漆黒の夜に君と。U[BL]
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#765 [ちか]
「いつもみたいにキスしてほしかった?」
そう言って恭弥は俺の嫌みに気づいていてか気づかずにか、いつものように妖艶な笑みを浮かべ、間合いを詰める。
その瞬間、
一気に身体が熱くなるのが分かった。
「なな、んなわけねーだろっ!!!///
ていうか恭弥が勝手にしてくるだけで俺は別に…っ!!」
:11/06/10 23:01 :P906i :TrDYP092
#766 [ちか]
“別にしてほしくなんかない”
そう言いかけて
思わず口ごもった。
一瞬恭弥が悲しそうな表情をしたように見えたから。
沈黙を挟んで
気まずさが増す。
「冥、僕は、」
そこまで言って
再び目をそらした恭弥がそれ以上言葉を続けることはなかった。
:11/06/10 23:09 :P906i :TrDYP092
#767 [ちか]
「いや、なんでもない。」
そんな言葉とバタンという音を残して部屋を出ていく背中を見つめ、呼び止めようともしなかった。
ただ最近の恭弥は
やっぱりおかしいなとか
そんな風にしか
思わなかったんだ。
:11/06/10 23:11 :P906i :TrDYP092
#768 [ちか]
結局恭弥は朝食を取らなかった。
こんなことは俺がココに来てから初めてのことで、朝とは思えないほどの豪華な朝食を1人で食べるとなんだかすごく味気ない。
空いた空席を目の前にため息をこぼす。
(俺があんなこと言ったから悲しそうな顔したのかな。)
:11/06/14 19:52 :P906i :VFPspA9I
#769 [ちか]
いやいやいや!!
そもそも本当に悲しい顔したか分かんないし!
俺の勘違いかもしれねーし!
自分の考えを打ち消すようにブンブンと頭を横に振った。
なんか俺も変だ。
なんて思いながら、
松山さんに促されて車に乗り込んだ。
:11/06/14 19:55 :P906i :VFPspA9I
#770 [ちか]
中には既に恭弥が居た。
静かに走り出したことは、窓からの景色が動き出してようやく気づいた。
車内は外の寒さを忘れるような暖かさで、
自然と目が微睡んでくる。
:11/06/14 19:58 :P906i :VFPspA9I
#771 [ちか]
「冥、」
車が動き出してどれくらい経ったのだろうか。
急に名前を呼ばれてやっと、自分がうっかり船を漕いでいたことに気づく。
寝ぼけ眼のまま、
かすれた声で返事をする。
「ん…?なに?」
ぼんやりと見えた恭弥は悲しみと虚無を感じさせる複雑な表情をしていた。
:11/06/14 20:03 :P906i :VFPspA9I
#772 [ちか]
見据えられた目の冷ややかさに思わず唾を飲んだ。
ピンと張る空気。
鋭い視線。
それはやがて斜め下へと流され、代わりに閉じていた口が開かれた。
:11/06/14 20:11 :P906i :VFPspA9I
#773 [ちか]
「家(ウチ)を出ていってく
れないかな」
一瞬、
世界が止まったと思った。
:11/06/14 20:12 :P906i :VFPspA9I
#774 [ちか]
「は‥‥?」
なんの冗談‥‥、
そう思って恭弥の顔を見たけれどそこに冗談を言ったような顔は無かった。
「なに言って…、」
なんで目すら合わせてくれないんだよ。
なんで俺を見てくれないんだよ。
募る感情が言葉を詰まらせる。
:11/06/14 22:01 :P906i :VFPspA9I
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