黒猫の棲むところU
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#28 [イリア]
凪「―…あの子は…
あの日、死んだんでしょう?
……葵様、目を覚まして下さ…」
葵「生きてるよ」
葵が花瓶に近づき、
中の花にそっと触れる。
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#29 [イリア]
葵「生きてる。感じる。
……僕には分かる」
凪「……」
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#30 [イリア]
葵「……フフ、本当だよ。
凪夜には内緒にしてたけど、
調べて貰ってたんだ」
凪「……調べて貰ってた…?
じゃあ…あの子は本当に、
生きてるんですか…?」
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#31 [イリア]
葵「うん。だから、迎えに行くの。」
そう言うと葵は
嬉しそうにクスクス笑った。
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#32 [イリア]
凪「―…迎え…?」
葵「”ナナ”は、
僕がいないと何もできないから。
だから僕が迎えに行くんだよ。」
葵が言う。
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#33 [イリア]
凪「……………」
葵「ねぇ凪夜。
この花が何か知ってる?」
少年は笑って
花を花瓶から取り出す。
その花の切り口からは
水滴がこぼれ落ちた。
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#34 [イリア]
凪「……いえ」
葵「この花の名は、”ニコチアナ”。
花言葉は、”あなたがいれば”」
:09/04/01 22:56 :W61P :☆☆☆
#35 [イリア]
凪「…………」
葵「ねぇまるで、僕とナナのための
花言葉だ。そう思わない?」
凪「………僕は……
………私はッッ………!!」
葵「僕はナナさえいればいい」
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#36 [イリア]
葵の声が部屋に響く。
花瓶から取り出された花は
少しずつ元気をなくす。
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#37 [イリア]
葵「そしてナナには、
僕だけいればいいんだ。
ずっとそうやって生きてきた。」
少年の瞳に影がうつる。
先ほどまでの幼さは、もうない。
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