黒猫の棲むところU
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#1 [イリア]



 黒猫の棲むところ


 クロネコノ スムトコロ


>>2

⏰:09/04/01 20:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#2 [イリア]



>>3安価

>>4感想板、前作


⏰:09/04/01 20:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#3 [イリア]


>>1-50
>>51-100
>>101-150
>>151-200
>>201-250
>>251-300
>>301-350
>>351-400
>>401-450
>>451-500
>>501-550
>>551-600
>>601-650
>>651-700
>>701-750
>>751-800
>>801-850
>>851-900
>>901-950
>>951-1000

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#4 [イリア]



感想、アドバイス
お待ちしてます(゚∀゚)★


【感想板】

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4322/
【黒猫の棲むところ】

bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/10148/


⏰:09/04/01 20:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#5 [イリア]









⏰:09/04/01 22:37 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#6 [イリア]



 第三話:雨音の唄



 アマオトノ ウタ

⏰:09/04/01 22:37 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#7 [イリア]



トン トン トン……



そこは暗く、少し肌寒い部屋。

窓は開き、月が顔を覗かせている。



トン トン トン……


⏰:09/04/01 22:38 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#8 [イリア]



少年は一人きりでその部屋にいた。

家具はほぼなく、嫌みなほどに広い。

ただ一つ、無造作に置かれた花瓶が
その殺風景な暗い部屋にいる
少年の孤独さを際だたせている。


⏰:09/04/01 22:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#9 [イリア]



トン トン トン……トン






窓辺に腰かけ、一定のリズムで
金属の枠を叩いていた少年は
手を止め、ふと扉のほうを見る。


⏰:09/04/01 22:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#10 [イリア]





灰色の髪、深青の瞳。


頬や衣類は、血で濡れている。


⏰:09/04/01 22:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#11 [イリア]




「――……凪夜(ナギヤ)?」



窓辺に座る少年が、
クスリ と笑って
扉の向こうに話しかけた。


⏰:09/04/01 22:40 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#12 [イリア]



「何してるの?入ってきなよ」


少年が言葉を続ける。

ガチャリという音がしたとき
その重い扉が開いた。


⏰:09/04/01 22:40 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#13 [イリア]





「――……失礼します、葵(アオイ)様」




入ってきた子は
その堅気な言葉使いとは違い、

葵、と呼ばれた少年より
少しだけ、幼く見える。


⏰:09/04/01 22:41 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#14 [イリア]



葵「……アハハ、様なんてやめてよ

凪夜は僕らにとって、
とっても大切な子なんだよ?」


⏰:09/04/01 22:41 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#15 [イリア]



少年は笑う。

扉の外にいた子よりは年上に見えるが
それでも16、17くらいだろう。


⏰:09/04/01 22:43 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#16 [イリア]



凪「…そう言うわけにはいきません…
葵様、その血――………ッッ??!!!」



葵という少年の体を見た瞬間、
凪夜と呼ばれた子の声色が変わる。


⏰:09/04/01 22:44 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#17 [イリア]



葵「あぁこれ?」


そう言って灰色の少年は
腕で左頬を拭(ヌグ)う。

シルクのような滑らかな衣類に
少年の頬の朱がつく。


⏰:09/04/01 22:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#18 [イリア]



凪「どうされたのですか…誰に…ッッ!!」






葵「凪夜」


言葉を途切らせる。


⏰:09/04/01 22:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#19 [イリア]



葵「違うよこれ、返り血。
僕の血じゃない」


少年が笑う。


凪「…ッッ…取り乱し…失礼しました」

息も淫らに、
凪夜は葵に、深々と頭を下げる。

葵「ううん、嬉しい」


⏰:09/04/01 22:46 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#20 [イリア]



そう言うと灰色の少年は
窓辺からゆっくり立ち上がり、

凪夜と呼ばれた子の元へ歩く。


⏰:09/04/01 22:47 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#21 [イリア]



葵「嬉しいんだよ、凪夜。
僕を心配してくれるなんて…

そんなの”ナナ”だけかと思ってた」



葵は細く白い手で
凪夜の頬に軽く触れる。


⏰:09/04/01 22:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#22 [イリア]









葵「有難う、凪夜。」


⏰:09/04/01 22:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#23 [イリア]



サ――――…………


風が吹く。

開け放たれた窓から入る風は
部屋の中の二人に冷たさを与える。


⏰:09/04/01 22:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#24 [イリア]



葵「寒い?」


凪「いえ…」


葵「そう?僕は寒いとか
あんまり分かんないからさ」


少年はそう言いながらも
窓辺まで戻り、静かに窓を閉めた。


⏰:09/04/01 22:50 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#25 [イリア]



凪「――…葵様…」


葵「ん?なぁに?」


凪「……この花………」


⏰:09/04/01 22:50 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#26 [イリア]



凪夜の目線の先には
この部屋のただ一つのモノ。


無造作に置かれた花瓶の中には

一本の花。


⏰:09/04/01 22:51 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#27 [イリア]



葵「……あぁ、これ?
フフ…綺麗でしょ?
花は”ナナ”が好きなものだから」





凪「あの子は死んだ」


凪夜の声が、広い部屋に響く。


⏰:09/04/01 22:51 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#28 [イリア]



凪「―…あの子は…
あの日、死んだんでしょう?
……葵様、目を覚まして下さ…」


葵「生きてるよ」


葵が花瓶に近づき、
中の花にそっと触れる。


⏰:09/04/01 22:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#29 [イリア]



葵「生きてる。感じる。

……僕には分かる」




凪「……」


⏰:09/04/01 22:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#30 [イリア]



葵「……フフ、本当だよ。

凪夜には内緒にしてたけど、
調べて貰ってたんだ」



凪「……調べて貰ってた…?
じゃあ…あの子は本当に、
生きてるんですか…?」


⏰:09/04/01 22:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#31 [イリア]





葵「うん。だから、迎えに行くの。」




そう言うと葵は
嬉しそうにクスクス笑った。


⏰:09/04/01 22:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#32 [イリア]



凪「―…迎え…?」


葵「”ナナ”は、
僕がいないと何もできないから。

だから僕が迎えに行くんだよ。」



葵が言う。


⏰:09/04/01 22:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#33 [イリア]



凪「……………」


葵「ねぇ凪夜。
この花が何か知ってる?」


少年は笑って
花を花瓶から取り出す。

その花の切り口からは
水滴がこぼれ落ちた。


⏰:09/04/01 22:56 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#34 [イリア]



凪「……いえ」



葵「この花の名は、”ニコチアナ”。

花言葉は、”あなたがいれば”」


⏰:09/04/01 22:56 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#35 [イリア]



凪「…………」


葵「ねぇまるで、僕とナナのための
花言葉だ。そう思わない?」


凪「………僕は……

………私はッッ………!!」



葵「僕はナナさえいればいい」


⏰:09/04/01 22:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#36 [イリア]



葵の声が部屋に響く。

花瓶から取り出された花は
少しずつ元気をなくす。


⏰:09/04/01 22:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#37 [イリア]



葵「そしてナナには、
僕だけいればいいんだ。

ずっとそうやって生きてきた。」




少年の瞳に影がうつる。
先ほどまでの幼さは、もうない。


⏰:09/04/01 22:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#38 [イリア]








葵「―…ナナに近づくヒトは、
みんな僕が殺してあげる」


クスクスと笑う少年。

その近くにいる凪夜の表情に
戸惑いが表れる。


⏰:09/04/01 22:58 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#39 [イリア]



凪「……何故……そんなに…」


葵「僕の考え、たった一つの望み。

――……ねぇ凪夜、分かる?」





月が雲に隠れて、光が消える。
もう互いの顔は見えない。


⏰:09/04/01 22:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#40 [イリア]













葵「――……僕はナナを、守りたい」


⏰:09/04/01 22:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#41 [イリア]












⏰:09/04/01 22:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#42 [イリア]



天気は普通。

気分も普通。


緊張しがちな舞台の初日には
もってこいのコンディショ…




猫「どこがだよ」


⏰:09/04/01 23:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#43 [イリア]



すぐ隣で猫さんの声がした。


猫「天気はどしゃ降り。気分は最悪。
舞台は初日から満員御礼、のくせに
俺たち役者は雨が苦手で
既にヘロヘロ。」


不機嫌そうな猫さんの声。


⏰:09/04/01 23:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#44 [イリア]



七「いや私、声に出してませんよね?」


猫「フフン、あんたは考えてることが、
すぐ顔に出るから分かりやすい。」




なんて失礼な。

って言うわけで…


⏰:09/04/01 23:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#45 [イリア]



舞台の初日になる今日は
あいにくのどしゃ降り。


別に雨なんて
私からしたら普通だけど、

猫さんたち半妖からしたら
雨は本当に苦手なものらしい。


⏰:09/04/01 23:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#46 [イリア]



七「でも舞台は建物の中で
行われるんでしょ?
なら、大丈夫じゃないですか。」


猫「あんたは本当にお気楽だな。
俺たちの嗅覚(キュウカク)なめんなよ、

雨の匂いだけで倒れそうだよ。」


⏰:09/04/01 23:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#47 [イリア]



猫さんがそこまで言ったとき、
遠くから狐さんの声がした。


狐「はいはいはい〜
みんな大丈夫かな〜?

まぁ天気は生憎(アイニク)だけど、
今日も僕らのファンのために
精いっぱい頑張りましょ〜」


⏰:09/04/01 23:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#48 [イリア]



大分ちゃらけてるが、
狐さんもヘロヘロな感じ。




だ、大丈夫なのかな…………?汗


⏰:09/04/01 23:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#49 [イリア]



じゃあそろそろ移動するよ〜

狐さんの声。


今から講演場所まで徒歩移動らしく
大道具の人たちが傘を配っている。


⏰:09/04/02 00:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#50 [イリア]




七「………………あ」



私はあるものを見つけ、
近くの茂(シゲ)みにしゃがみこんだ。


⏰:09/04/02 00:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


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