黒猫の棲むところU
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#185 [イリア]


額の血を拭いながら、男が声を漏らす。


男「大変だなおい、劇団のトップスターさんはよ…こんな状況でも講演の心配か、…黒猫…ハハッ」


嘲笑じみたその笑いに、また狼さんの顔が歪む。


⏰:09/11/30 00:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#186 [イリア]



狼「―…こんな状況にしたのは誰だ?」


男「…ふふふ、それでもお前達は…俺達を殺さないだろう?生かすんだろう?…優しいな……でも」


止まることのない男の血は、地面に滴り、土に消える。


⏰:09/11/30 00:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#187 [イリア]



男「――……その優しさが、仲間を殺したんだ。そうだろう麗?気づいたときに、もっと意味ある行動を起こせば良かった。なのにお前はちんたらちんたら俺達を説得しようと…結果は、ほら。お前らの仲間が…」


――ガッ!!


狼さんの足が、男を勢いよく蹴りつける。


⏰:09/11/30 01:00 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#188 [イリア]



狼「それ以上一言でも喋ってみろ……今、殺す。」


狼さんのその瞳に、昨日までの優しさはない。


七「――……狼さん……」


⏰:09/11/30 01:00 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#189 [イリア]




猫「……プロ、だからね」

猫さんの声に、振り向く。


猫「俺も、狼も、……麗も。中途半端なことはできないんだ。余計な噂は立てられない……これ以上、な。」

猫さんが私を見る。意味ありげな猫さんの視線に、思わず首を傾げる。


⏰:09/11/30 01:01 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#190 [イリア]



男「……俺達を…殺すか?猫…」


猫「……まさか。狐(キツネ)に要相談ってとこかな。知ってる情報は全て吐いてもらう。…お前らの仕える、『妖(アヤカシ)』について…な。ただ、麗のこともあるし、命の保証まではできないんじゃない?」


男「…ハッ…甘いな…お前らは今、耐えられるのか…」


⏰:09/11/30 01:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#191 [イリア]



ポツ..ポツ..


雨は降り止まない。
ああ、本当にみんな、大丈夫なのかな。




男「仲間を…売ったのに……」


⏰:09/11/30 01:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#192 [イリア]



――――――――
――――――
―――――





男「…本当に…甘い……」


七「………?」


⏰:09/11/30 01:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#193 [イリア]



麗さんと私を襲った男達の頬に、一筋の涙が伝う。

猫さんのほうを見ると、嘲るような、…でもどこか悲しそうな、そんな横顔が見える。

やっぱり私にはまだこの劇団の全ては見えない。



いつか分かるのかな、私にも。


⏰:09/11/30 01:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#194 [イリア]



猫「……行こう、雨だ。」


猫さんの一言で男たちも互いに支え合いながらその場を立つ。

狼さんは麗さんを気づかいながら歩く。

私はただ、一人先行く猫さんの背中を追う。



こうして私にとって初めての、長い、長いお使いは終わった。


⏰:09/11/30 01:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


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