黒猫の棲むところU
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#1 [イリア]



 黒猫の棲むところ


 クロネコノ スムトコロ


>>2

⏰:09/04/01 20:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#2 [イリア]



>>3安価

>>4感想板、前作


⏰:09/04/01 20:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#3 [イリア]


>>1-50
>>51-100
>>101-150
>>151-200
>>201-250
>>251-300
>>301-350
>>351-400
>>401-450
>>451-500
>>501-550
>>551-600
>>601-650
>>651-700
>>701-750
>>751-800
>>801-850
>>851-900
>>901-950
>>951-1000

⏰:09/04/01 20:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#4 [イリア]



感想、アドバイス
お待ちしてます(゚∀゚)★


【感想板】

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4322/
【黒猫の棲むところ】

bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/10148/


⏰:09/04/01 20:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#5 [イリア]









⏰:09/04/01 22:37 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#6 [イリア]



 第三話:雨音の唄



 アマオトノ ウタ

⏰:09/04/01 22:37 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#7 [イリア]



トン トン トン……



そこは暗く、少し肌寒い部屋。

窓は開き、月が顔を覗かせている。



トン トン トン……


⏰:09/04/01 22:38 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#8 [イリア]



少年は一人きりでその部屋にいた。

家具はほぼなく、嫌みなほどに広い。

ただ一つ、無造作に置かれた花瓶が
その殺風景な暗い部屋にいる
少年の孤独さを際だたせている。


⏰:09/04/01 22:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#9 [イリア]



トン トン トン……トン






窓辺に腰かけ、一定のリズムで
金属の枠を叩いていた少年は
手を止め、ふと扉のほうを見る。


⏰:09/04/01 22:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#10 [イリア]





灰色の髪、深青の瞳。


頬や衣類は、血で濡れている。


⏰:09/04/01 22:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#11 [イリア]




「――……凪夜(ナギヤ)?」



窓辺に座る少年が、
クスリ と笑って
扉の向こうに話しかけた。


⏰:09/04/01 22:40 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#12 [イリア]



「何してるの?入ってきなよ」


少年が言葉を続ける。

ガチャリという音がしたとき
その重い扉が開いた。


⏰:09/04/01 22:40 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#13 [イリア]





「――……失礼します、葵(アオイ)様」




入ってきた子は
その堅気な言葉使いとは違い、

葵、と呼ばれた少年より
少しだけ、幼く見える。


⏰:09/04/01 22:41 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#14 [イリア]



葵「……アハハ、様なんてやめてよ

凪夜は僕らにとって、
とっても大切な子なんだよ?」


⏰:09/04/01 22:41 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#15 [イリア]



少年は笑う。

扉の外にいた子よりは年上に見えるが
それでも16、17くらいだろう。


⏰:09/04/01 22:43 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#16 [イリア]



凪「…そう言うわけにはいきません…
葵様、その血――………ッッ??!!!」



葵という少年の体を見た瞬間、
凪夜と呼ばれた子の声色が変わる。


⏰:09/04/01 22:44 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#17 [イリア]



葵「あぁこれ?」


そう言って灰色の少年は
腕で左頬を拭(ヌグ)う。

シルクのような滑らかな衣類に
少年の頬の朱がつく。


⏰:09/04/01 22:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#18 [イリア]



凪「どうされたのですか…誰に…ッッ!!」






葵「凪夜」


言葉を途切らせる。


⏰:09/04/01 22:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#19 [イリア]



葵「違うよこれ、返り血。
僕の血じゃない」


少年が笑う。


凪「…ッッ…取り乱し…失礼しました」

息も淫らに、
凪夜は葵に、深々と頭を下げる。

葵「ううん、嬉しい」


⏰:09/04/01 22:46 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#20 [イリア]



そう言うと灰色の少年は
窓辺からゆっくり立ち上がり、

凪夜と呼ばれた子の元へ歩く。


⏰:09/04/01 22:47 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#21 [イリア]



葵「嬉しいんだよ、凪夜。
僕を心配してくれるなんて…

そんなの”ナナ”だけかと思ってた」



葵は細く白い手で
凪夜の頬に軽く触れる。


⏰:09/04/01 22:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#22 [イリア]









葵「有難う、凪夜。」


⏰:09/04/01 22:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#23 [イリア]



サ――――…………


風が吹く。

開け放たれた窓から入る風は
部屋の中の二人に冷たさを与える。


⏰:09/04/01 22:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#24 [イリア]



葵「寒い?」


凪「いえ…」


葵「そう?僕は寒いとか
あんまり分かんないからさ」


少年はそう言いながらも
窓辺まで戻り、静かに窓を閉めた。


⏰:09/04/01 22:50 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#25 [イリア]



凪「――…葵様…」


葵「ん?なぁに?」


凪「……この花………」


⏰:09/04/01 22:50 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#26 [イリア]



凪夜の目線の先には
この部屋のただ一つのモノ。


無造作に置かれた花瓶の中には

一本の花。


⏰:09/04/01 22:51 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#27 [イリア]



葵「……あぁ、これ?
フフ…綺麗でしょ?
花は”ナナ”が好きなものだから」





凪「あの子は死んだ」


凪夜の声が、広い部屋に響く。


⏰:09/04/01 22:51 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#28 [イリア]



凪「―…あの子は…
あの日、死んだんでしょう?
……葵様、目を覚まして下さ…」


葵「生きてるよ」


葵が花瓶に近づき、
中の花にそっと触れる。


⏰:09/04/01 22:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#29 [イリア]



葵「生きてる。感じる。

……僕には分かる」




凪「……」


⏰:09/04/01 22:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#30 [イリア]



葵「……フフ、本当だよ。

凪夜には内緒にしてたけど、
調べて貰ってたんだ」



凪「……調べて貰ってた…?
じゃあ…あの子は本当に、
生きてるんですか…?」


⏰:09/04/01 22:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#31 [イリア]





葵「うん。だから、迎えに行くの。」




そう言うと葵は
嬉しそうにクスクス笑った。


⏰:09/04/01 22:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#32 [イリア]



凪「―…迎え…?」


葵「”ナナ”は、
僕がいないと何もできないから。

だから僕が迎えに行くんだよ。」



葵が言う。


⏰:09/04/01 22:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#33 [イリア]



凪「……………」


葵「ねぇ凪夜。
この花が何か知ってる?」


少年は笑って
花を花瓶から取り出す。

その花の切り口からは
水滴がこぼれ落ちた。


⏰:09/04/01 22:56 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#34 [イリア]



凪「……いえ」



葵「この花の名は、”ニコチアナ”。

花言葉は、”あなたがいれば”」


⏰:09/04/01 22:56 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#35 [イリア]



凪「…………」


葵「ねぇまるで、僕とナナのための
花言葉だ。そう思わない?」


凪「………僕は……

………私はッッ………!!」



葵「僕はナナさえいればいい」


⏰:09/04/01 22:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#36 [イリア]



葵の声が部屋に響く。

花瓶から取り出された花は
少しずつ元気をなくす。


⏰:09/04/01 22:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#37 [イリア]



葵「そしてナナには、
僕だけいればいいんだ。

ずっとそうやって生きてきた。」




少年の瞳に影がうつる。
先ほどまでの幼さは、もうない。


⏰:09/04/01 22:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#38 [イリア]








葵「―…ナナに近づくヒトは、
みんな僕が殺してあげる」


クスクスと笑う少年。

その近くにいる凪夜の表情に
戸惑いが表れる。


⏰:09/04/01 22:58 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#39 [イリア]



凪「……何故……そんなに…」


葵「僕の考え、たった一つの望み。

――……ねぇ凪夜、分かる?」





月が雲に隠れて、光が消える。
もう互いの顔は見えない。


⏰:09/04/01 22:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#40 [イリア]













葵「――……僕はナナを、守りたい」


⏰:09/04/01 22:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#41 [イリア]












⏰:09/04/01 22:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#42 [イリア]



天気は普通。

気分も普通。


緊張しがちな舞台の初日には
もってこいのコンディショ…




猫「どこがだよ」


⏰:09/04/01 23:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#43 [イリア]



すぐ隣で猫さんの声がした。


猫「天気はどしゃ降り。気分は最悪。
舞台は初日から満員御礼、のくせに
俺たち役者は雨が苦手で
既にヘロヘロ。」


不機嫌そうな猫さんの声。


⏰:09/04/01 23:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#44 [イリア]



七「いや私、声に出してませんよね?」


猫「フフン、あんたは考えてることが、
すぐ顔に出るから分かりやすい。」




なんて失礼な。

って言うわけで…


⏰:09/04/01 23:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#45 [イリア]



舞台の初日になる今日は
あいにくのどしゃ降り。


別に雨なんて
私からしたら普通だけど、

猫さんたち半妖からしたら
雨は本当に苦手なものらしい。


⏰:09/04/01 23:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#46 [イリア]



七「でも舞台は建物の中で
行われるんでしょ?
なら、大丈夫じゃないですか。」


猫「あんたは本当にお気楽だな。
俺たちの嗅覚(キュウカク)なめんなよ、

雨の匂いだけで倒れそうだよ。」


⏰:09/04/01 23:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#47 [イリア]



猫さんがそこまで言ったとき、
遠くから狐さんの声がした。


狐「はいはいはい〜
みんな大丈夫かな〜?

まぁ天気は生憎(アイニク)だけど、
今日も僕らのファンのために
精いっぱい頑張りましょ〜」


⏰:09/04/01 23:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#48 [イリア]



大分ちゃらけてるが、
狐さんもヘロヘロな感じ。




だ、大丈夫なのかな…………?汗


⏰:09/04/01 23:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#49 [イリア]



じゃあそろそろ移動するよ〜

狐さんの声。


今から講演場所まで徒歩移動らしく
大道具の人たちが傘を配っている。


⏰:09/04/02 00:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#50 [イリア]




七「………………あ」



私はあるものを見つけ、
近くの茂(シゲ)みにしゃがみこんだ。


⏰:09/04/02 00:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#51 [イリア]



猫「?」

七「…ごめんね、
一本だけちょうだいね」


ブチッ


目的のものを掴むと、
私は立ち上がった。


⏰:09/04/02 00:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#52 [イリア]



猫「おい、何して……」


七「はい!」



私はそう言うと
一本の花を猫さんに渡す。


⏰:09/04/02 00:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#53 [イリア]



猫「……何、これ?」


七「何って、花ですよ。
綺麗でしょう?

…雨だし、舞台初日だし、
緊張してるかなって。

私、花スキなんです。
見てるだけで和みません?」


⏰:09/04/02 00:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#54 [イリア]



猫さんは不思議そうに
私の渡した花を
クルクル回している。



猫「………」


七「………あのぉ―…
もしかして、花お嫌いですか?」


⏰:09/04/02 00:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#55 [イリア]





猫「―…舞台前にファンの奴らから
花を貰うことはあるけど、
…目の前で抜かれて渡されたのは
初めてだな。しかも土つきで。」


七「…………あ」


⏰:09/04/02 00:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#56 [イリア]



言われてみれば。



いま私の目の前にいるのは
劇団のトップスターな訳で。

花なんか、たくさん貰える訳で。


⏰:09/04/02 00:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#57 [イリア]



私のあげた花とか安っぽいですかー
安っぽいどころか0円ですけど。


少し恥ずかしくなる。
喜んで貰えると思ったのにな。


⏰:09/04/02 00:08 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#58 [イリア]



七「…そーですよね!
猫さんそういえば
花形俳優ですもんね!
ラッピングしてない花なんて貰っても
仕方ないですよねー!!」


猫「そういえばって、オイ」


⏰:09/04/02 00:09 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#59 [イリア]



七「何か余計なことして
すいませんでしたねー//
返してもらえます?
もういいですよ
狼さんにあげてきます。
狼さん優しいし
きっと貰ってくれ―…」


そこまで言ったとき、
猫さんは眉間に皺を寄せながら
花を自分のポケットにしまった。


⏰:09/04/02 00:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#60 [イリア]



七「?」


猫「いらないとまで言ってないだろ
だいたい狼は花が嫌いなんだ。
いくらあんたからでもさ、
絶対受け取らないね。
可哀想だから、俺が貰っといてあげる」


そう言ってヒラリと手を振ると、
猫さんはどこかに歩き出した。


⏰:09/04/02 00:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#61 [イリア]



貰ってくれた…
何だかんだ言っても
優しいよね猫さん。

でも

狐「一言多いよねーネコくん。」


七「そうそう一言多い…
…って、狐さん??!!」


いつの間にか横に立っていた狐さんに
驚いて声をあげる。


⏰:09/04/02 00:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#62 [イリア]



狐「どうせ貰うなら、
黙って受け取ればいいのにー!!
ネコくん本当、素直じゃないよね」


七「……はぁ……」


⏰:09/04/02 00:35 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#63 [イリア]



狐「七衣ちゃんがこぉんなに、
ネコくんのこと好きで
心配してるのにねぇ?」


七「……はぁ……って、え?//
いや!//違いますから//
何言ってんですか!!///

雨だし体調の心配はしてるけど
好きとか…そんなんじゃ…//」


⏰:09/04/02 00:35 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#64 [イリア]



狐「照れなくていいのにぃ☆
七衣ちゃんさ、昨日森で
ネコくんに『俺が守る』って
言われてたとき、
顔真っ赤っかだったんだよ?
そんとき僕さー
あーこの二人もしや?って
思った訳だよ!!
いゃあ若いっていいねー☆☆」


七「…わ、私の気持ちは置いといても
釣り合ってませんしね!!///
分かってますから!!//」


⏰:09/04/02 00:38 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#65 [イリア]



狐「七衣ちゃん、恋愛の
天秤(テンビン)には、
気持ちしか乗せられないよ♪
確かにネコくん顔はいいけど、
そんなの関係なっしんぐ♪

……それに僕、ネコくんも
まんざらでもない気がするなぁ。
そりゃ、色々あるだろうけど。」


七「……?どういう意味ですか?」


⏰:09/04/02 00:38 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#66 [イリア]



狐「うん?例えば昨日、
君がロウくんつれて走ってった後、
あきらかにファンに対する
ネコくんの態度変わってたし。

――…それにロウくん、
花って確か好きだったし」


⏰:09/04/02 00:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#67 [イリア]



七「――……?狼さんが花好き?
でも猫さんは嫌いって……ん?
どういう意味ですか?」


狐さんは一瞬驚いた顔をし、
すぐにニヤッと笑った。


⏰:09/04/02 00:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#68 [イリア]



狐「さぁ?どういうことだろう?
あー本当若いっていいな!!
僕もまだまだ若いけど!!

…時に七衣ちゃん。
本題なんだけど、お使い頼んでいい?」


七「お使い?」


⏰:09/04/02 00:40 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#69 [イリア]



狐「そうそう、舞台が終わったら
少しだけサイン会があるんだけど、
サインペン切れてるの忘れててさぁ〜

大道具の人たちも雨でダウンしてるし
良かったら……」


七「行きますよ!!
私、雨とか全然平気なんで!!」


初めての仕事だ!!


⏰:09/04/02 00:40 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#70 [イリア]



狐「クス、そう?有難う。
はいじゃあこれ、お金と地図ね。

僕らはこのまま講演場所に向かうから
買えたら直接あっちに行って。
気をつけてね」


七「はい!!じゃあ行ってきます!!」


⏰:09/04/02 00:41 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#71 [イリア]



第三話:雨音の唄
>>6-70

安価
>>3

†黒猫の棲むところ†
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†感想板†
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4322/
感想・アドバイス
お待ちしてます(゚∀゚)★


⏰:09/04/02 00:43 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#72 [由姫]
アゲヾ(´ω`=´ω`)ノアゲ

⏰:09/04/02 05:14 📱:D902iS 🆔:☆☆☆


#73 [乃愛]
待ってました(笑)あげます

⏰:09/04/02 11:36 📱:F01A 🆔:☆☆☆


#74 [鼻]
こっちにレス失礼m(__)m

見ずらくならない様に書き終わったら感想板のURL貼ってくれてるのに、こっちに感想を書くのはどうかと思います。
読んでるのは貴方達だけじゃないんだから、マナーを守って下さい。

⏰:09/04/02 13:23 📱:W53S 🆔:☆☆☆


#75 [かな]
書かないんですか

⏰:09/04/03 22:11 📱:D903i 🆔:☆☆☆


#76 [イリア]


>>72由姫様
>>73乃愛様
>>74鼻様
>>75かな様

あげて頂き有難うございます(;_;)
鼻様、本当に貴重な意見
嬉しいです(´;д;`)

あげて頂けるのは
涙が出るくらい嬉しいのですが(←)
感想は見にくいという方もいるので
もし良ければ感想板に
遊びにきて下さいね(^∀^)☆

⏰:09/04/03 22:27 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#77 [イリア]


あと更新ペース悪くて
ほんまにごめをなさい。
最近何かと忙しくて(;_;)
春休みの課題が(;_;)(;_;)←

当分このペースかもですが、
必ず最後まで書きます!!!!
イライラするかもしれませんが
気長にお付き合い下さると
有り難いです(´;ω;`)

勝手ばかりですいません(´`)
コメ有難うございました!

⏰:09/04/03 22:27 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#78 [イリア]



>>70から


⏰:09/04/04 01:11 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#79 [イリア]










⏰:09/04/04 01:11 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#80 [イリア]



傘を片手に、地図の通りに歩く。
坂道を駆け上ると、街が見えた。


七「うわー…
こんな近くに街があったんだ…

なら、何でわざわざ
森にテントなんか建てるんだろ?」


⏰:09/04/04 01:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#81 [イリア]



ファンの追っかけが、
鬱陶(ウットウ)しいから。


猫さんにそう聞くのは、

まぁもう少し先の話。


⏰:09/04/04 01:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#82 [イリア]



地図通りに歩く。
雨は心なしか、大分ましになってきた。


七「良かったー!!
だいぶ小雨になってきた…っていうか
昨日も今日も、よく雨降るよね…ん?」


⏰:09/04/04 01:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#83 [イリア]



独り言を言いながら考える。

そういえば私、雨原一族だっけ?


狐さんが言うには、
確かこの一族の人たちは
雨に関する何らかの力を持ってて…

雨を呼んだりできるから、
妖や半妖たちは雨原一族を嫌ってる。


それで私は、雨原一族…


⏰:09/04/04 01:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#84 [イリア]



……もしかしてこの雨って私のせい?


いやいや、でも何も覚えてないし。


そもそも私が本当に雨原一族なのかも
私からしたらよく分かんないし。


⏰:09/04/04 01:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#85 [イリア]




足をとめ、空を仰(アオ)ぐ。



⏰:09/04/04 01:15 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#86 [イリア]



…私は何で、
劇団に入れてもらえたんだろ。

私が本当に雨原一族なら、
そこに帰ったほうがいいのかな?

それに、どうして妖と半妖は
仲が悪いんだろ。





――……あの、夢の中の私は何だろう。


⏰:09/04/04 01:15 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#87 [イリア]



深い闇と、甘い血の香り。

そんな中で幼い私は、
確かに微笑んでいた。


隣にいた男の子は誰だろう…
小さい手を繋いで、
楽しそうにあの唄を歌っていた。


⏰:09/04/04 01:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#88 [イリア]







――……僕は君を、守りたい。




男の子の声が頭に響く。
顔はぼやけていて思い出せない。


⏰:09/04/04 01:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#89 [イリア]



夢と現実は繋がってる―……

猫さんの言った通りなら、
夢の中の男の子は
今どこにいるんだろう?




まぁ守ってくれるったって…


⏰:09/04/04 01:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#90 [イリア]



――……俺が、守る。


初めて逢ったとき、
初めて助けて貰ったとき、
森の中で、猫さんに言われた。






七「……私は、猫さんに
守ってもらうんだけどね」


⏰:09/04/04 01:18 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#91 [イリア]




カァ―――――………////




言った途端、恥ずかしくなる。


⏰:09/04/04 01:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#92 [イリア]



七「いや別に!!
守ってもらわなくても
大丈夫ですケド!!///

いやさ、妖たち来たら
流石にやばいけど…

守ってもらうほど、
弱くないもんね私!!!!////」


⏰:09/04/04 01:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#93 [イリア]



次々に疑問が生まれ、不安になる。

考えても仕方ないことだと
分かってても、考えてしまう。


⏰:09/04/04 01:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#94 [イリア]



だけど最後にはいつも
猫さんの声が頭に響く。

猫さんの声は優しくて、安心する。


⏰:09/04/04 01:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#95 [イリア]



そんなことを考えてる間に、
狐さんに貰った地図の場所まで来た。

ここでペンだけ買って…
早く私もホールに行きたい。

猫さんや狼さん、
麗さんの演技がみたい。


⏰:09/04/04 01:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#96 [イリア]



―…っていうか、
麗さん体調大丈夫かな…

…うん、舞台始まる前に
もう一回話しかけたい。

急いで行こう!


⏰:09/04/04 01:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#97 [イリア]



七「……すいませーん!!
サインペンってどこですか?!」


店員「サインペン?
あーお嬢ちゃんもアレかい?
この街に一週間くらいいるっていう
何ちゃら劇団のファンかい?」


⏰:09/04/04 01:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#98 [イリア]



七「…あ…ま、まぁそんなとこです」


店「はいよ、何本だい?

でもサイン会なら
あっちがペンくらい持ってるだろうに。
みんな舞い上がっちゃってさ〜

まぁ私も見に行くけどね、
明日の午後の部。
お嬢ちゃんはいつ行くんだい?」


⏰:09/04/04 01:22 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#99 [イリア]



七「あ、え?私は…「辞めてよ!!」」







え…?


返事をしようとしたとき、
店の外から誰かの声がした。


⏰:09/04/04 01:23 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#100 [イリア]



「離してって言ってるでしょ!!
時間がないのよ!!早く離して!!!!!」




この声――…………


⏰:09/04/04 01:23 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#101 [イリア]



店「あー誰だろね。
この街さ、結構治安悪いしね。
お嬢ちゃんは近寄っちゃだめだよ」


七「――……麗さん…?」


店「はぃ?」


⏰:09/04/04 01:24 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#102 [イリア]



七「……今の声……麗さん…?
でもまさか…すいません、
いま何時ですか??!!!」


言いながら、時計を探す。
私の真後ろに大きな時計があった。


⏰:09/04/04 01:26 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#103 [イリア]



店「9時28分だね。
どうしたんだい、そんなに慌てて?」


9時半――……?

午前の舞台って確か、
10時からだったよね?

何でこんなとこに
麗さんがいるの?


⏰:09/04/04 01:26 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#104 [イリア]



脳裏に昨日のことが浮かび上がる。
麗さんと、大道具の人たち。


痣を(アザ)内緒にしてた、麗さんのこと。





七「――…………ッッ!!!!!」


⏰:09/04/04 01:27 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#105 [イリア]



店の出口まで走る。
麗さんの姿はない。

どこに行ったんだろう。
近くの人に尋(タズ)ねる。


七「すいません!!いまここで…
離してッて叫んでた、
女の人いましたよね?

どこに行ったか分かりますか??!!」


⏰:09/04/04 01:27 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#106 [イリア]



「は?…あぁ、あの子…
何人かの男に連れられて、
あっちに真っ直ぐ行ったけど…

あんた知り合い?
やっぱまずいかな。
ここらへん通行人少ないし、
俺しか見てなかったし…
警察って連絡したほうがい…」


七「今すぐ連絡して下さい!!早く!!
どこ行ったんだろ……
有難うございました!!」


⏰:09/04/04 01:28 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#107 [イリア]



教えてもらった方角に走る。
傘はささない。
雨はまた、少しずつ降ってきた。




後ろから店員さんの声がしたけど
そのときの私には聞こえなかった。


⏰:09/04/04 01:28 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#108 [イリア]



第三話:雨音の唄
>>6-70
>>79-107[更新分]

安価
>>3

†黒猫の棲むところ†
bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/10148/

†感想板†
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4322/

感想・アドバイス
お待ちしてます(゚∀゚)★


⏰:09/04/04 01:32 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#109 [イリア]


>>107から

⏰:09/04/05 02:33 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#110 [イリア]









⏰:09/04/05 02:33 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#111 [イリア]



言われた通り真っ直ぐ走ると、
さっきいた場所よりずっと
人通りが少なくなってきた。

立ち止まり、辺りをを見渡す。


――……誰もいない。


⏰:09/04/05 02:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#112 [イリア]



七「……………」


聞き間違い?
確かに、麗さんの声だったと思うけど…


でも、もうすぐ舞台の始まる時間だし
もしかしたら―――………


⏰:09/04/05 02:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#113 [イリア]



七「………麗さん………」


男「あーッ!!いたいたッ!!!!」


七「?」


振り返ると、知っている顔が二つ。


⏰:09/04/05 02:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#114 [イリア]



男「七衣ちゃんだっけぇ?

俺らのこと知ってるぅ〜?」


語尾を上げる癖が耳につく。
猫さんの声と、真逆の音。


⏰:09/04/05 02:35 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#115 [イリア]



七「……昨日、森で
麗さんと話してた…」


男「ピンポーンっ♪♪
元オリオン劇団でぇ、合併されて
アスタリスクの一員になったんだよ☆

宜しくねえ〜♪」


⏰:09/04/05 02:35 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#116 [イリア]



七「――…何であなた達が、
ここにいるんですか?
舞台の手伝いをしてって、
狐さんが言ってたじゃないですか…」


嫌な予感がする。

さっき抱いた微(カス)かな期待が、
頭の中から消えてなくなる。


⏰:09/04/05 02:36 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#117 [イリア]



七「―……さっき文房具屋の前で…
麗さんの声、してませんでした?

……麗さん近くにいるんですか?」



男「さぁ〜ね〜?どう思う?」


⏰:09/04/05 02:36 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#118 [イリア]


七「―……ッッ!!ふざけないで下さい!!
麗さんいるんですか?!何で??!!
昨日のことだって……
どこにいるんですか??!!
早く言わないと、誰か人を―…ッッ!!」


男「黙れよ雨原ぁ〜」


七「!!」


後ろから羽交い締めにされる。
気がつかないうちに、
後ろにもう一人いたらしい。

⏰:09/04/05 02:38 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#119 [イリア]



七「離して下さいッッ!!!!」


男「あんたってさ、いっつもそうなの?
誰か人をってさ、あんたは?

あんたは何もしない訳?」


七「――……ッッ!!」


⏰:09/04/05 02:38 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#120 [イリア]



男「昨日も森で、
あんたが狼を呼びにいったんだろ?
何ですぐ飛び出して来なかったの?

本当に麗のこと好きなら、
なりふり構わず、
飛び出してくるっしょ〜」


⏰:09/04/05 02:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#121 [イリア]



考える。

思い出す。


昨日、私は森で
かなわないと思ったから
狼さんを呼びに行った。


震えてる麗さんを残して。


⏰:09/04/05 02:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#122 [イリア]



男「…まぁ所詮、俺たち半妖と人間は
解(ワカ)りあえないってこと♪
特にあんたら、雨原一族とはさぁ」


男「それにしても、
アスタリスクも墜ちたよなあ〜
まさか雨原を、
団員にするとは思わなかった」


⏰:09/04/05 02:40 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#123 [イリア]



男「雨原一族なんてさ、
利用して捨てるに限るよ♪
てか、最近続いてる雨も
よく考えたらこいつのせいじゃね?
まぢ体だるいんですけどー」


七「――…ッッ!!!!
知りませんよ、そんなの!!
いいから離して!!麗さんはどこ?!」


⏰:09/04/05 02:41 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#124 [イリア]



男「あははー♪威勢いいね。
あんたさ、黒猫や団長に
気に入られてるからって
調子のってない?
言いたくないけど、俺たちさぁ…」


後ろで私の首をしめてる
男性の声がやむ。

不思議に思って振り向こうとすると、
首もとに痛みが走った。


⏰:09/04/05 02:41 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#125 [イリア]



七「――――……………痛………」


何かに噛まれている感じがする。

なに―――………?


男「…雨原一族、嫌いなんだよね」


首もとから、血の香り。
甘い甘い、あの夢と同じ。


⏰:09/04/05 02:42 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#126 [イリア]



男「うわ、やっぱこの女
本当に雨原なんだー…うん、
嫌な臭いがする。雨原の香り。」


男「…おい、あんまり血流させるな。
誰かが気づく。」


⏰:09/04/05 02:43 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#127 [イリア]



その声と同時に、私の首もとから
何か、が 離れた。



男「ペッ!まっずー
雨原一族なんて、噛むもんじゃないね」


⏰:09/04/05 02:43 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#128 [イリア]




七「――…吸血鬼(ヴァンパイア)…?」


男「おしいねー吸血鬼ではないよ♪
俺たちはコウモリの妖と
人間の間で生まれた半妖。

まぁ昔話みたく、噛まれたからって
あんたまで吸血鬼になることはないし
安心していいよー♪」


⏰:09/04/05 02:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#129 [イリア]



そう言われ、腕を引っ張られる。
頭がクラクラして、立っていられない。
その場に倒れこんだ。


男「おいおい、どんだけ吸ったわけ?」


男「ごめーん♪だってさ、
雨原一族の血だぜ?今貰わないと
一生飲むことなんて出来ないだろうし」


⏰:09/04/05 02:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#130 [イリア]



男「それもそうか…
まぁとりあえず続きは、
場所を移動させてからね♪」


意識が朦朧(モウロウ)としだす。

駄目、今意識を飛ばしたら、
必ず後悔する。


⏰:09/04/05 02:46 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#131 [イリア]



下唇を噛み、意識を保つ。

男達は私の腕を引っ張り、
引きずるように歩き出した。


⏰:09/04/05 02:46 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#132 [イリア]





しばらくすると、
道は行き止まりになった。

暗く狭い路地裏。
そこにいたのは、男性一人と、麗さん。


男「遅っせ〜待ちくたびれた…って、
あら、雨原?本当にいたんだ」


⏰:09/04/05 02:46 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#133 [イリア]



麗「――………ッッ??!!」


麗さんの驚いている顔が見える。


麗さんは紐(ヒモ)か何かで
腕を後ろで縛られていて、
壁にもたれ座りこんでいた。


でも、怪我はしてなさそう……


⏰:09/04/05 02:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#134 [イリア]



麗「ちょっとッッ!!!!!」


麗さんの声が、狭い路地裏に響く。


麗「何よ、その子……その血…
…ッッ!!本当いい加減にしてよ!!!!
何でこんなことするの!!!!
雨原は…関係ないでしょ??!!」


⏰:09/04/05 02:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#135 [イリア]



血が足りないからか
本当に飛びかけていた意識が、

麗さんの声で引き戻される。


⏰:09/04/05 02:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#136 [イリア]



男「関係なくはないでしょー♪
記憶はなくても、雨原なんだし?
別に個人的な恨みはないけど、
何かさ…雨原一族って
嫌いなんだよねー」


麗「……何言ってんの……
血は止まってるの?
止血はしてるの?」


⏰:09/04/05 02:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#137 [イリア]



麗さんの声で初めて気づく。

さっき噛まれた傷は
今も熱を持っていた。

耳に近いせいか、
ドクドクと、血の流れる音がする。


⏰:09/04/05 02:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#138 [イリア]



男「……やけに雨原のこと、
気にかけるのね〜……
止血?してるわけないじゃん。
思いっきり噛んじゃったから、
まだ血も止まってない。」


麗「……何で…こんなことするの……」


男「聞きたい?最後だし、
教えてあげようか?」


⏰:09/04/05 02:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#139 [イリア]



私のそばにいた男が一人、
麗さんに近づく。


男「俺たちさぁ、麗ちゃんの読み通り…
――………妖側の、スパイなの。」


麗「………ッッ!!」


⏰:09/04/05 02:54 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#140 [イリア]



男「半妖と妖が仲違いした日、
俺たちは妖に雇われたんだよね。
妖側に危害を加える恐れがないか
半妖の動きを観察…

移動場所をあらかじめ
妖側に伝えといて、
奇襲をかけさせたりもした」


⏰:09/04/05 02:56 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#141 [イリア]



麗「……………ッッ!!…」


七「―――……??」



麗さんの目からは、涙がこぼれていた。


⏰:09/04/05 02:56 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#142 [イリア]



男「あはは!!泣くほど悔しい?
そりゃそうか、あんたら
アスタリスク劇団の移動ルートも
妖たちに流してたから♪

………結構減ったもんねぇ?数?」


麗さんの涙が頬を伝い、
コンクリートの上に落ちる。


⏰:09/04/05 02:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#143 [イリア]



七「――…??どういう……??」



必死に声を絞り出す。

麗さんは今、何で泣いているの?


⏰:09/04/05 02:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#144 [イリア]



男「あー新入りちゃんには
分かんない?あのね、
もともとこの世界には
半妖組織が二つあってね。
アスタリスク劇団と、オリオン劇団。

劇団は違っても、各地で妖と戦う
仲間だったわけだよ、だけど…」


⏰:09/04/05 02:58 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#145 [イリア]



――……アスタリスク劇団はご覧の通り
もう一つの半妖組織、
オリオン劇団と合併することになりました。


理由はたび重なる妖との戦いで
半妖の数が減っちゃったから――…




昨日の狐さんの言葉が頭に響いた。


⏰:09/04/05 02:58 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#146 [イリア]



男「昨日団長さんが言ってたとおり
このたび見事に合併することに
なったのね♪……まぁ理由は、
俺たちからの情報によって
的確に攻めてきた妖に…

……半妖たちが、
殺られちゃったからなんだけど」


麗「……うるさいッッ!!!!」


麗さんが叫ぶ。

⏰:09/04/05 03:01 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#147 [イリア]



麗「……うるさいよ、もう……

もう止めてよ……」



男「…残念だったよねぇ〜
半妖も必死に戦ったみたいだけど。

…仲間がさぁ、目の前で死ぬのって…

…あはは!!俺には分かんねぇや!!」


⏰:09/04/05 03:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#148 [イリア]



最低。

笑い続ける男達を睨(ニラ)む。



それを覚えてて、

それで泣いてる麗さんを前に

何でそんな風に笑えるの?


⏰:09/04/05 03:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#149 [イリア]



男「…何、その目?」


男が私を睨む。


⏰:09/04/05 03:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#150 [イリア]



男「…雨原もさ、不運だよね。
もうちょい時期がズレてれば…
……こんな目に会わずに済んだのに」


七「麗さん」


名前を呼ぶ。
応(コタ)えて欲しいから。
逃げないで、
今だけは誰にも頼りたくない。

⏰:09/04/05 03:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#151 [イリア]



七「……何があったんですか…」


麗「…………」


泣き続ける麗さん。
言葉は返ってこない。


代わりに、横の男が
私を見ながら言った。


⏰:09/04/05 03:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#152 [イリア]



男「…ん?それって、
麗と俺たちのこと?
―…別に何もないよねぇ〜」


男「そうそう。敢えて言えば、
麗が、俺たちが妖側の
スパイなんじゃないかって
嗅ぎつけてきて、
話しかけてきたもんだから…」


⏰:09/04/05 03:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#153 [イリア]



男「嗅覚いいんだよねー麗ちゃん♪

まぁそれで何か
言い合いになったりしちゃったり?

あんまりしつこいんで
ちょっと殴ったりしたら、
痣(アザ)になっちゃうしさあ」


⏰:09/04/05 03:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#154 [イリア]



男「ついでにキスなんかしてみたら、
めっきり大人しくなっちゃって。
本当可愛いよねー♪

―……死んだ仲間のために、
生きている仲間のために、
スパイを見つけだそうとした?
でも麗ちゃん、やっぱ甘いよ。
一人で何でもしようとするから―…」


⏰:09/04/05 03:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#155 [イリア]



七「――……痛ッッ……!!」


上から髪を引っ張られ、
思わず声が出る。


⏰:09/04/05 03:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#156 [イリア]



男「結局、こういう風に…
麗ちゃんいわく『関係ない雨原』まで
巻き込むことになるんだよ…

……ねぇ俺たち、妖側から
呼び出しかかったんだ。
もう妖様(アヤカシサマ)のところに
戻らなきゃいけない……だから」


男が麗さんの顎(アゴ)を掴み、
無理やり上を向かせる。


⏰:09/04/05 03:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#157 [イリア]



男「――……最後に、

思い出ちょうだい?」




男が麗さんに口を近づける。



やめて。


⏰:09/04/05 03:08 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#158 [イリア]




七「―――……ッッ!!やめ…ッッ!!」


麗「―――――――………ッッやッ…!!」





――……そのとき、


⏰:09/04/05 03:10 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#159 [イリア]




男「ギャアァアアァア―――ッッ!!!!!!」




私の横にいる男の一人が、

叫び声をあげた。


⏰:09/04/05 03:11 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#160 [イリア]


いや、正確には

 横に いた。


さっきまで私の横で
髪を掴んでいた男は、

何かに、首もとを噛みつかれたまま
麗さんの近くの壁に押さえつけられ、
血を流しぐったりしている。


男に噛みついているものは―……


⏰:09/04/05 03:11 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#161 [イリア]



美しい、金色の毛並み。

男の二倍はあるであろう体。




七「――――………狼(オオカミ)…」


私が言葉を出したとき、
一瞬だけその狼がこっちを見た。


⏰:09/04/05 03:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#162 [イリア]



綺麗な毛並みから、赤色の瞳が覗く。


七「―――………狼さん……ッッ??!」


その狼は、ガルル…と
怒りに満ちた声を上げると、
麗さんの顎を掴んでいた男に
襲いかかる。


⏰:09/04/05 03:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#163 [イリア]




男「……ッッ!!やめろ!!やめ―…ッッ!!」



男の声も虚しく、

狼はその男の首もとに牙をむいた。


⏰:09/04/05 03:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#164 [イリア]




男「――………クソッッ!!!!」


七「…キャッ!!」



残り一人、私のそばにいた男が
私の首もとにナイフを突きつけた。


⏰:09/04/05 03:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#165 [イリア]



男「……狼!!今すぐそいつから離れろ!!

……この女の命が欲しくないのか??
今すぐ離れなければ、
この女の首…切り落として…ッッ!!」


⏰:09/04/05 03:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#166 [イリア]








「―――……ふーん」



男の声が止み、

代わりに違う声が響く。


⏰:09/04/05 03:15 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#167 [イリア]



そうだ私、
この声が聞きたかったんだ。


この声は私を安心させてくれるから。

綺麗な声は、私を守ってくれるから。


⏰:09/04/05 03:15 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#168 [イリア]






「―……やれるもんなら、やってみれば?

でも、1ミリでも体…動かしてみろよ」



甘く、妖艶な声が辺りに響く。


⏰:09/04/05 03:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#169 [イリア]






「――……あんたの首、

ひと思いにかっ切ってあげる」


クス…

猫さんが笑う。


男「――……ッッヒッ……!!」

⏰:09/04/05 03:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#170 [イリア]




猫「ナイフを、落とせ」



今度は猫さんの低い声が響く。

同時に男は、ナイフを地面に落とした。


⏰:09/04/05 03:18 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#171 [イリア]





カラン…



振り向くと猫さんは、
銀に煌(キラ)めく刃を
男の首もとに当てている。


⏰:09/04/05 03:18 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#172 [イリア]



七「――……///」


猫「―…大丈夫?怪我は」



男「ギャアアアアアア!!!!!」


猫さんがそこまで言ったとき、
後ろからまた、男の叫び声が聞こえた。


⏰:09/04/05 03:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#173 [イリア]



七「――……え…??」


後ろを見ると、男に噛みつく
美しい毛並みの狼。


⏰:09/04/05 03:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#174 [イリア]



猫「……チッ、おい、やめろ狼!!
その辺にしとけ!!」


猫さんの声が聞こえないのか、
狼(オオカミ)は変わらず男に牙を向ける。


⏰:09/04/05 03:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#175 [イリア]




猫「……あの、カス……ッッ!!」


ザッ


猫さんが狼のほうに
足を進めようとした、そのとき…


麗「――……やめて!!!!!!」

⏰:09/04/05 03:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#176 [イリア]


第三話:雨音の唄
>>6-107
>>110-175[更新分]

安価
>>3

†黒猫の棲むところ†
bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/10148/

†感想板†
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4322/

感想、アドバイス
お待ちしてます(゚∀゚)★
これから少しの間
更新少なくなるかもです(´;д;`)

⏰:09/04/05 03:24 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#177 [かな]
更新がんばって下さい

⏰:09/04/07 13:20 📱:D903i 🆔:☆☆☆


#178 [かな]
書かないんですか?

⏰:09/04/13 22:24 📱:D903i 🆔:☆☆☆


#179 [鼻]
>>178
感想板にしばらく書けないって書いてあるよ
こっちに書くと見づらくなるからやめて下さい

⏰:09/04/14 03:27 📱:W53S 🆔:☆☆☆


#180 [イリア]


 お久しぶりです(´゚ω゚`)

 詳しくは感想板のほうに
 書かせて戴きました。
 良かったら見てやって下さい。


 更新します!

⏰:09/11/29 13:23 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#181 [イリア]



狼「麗」

いつの間にか本来の姿に
戻っていた狼さんが
雨の中、麗さんに優しく問いかける。


狼「何があった?
  こいつらと何かあったんだろ、
  だから最近、様子が…」


⏰:09/11/29 13:24 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#182 [イリア]



麗「何もないってば!
  あんたのお節介には
  もううんざり!!
  まだ話の途中なの…
  雨原つれて、先に帰ってて…
  講演までには必ず戻るから」


狼「何の話だ?俺もいる
  猫、迷惑かけたな
  雨も降ってきた。
  新入りつれて先に行っててくれ」


⏰:09/11/29 13:24 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#183 [イリア]



麗「―…ッだから…!」



猫「…どうでもいいけど」


猫さんの声が、
二人の言い合いを遮る。


⏰:09/11/29 13:25 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#184 [イリア]



猫「お前ら時間分かってる?
  あと何分で講演始まると思ってんの
  しかも雨濡れて、声出にくいし
  今頃 狐が血眼になって
  俺たち探してるのが目に浮かぶ…」


男「―……ハッ……」


⏰:09/11/29 13:26 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#185 [イリア]


額の血を拭いながら、男が声を漏らす。


男「大変だなおい、劇団のトップスターさんはよ…こんな状況でも講演の心配か、…黒猫…ハハッ」


嘲笑じみたその笑いに、また狼さんの顔が歪む。


⏰:09/11/30 00:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#186 [イリア]



狼「―…こんな状況にしたのは誰だ?」


男「…ふふふ、それでもお前達は…俺達を殺さないだろう?生かすんだろう?…優しいな……でも」


止まることのない男の血は、地面に滴り、土に消える。


⏰:09/11/30 00:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#187 [イリア]



男「――……その優しさが、仲間を殺したんだ。そうだろう麗?気づいたときに、もっと意味ある行動を起こせば良かった。なのにお前はちんたらちんたら俺達を説得しようと…結果は、ほら。お前らの仲間が…」


――ガッ!!


狼さんの足が、男を勢いよく蹴りつける。


⏰:09/11/30 01:00 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#188 [イリア]



狼「それ以上一言でも喋ってみろ……今、殺す。」


狼さんのその瞳に、昨日までの優しさはない。


七「――……狼さん……」


⏰:09/11/30 01:00 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#189 [イリア]




猫「……プロ、だからね」

猫さんの声に、振り向く。


猫「俺も、狼も、……麗も。中途半端なことはできないんだ。余計な噂は立てられない……これ以上、な。」

猫さんが私を見る。意味ありげな猫さんの視線に、思わず首を傾げる。


⏰:09/11/30 01:01 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#190 [イリア]



男「……俺達を…殺すか?猫…」


猫「……まさか。狐(キツネ)に要相談ってとこかな。知ってる情報は全て吐いてもらう。…お前らの仕える、『妖(アヤカシ)』について…な。ただ、麗のこともあるし、命の保証まではできないんじゃない?」


男「…ハッ…甘いな…お前らは今、耐えられるのか…」


⏰:09/11/30 01:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#191 [イリア]



ポツ..ポツ..


雨は降り止まない。
ああ、本当にみんな、大丈夫なのかな。




男「仲間を…売ったのに……」


⏰:09/11/30 01:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#192 [イリア]



――――――――
――――――
―――――





男「…本当に…甘い……」


七「………?」


⏰:09/11/30 01:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#193 [イリア]



麗さんと私を襲った男達の頬に、一筋の涙が伝う。

猫さんのほうを見ると、嘲るような、…でもどこか悲しそうな、そんな横顔が見える。

やっぱり私にはまだこの劇団の全ては見えない。



いつか分かるのかな、私にも。


⏰:09/11/30 01:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#194 [イリア]



猫「……行こう、雨だ。」


猫さんの一言で男たちも互いに支え合いながらその場を立つ。

狼さんは麗さんを気づかいながら歩く。

私はただ、一人先行く猫さんの背中を追う。



こうして私にとって初めての、長い、長いお使いは終わった。


⏰:09/11/30 01:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#195 [イリア]




一区切りついたので、とりあえずここで切っておきます( ^ω^ )久々すぎて文章むちゃくちゃな気もします…精進だ;;
前の更新と改行の仕方を変えてみたのですが、意見等あれば感想板までお願いします(´゚ω゚`)

他、アドバイス・感想などもお待ちしています。不定期更新ですが、お付き合いお願いします><!



⏰:09/11/30 01:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#196 [イリア]




†感想板†
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4322/

†黒猫の棲むところ†
bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/10148/

†更新分†
>>181-194



⏰:09/11/30 01:13 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#197 [イリア]



>>194から


⏰:09/11/30 20:25 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#198 [イリア]


――――――――――
―――――――
――――






狐「 ど こ 行 っ て た の ☆ ? 」


⏰:09/11/30 20:26 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#199 [イリア]



狐「ねぇ何?何なの?時計見える?いま何時?9時48分だって。ねえ、猫(ネコ)くん開演は何時からだっけ?」



猫「10時」


⏰:09/11/30 20:26 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#200 [イリア]



狐「流石っ!我がアスタリスク劇団きっての花形男優っ!そんな講演開始時間を間違えるなんてねぇ、そんな ま さ か っ ☆ 笑

ところでそんな講演時間まで後何分?はい狼(ロウ)くん」


狼「12分」


⏰:09/11/30 20:27 📱:W61P 🆔:☆☆☆


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