黒猫の棲むところU
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#1 [イリア]
:09/04/01 20:12 :W61P :☆☆☆
#2 [イリア]
:09/04/01 20:12 :W61P :☆☆☆
#3 [イリア]
:09/04/01 20:12 :W61P :☆☆☆
#4 [イリア]
:09/04/01 20:13 :W61P :☆☆☆
#5 [イリア]
:09/04/01 22:37 :W61P :☆☆☆
#6 [イリア]
:09/04/01 22:37 :W61P :☆☆☆
#7 [イリア]
トン トン トン……
そこは暗く、少し肌寒い部屋。
窓は開き、月が顔を覗かせている。
トン トン トン……
:09/04/01 22:38 :W61P :☆☆☆
#8 [イリア]
少年は一人きりでその部屋にいた。
家具はほぼなく、嫌みなほどに広い。
ただ一つ、無造作に置かれた花瓶が
その殺風景な暗い部屋にいる
少年の孤独さを際だたせている。
:09/04/01 22:39 :W61P :☆☆☆
#9 [イリア]
トン トン トン……トン
窓辺に腰かけ、一定のリズムで
金属の枠を叩いていた少年は
手を止め、ふと扉のほうを見る。
:09/04/01 22:39 :W61P :☆☆☆
#10 [イリア]
:09/04/01 22:39 :W61P :☆☆☆
#11 [イリア]
「――……凪夜(ナギヤ)?」
窓辺に座る少年が、
クスリ と笑って
扉の向こうに話しかけた。
:09/04/01 22:40 :W61P :☆☆☆
#12 [イリア]
「何してるの?入ってきなよ」
少年が言葉を続ける。
ガチャリという音がしたとき
その重い扉が開いた。
:09/04/01 22:40 :W61P :☆☆☆
#13 [イリア]
「――……失礼します、葵(アオイ)様」
入ってきた子は
その堅気な言葉使いとは違い、
葵、と呼ばれた少年より
少しだけ、幼く見える。
:09/04/01 22:41 :W61P :☆☆☆
#14 [イリア]
葵「……アハハ、様なんてやめてよ
凪夜は僕らにとって、
とっても大切な子なんだよ?」
:09/04/01 22:41 :W61P :☆☆☆
#15 [イリア]
少年は笑う。
扉の外にいた子よりは年上に見えるが
それでも16、17くらいだろう。
:09/04/01 22:43 :W61P :☆☆☆
#16 [イリア]
凪「…そう言うわけにはいきません…
葵様、その血――………ッッ??!!!」
葵という少年の体を見た瞬間、
凪夜と呼ばれた子の声色が変わる。
:09/04/01 22:44 :W61P :☆☆☆
#17 [イリア]
葵「あぁこれ?」
そう言って灰色の少年は
腕で左頬を拭(ヌグ)う。
シルクのような滑らかな衣類に
少年の頬の朱がつく。
:09/04/01 22:45 :W61P :☆☆☆
#18 [イリア]
凪「どうされたのですか…誰に…ッッ!!」
葵「凪夜」
言葉を途切らせる。
:09/04/01 22:45 :W61P :☆☆☆
#19 [イリア]
葵「違うよこれ、返り血。
僕の血じゃない」
少年が笑う。
凪「…ッッ…取り乱し…失礼しました」
息も淫らに、
凪夜は葵に、深々と頭を下げる。
葵「ううん、嬉しい」
:09/04/01 22:46 :W61P :☆☆☆
#20 [イリア]
そう言うと灰色の少年は
窓辺からゆっくり立ち上がり、
凪夜と呼ばれた子の元へ歩く。
:09/04/01 22:47 :W61P :☆☆☆
#21 [イリア]
葵「嬉しいんだよ、凪夜。
僕を心配してくれるなんて…
そんなの”ナナ”だけかと思ってた」
葵は細く白い手で
凪夜の頬に軽く触れる。
:09/04/01 22:48 :W61P :☆☆☆
#22 [イリア]
:09/04/01 22:48 :W61P :☆☆☆
#23 [イリア]
サ――――…………
風が吹く。
開け放たれた窓から入る風は
部屋の中の二人に冷たさを与える。
:09/04/01 22:48 :W61P :☆☆☆
#24 [イリア]
葵「寒い?」
凪「いえ…」
葵「そう?僕は寒いとか
あんまり分かんないからさ」
少年はそう言いながらも
窓辺まで戻り、静かに窓を閉めた。
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#25 [イリア]
凪「――…葵様…」
葵「ん?なぁに?」
凪「……この花………」
:09/04/01 22:50 :W61P :☆☆☆
#26 [イリア]
凪夜の目線の先には
この部屋のただ一つのモノ。
無造作に置かれた花瓶の中には
一本の花。
:09/04/01 22:51 :W61P :☆☆☆
#27 [イリア]
葵「……あぁ、これ?
フフ…綺麗でしょ?
花は”ナナ”が好きなものだから」
凪「あの子は死んだ」
凪夜の声が、広い部屋に響く。
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#28 [イリア]
凪「―…あの子は…
あの日、死んだんでしょう?
……葵様、目を覚まして下さ…」
葵「生きてるよ」
葵が花瓶に近づき、
中の花にそっと触れる。
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#29 [イリア]
葵「生きてる。感じる。
……僕には分かる」
凪「……」
:09/04/01 22:52 :W61P :☆☆☆
#30 [イリア]
葵「……フフ、本当だよ。
凪夜には内緒にしてたけど、
調べて貰ってたんだ」
凪「……調べて貰ってた…?
じゃあ…あの子は本当に、
生きてるんですか…?」
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#31 [イリア]
葵「うん。だから、迎えに行くの。」
そう言うと葵は
嬉しそうにクスクス笑った。
:09/04/01 22:53 :W61P :☆☆☆
#32 [イリア]
凪「―…迎え…?」
葵「”ナナ”は、
僕がいないと何もできないから。
だから僕が迎えに行くんだよ。」
葵が言う。
:09/04/01 22:53 :W61P :☆☆☆
#33 [イリア]
凪「……………」
葵「ねぇ凪夜。
この花が何か知ってる?」
少年は笑って
花を花瓶から取り出す。
その花の切り口からは
水滴がこぼれ落ちた。
:09/04/01 22:56 :W61P :☆☆☆
#34 [イリア]
凪「……いえ」
葵「この花の名は、”ニコチアナ”。
花言葉は、”あなたがいれば”」
:09/04/01 22:56 :W61P :☆☆☆
#35 [イリア]
凪「…………」
葵「ねぇまるで、僕とナナのための
花言葉だ。そう思わない?」
凪「………僕は……
………私はッッ………!!」
葵「僕はナナさえいればいい」
:09/04/01 22:57 :W61P :☆☆☆
#36 [イリア]
葵の声が部屋に響く。
花瓶から取り出された花は
少しずつ元気をなくす。
:09/04/01 22:57 :W61P :☆☆☆
#37 [イリア]
葵「そしてナナには、
僕だけいればいいんだ。
ずっとそうやって生きてきた。」
少年の瞳に影がうつる。
先ほどまでの幼さは、もうない。
:09/04/01 22:57 :W61P :☆☆☆
#38 [イリア]
葵「―…ナナに近づくヒトは、
みんな僕が殺してあげる」
クスクスと笑う少年。
その近くにいる凪夜の表情に
戸惑いが表れる。
:09/04/01 22:58 :W61P :☆☆☆
#39 [イリア]
凪「……何故……そんなに…」
葵「僕の考え、たった一つの望み。
――……ねぇ凪夜、分かる?」
月が雲に隠れて、光が消える。
もう互いの顔は見えない。
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#40 [イリア]
:09/04/01 22:59 :W61P :☆☆☆
#41 [イリア]
:09/04/01 22:59 :W61P :☆☆☆
#42 [イリア]
天気は普通。
気分も普通。
緊張しがちな舞台の初日には
もってこいのコンディショ…
猫「どこがだよ」
:09/04/01 23:02 :W61P :☆☆☆
#43 [イリア]
すぐ隣で猫さんの声がした。
猫「天気はどしゃ降り。気分は最悪。
舞台は初日から満員御礼、のくせに
俺たち役者は雨が苦手で
既にヘロヘロ。」
不機嫌そうな猫さんの声。
:09/04/01 23:02 :W61P :☆☆☆
#44 [イリア]
七「いや私、声に出してませんよね?」
猫「フフン、あんたは考えてることが、
すぐ顔に出るから分かりやすい。」
なんて失礼な。
って言うわけで…
:09/04/01 23:03 :W61P :☆☆☆
#45 [イリア]
舞台の初日になる今日は
あいにくのどしゃ降り。
別に雨なんて
私からしたら普通だけど、
猫さんたち半妖からしたら
雨は本当に苦手なものらしい。
:09/04/01 23:04 :W61P :☆☆☆
#46 [イリア]
七「でも舞台は建物の中で
行われるんでしょ?
なら、大丈夫じゃないですか。」
猫「あんたは本当にお気楽だな。
俺たちの嗅覚(キュウカク)なめんなよ、
雨の匂いだけで倒れそうだよ。」
:09/04/01 23:04 :W61P :☆☆☆
#47 [イリア]
猫さんがそこまで言ったとき、
遠くから狐さんの声がした。
狐「はいはいはい〜
みんな大丈夫かな〜?
まぁ天気は生憎(アイニク)だけど、
今日も僕らのファンのために
精いっぱい頑張りましょ〜」
:09/04/01 23:04 :W61P :☆☆☆
#48 [イリア]
大分ちゃらけてるが、
狐さんもヘロヘロな感じ。
だ、大丈夫なのかな…………?汗
:09/04/01 23:05 :W61P :☆☆☆
#49 [イリア]
じゃあそろそろ移動するよ〜
狐さんの声。
今から講演場所まで徒歩移動らしく
大道具の人たちが傘を配っている。
:09/04/02 00:04 :W61P :☆☆☆
#50 [イリア]
七「………………あ」
私はあるものを見つけ、
近くの茂(シゲ)みにしゃがみこんだ。
:09/04/02 00:05 :W61P :☆☆☆
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