黒猫の棲むところU
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#101 [イリア]
店「あー誰だろね。
この街さ、結構治安悪いしね。
お嬢ちゃんは近寄っちゃだめだよ」
七「――……麗さん…?」
店「はぃ?」
:09/04/04 01:24 :W61P :☆☆☆
#102 [イリア]
七「……今の声……麗さん…?
でもまさか…すいません、
いま何時ですか??!!!」
言いながら、時計を探す。
私の真後ろに大きな時計があった。
:09/04/04 01:26 :W61P :☆☆☆
#103 [イリア]
店「9時28分だね。
どうしたんだい、そんなに慌てて?」
9時半――……?
午前の舞台って確か、
10時からだったよね?
何でこんなとこに
麗さんがいるの?
:09/04/04 01:26 :W61P :☆☆☆
#104 [イリア]
脳裏に昨日のことが浮かび上がる。
麗さんと、大道具の人たち。
痣を(アザ)内緒にしてた、麗さんのこと。
七「――…………ッッ!!!!!」
:09/04/04 01:27 :W61P :☆☆☆
#105 [イリア]
店の出口まで走る。
麗さんの姿はない。
どこに行ったんだろう。
近くの人に尋(タズ)ねる。
七「すいません!!いまここで…
離してッて叫んでた、
女の人いましたよね?
どこに行ったか分かりますか??!!」
:09/04/04 01:27 :W61P :☆☆☆
#106 [イリア]
「は?…あぁ、あの子…
何人かの男に連れられて、
あっちに真っ直ぐ行ったけど…
あんた知り合い?
やっぱまずいかな。
ここらへん通行人少ないし、
俺しか見てなかったし…
警察って連絡したほうがい…」
七「今すぐ連絡して下さい!!早く!!
どこ行ったんだろ……
有難うございました!!」
:09/04/04 01:28 :W61P :☆☆☆
#107 [イリア]
教えてもらった方角に走る。
傘はささない。
雨はまた、少しずつ降ってきた。
後ろから店員さんの声がしたけど
そのときの私には聞こえなかった。
:09/04/04 01:28 :W61P :☆☆☆
#108 [イリア]
:09/04/04 01:32 :W61P :☆☆☆
#109 [イリア]
:09/04/05 02:33 :W61P :☆☆☆
#110 [イリア]
:09/04/05 02:33 :W61P :☆☆☆
#111 [イリア]
言われた通り真っ直ぐ走ると、
さっきいた場所よりずっと
人通りが少なくなってきた。
立ち止まり、辺りをを見渡す。
――……誰もいない。
:09/04/05 02:34 :W61P :☆☆☆
#112 [イリア]
七「……………」
聞き間違い?
確かに、麗さんの声だったと思うけど…
でも、もうすぐ舞台の始まる時間だし
もしかしたら―――………
:09/04/05 02:34 :W61P :☆☆☆
#113 [イリア]
七「………麗さん………」
男「あーッ!!いたいたッ!!!!」
七「?」
振り返ると、知っている顔が二つ。
:09/04/05 02:34 :W61P :☆☆☆
#114 [イリア]
男「七衣ちゃんだっけぇ?
俺らのこと知ってるぅ〜?」
語尾を上げる癖が耳につく。
猫さんの声と、真逆の音。
:09/04/05 02:35 :W61P :☆☆☆
#115 [イリア]
七「……昨日、森で
麗さんと話してた…」
男「ピンポーンっ♪♪
元オリオン劇団でぇ、合併されて
アスタリスクの一員になったんだよ☆
宜しくねえ〜♪」
:09/04/05 02:35 :W61P :☆☆☆
#116 [イリア]
七「――…何であなた達が、
ここにいるんですか?
舞台の手伝いをしてって、
狐さんが言ってたじゃないですか…」
嫌な予感がする。
さっき抱いた微(カス)かな期待が、
頭の中から消えてなくなる。
:09/04/05 02:36 :W61P :☆☆☆
#117 [イリア]
七「―……さっき文房具屋の前で…
麗さんの声、してませんでした?
……麗さん近くにいるんですか?」
男「さぁ〜ね〜?どう思う?」
:09/04/05 02:36 :W61P :☆☆☆
#118 [イリア]
七「―……ッッ!!ふざけないで下さい!!
麗さんいるんですか?!何で??!!
昨日のことだって……
どこにいるんですか??!!
早く言わないと、誰か人を―…ッッ!!」
男「黙れよ雨原ぁ〜」
七「!!」
後ろから羽交い締めにされる。
気がつかないうちに、
後ろにもう一人いたらしい。
:09/04/05 02:38 :W61P :☆☆☆
#119 [イリア]
七「離して下さいッッ!!!!」
男「あんたってさ、いっつもそうなの?
誰か人をってさ、あんたは?
あんたは何もしない訳?」
七「――……ッッ!!」
:09/04/05 02:38 :W61P :☆☆☆
#120 [イリア]
男「昨日も森で、
あんたが狼を呼びにいったんだろ?
何ですぐ飛び出して来なかったの?
本当に麗のこと好きなら、
なりふり構わず、
飛び出してくるっしょ〜」
:09/04/05 02:39 :W61P :☆☆☆
#121 [イリア]
考える。
思い出す。
昨日、私は森で
かなわないと思ったから
狼さんを呼びに行った。
震えてる麗さんを残して。
:09/04/05 02:39 :W61P :☆☆☆
#122 [イリア]
男「…まぁ所詮、俺たち半妖と人間は
解(ワカ)りあえないってこと♪
特にあんたら、雨原一族とはさぁ」
男「それにしても、
アスタリスクも墜ちたよなあ〜
まさか雨原を、
団員にするとは思わなかった」
:09/04/05 02:40 :W61P :☆☆☆
#123 [イリア]
男「雨原一族なんてさ、
利用して捨てるに限るよ♪
てか、最近続いてる雨も
よく考えたらこいつのせいじゃね?
まぢ体だるいんですけどー」
七「――…ッッ!!!!
知りませんよ、そんなの!!
いいから離して!!麗さんはどこ?!」
:09/04/05 02:41 :W61P :☆☆☆
#124 [イリア]
男「あははー♪威勢いいね。
あんたさ、黒猫や団長に
気に入られてるからって
調子のってない?
言いたくないけど、俺たちさぁ…」
後ろで私の首をしめてる
男性の声がやむ。
不思議に思って振り向こうとすると、
首もとに痛みが走った。
:09/04/05 02:41 :W61P :☆☆☆
#125 [イリア]
七「――――……………痛………」
何かに噛まれている感じがする。
なに―――………?
男「…雨原一族、嫌いなんだよね」
首もとから、血の香り。
甘い甘い、あの夢と同じ。
:09/04/05 02:42 :W61P :☆☆☆
#126 [イリア]
男「うわ、やっぱこの女
本当に雨原なんだー…うん、
嫌な臭いがする。雨原の香り。」
男「…おい、あんまり血流させるな。
誰かが気づく。」
:09/04/05 02:43 :W61P :☆☆☆
#127 [イリア]
その声と同時に、私の首もとから
何か、が 離れた。
男「ペッ!まっずー
雨原一族なんて、噛むもんじゃないね」
:09/04/05 02:43 :W61P :☆☆☆
#128 [イリア]
七「――…吸血鬼(ヴァンパイア)…?」
男「おしいねー吸血鬼ではないよ♪
俺たちはコウモリの妖と
人間の間で生まれた半妖。
まぁ昔話みたく、噛まれたからって
あんたまで吸血鬼になることはないし
安心していいよー♪」
:09/04/05 02:45 :W61P :☆☆☆
#129 [イリア]
そう言われ、腕を引っ張られる。
頭がクラクラして、立っていられない。
その場に倒れこんだ。
男「おいおい、どんだけ吸ったわけ?」
男「ごめーん♪だってさ、
雨原一族の血だぜ?今貰わないと
一生飲むことなんて出来ないだろうし」
:09/04/05 02:45 :W61P :☆☆☆
#130 [イリア]
男「それもそうか…
まぁとりあえず続きは、
場所を移動させてからね♪」
意識が朦朧(モウロウ)としだす。
駄目、今意識を飛ばしたら、
必ず後悔する。
:09/04/05 02:46 :W61P :☆☆☆
#131 [イリア]
下唇を噛み、意識を保つ。
男達は私の腕を引っ張り、
引きずるように歩き出した。
:09/04/05 02:46 :W61P :☆☆☆
#132 [イリア]
しばらくすると、
道は行き止まりになった。
暗く狭い路地裏。
そこにいたのは、男性一人と、麗さん。
男「遅っせ〜待ちくたびれた…って、
あら、雨原?本当にいたんだ」
:09/04/05 02:46 :W61P :☆☆☆
#133 [イリア]
麗「――………ッッ??!!」
麗さんの驚いている顔が見える。
麗さんは紐(ヒモ)か何かで
腕を後ろで縛られていて、
壁にもたれ座りこんでいた。
でも、怪我はしてなさそう……
:09/04/05 02:48 :W61P :☆☆☆
#134 [イリア]
麗「ちょっとッッ!!!!!」
麗さんの声が、狭い路地裏に響く。
麗「何よ、その子……その血…
…ッッ!!本当いい加減にしてよ!!!!
何でこんなことするの!!!!
雨原は…関係ないでしょ??!!」
:09/04/05 02:52 :W61P :☆☆☆
#135 [イリア]
血が足りないからか
本当に飛びかけていた意識が、
麗さんの声で引き戻される。
:09/04/05 02:52 :W61P :☆☆☆
#136 [イリア]
男「関係なくはないでしょー♪
記憶はなくても、雨原なんだし?
別に個人的な恨みはないけど、
何かさ…雨原一族って
嫌いなんだよねー」
麗「……何言ってんの……
血は止まってるの?
止血はしてるの?」
:09/04/05 02:52 :W61P :☆☆☆
#137 [イリア]
麗さんの声で初めて気づく。
さっき噛まれた傷は
今も熱を持っていた。
耳に近いせいか、
ドクドクと、血の流れる音がする。
:09/04/05 02:53 :W61P :☆☆☆
#138 [イリア]
男「……やけに雨原のこと、
気にかけるのね〜……
止血?してるわけないじゃん。
思いっきり噛んじゃったから、
まだ血も止まってない。」
麗「……何で…こんなことするの……」
男「聞きたい?最後だし、
教えてあげようか?」
:09/04/05 02:53 :W61P :☆☆☆
#139 [イリア]
私のそばにいた男が一人、
麗さんに近づく。
男「俺たちさぁ、麗ちゃんの読み通り…
――………妖側の、スパイなの。」
麗「………ッッ!!」
:09/04/05 02:54 :W61P :☆☆☆
#140 [イリア]
男「半妖と妖が仲違いした日、
俺たちは妖に雇われたんだよね。
妖側に危害を加える恐れがないか
半妖の動きを観察…
移動場所をあらかじめ
妖側に伝えといて、
奇襲をかけさせたりもした」
:09/04/05 02:56 :W61P :☆☆☆
#141 [イリア]
麗「……………ッッ!!…」
七「―――……??」
麗さんの目からは、涙がこぼれていた。
:09/04/05 02:56 :W61P :☆☆☆
#142 [イリア]
男「あはは!!泣くほど悔しい?
そりゃそうか、あんたら
アスタリスク劇団の移動ルートも
妖たちに流してたから♪
………結構減ったもんねぇ?数?」
麗さんの涙が頬を伝い、
コンクリートの上に落ちる。
:09/04/05 02:57 :W61P :☆☆☆
#143 [イリア]
七「――…??どういう……??」
必死に声を絞り出す。
麗さんは今、何で泣いているの?
:09/04/05 02:57 :W61P :☆☆☆
#144 [イリア]
男「あー新入りちゃんには
分かんない?あのね、
もともとこの世界には
半妖組織が二つあってね。
アスタリスク劇団と、オリオン劇団。
劇団は違っても、各地で妖と戦う
仲間だったわけだよ、だけど…」
:09/04/05 02:58 :W61P :☆☆☆
#145 [イリア]
――……アスタリスク劇団はご覧の通り
もう一つの半妖組織、
オリオン劇団と合併することになりました。
理由はたび重なる妖との戦いで
半妖の数が減っちゃったから――…
昨日の狐さんの言葉が頭に響いた。
:09/04/05 02:58 :W61P :☆☆☆
#146 [イリア]
男「昨日団長さんが言ってたとおり
このたび見事に合併することに
なったのね♪……まぁ理由は、
俺たちからの情報によって
的確に攻めてきた妖に…
……半妖たちが、
殺られちゃったからなんだけど」
麗「……うるさいッッ!!!!」
麗さんが叫ぶ。
:09/04/05 03:01 :W61P :☆☆☆
#147 [イリア]
麗「……うるさいよ、もう……
もう止めてよ……」
男「…残念だったよねぇ〜
半妖も必死に戦ったみたいだけど。
…仲間がさぁ、目の前で死ぬのって…
…あはは!!俺には分かんねぇや!!」
:09/04/05 03:02 :W61P :☆☆☆
#148 [イリア]
最低。
笑い続ける男達を睨(ニラ)む。
それを覚えてて、
それで泣いてる麗さんを前に
何でそんな風に笑えるの?
:09/04/05 03:02 :W61P :☆☆☆
#149 [イリア]
:09/04/05 03:03 :W61P :☆☆☆
#150 [イリア]
男「…雨原もさ、不運だよね。
もうちょい時期がズレてれば…
……こんな目に会わずに済んだのに」
七「麗さん」
名前を呼ぶ。
応(コタ)えて欲しいから。
逃げないで、
今だけは誰にも頼りたくない。
:09/04/05 03:03 :W61P :☆☆☆
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