黒猫の棲むところU
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#1 [イリア]
:09/04/01 20:12 :W61P :☆☆☆
#2 [イリア]
:09/04/01 20:12 :W61P :☆☆☆
#3 [イリア]
:09/04/01 20:12 :W61P :☆☆☆
#4 [イリア]
:09/04/01 20:13 :W61P :☆☆☆
#5 [イリア]
:09/04/01 22:37 :W61P :☆☆☆
#6 [イリア]
:09/04/01 22:37 :W61P :☆☆☆
#7 [イリア]
トン トン トン……
そこは暗く、少し肌寒い部屋。
窓は開き、月が顔を覗かせている。
トン トン トン……
:09/04/01 22:38 :W61P :☆☆☆
#8 [イリア]
少年は一人きりでその部屋にいた。
家具はほぼなく、嫌みなほどに広い。
ただ一つ、無造作に置かれた花瓶が
その殺風景な暗い部屋にいる
少年の孤独さを際だたせている。
:09/04/01 22:39 :W61P :☆☆☆
#9 [イリア]
トン トン トン……トン
窓辺に腰かけ、一定のリズムで
金属の枠を叩いていた少年は
手を止め、ふと扉のほうを見る。
:09/04/01 22:39 :W61P :☆☆☆
#10 [イリア]
:09/04/01 22:39 :W61P :☆☆☆
#11 [イリア]
「――……凪夜(ナギヤ)?」
窓辺に座る少年が、
クスリ と笑って
扉の向こうに話しかけた。
:09/04/01 22:40 :W61P :☆☆☆
#12 [イリア]
「何してるの?入ってきなよ」
少年が言葉を続ける。
ガチャリという音がしたとき
その重い扉が開いた。
:09/04/01 22:40 :W61P :☆☆☆
#13 [イリア]
「――……失礼します、葵(アオイ)様」
入ってきた子は
その堅気な言葉使いとは違い、
葵、と呼ばれた少年より
少しだけ、幼く見える。
:09/04/01 22:41 :W61P :☆☆☆
#14 [イリア]
葵「……アハハ、様なんてやめてよ
凪夜は僕らにとって、
とっても大切な子なんだよ?」
:09/04/01 22:41 :W61P :☆☆☆
#15 [イリア]
少年は笑う。
扉の外にいた子よりは年上に見えるが
それでも16、17くらいだろう。
:09/04/01 22:43 :W61P :☆☆☆
#16 [イリア]
凪「…そう言うわけにはいきません…
葵様、その血――………ッッ??!!!」
葵という少年の体を見た瞬間、
凪夜と呼ばれた子の声色が変わる。
:09/04/01 22:44 :W61P :☆☆☆
#17 [イリア]
葵「あぁこれ?」
そう言って灰色の少年は
腕で左頬を拭(ヌグ)う。
シルクのような滑らかな衣類に
少年の頬の朱がつく。
:09/04/01 22:45 :W61P :☆☆☆
#18 [イリア]
凪「どうされたのですか…誰に…ッッ!!」
葵「凪夜」
言葉を途切らせる。
:09/04/01 22:45 :W61P :☆☆☆
#19 [イリア]
葵「違うよこれ、返り血。
僕の血じゃない」
少年が笑う。
凪「…ッッ…取り乱し…失礼しました」
息も淫らに、
凪夜は葵に、深々と頭を下げる。
葵「ううん、嬉しい」
:09/04/01 22:46 :W61P :☆☆☆
#20 [イリア]
そう言うと灰色の少年は
窓辺からゆっくり立ち上がり、
凪夜と呼ばれた子の元へ歩く。
:09/04/01 22:47 :W61P :☆☆☆
#21 [イリア]
葵「嬉しいんだよ、凪夜。
僕を心配してくれるなんて…
そんなの”ナナ”だけかと思ってた」
葵は細く白い手で
凪夜の頬に軽く触れる。
:09/04/01 22:48 :W61P :☆☆☆
#22 [イリア]
:09/04/01 22:48 :W61P :☆☆☆
#23 [イリア]
サ――――…………
風が吹く。
開け放たれた窓から入る風は
部屋の中の二人に冷たさを与える。
:09/04/01 22:48 :W61P :☆☆☆
#24 [イリア]
葵「寒い?」
凪「いえ…」
葵「そう?僕は寒いとか
あんまり分かんないからさ」
少年はそう言いながらも
窓辺まで戻り、静かに窓を閉めた。
:09/04/01 22:50 :W61P :☆☆☆
#25 [イリア]
凪「――…葵様…」
葵「ん?なぁに?」
凪「……この花………」
:09/04/01 22:50 :W61P :☆☆☆
#26 [イリア]
凪夜の目線の先には
この部屋のただ一つのモノ。
無造作に置かれた花瓶の中には
一本の花。
:09/04/01 22:51 :W61P :☆☆☆
#27 [イリア]
葵「……あぁ、これ?
フフ…綺麗でしょ?
花は”ナナ”が好きなものだから」
凪「あの子は死んだ」
凪夜の声が、広い部屋に響く。
:09/04/01 22:51 :W61P :☆☆☆
#28 [イリア]
凪「―…あの子は…
あの日、死んだんでしょう?
……葵様、目を覚まして下さ…」
葵「生きてるよ」
葵が花瓶に近づき、
中の花にそっと触れる。
:09/04/01 22:52 :W61P :☆☆☆
#29 [イリア]
葵「生きてる。感じる。
……僕には分かる」
凪「……」
:09/04/01 22:52 :W61P :☆☆☆
#30 [イリア]
葵「……フフ、本当だよ。
凪夜には内緒にしてたけど、
調べて貰ってたんだ」
凪「……調べて貰ってた…?
じゃあ…あの子は本当に、
生きてるんですか…?」
:09/04/01 22:53 :W61P :☆☆☆
#31 [イリア]
葵「うん。だから、迎えに行くの。」
そう言うと葵は
嬉しそうにクスクス笑った。
:09/04/01 22:53 :W61P :☆☆☆
#32 [イリア]
凪「―…迎え…?」
葵「”ナナ”は、
僕がいないと何もできないから。
だから僕が迎えに行くんだよ。」
葵が言う。
:09/04/01 22:53 :W61P :☆☆☆
#33 [イリア]
凪「……………」
葵「ねぇ凪夜。
この花が何か知ってる?」
少年は笑って
花を花瓶から取り出す。
その花の切り口からは
水滴がこぼれ落ちた。
:09/04/01 22:56 :W61P :☆☆☆
#34 [イリア]
凪「……いえ」
葵「この花の名は、”ニコチアナ”。
花言葉は、”あなたがいれば”」
:09/04/01 22:56 :W61P :☆☆☆
#35 [イリア]
凪「…………」
葵「ねぇまるで、僕とナナのための
花言葉だ。そう思わない?」
凪「………僕は……
………私はッッ………!!」
葵「僕はナナさえいればいい」
:09/04/01 22:57 :W61P :☆☆☆
#36 [イリア]
葵の声が部屋に響く。
花瓶から取り出された花は
少しずつ元気をなくす。
:09/04/01 22:57 :W61P :☆☆☆
#37 [イリア]
葵「そしてナナには、
僕だけいればいいんだ。
ずっとそうやって生きてきた。」
少年の瞳に影がうつる。
先ほどまでの幼さは、もうない。
:09/04/01 22:57 :W61P :☆☆☆
#38 [イリア]
葵「―…ナナに近づくヒトは、
みんな僕が殺してあげる」
クスクスと笑う少年。
その近くにいる凪夜の表情に
戸惑いが表れる。
:09/04/01 22:58 :W61P :☆☆☆
#39 [イリア]
凪「……何故……そんなに…」
葵「僕の考え、たった一つの望み。
――……ねぇ凪夜、分かる?」
月が雲に隠れて、光が消える。
もう互いの顔は見えない。
:09/04/01 22:59 :W61P :☆☆☆
#40 [イリア]
:09/04/01 22:59 :W61P :☆☆☆
#41 [イリア]
:09/04/01 22:59 :W61P :☆☆☆
#42 [イリア]
天気は普通。
気分も普通。
緊張しがちな舞台の初日には
もってこいのコンディショ…
猫「どこがだよ」
:09/04/01 23:02 :W61P :☆☆☆
#43 [イリア]
すぐ隣で猫さんの声がした。
猫「天気はどしゃ降り。気分は最悪。
舞台は初日から満員御礼、のくせに
俺たち役者は雨が苦手で
既にヘロヘロ。」
不機嫌そうな猫さんの声。
:09/04/01 23:02 :W61P :☆☆☆
#44 [イリア]
七「いや私、声に出してませんよね?」
猫「フフン、あんたは考えてることが、
すぐ顔に出るから分かりやすい。」
なんて失礼な。
って言うわけで…
:09/04/01 23:03 :W61P :☆☆☆
#45 [イリア]
舞台の初日になる今日は
あいにくのどしゃ降り。
別に雨なんて
私からしたら普通だけど、
猫さんたち半妖からしたら
雨は本当に苦手なものらしい。
:09/04/01 23:04 :W61P :☆☆☆
#46 [イリア]
七「でも舞台は建物の中で
行われるんでしょ?
なら、大丈夫じゃないですか。」
猫「あんたは本当にお気楽だな。
俺たちの嗅覚(キュウカク)なめんなよ、
雨の匂いだけで倒れそうだよ。」
:09/04/01 23:04 :W61P :☆☆☆
#47 [イリア]
猫さんがそこまで言ったとき、
遠くから狐さんの声がした。
狐「はいはいはい〜
みんな大丈夫かな〜?
まぁ天気は生憎(アイニク)だけど、
今日も僕らのファンのために
精いっぱい頑張りましょ〜」
:09/04/01 23:04 :W61P :☆☆☆
#48 [イリア]
大分ちゃらけてるが、
狐さんもヘロヘロな感じ。
だ、大丈夫なのかな…………?汗
:09/04/01 23:05 :W61P :☆☆☆
#49 [イリア]
じゃあそろそろ移動するよ〜
狐さんの声。
今から講演場所まで徒歩移動らしく
大道具の人たちが傘を配っている。
:09/04/02 00:04 :W61P :☆☆☆
#50 [イリア]
七「………………あ」
私はあるものを見つけ、
近くの茂(シゲ)みにしゃがみこんだ。
:09/04/02 00:05 :W61P :☆☆☆
#51 [イリア]
猫「?」
七「…ごめんね、
一本だけちょうだいね」
ブチッ
目的のものを掴むと、
私は立ち上がった。
:09/04/02 00:05 :W61P :☆☆☆
#52 [イリア]
猫「おい、何して……」
七「はい!」
私はそう言うと
一本の花を猫さんに渡す。
:09/04/02 00:05 :W61P :☆☆☆
#53 [イリア]
猫「……何、これ?」
七「何って、花ですよ。
綺麗でしょう?
…雨だし、舞台初日だし、
緊張してるかなって。
私、花スキなんです。
見てるだけで和みません?」
:09/04/02 00:06 :W61P :☆☆☆
#54 [イリア]
猫さんは不思議そうに
私の渡した花を
クルクル回している。
猫「………」
七「………あのぉ―…
もしかして、花お嫌いですか?」
:09/04/02 00:06 :W61P :☆☆☆
#55 [イリア]
猫「―…舞台前にファンの奴らから
花を貰うことはあるけど、
…目の前で抜かれて渡されたのは
初めてだな。しかも土つきで。」
七「…………あ」
:09/04/02 00:07 :W61P :☆☆☆
#56 [イリア]
言われてみれば。
いま私の目の前にいるのは
劇団のトップスターな訳で。
花なんか、たくさん貰える訳で。
:09/04/02 00:07 :W61P :☆☆☆
#57 [イリア]
私のあげた花とか安っぽいですかー
安っぽいどころか0円ですけど。
少し恥ずかしくなる。
喜んで貰えると思ったのにな。
:09/04/02 00:08 :W61P :☆☆☆
#58 [イリア]
七「…そーですよね!
猫さんそういえば
花形俳優ですもんね!
ラッピングしてない花なんて貰っても
仕方ないですよねー!!」
猫「そういえばって、オイ」
:09/04/02 00:09 :W61P :☆☆☆
#59 [イリア]
七「何か余計なことして
すいませんでしたねー//
返してもらえます?
もういいですよ
狼さんにあげてきます。
狼さん優しいし
きっと貰ってくれ―…」
そこまで言ったとき、
猫さんは眉間に皺を寄せながら
花を自分のポケットにしまった。
:09/04/02 00:34 :W61P :☆☆☆
#60 [イリア]
七「?」
猫「いらないとまで言ってないだろ
だいたい狼は花が嫌いなんだ。
いくらあんたからでもさ、
絶対受け取らないね。
可哀想だから、俺が貰っといてあげる」
そう言ってヒラリと手を振ると、
猫さんはどこかに歩き出した。
:09/04/02 00:34 :W61P :☆☆☆
#61 [イリア]
貰ってくれた…
何だかんだ言っても
優しいよね猫さん。
でも
狐「一言多いよねーネコくん。」
七「そうそう一言多い…
…って、狐さん??!!」
いつの間にか横に立っていた狐さんに
驚いて声をあげる。
:09/04/02 00:34 :W61P :☆☆☆
#62 [イリア]
狐「どうせ貰うなら、
黙って受け取ればいいのにー!!
ネコくん本当、素直じゃないよね」
七「……はぁ……」
:09/04/02 00:35 :W61P :☆☆☆
#63 [イリア]
狐「七衣ちゃんがこぉんなに、
ネコくんのこと好きで
心配してるのにねぇ?」
七「……はぁ……って、え?//
いや!//違いますから//
何言ってんですか!!///
雨だし体調の心配はしてるけど
好きとか…そんなんじゃ…//」
:09/04/02 00:35 :W61P :☆☆☆
#64 [イリア]
狐「照れなくていいのにぃ☆
七衣ちゃんさ、昨日森で
ネコくんに『俺が守る』って
言われてたとき、
顔真っ赤っかだったんだよ?
そんとき僕さー
あーこの二人もしや?って
思った訳だよ!!
いゃあ若いっていいねー☆☆」
七「…わ、私の気持ちは置いといても
釣り合ってませんしね!!///
分かってますから!!//」
:09/04/02 00:38 :W61P :☆☆☆
#65 [イリア]
狐「七衣ちゃん、恋愛の
天秤(テンビン)には、
気持ちしか乗せられないよ♪
確かにネコくん顔はいいけど、
そんなの関係なっしんぐ♪
……それに僕、ネコくんも
まんざらでもない気がするなぁ。
そりゃ、色々あるだろうけど。」
七「……?どういう意味ですか?」
:09/04/02 00:38 :W61P :☆☆☆
#66 [イリア]
狐「うん?例えば昨日、
君がロウくんつれて走ってった後、
あきらかにファンに対する
ネコくんの態度変わってたし。
――…それにロウくん、
花って確か好きだったし」
:09/04/02 00:39 :W61P :☆☆☆
#67 [イリア]
七「――……?狼さんが花好き?
でも猫さんは嫌いって……ん?
どういう意味ですか?」
狐さんは一瞬驚いた顔をし、
すぐにニヤッと笑った。
:09/04/02 00:39 :W61P :☆☆☆
#68 [イリア]
狐「さぁ?どういうことだろう?
あー本当若いっていいな!!
僕もまだまだ若いけど!!
…時に七衣ちゃん。
本題なんだけど、お使い頼んでいい?」
七「お使い?」
:09/04/02 00:40 :W61P :☆☆☆
#69 [イリア]
狐「そうそう、舞台が終わったら
少しだけサイン会があるんだけど、
サインペン切れてるの忘れててさぁ〜
大道具の人たちも雨でダウンしてるし
良かったら……」
七「行きますよ!!
私、雨とか全然平気なんで!!」
初めての仕事だ!!
:09/04/02 00:40 :W61P :☆☆☆
#70 [イリア]
狐「クス、そう?有難う。
はいじゃあこれ、お金と地図ね。
僕らはこのまま講演場所に向かうから
買えたら直接あっちに行って。
気をつけてね」
七「はい!!じゃあ行ってきます!!」
:09/04/02 00:41 :W61P :☆☆☆
#71 [イリア]
:09/04/02 00:43 :W61P :☆☆☆
#72 [由姫]
アゲヾ(´ω`=´ω`)ノアゲ
:09/04/02 05:14 :D902iS :☆☆☆
#73 [乃愛]
待ってました
(笑)あげます
:09/04/02 11:36 :F01A :☆☆☆
#74 [鼻]
こっちにレス失礼m(__)m
見ずらくならない様に書き終わったら感想板のURL貼ってくれてるのに、こっちに感想を書くのはどうかと思います。
読んでるのは貴方達だけじゃないんだから、マナーを守って下さい。
:09/04/02 13:23 :W53S :☆☆☆
#75 [かな]
書かないんですか
?
:09/04/03 22:11 :D903i :☆☆☆
#76 [イリア]
>>72由姫様
>>73乃愛様
>>74鼻様
>>75かな様
あげて頂き有難うございます(;_;)
鼻様、本当に貴重な意見
嬉しいです(´;д;`)
あげて頂けるのは
涙が出るくらい嬉しいのですが(←)
感想は見にくいという方もいるので
もし良ければ感想板に
遊びにきて下さいね(^∀^)☆
:09/04/03 22:27 :W61P :☆☆☆
#77 [イリア]
あと更新ペース悪くて
ほんまにごめをなさい。
最近何かと忙しくて(;_;)
春休みの課題が(;_;)(;_;)←
当分このペースかもですが、
必ず最後まで書きます!!!!
イライラするかもしれませんが
気長にお付き合い下さると
有り難いです(´;ω;`)
勝手ばかりですいません(´`)
コメ有難うございました!
:09/04/03 22:27 :W61P :☆☆☆
#78 [イリア]
:09/04/04 01:11 :W61P :☆☆☆
#79 [イリア]
:09/04/04 01:11 :W61P :☆☆☆
#80 [イリア]
傘を片手に、地図の通りに歩く。
坂道を駆け上ると、街が見えた。
七「うわー…
こんな近くに街があったんだ…
なら、何でわざわざ
森にテントなんか建てるんだろ?」
:09/04/04 01:12 :W61P :☆☆☆
#81 [イリア]
ファンの追っかけが、
鬱陶(ウットウ)しいから。
猫さんにそう聞くのは、
まぁもう少し先の話。
:09/04/04 01:13 :W61P :☆☆☆
#82 [イリア]
地図通りに歩く。
雨は心なしか、大分ましになってきた。
七「良かったー!!
だいぶ小雨になってきた…っていうか
昨日も今日も、よく雨降るよね…ん?」
:09/04/04 01:13 :W61P :☆☆☆
#83 [イリア]
独り言を言いながら考える。
そういえば私、雨原一族だっけ?
狐さんが言うには、
確かこの一族の人たちは
雨に関する何らかの力を持ってて…
雨を呼んだりできるから、
妖や半妖たちは雨原一族を嫌ってる。
それで私は、雨原一族…
:09/04/04 01:14 :W61P :☆☆☆
#84 [イリア]
……もしかしてこの雨って私のせい?
いやいや、でも何も覚えてないし。
そもそも私が本当に雨原一族なのかも
私からしたらよく分かんないし。
:09/04/04 01:14 :W61P :☆☆☆
#85 [イリア]
:09/04/04 01:15 :W61P :☆☆☆
#86 [イリア]
…私は何で、
劇団に入れてもらえたんだろ。
私が本当に雨原一族なら、
そこに帰ったほうがいいのかな?
それに、どうして妖と半妖は
仲が悪いんだろ。
――……あの、夢の中の私は何だろう。
:09/04/04 01:15 :W61P :☆☆☆
#87 [イリア]
深い闇と、甘い血の香り。
そんな中で幼い私は、
確かに微笑んでいた。
隣にいた男の子は誰だろう…
小さい手を繋いで、
楽しそうにあの唄を歌っていた。
:09/04/04 01:17 :W61P :☆☆☆
#88 [イリア]
――……僕は君を、守りたい。
男の子の声が頭に響く。
顔はぼやけていて思い出せない。
:09/04/04 01:17 :W61P :☆☆☆
#89 [イリア]
夢と現実は繋がってる―……
猫さんの言った通りなら、
夢の中の男の子は
今どこにいるんだろう?
まぁ守ってくれるったって…
:09/04/04 01:17 :W61P :☆☆☆
#90 [イリア]
――……俺が、守る。
初めて逢ったとき、
初めて助けて貰ったとき、
森の中で、猫さんに言われた。
七「……私は、猫さんに
守ってもらうんだけどね」
:09/04/04 01:18 :W61P :☆☆☆
#91 [イリア]
カァ―――――………////
言った途端、恥ずかしくなる。
:09/04/04 01:19 :W61P :☆☆☆
#92 [イリア]
七「いや別に!!
守ってもらわなくても
大丈夫ですケド!!///
いやさ、妖たち来たら
流石にやばいけど…
守ってもらうほど、
弱くないもんね私!!!!////」
:09/04/04 01:19 :W61P :☆☆☆
#93 [イリア]
次々に疑問が生まれ、不安になる。
考えても仕方ないことだと
分かってても、考えてしまう。
:09/04/04 01:19 :W61P :☆☆☆
#94 [イリア]
だけど最後にはいつも
猫さんの声が頭に響く。
猫さんの声は優しくて、安心する。
:09/04/04 01:20 :W61P :☆☆☆
#95 [イリア]
そんなことを考えてる間に、
狐さんに貰った地図の場所まで来た。
ここでペンだけ買って…
早く私もホールに行きたい。
猫さんや狼さん、
麗さんの演技がみたい。
:09/04/04 01:21 :W61P :☆☆☆
#96 [イリア]
―…っていうか、
麗さん体調大丈夫かな…
…うん、舞台始まる前に
もう一回話しかけたい。
急いで行こう!
:09/04/04 01:21 :W61P :☆☆☆
#97 [イリア]
七「……すいませーん!!
サインペンってどこですか?!」
店員「サインペン?
あーお嬢ちゃんもアレかい?
この街に一週間くらいいるっていう
何ちゃら劇団のファンかい?」
:09/04/04 01:21 :W61P :☆☆☆
#98 [イリア]
七「…あ…ま、まぁそんなとこです」
店「はいよ、何本だい?
でもサイン会なら
あっちがペンくらい持ってるだろうに。
みんな舞い上がっちゃってさ〜
まぁ私も見に行くけどね、
明日の午後の部。
お嬢ちゃんはいつ行くんだい?」
:09/04/04 01:22 :W61P :☆☆☆
#99 [イリア]
七「あ、え?私は…「辞めてよ!!」」
え…?
返事をしようとしたとき、
店の外から誰かの声がした。
:09/04/04 01:23 :W61P :☆☆☆
#100 [イリア]
「離してって言ってるでしょ!!
時間がないのよ!!早く離して!!!!!」
この声――…………
:09/04/04 01:23 :W61P :☆☆☆
#101 [イリア]
店「あー誰だろね。
この街さ、結構治安悪いしね。
お嬢ちゃんは近寄っちゃだめだよ」
七「――……麗さん…?」
店「はぃ?」
:09/04/04 01:24 :W61P :☆☆☆
#102 [イリア]
七「……今の声……麗さん…?
でもまさか…すいません、
いま何時ですか??!!!」
言いながら、時計を探す。
私の真後ろに大きな時計があった。
:09/04/04 01:26 :W61P :☆☆☆
#103 [イリア]
店「9時28分だね。
どうしたんだい、そんなに慌てて?」
9時半――……?
午前の舞台って確か、
10時からだったよね?
何でこんなとこに
麗さんがいるの?
:09/04/04 01:26 :W61P :☆☆☆
#104 [イリア]
脳裏に昨日のことが浮かび上がる。
麗さんと、大道具の人たち。
痣を(アザ)内緒にしてた、麗さんのこと。
七「――…………ッッ!!!!!」
:09/04/04 01:27 :W61P :☆☆☆
#105 [イリア]
店の出口まで走る。
麗さんの姿はない。
どこに行ったんだろう。
近くの人に尋(タズ)ねる。
七「すいません!!いまここで…
離してッて叫んでた、
女の人いましたよね?
どこに行ったか分かりますか??!!」
:09/04/04 01:27 :W61P :☆☆☆
#106 [イリア]
「は?…あぁ、あの子…
何人かの男に連れられて、
あっちに真っ直ぐ行ったけど…
あんた知り合い?
やっぱまずいかな。
ここらへん通行人少ないし、
俺しか見てなかったし…
警察って連絡したほうがい…」
七「今すぐ連絡して下さい!!早く!!
どこ行ったんだろ……
有難うございました!!」
:09/04/04 01:28 :W61P :☆☆☆
#107 [イリア]
教えてもらった方角に走る。
傘はささない。
雨はまた、少しずつ降ってきた。
後ろから店員さんの声がしたけど
そのときの私には聞こえなかった。
:09/04/04 01:28 :W61P :☆☆☆
#108 [イリア]
:09/04/04 01:32 :W61P :☆☆☆
#109 [イリア]
:09/04/05 02:33 :W61P :☆☆☆
#110 [イリア]
:09/04/05 02:33 :W61P :☆☆☆
#111 [イリア]
言われた通り真っ直ぐ走ると、
さっきいた場所よりずっと
人通りが少なくなってきた。
立ち止まり、辺りをを見渡す。
――……誰もいない。
:09/04/05 02:34 :W61P :☆☆☆
#112 [イリア]
七「……………」
聞き間違い?
確かに、麗さんの声だったと思うけど…
でも、もうすぐ舞台の始まる時間だし
もしかしたら―――………
:09/04/05 02:34 :W61P :☆☆☆
#113 [イリア]
七「………麗さん………」
男「あーッ!!いたいたッ!!!!」
七「?」
振り返ると、知っている顔が二つ。
:09/04/05 02:34 :W61P :☆☆☆
#114 [イリア]
男「七衣ちゃんだっけぇ?
俺らのこと知ってるぅ〜?」
語尾を上げる癖が耳につく。
猫さんの声と、真逆の音。
:09/04/05 02:35 :W61P :☆☆☆
#115 [イリア]
七「……昨日、森で
麗さんと話してた…」
男「ピンポーンっ♪♪
元オリオン劇団でぇ、合併されて
アスタリスクの一員になったんだよ☆
宜しくねえ〜♪」
:09/04/05 02:35 :W61P :☆☆☆
#116 [イリア]
七「――…何であなた達が、
ここにいるんですか?
舞台の手伝いをしてって、
狐さんが言ってたじゃないですか…」
嫌な予感がする。
さっき抱いた微(カス)かな期待が、
頭の中から消えてなくなる。
:09/04/05 02:36 :W61P :☆☆☆
#117 [イリア]
七「―……さっき文房具屋の前で…
麗さんの声、してませんでした?
……麗さん近くにいるんですか?」
男「さぁ〜ね〜?どう思う?」
:09/04/05 02:36 :W61P :☆☆☆
#118 [イリア]
七「―……ッッ!!ふざけないで下さい!!
麗さんいるんですか?!何で??!!
昨日のことだって……
どこにいるんですか??!!
早く言わないと、誰か人を―…ッッ!!」
男「黙れよ雨原ぁ〜」
七「!!」
後ろから羽交い締めにされる。
気がつかないうちに、
後ろにもう一人いたらしい。
:09/04/05 02:38 :W61P :☆☆☆
#119 [イリア]
七「離して下さいッッ!!!!」
男「あんたってさ、いっつもそうなの?
誰か人をってさ、あんたは?
あんたは何もしない訳?」
七「――……ッッ!!」
:09/04/05 02:38 :W61P :☆☆☆
#120 [イリア]
男「昨日も森で、
あんたが狼を呼びにいったんだろ?
何ですぐ飛び出して来なかったの?
本当に麗のこと好きなら、
なりふり構わず、
飛び出してくるっしょ〜」
:09/04/05 02:39 :W61P :☆☆☆
#121 [イリア]
考える。
思い出す。
昨日、私は森で
かなわないと思ったから
狼さんを呼びに行った。
震えてる麗さんを残して。
:09/04/05 02:39 :W61P :☆☆☆
#122 [イリア]
男「…まぁ所詮、俺たち半妖と人間は
解(ワカ)りあえないってこと♪
特にあんたら、雨原一族とはさぁ」
男「それにしても、
アスタリスクも墜ちたよなあ〜
まさか雨原を、
団員にするとは思わなかった」
:09/04/05 02:40 :W61P :☆☆☆
#123 [イリア]
男「雨原一族なんてさ、
利用して捨てるに限るよ♪
てか、最近続いてる雨も
よく考えたらこいつのせいじゃね?
まぢ体だるいんですけどー」
七「――…ッッ!!!!
知りませんよ、そんなの!!
いいから離して!!麗さんはどこ?!」
:09/04/05 02:41 :W61P :☆☆☆
#124 [イリア]
男「あははー♪威勢いいね。
あんたさ、黒猫や団長に
気に入られてるからって
調子のってない?
言いたくないけど、俺たちさぁ…」
後ろで私の首をしめてる
男性の声がやむ。
不思議に思って振り向こうとすると、
首もとに痛みが走った。
:09/04/05 02:41 :W61P :☆☆☆
#125 [イリア]
七「――――……………痛………」
何かに噛まれている感じがする。
なに―――………?
男「…雨原一族、嫌いなんだよね」
首もとから、血の香り。
甘い甘い、あの夢と同じ。
:09/04/05 02:42 :W61P :☆☆☆
#126 [イリア]
男「うわ、やっぱこの女
本当に雨原なんだー…うん、
嫌な臭いがする。雨原の香り。」
男「…おい、あんまり血流させるな。
誰かが気づく。」
:09/04/05 02:43 :W61P :☆☆☆
#127 [イリア]
その声と同時に、私の首もとから
何か、が 離れた。
男「ペッ!まっずー
雨原一族なんて、噛むもんじゃないね」
:09/04/05 02:43 :W61P :☆☆☆
#128 [イリア]
七「――…吸血鬼(ヴァンパイア)…?」
男「おしいねー吸血鬼ではないよ♪
俺たちはコウモリの妖と
人間の間で生まれた半妖。
まぁ昔話みたく、噛まれたからって
あんたまで吸血鬼になることはないし
安心していいよー♪」
:09/04/05 02:45 :W61P :☆☆☆
#129 [イリア]
そう言われ、腕を引っ張られる。
頭がクラクラして、立っていられない。
その場に倒れこんだ。
男「おいおい、どんだけ吸ったわけ?」
男「ごめーん♪だってさ、
雨原一族の血だぜ?今貰わないと
一生飲むことなんて出来ないだろうし」
:09/04/05 02:45 :W61P :☆☆☆
#130 [イリア]
男「それもそうか…
まぁとりあえず続きは、
場所を移動させてからね♪」
意識が朦朧(モウロウ)としだす。
駄目、今意識を飛ばしたら、
必ず後悔する。
:09/04/05 02:46 :W61P :☆☆☆
#131 [イリア]
下唇を噛み、意識を保つ。
男達は私の腕を引っ張り、
引きずるように歩き出した。
:09/04/05 02:46 :W61P :☆☆☆
#132 [イリア]
しばらくすると、
道は行き止まりになった。
暗く狭い路地裏。
そこにいたのは、男性一人と、麗さん。
男「遅っせ〜待ちくたびれた…って、
あら、雨原?本当にいたんだ」
:09/04/05 02:46 :W61P :☆☆☆
#133 [イリア]
麗「――………ッッ??!!」
麗さんの驚いている顔が見える。
麗さんは紐(ヒモ)か何かで
腕を後ろで縛られていて、
壁にもたれ座りこんでいた。
でも、怪我はしてなさそう……
:09/04/05 02:48 :W61P :☆☆☆
#134 [イリア]
麗「ちょっとッッ!!!!!」
麗さんの声が、狭い路地裏に響く。
麗「何よ、その子……その血…
…ッッ!!本当いい加減にしてよ!!!!
何でこんなことするの!!!!
雨原は…関係ないでしょ??!!」
:09/04/05 02:52 :W61P :☆☆☆
#135 [イリア]
血が足りないからか
本当に飛びかけていた意識が、
麗さんの声で引き戻される。
:09/04/05 02:52 :W61P :☆☆☆
#136 [イリア]
男「関係なくはないでしょー♪
記憶はなくても、雨原なんだし?
別に個人的な恨みはないけど、
何かさ…雨原一族って
嫌いなんだよねー」
麗「……何言ってんの……
血は止まってるの?
止血はしてるの?」
:09/04/05 02:52 :W61P :☆☆☆
#137 [イリア]
麗さんの声で初めて気づく。
さっき噛まれた傷は
今も熱を持っていた。
耳に近いせいか、
ドクドクと、血の流れる音がする。
:09/04/05 02:53 :W61P :☆☆☆
#138 [イリア]
男「……やけに雨原のこと、
気にかけるのね〜……
止血?してるわけないじゃん。
思いっきり噛んじゃったから、
まだ血も止まってない。」
麗「……何で…こんなことするの……」
男「聞きたい?最後だし、
教えてあげようか?」
:09/04/05 02:53 :W61P :☆☆☆
#139 [イリア]
私のそばにいた男が一人、
麗さんに近づく。
男「俺たちさぁ、麗ちゃんの読み通り…
――………妖側の、スパイなの。」
麗「………ッッ!!」
:09/04/05 02:54 :W61P :☆☆☆
#140 [イリア]
男「半妖と妖が仲違いした日、
俺たちは妖に雇われたんだよね。
妖側に危害を加える恐れがないか
半妖の動きを観察…
移動場所をあらかじめ
妖側に伝えといて、
奇襲をかけさせたりもした」
:09/04/05 02:56 :W61P :☆☆☆
#141 [イリア]
麗「……………ッッ!!…」
七「―――……??」
麗さんの目からは、涙がこぼれていた。
:09/04/05 02:56 :W61P :☆☆☆
#142 [イリア]
男「あはは!!泣くほど悔しい?
そりゃそうか、あんたら
アスタリスク劇団の移動ルートも
妖たちに流してたから♪
………結構減ったもんねぇ?数?」
麗さんの涙が頬を伝い、
コンクリートの上に落ちる。
:09/04/05 02:57 :W61P :☆☆☆
#143 [イリア]
七「――…??どういう……??」
必死に声を絞り出す。
麗さんは今、何で泣いているの?
:09/04/05 02:57 :W61P :☆☆☆
#144 [イリア]
男「あー新入りちゃんには
分かんない?あのね、
もともとこの世界には
半妖組織が二つあってね。
アスタリスク劇団と、オリオン劇団。
劇団は違っても、各地で妖と戦う
仲間だったわけだよ、だけど…」
:09/04/05 02:58 :W61P :☆☆☆
#145 [イリア]
――……アスタリスク劇団はご覧の通り
もう一つの半妖組織、
オリオン劇団と合併することになりました。
理由はたび重なる妖との戦いで
半妖の数が減っちゃったから――…
昨日の狐さんの言葉が頭に響いた。
:09/04/05 02:58 :W61P :☆☆☆
#146 [イリア]
男「昨日団長さんが言ってたとおり
このたび見事に合併することに
なったのね♪……まぁ理由は、
俺たちからの情報によって
的確に攻めてきた妖に…
……半妖たちが、
殺られちゃったからなんだけど」
麗「……うるさいッッ!!!!」
麗さんが叫ぶ。
:09/04/05 03:01 :W61P :☆☆☆
#147 [イリア]
麗「……うるさいよ、もう……
もう止めてよ……」
男「…残念だったよねぇ〜
半妖も必死に戦ったみたいだけど。
…仲間がさぁ、目の前で死ぬのって…
…あはは!!俺には分かんねぇや!!」
:09/04/05 03:02 :W61P :☆☆☆
#148 [イリア]
最低。
笑い続ける男達を睨(ニラ)む。
それを覚えてて、
それで泣いてる麗さんを前に
何でそんな風に笑えるの?
:09/04/05 03:02 :W61P :☆☆☆
#149 [イリア]
:09/04/05 03:03 :W61P :☆☆☆
#150 [イリア]
男「…雨原もさ、不運だよね。
もうちょい時期がズレてれば…
……こんな目に会わずに済んだのに」
七「麗さん」
名前を呼ぶ。
応(コタ)えて欲しいから。
逃げないで、
今だけは誰にも頼りたくない。
:09/04/05 03:03 :W61P :☆☆☆
#151 [イリア]
七「……何があったんですか…」
麗「…………」
泣き続ける麗さん。
言葉は返ってこない。
代わりに、横の男が
私を見ながら言った。
:09/04/05 03:04 :W61P :☆☆☆
#152 [イリア]
男「…ん?それって、
麗と俺たちのこと?
―…別に何もないよねぇ〜」
男「そうそう。敢えて言えば、
麗が、俺たちが妖側の
スパイなんじゃないかって
嗅ぎつけてきて、
話しかけてきたもんだから…」
:09/04/05 03:05 :W61P :☆☆☆
#153 [イリア]
男「嗅覚いいんだよねー麗ちゃん♪
まぁそれで何か
言い合いになったりしちゃったり?
あんまりしつこいんで
ちょっと殴ったりしたら、
痣(アザ)になっちゃうしさあ」
:09/04/05 03:05 :W61P :☆☆☆
#154 [イリア]
男「ついでにキスなんかしてみたら、
めっきり大人しくなっちゃって。
本当可愛いよねー♪
―……死んだ仲間のために、
生きている仲間のために、
スパイを見つけだそうとした?
でも麗ちゃん、やっぱ甘いよ。
一人で何でもしようとするから―…」
:09/04/05 03:06 :W61P :☆☆☆
#155 [イリア]
七「――……痛ッッ……!!」
上から髪を引っ張られ、
思わず声が出る。
:09/04/05 03:07 :W61P :☆☆☆
#156 [イリア]
男「結局、こういう風に…
麗ちゃんいわく『関係ない雨原』まで
巻き込むことになるんだよ…
……ねぇ俺たち、妖側から
呼び出しかかったんだ。
もう妖様(アヤカシサマ)のところに
戻らなきゃいけない……だから」
男が麗さんの顎(アゴ)を掴み、
無理やり上を向かせる。
:09/04/05 03:07 :W61P :☆☆☆
#157 [イリア]
男「――……最後に、
思い出ちょうだい?」
男が麗さんに口を近づける。
やめて。
:09/04/05 03:08 :W61P :☆☆☆
#158 [イリア]
七「―――……ッッ!!やめ…ッッ!!」
麗「―――――――………ッッやッ…!!」
――……そのとき、
:09/04/05 03:10 :W61P :☆☆☆
#159 [イリア]
男「ギャアァアアァア―――ッッ!!!!!!」
私の横にいる男の一人が、
叫び声をあげた。
:09/04/05 03:11 :W61P :☆☆☆
#160 [イリア]
いや、正確には
横に いた。
さっきまで私の横で
髪を掴んでいた男は、
何かに、首もとを噛みつかれたまま
麗さんの近くの壁に押さえつけられ、
血を流しぐったりしている。
男に噛みついているものは―……
:09/04/05 03:11 :W61P :☆☆☆
#161 [イリア]
美しい、金色の毛並み。
男の二倍はあるであろう体。
七「――――………狼(オオカミ)…」
私が言葉を出したとき、
一瞬だけその狼がこっちを見た。
:09/04/05 03:12 :W61P :☆☆☆
#162 [イリア]
綺麗な毛並みから、赤色の瞳が覗く。
七「―――………狼さん……ッッ??!」
その狼は、ガルル…と
怒りに満ちた声を上げると、
麗さんの顎を掴んでいた男に
襲いかかる。
:09/04/05 03:12 :W61P :☆☆☆
#163 [イリア]
男「……ッッ!!やめろ!!やめ―…ッッ!!」
男の声も虚しく、
狼はその男の首もとに牙をむいた。
:09/04/05 03:13 :W61P :☆☆☆
#164 [イリア]
男「――………クソッッ!!!!」
七「…キャッ!!」
残り一人、私のそばにいた男が
私の首もとにナイフを突きつけた。
:09/04/05 03:13 :W61P :☆☆☆
#165 [イリア]
男「……狼!!今すぐそいつから離れろ!!
……この女の命が欲しくないのか??
今すぐ離れなければ、
この女の首…切り落として…ッッ!!」
:09/04/05 03:13 :W61P :☆☆☆
#166 [イリア]
「―――……ふーん」
男の声が止み、
代わりに違う声が響く。
:09/04/05 03:15 :W61P :☆☆☆
#167 [イリア]
そうだ私、
この声が聞きたかったんだ。
この声は私を安心させてくれるから。
綺麗な声は、私を守ってくれるから。
:09/04/05 03:15 :W61P :☆☆☆
#168 [イリア]
「―……やれるもんなら、やってみれば?
でも、1ミリでも体…動かしてみろよ」
甘く、妖艶な声が辺りに響く。
:09/04/05 03:16 :W61P :☆☆☆
#169 [イリア]
「――……あんたの首、
ひと思いにかっ切ってあげる」
クス…
猫さんが笑う。
男「――……ッッヒッ……!!」
:09/04/05 03:17 :W61P :☆☆☆
#170 [イリア]
猫「ナイフを、落とせ」
今度は猫さんの低い声が響く。
同時に男は、ナイフを地面に落とした。
:09/04/05 03:18 :W61P :☆☆☆
#171 [イリア]
カラン…
振り向くと猫さんは、
銀に煌(キラ)めく刃を
男の首もとに当てている。
:09/04/05 03:18 :W61P :☆☆☆
#172 [イリア]
七「――……///」
猫「―…大丈夫?怪我は」
男「ギャアアアアアア!!!!!」
猫さんがそこまで言ったとき、
後ろからまた、男の叫び声が聞こえた。
:09/04/05 03:19 :W61P :☆☆☆
#173 [イリア]
七「――……え…??」
後ろを見ると、男に噛みつく
美しい毛並みの狼。
:09/04/05 03:20 :W61P :☆☆☆
#174 [イリア]
猫「……チッ、おい、やめろ狼!!
その辺にしとけ!!」
猫さんの声が聞こえないのか、
狼(オオカミ)は変わらず男に牙を向ける。
:09/04/05 03:21 :W61P :☆☆☆
#175 [イリア]
猫「……あの、カス……ッッ!!」
ザッ
猫さんが狼のほうに
足を進めようとした、そのとき…
麗「――……やめて!!!!!!」
:09/04/05 03:21 :W61P :☆☆☆
#176 [イリア]
:09/04/05 03:24 :W61P :☆☆☆
#177 [かな]
更新がんばって下さい
:09/04/07 13:20 :D903i :☆☆☆
#178 [かな]
書かないんですか?
:09/04/13 22:24 :D903i :☆☆☆
#179 [鼻]
>>178感想板にしばらく書けないって書いてあるよ
こっちに書くと見づらくなるからやめて下さい
:09/04/14 03:27 :W53S :☆☆☆
#180 [イリア]
お久しぶりです(´゚ω゚`)
詳しくは感想板のほうに
書かせて戴きました。
良かったら見てやって下さい。
更新します!
:09/11/29 13:23 :W61P :☆☆☆
#181 [イリア]
狼「麗」
いつの間にか本来の姿に
戻っていた狼さんが
雨の中、麗さんに優しく問いかける。
狼「何があった?
こいつらと何かあったんだろ、
だから最近、様子が…」
:09/11/29 13:24 :W61P :☆☆☆
#182 [イリア]
麗「何もないってば!
あんたのお節介には
もううんざり!!
まだ話の途中なの…
雨原つれて、先に帰ってて…
講演までには必ず戻るから」
狼「何の話だ?俺もいる
猫、迷惑かけたな
雨も降ってきた。
新入りつれて先に行っててくれ」
:09/11/29 13:24 :W61P :☆☆☆
#183 [イリア]
麗「―…ッだから…!」
猫「…どうでもいいけど」
猫さんの声が、
二人の言い合いを遮る。
:09/11/29 13:25 :W61P :☆☆☆
#184 [イリア]
猫「お前ら時間分かってる?
あと何分で講演始まると思ってんの
しかも雨濡れて、声出にくいし
今頃 狐が血眼になって
俺たち探してるのが目に浮かぶ…」
男「―……ハッ……」
:09/11/29 13:26 :W61P :☆☆☆
#185 [イリア]
額の血を拭いながら、男が声を漏らす。
男「大変だなおい、劇団のトップスターさんはよ…こんな状況でも講演の心配か、…黒猫…ハハッ」
嘲笑じみたその笑いに、また狼さんの顔が歪む。
:09/11/30 00:59 :W61P :☆☆☆
#186 [イリア]
狼「―…こんな状況にしたのは誰だ?」
男「…ふふふ、それでもお前達は…俺達を殺さないだろう?生かすんだろう?…優しいな……でも」
止まることのない男の血は、地面に滴り、土に消える。
:09/11/30 00:59 :W61P :☆☆☆
#187 [イリア]
男「――……その優しさが、仲間を殺したんだ。そうだろう麗?気づいたときに、もっと意味ある行動を起こせば良かった。なのにお前はちんたらちんたら俺達を説得しようと…結果は、ほら。お前らの仲間が…」
――ガッ!!
狼さんの足が、男を勢いよく蹴りつける。
:09/11/30 01:00 :W61P :☆☆☆
#188 [イリア]
狼「それ以上一言でも喋ってみろ……今、殺す。」
狼さんのその瞳に、昨日までの優しさはない。
七「――……狼さん……」
:09/11/30 01:00 :W61P :☆☆☆
#189 [イリア]
猫「……プロ、だからね」
猫さんの声に、振り向く。
猫「俺も、狼も、……麗も。中途半端なことはできないんだ。余計な噂は立てられない……これ以上、な。」
猫さんが私を見る。意味ありげな猫さんの視線に、思わず首を傾げる。
:09/11/30 01:01 :W61P :☆☆☆
#190 [イリア]
男「……俺達を…殺すか?猫…」
猫「……まさか。狐(キツネ)に要相談ってとこかな。知ってる情報は全て吐いてもらう。…お前らの仕える、『妖(アヤカシ)』について…な。ただ、麗のこともあるし、命の保証まではできないんじゃない?」
男「…ハッ…甘いな…お前らは今、耐えられるのか…」
:09/11/30 01:02 :W61P :☆☆☆
#191 [イリア]
ポツ..ポツ..
雨は降り止まない。
ああ、本当にみんな、大丈夫なのかな。
男「仲間を…売ったのに……」
:09/11/30 01:02 :W61P :☆☆☆
#192 [イリア]
――――――――
――――――
―――――
男「…本当に…甘い……」
七「………?」
:09/11/30 01:03 :W61P :☆☆☆
#193 [イリア]
麗さんと私を襲った男達の頬に、一筋の涙が伝う。
猫さんのほうを見ると、嘲るような、…でもどこか悲しそうな、そんな横顔が見える。
やっぱり私にはまだこの劇団の全ては見えない。
いつか分かるのかな、私にも。
:09/11/30 01:04 :W61P :☆☆☆
#194 [イリア]
猫「……行こう、雨だ。」
猫さんの一言で男たちも互いに支え合いながらその場を立つ。
狼さんは麗さんを気づかいながら歩く。
私はただ、一人先行く猫さんの背中を追う。
こうして私にとって初めての、長い、長いお使いは終わった。
:09/11/30 01:05 :W61P :☆☆☆
#195 [イリア]
一区切りついたので、とりあえずここで切っておきます( ^ω^ )久々すぎて文章むちゃくちゃな気もします…精進だ;;
前の更新と改行の仕方を変えてみたのですが、意見等あれば感想板までお願いします(´゚ω゚`)
他、アドバイス・感想などもお待ちしています。不定期更新ですが、お付き合いお願いします><!
:09/11/30 01:13 :W61P :☆☆☆
#196 [イリア]
:09/11/30 01:13 :W61P :☆☆☆
#197 [イリア]
:09/11/30 20:25 :W61P :☆☆☆
#198 [イリア]
――――――――――
―――――――
――――
狐「 ど こ 行 っ て た の ☆ ? 」
:09/11/30 20:26 :W61P :☆☆☆
#199 [イリア]
狐「ねぇ何?何なの?時計見える?いま何時?9時48分だって。ねえ、猫(ネコ)くん開演は何時からだっけ?」
猫「10時」
:09/11/30 20:26 :W61P :☆☆☆
#200 [イリア]
狐「流石っ!我がアスタリスク劇団きっての花形男優っ!そんな講演開始時間を間違えるなんてねぇ、そんな ま さ か っ ☆ 笑
ところでそんな講演時間まで後何分?はい狼(ロウ)くん」
狼「12分」
:09/11/30 20:27 :W61P :☆☆☆
#201 [イリア]
狐「あっはっはっ。流石だね!ヒューっ!それでさ、その舞台の主役は誰だったかな?準主役は誰だったかな?ん?え?何でそんなびしょ濡れなの?何でそんなボロボロなの?何でそんな―……」
おちゃらけ気味だった狐さんの瞳が、暗くなる。
:09/11/30 20:27 :W61P :☆☆☆
#202 [イリア]
狐「―……何でそんな、重傷なの。そこの人たち…」
そう言って、互いに支え合いようやく立っている男たちを睨む。
:09/11/30 20:27 :W61P :☆☆☆
#203 [イリア]
男「…ヘッ…問答無用で俺たちが悪役かよ…狐さんよお……」
狐「君たち、元オリオン組だよね…ま、何となくどんな状況かは分かるよ。後でたっぷり話は聞かせてもらう。たっぷりとね。」
:09/11/30 20:28 :W61P :☆☆☆
#204 [イリア]
そう冷たく言い放つと、狐に指示され、他の大道具の人たちに連れられて男たちは私たちの視界から消えた。
:09/11/30 20:29 :W61P :☆☆☆
#205 [イリア]
狐「―……お疲れ様。本当は休ませてあげたいんだけど、代わりはいないんだ。……残り11分、出れる?」
猫「当然」
狼「当たり前だ」
:09/11/30 20:30 :W61P :☆☆☆
#206 [イリア]
そう言うと猫さんと狼さんは、足早に部屋を後にする。
部屋に残ったのは、私と麗さんと狐さんと、衣装さん数人だけ。
:09/11/30 20:30 :W61P :☆☆☆
#207 [イリア]
麗「衣装は?流石にシャワー浴びる時間はないわね、タオル貰える?」
七「れっ…麗さんも出るんですか?!」
思わず素っ頓狂な声を上げる。
だってさっきまで、あんな…
精神的にきついんじゃあ……汗
:09/11/30 20:30 :W61P :☆☆☆
#208 [イリア]
麗「……当たり前でしょ、狐の言葉聞いてた?代わりなんていないの。私の代わりなんて、いる訳ないでしょ」
さっきまでとか違う、昨日までの高飛車な言い方。
:09/11/30 20:31 :W61P :☆☆☆
#209 [イリア]
七「……代わりはいなくても…でも、さっきまであんなことがあって…そこまでしてやらなくてはいけない、舞台なんですか…?!」
麗さんが私を見据える。タオルで口元を隠しているので表情までは分からない。
:09/11/30 20:31 :W61P :☆☆☆
#210 [イリア]
麗「―…あんたって本当、初心者。別に私たちが意味もなく、劇団稼業してると思ってる?ただでさえ妖との問題で忙しいってのに。本当は大人しくしときたいわよ。」
七「……?……じゃあ何で、わざわざ目立つようなことするんですか……?」
:09/11/30 20:32 :W61P :☆☆☆
#211 [イリア]
麗「…あいつら(妖)は……獣だからね、私たち(半妖)が身を潜めてると誰彼構わず襲い出す。血がそうさせる、止められないの。
……わざと、目立ってるのよ。関係ない人間への、被害を減らすため…そして何より、凶悪な妖の情報を集めるため……ま、他にも色々あるけどね……」
麗さんが止まっていた手を動かし、また濡れた髪をタオルでふく。
:09/11/30 20:33 :W61P :☆☆☆
#212 [イリア]
麗「て、あんたと話してる暇なんてないの!!あと何分?衣装かして!!」
狐「きゃー☆麗ちゃんったら、すっかり先輩っぽくなっちゃって☆生きてるうちに君の心の成長が見れて、僕 し あ わ …」
:09/11/30 20:33 :W61P :☆☆☆
#213 [イリア]
麗「邪魔、狐」
衣装「さぁさ!レディーのお着替えの時間ですわよ!男性の方は、ご退室願いますわ!!」
狐「ちぇ、別に麗ちゃんの裸なんて見慣れてるって。小さい頃、誰がお風呂にいれてあげてたと思って……」
麗「あんたに入れてもらった覚えはない!!」
:09/11/30 20:34 :W61P :☆☆☆
#214 [イリア]
ガンッ!!!
麗さんが出ていく狐さんに向かって、近くにあった箱を投げつける。
……こ、怖い……汗
狐さんの「急いでね〜〜」という、いつも通りのおちゃらけた声が遠くに聞こえる。
:09/11/30 20:35 :W61P :☆☆☆
#215 [イリア]
衣装「サイズ、大丈夫ですね?」
麗「えぇ、ありがと」
振り向くとそこには、美しい衣装を纏(マト)った綺麗な人が立っていた。
:09/11/30 20:35 :W61P :☆☆☆
#216 [イリア]
衣装「お化粧のほうなんですけど、麗さん。時間が……」
麗「仕方ないわ、前半はすっぴんで。今回の劇場は客と少し離れてるし、バレやしない。休憩の時にするから、用意だけしといて。」
衣装「はい。」
扉の向こうから、麗さんを呼ぶ声がする。
:09/11/30 20:36 :W61P :☆☆☆
#217 [イリア]
衣装「時間です!麗さん早く!」
麗「……えぇ」
そう言うと衣装さんたちは、足早に部屋を出ていった。
:09/11/30 20:36 :W61P :☆☆☆
#218 [イリア]
七「…頑張ってくださいね、麗さ…」
言葉につまる。
目の前の綺麗な人は……微かにだけど、震えていた。
:09/11/30 20:37 :W61P :☆☆☆
#219 [イリア]
七「……麗さ…っ!」
麗「もひとつ、あったわ」
私の声が、麗さんによって遮られる。
:09/11/30 20:38 :W61P :☆☆☆
#220 [イリア]
七「……え?」
麗「…どうしても舞台を休めない理由」
:09/11/30 20:38 :W61P :☆☆☆
#221 [イリア]
麗さんは震える手を固く結び、足を進める。
扉に手をかけ、ゆっくりと私のほうに振り返る。
:09/11/30 20:39 :W61P :☆☆☆
#222 [イリア]
:09/11/30 20:39 :W61P :☆☆☆
#223 [イリア]
【 ……プロだからね 】
さっき猫さんが男たちに言った言葉と、麗さんの言葉が被る。
:09/11/30 20:40 :W61P :☆☆☆
#224 [イリア]
麗「……プロだから……私たちを待っている観客がいるから……代わりなんて、いないのよ」
麗さんが扉を押し開き、向こう側に消える。
:09/11/30 20:41 :W61P :☆☆☆
#225 [イリア]
何か、言えることはないんだろうか。
震える体で、『プロ』の仕事をしにいく彼女に。
仲間を想い、たった一人で戦い続けてきた彼女に。
:09/11/30 20:41 :W61P :☆☆☆
#226 [イリア]
扉に向かって走る。
向こう側を見ると、麗さんが小走りで長い廊下を進んでいた。
七「――……麗さん…!」
少し驚いたように、その人は私に振り返る。
:09/11/30 20:42 :W61P :☆☆☆
#227 [イリア]
麗「……」
七「…私…初めてだから…」
麗「……?」
七「―……舞台、見るの初めてだから!その舞台のヒロインが麗さんで良かったです!!」
:09/11/30 20:42 :W61P :☆☆☆
#228 [イリア]
麗さんはずっと私を見てくれている。
私が喋ってるときにちゃんとこっちを見てくれたのは、出会ってから初めてなんじゃないだろうか。
七「…あ…それだけです……時間ないのに呼びとめてすいませんでした……汗」
麗「――……それで」
:09/11/30 20:43 :W61P :☆☆☆
#229 [イリア]
七「?」
麗「その初めて見る舞台のヒーローが、猫で良かったです?」
ボッ////
顔が熱くなるのが分かる。
:09/11/30 20:44 :W61P :☆☆☆
#230 [イリア]
七「いいいいいい、今はそんな話じゃなくて、私は麗さんの演技が……っ///」
麗「……クス、分かりやすい…」
え………
:09/11/30 20:44 :W61P :☆☆☆
#231 [イリア]
七「…笑った……」
麗「……何よ、文句でもある訳?」
七「いえいえ、別にそんなっ…」
狐「麗ちゃん??!!何してんの2分前!!スタンバイよろしく!!!!」
狐さんの声に、麗さんがまた走り出す。
:09/11/30 20:45 :W61P :☆☆☆
#232 [イリア]
麗「…あぁ…あと、言い忘れてた」
七「?」
麗「今回の舞台、恋愛ものじゃないの。だから主役は猫だけど、私はヒロインじゃないわ」
七「…あ…」
:09/11/30 20:45 :W61P :☆☆☆
#233 [イリア]
麗「――……だから、猫とはキスできないわね、残念だけれど。」
そう言って麗さんは、意地悪く微笑む。
:09/11/30 20:46 :W61P :☆☆☆
#234 [イリア]
七「………!!麗さん…///」
麗「……ほんと、分かりやすい…」
またまた顔が赤くなる。
いや別に、私は猫さんと麗さんがキスしたって、別に……///
麗さんが、足を動かす。
:09/11/30 20:47 :W61P :☆☆☆
#235 [イリア]
:09/11/30 20:48 :W61P :☆☆☆
#236 [イリア]
?
館内に流れる微量の風にのって、何か声が聴こえた気がする……けど
七「気のせいかな?」
そう言って私も、小走りで劇場に向かった。
:09/11/30 20:48 :W61P :☆☆☆
#237 [イリア]
―――――――
―――
――
...!.....!!!...!
....!...!!.......!!!!!!
劇場につくと、客席は満員。もの凄い歓声に圧倒される。
:09/11/30 22:17 :W61P :☆☆☆
#238 [イリア]
七「――……うわあ」
狐「七衣ちゃんっこっちこっち〜!」
狐さんの声がして振り向くと、椅子の陰に隠れるようにして私を手招きしていた。
そういえば狐さんにも、たくさんファンの人いたっけ。笑
:09/11/30 22:17 :W61P :☆☆☆
#239 [イリア]
狐さんに手を引かれ、劇場の一番後ろに立つ。
七「ここで見るんですか?」
狐「うん、舞台の両端って、意外と見にくいんだよねえ〜だから僕は大概は一番後ろで見てる。七衣ちゃん、中入りたい?」
七「いえ、…今日はここで見ます。」
:09/11/30 22:18 :W61P :☆☆☆
#240 [イリア]
ブー―――………………
劇場内に、舞台の始まりをつげる音が鳴り響く。照明が消えた。真っ暗になる。
喋る人は、誰もいない。
:09/11/30 22:18 :W61P :☆☆☆
#241 [イリア]
パッ
舞台の一点にライトが集中する。
さっきまで誰もいなかったそこには、顔は知らないが、劇団の俳優さんが一人ひざまずいている。
:09/11/30 22:19 :W61P :☆☆☆
#242 [イリア]
『……lady's and gentleman!!今日は我がアスタリスク劇団の竜ヶ森講演にお越し戴き、誠に、誠に有難う御座います!!御来場なさって下さった美しい姫、紳士な御君全員に、夢のような時間が訪れることを祈りつつ……
――……あぁ、残念。私(ワタクシ)はそろそろ、夢から覚める時間のようです。……それでは皆様…――……後程。』
:09/11/30 22:19 :W61P :☆☆☆
#243 [イリア]
―――――ガチャッ……
そう言うと舞台の上の綺麗な男性は―…
…玩具のように、膝から崩れ落ちた。
:09/11/30 22:20 :W61P :☆☆☆
#244 [イリア]
七「…え…っ…?」
その少しの間の演技力に、私以外の観客もざわめきたつ。
また照明が消え、同時に軽やかなステップの音楽が鳴り始める。
タタタッタッタ♪タタタッタッタ♪
:09/11/30 22:20 :W61P :☆☆☆
#245 [イリア]
七「……凄い……今の人、台詞もですけど、演技力…ほんとに人形みたいでした!!それに凄く綺麗な人だし!!この劇団って、ほんと…美人さんが多いですねっ!!」
:09/11/30 22:21 :W61P :☆☆☆
#246 [イリア]
狐「あの子は劇団人気ナンバー3だからねぇ…。あ、後この舞台の演名は『カラクリ・四重奏(カルテット)』捨てられた玩具たちと、大人になれない子ども達の話だよ。ちなみに脚本は ぼ く ☆」
七「凄い凄い凄い!!」
:09/11/30 22:22 :W61P :☆☆☆
#247 [イリア]
興奮する私を横目に、狐さんが優しく笑う。
狐「……怖い思い、させちゃったね」
七「……え…?」
狐「大まかなことは、さっき狼くんから聞いたよ。あの男たちの処分は、責任持って僕がするから……」
七「……あの…っ…」
狐「?」
:09/11/30 22:23 :W61P :☆☆☆
#248 [イリア]
七「…泣いて…たんです、さっき…あの人たち…確かに、麗さんにしたことは許されない…けど…何で…」
狐「……何で、泣いてたかって?」
七「はい…」
狐「…さぁ…はっきりしたことは分かんないけど、……妖は、卑怯だからねえ…」
:09/11/30 22:23 :W61P :☆☆☆
#249 [イリア]
七「……?」
狐「ううん…何でもない。とりあえずあの男たちはいま折檻(セッカン)してるから。この舞台が落ち着いたら、詳しく聞き出すよ…もしかしたら」
七「?」
:09/11/30 22:23 :W61P :☆☆☆
#250 [イリア]
狐「――……雨原一族のことも、聞けるかもね……?」
:09/11/30 22:24 :W61P :☆☆☆
#251 [イリア]
狐さんの瞳が曇る、
なんて、返事すればいいのか。
こんなとき私は、何の言葉も思いつかない。
そうだ私、なにも覚えていないんだった。
:09/11/30 22:25 :W61P :☆☆☆
#252 [イリア]
狐「…さっ!暗い話は終わり☆僕からしだしといて何だけど!舞台に集中しよっかあ〜ちなみに僕の密かな楽しみは、みんながどれだけ台詞を間違えたかを数えることなんだけ」
七「……あ。」
狐「ん?」
:09/11/30 22:25 :W61P :☆☆☆
#253 [イリア]
七「……お使い……結局、ペン買ったのに、店に置いてきちゃった…」
私の顔を見て、狐さんが笑った。
狐「七衣ちゃん、初めてのお使い失敗だね…ククク、次頑張って?」
七「……はい…」
:09/11/30 22:25 :W61P :☆☆☆
#254 [イリア]
それからは舞台を集中して見た。
狼さんは子どもの頃の色んな事情が重なって、大人になれなかった役。
麗さんは、捨てられた玩具。女の子が小さい頃クリスマスに親から貰い、捨てられた今も女の子とした『ずっと一緒』という約束を信じている可哀想なお人形。さっきまで震えてたのが嘘みたいな、初心者から見て、完璧な演技だった。
そして――…………
:09/11/30 22:26 :W61P :☆☆☆
#255 [イリア]
『……嗚呼、人間。貴方は私達を捨てたのに、何故【大人】にならない?【大人】とゆう【物】になるため、私達を捨てたのではなかったのか。
【成長】の【仮定】として、ただの【人間】の【都合】で、感情を持つカラクリ……
私達を【造り】、【殺した】のではなかったのか。そして―……』
:09/11/30 22:27 :W61P :☆☆☆
#256 [イリア]
黒猫『――……【愛した】のでは、なかったのか。』
綺麗な声に、聞き惚れる。
:09/11/30 22:28 :W61P :☆☆☆
#257 [イリア]
:09/11/30 22:28 :W61P :☆☆☆
#258 [イリア]
シン、とした会場に猫さんの声が響く。
艶やかに笑う舞台の上の猫さんを見て、
客席から息を飲む気配がした。
:09/11/30 22:29 :W61P :☆☆☆
#259 [イリア]
ザッッ
一瞬で赤いカーテンが落ち、舞台の上の人たちが見えなくなる。照明が落ち、真っ暗になった。
:09/11/30 22:29 :W61P :☆☆☆
#260 [イリア]
.....!!!!!......ワァッッッ....!!!!
客席に活気が戻った。
鳴り止まない拍手。
私も赤くなるまで手を叩く。
狐さんが手元のノートを見ながら話しかけてくる。
:09/11/30 22:29 :W61P :☆☆☆
#261 [イリア]
狐「終わったよーん。ちぇ、猫くんは今回もノーミスか。後は……陰宮(カゲミヤ)くんがワンミス………狼くんは四回……あら、珍しい……で、麗ちゃんは六回………今回のドベは依海(イウミ)ちゃんだな……後で反省会だ………よし!カーテンコールで終了だ。僕らも戻ろうか、七衣ちゃん。」
なんか…大変だな、監督って。汗
:09/11/30 22:30 :W61P :☆☆☆
#262 [イリア]
こんばんはっ!
中途半端ですが、一体ここで
切らせてもらいます(´゚д゚`)
続きはいつになるか分かりませんが、
なるべく早く書くようにしたいです♪
読んでくださった方、
良ければ感想板に
感想.アドバイスお願いします。
必ず返信させて頂きます( ´ω` )!
:09/11/30 22:34 :W61P :☆☆☆
#263 [イリア]
:09/11/30 22:36 :W61P :☆☆☆
#264 [*]
:10/01/30 00:43 :N02A :☆☆☆
#265 [ボインン]
書いて〜
:10/02/02 13:57 :PC :☆☆☆
#266 [我輩は匿名である]
続き気になります(´∀`;)
:10/04/14 21:09 :SH001 :☆☆☆
#267 []
こっちもあげ
:11/02/21 13:59 :W61P :☆☆☆
#268 [ぴめ]
気になる
:11/03/22 14:16 :N03A :☆☆☆
#269 [我輩は匿名である]
あげー!
:12/08/23 21:51 :Android :☆☆☆
#270 [我輩は匿名である]
あげ!!
:12/11/06 21:24 :F01C :☆☆☆
#271 [匿名]
あげあげ
:12/12/28 14:02 :KYL21 :☆☆☆
#272 [&◆JJNmA2e1As]
[完]👷👨👩🦱👨🦱👂🦻🧠👱♀️👨🦰😻👩🦰
:22/10/01 18:12 :Android :☆☆☆
#273 [&◆JJNmA2e1As]
[完]👷👨👩🦱👨🦱👂🦻🧠👱♀️👨🦰😻
:22/10/01 18:28 :Android :☆☆☆
#274 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/01 22:57 :Android :☆☆☆
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