漆黒の夜に君と。U[BL]
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#220 [ちか]
恭弥もこれには呆れた様子で、でも隣に並んできた。
やけど、なんせこの雰囲気の悪さ。
いや、俺が悪くしたんやけど!!
俺は自業自得のこの沈黙を破れずにいた。
照りつける真夏の太陽が、俺の額を湿らせる。
(この空気どないしよ‥)
考えれば考えるほど解決案が見つからず、汗がタラリと首筋を伝った。その時。
「あのさ、」
沈黙を破る乾いた声。
:09/07/19 08:46 :P906i :4c/3kdjU
#221 [ちか]
声のする方へ顔を向けると、夏とは無関係のような真っ白な肌が目に映った。
「なに。」
応答は自分でも驚くほど静かで短いものやった。
セミの声が辺り一面を五月蝿くするが、俺達の間だけはやけに静かな気がする。
「めぐ、凌のこと
好きでしょ?」
:09/07/19 08:56 :P906i :4c/3kdjU
#222 [ちか]
一瞬、この世の何もかもが止まった気がした。
それくらい衝撃的だった。
「…は、はぁ?!何言ってんねん!!お前俺のどこ見てそんなん言って‥‥、」
何故か心臓が早く脈を打った。
何故自分が焦っているのか分からない。
解らない…。
:09/07/19 09:04 :P906i :4c/3kdjU
#223 [ちか]
「どこを見てって言うか‥‥、なんとなくだけど。」
「は…はは、なんやそれ。変なこと言うなよ。」
なんで俺、こんなひきつってるんや?
こんなんいつもの俺やったら、笑い飛ばすなりキレるなりするはずやのに‥‥
でも、今俺の中はどっちでもない。
なんなんやろ、この感覚…
:09/07/19 14:11 :P906i :4c/3kdjU
#224 [ちか]
「じゃあ、めぐは凌の何が嫌いなの?」
その問いかけの口調は、嫌味や悪気などは全くなくただ素朴だった。
「そ、そりゃ…俺を馬鹿にしてるようなあの目とか‥」
「凌の目付きはもともと悪いよ?」
「あの憎たらしい口調とか…」
「いつも先に喧嘩吹っ掛けるのはめぐでしょ。」
「俺を見下ろす態度‥、」
「めぐの方が身長低いんだから仕方ないよ。」
「‥‥‥‥‥‥。」
:09/07/19 14:29 :P906i :4c/3kdjU
#225 [ちか]
ことごとく覆された俺は黙り込んだ。
それに追い討ちをかけるようにして恭弥は言う。
「そもそも、何がキッカケであんな仲悪くなったっけ?」
「それは…っ‥‥‥」
「それは?」
「いや、なんでもない。そんなん忘れたわ。」
「?変なの。」
そう言って恭弥は歩いていく。でも俺は立ち止まってしまった。
『忘れる』わけないから
:09/07/19 16:49 :P906i :4c/3kdjU
#226 [ちか]
でも、それは仲が悪くなったキッカケじゃない。
俺が、俺一人がアイツを拒んだ理由‥‥―――
―――――――――――
まだ8つか9つの頃だった。
たまたまパーティーで顔を合わせた俺とアイツ。
親同士の思いつきで急遽皆の前で、俺はピアノ、アイツはヴァイオリンで一つの曲を一緒に演奏することになった。
:09/07/19 17:04 :P906i :4c/3kdjU
#227 [ちか]
だけど、演奏中。
俺の親は仕事でパーティーを抜けた。
演奏が終わった後、舞台を降りるとアイツは両親に抱き締められていた。
何度も何度も頭を撫でられて誉められていた。
でも俺は‥‥―――
隣に世話係りが居るだけ。
「なんで俺だけ‥‥っ
なんで‥‥‥っ
俺は一人やねん…!!!!」
そう言って世話係りの服の裾を千切れるくらい強く握った。
嫉妬した。妬んだ。
そんなキッカケで俺はアイツを遠ざけるようになった。
:09/07/19 17:16 :P906i :4c/3kdjU
#228 [ちか]
「アホやな…俺。」
そう呟いてまた恭の隣に並んだ。
でもきっと俺はもうアイツとは並んで歩けない。
俺がそうしたから‥――
恭弥はチラリとこっちに目を向けたがすぐにまたそらした。
「また女抱いたんだね。」
―――‥‥え?
:09/07/19 17:36 :P906i :4c/3kdjU
#229 [ちか]
「女物の香水の匂いする。」
顔をしかめる恭弥。
「…ふ、はは。昨日俺が出ていく時から分かってたくせにいちいち言うんや?
性悪やな恭も。」
「お前には言われたくない」
お前には、か。
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:09/07/19 17:47 :P906i :4c/3kdjU
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