:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#357 [イリア]



無意識に半泣きになった私を見て
黒猫さんが目を細める。





猫「―…ねぇ、七衣?」

七「え?あ、はい?」


⏰:09/03/25 22:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#358 [イリア]



少し上を見上げ、
黒猫さんと目を合わせる。



猫「…大道具って、大変だと思わない?
女の子がする仕事じゃないよ」


⏰:09/03/25 22:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#359 [イリア]



そう言うと黒猫さんは
私の横の壁に手をつけ、
私は黒猫さんと壁に
挟まれた感じになった。


⏰:09/03/25 22:49 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#360 [イリア]







―……って、近い近い近い!!!!///


⏰:09/03/25 22:49 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#361 [イリア]



すぐ目の前にある綺麗な顔に

鼓動が速まり、
頬が熱くなるのが分かる。


⏰:09/03/25 22:49 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#362 [イリア]



赤くなっているだろう顔を
見られたくなくて、

私は自分の顔を慌てて下に向けた。


⏰:09/03/25 22:51 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#363 [イリア]



猫「…クスッ…何で下見るの…?」

七「―…ッッ////べ、別に?
そ、それより近いんですけど。」


⏰:09/03/25 22:51 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#364 [イリア]



猫「――……2回」

七「え?な、何がですか?」

猫「……3回」

七「だ、だから何の回数ですか?!//
全然意味が…」


⏰:09/03/25 22:51 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#365 [イリア]



猫「…4回。

あんたがどもった回数。
あんた、よくどもるよね、
役者には向いてないかな」


そう言って黒猫さんはまた笑う。


⏰:09/03/25 22:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#366 [イリア]



カァ―


今度こそ本当に顔が赤くなった。

七「べ、別に私だって
いっつもどもってる訳じゃないし!
てゆーか、誰がどもらせてると…」

猫「―…誰?」

七「……//」


⏰:09/03/25 22:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#367 [イリア]



綺麗な顔が覗き込んでくる。

上を見れば、唇が
触れてしまいそうな距離。


⏰:09/03/25 22:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#368 [イリア]



七「だ、誰でもありませんよ!//

それより近いです!!近い!!!//」






猫「――……失礼、姫」


⏰:09/03/25 22:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#369 [イリア]



黒猫さんが私から少し離れる。

…少しだけ、寂しく感じた。


⏰:09/03/25 22:54 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#370 [イリア]



猫「――…何?」


私の顔を見て、黒猫さんが言う。


⏰:09/03/25 22:55 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#371 [イリア]



七「あ……その!!
姫っていうのやめてくれません?!

私に姫に似合いませんし…///」


少しでも寂しくなったなんて
知られたくなく、
私は慌てて
今思っただけのことを言う。


⏰:09/03/25 22:55 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#372 [イリア]



>>371

×私に姫に〜…
○私に姫は〜…

 すいません(´;ω;`)


⏰:09/03/25 22:56 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#373 [イリア]



猫「―…なら、あんたも
俺のこと黒猫さん、っての
辞めるくれる?」


七「…え?」


予想外の返答に、思わず聞き返す。


⏰:09/03/25 22:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#374 [イリア]



猫「―…なんていうか、
他人行儀だよね。
そりゃ確かに
好きに呼べとは言ったけど。

猫、でいいよ」


七「…え…いや、
呼び捨てはちょっと…」


⏰:09/03/25 22:58 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#375 [イリア]



猫「何で?」


七「だって私のほうが年下っぽいし…」


⏰:09/03/25 22:58 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#376 [イリア]



猫「あんた、何歳だっけ?」


七「…よく覚えてないけど…
16くらい……?」


猫「本当だ、俺は18だから。
まぁ、別にいいよ?」


⏰:09/03/25 22:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#377 [イリア]



七「私がよくないです!!//
………じゃあ」


また、目をそらしてしまう。

私が麗さんみたいに綺麗だったら
ちゃんと目を見て話せるのかな?


⏰:09/03/25 22:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#378 [イリア]



七「―…猫さん、って呼びます。」


黒猫さんは少し不満そうに
鼻を鳴らしたが、
まぁ今はいっか、と言うと
私を置いて歩き出した。


⏰:09/03/25 23:00 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#379 [イリア]



七「あ、待って下さい!!」


猫「これが言いたかっただけなんだ。
黒猫さんて、呼びづらそうで。

あんた、風呂入ってきなよ。
そこを左にずっと行くと
大浴場があるから。
着替えは劇団の服が
置いてあると思うし。」


⏰:09/03/25 23:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#380 [イリア]



何で移動テントの中に
風呂があるんだよというつっこみは
とりあえず置いておいて…

歩き出す黒猫さんに質問をする。


⏰:09/03/25 23:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#381 [イリア]



七「…あの!!
ずっと気になってたんですけど!!」


猫「?」


七「―…何で初めて会ったとき、
あんなに傷だらけだったんですか??」


⏰:09/03/25 23:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#382 [イリア]



黒猫さんが足を止める。

ゆっくりと私のほうに振り向いた。


⏰:09/03/25 23:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#383 [イリア]



七「…あ…言いたくなかったら、
いいんですけど……」


風が吹く。

あ、やっぱりここは
テントの中なんだ。
自然なままの、風を感じる。


⏰:09/03/25 23:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#384 [イリア]



七「…………?」




猫「―…何でだったかな。

まぁ、あんたには関係ないよ」


⏰:09/03/25 23:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#385 [イリア]



関係ない



その言葉を聞いたとき、
何故か懐かしい感じがした。

その後すぐ、さっきよりも
ずっと大きい寂しさを感じ、
思わず下を向く。


⏰:09/03/25 23:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#386 [イリア]



分かってる。私と猫さんは
さっき会ったばっかりで。

まだお互いのこと
ほとんど知らなくて。


私は猫さんのこと

もっともっと知りたいけど、

猫さんはそんなこと、望んでなくて。


⏰:09/03/25 23:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#387 [イリア]



私と猫さんは

関係あることより

関係ないことのほうが



ずっと、ずっと多くて。


⏰:09/03/25 23:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#388 [イリア]



ポン


私の頭の上に、手が置かれる。


⏰:09/03/25 23:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#389 [イリア]



猫「―…悪い、言い方きつかった?
そんな顔すんなよ…」


どんな顔をしてるんだろう。

そういえば私の顔って、
どんなんだったっけ?


⏰:09/03/25 23:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#390 [イリア]



猫「…あの怪我は、
もう大丈夫なんだ。
あんたが川で癒やしてくれたから。
気にしなくていい…


…そういう意味だよ」


⏰:09/03/25 23:08 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#391 [イリア]



もう、大丈夫。

今はそれだけ知ってれば
十分なのかも知れない。


⏰:09/03/25 23:08 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#392 [イリア]



七「…うん…」


そう考えると、少し寂しさが消える。

口元を緩めた私を見て、
黒猫さんもクスッと笑う。


⏰:09/03/25 23:08 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#393 [イリア]



猫「ほら、さっさと風呂行け。
結構広い大浴場だけど
誰か入ってないか
一応確認しろよ?」


七「…はいっ!」


⏰:09/03/25 23:09 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#394 [イリア]



猫「じゃ、俺も稽古見てくるわ。
いま大道具の奴らが飯作ってるから
今から風呂入れば丁度いいよ。」


七「大道具って…
…ご飯もつくるんですか?汗」


猫「クスッ 別名、何でも屋」


大変そうだ…


⏰:09/03/25 23:10 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#395 [イリア]






猫「まぁ、まだ何も
分かんねーだろうし、

姫君が湯浴みを終えられた頃に
お迎えに上がりますよ」



七「また、姫って言った。」


⏰:09/03/25 23:11 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#396 [イリア]



猫「今度は、姫君だよ」


猫さんが笑う。


じゃ、後で
そう言って猫さんがまた歩き出す。
私も言われたとおり
左ひ向かって歩く。


⏰:09/03/25 23:11 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#397 [イリア]



>>396

×左ひ向かって歩く。
○左に向かって歩く。

 すいません(・ω・`)


⏰:09/03/25 23:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#398 [イリア]







猫「――……七衣!」


七「?」


猫さんは入り口の布をめくりながら
私の名前を呼んだ。


⏰:09/03/25 23:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#399 [イリア]






猫「―……やっぱあんた、
俺のマネージャーにするわ。」


七「……ふぇっ?」


⏰:09/03/25 23:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#400 [イリア]



猫「さっき役者が15人、
マネージャーが12人って
言っただろ。あれ、
俺と狼と麗は
マネージャーなんかいらねって言って
つけてなかったんだ。

…でもやっぱ、いたほうが便利かな。
色んな劇を、同時に
練習することもあるし
スケジュールとか覚えんのたるくて。
遅刻したら狐がうるさいし。

――……だから」


⏰:09/03/25 23:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


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