黒猫の棲むところⅡ

男「嗅覚いいんだよねー麗ちゃん♪

まぁそれで何か
言い合いになったりしちゃったり？

あんまりしつこいんで
ちょっと殴ったりしたら、
痣(ｱｻﾞ)になっちゃうしさあ」

男「ついでにキスなんかしてみたら、
めっきり大人しくなっちゃって。
本当可愛いよねー♪

―……死んだ仲間のために、
生きている仲間のために、
スパイを見つけだそうとした？
でも麗ちゃん、やっぱ甘いよ。
一人で何でもしようとするから―…」

七「――……痛ｯｯ……!!」

上から髪を引っ張られ、
思わず声が出る。

男「結局、こういう風に…
麗ちゃんいわく『関係ない雨原』まで
巻き込むことになるんだよ…

……ねぇ俺たち、妖側から
呼び出しかかったんだ。
もう妖様(ｱﾔｶｼｻﾏ)のところに
戻らなきゃいけない……だから」

男が麗さんの顎(ｱｺﾞ)を掴み、
無理やり上を向かせる。

男「――……最後に、

思い出ちょうだい？」

男が麗さんに口を近づける。

やめて。

七「―――……ｯｯ!!やめ…ｯｯ!!」

麗「―――――――………ｯｯやｯ…!!」

――……そのとき、

男「ｷﾞｬｱｧｱｱｧｱ―――ｯｯ!!!!!!」

私の横にいる男の一人が、

叫び声をあげた。

いや、正確には

　横に　いた。

さっきまで私の横で
髪を掴んでいた男は、

何かに、首もとを噛みつかれたまま
麗さんの近くの壁に押さえつけられ、
血を流しぐったりしている。

男に噛みついているものは―……

美しい、金色の毛並み。

男の二倍はあるであろう体。

七「――――………狼(ｵｵｶﾐ)…」

私が言葉を出したとき、
一瞬だけその狼がこっちを見た。

綺麗な毛並みから、赤色の瞳が覗く。

七「―――………狼さん……ｯｯ??!」

その狼は、ｶﾞﾙﾙ…と
怒りに満ちた声を上げると、
麗さんの顎を掴んでいた男に
襲いかかる。