漆黒の夜に君と。U[BL]
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#819 [ちか]
「ふぐっ、う…?!」

なになになに。
訳わかんねーって!

この展開なに、
俺たちのこの抱擁なに、
え、もう俺パニックなんですけど。


息をするのも苦しいほど、
きつく締め付けられて
鼓動も上がり、俺の顔は真っ赤になっていた。

透の腕から逃れようと必死にもがき、
漸く埋めていた顔を離すことが出来た。

がしかし、その瞬間目が合うのは必然的なことで。

⏰:11/09/11 02:09 📱:Android 🆔:ljqRaiOw


#820 [ちか]
沈黙に沈黙が重なり、
また沈黙。


真顔で俺を見つめるその瞳に
俺の焦った顔が映って見える。

耐えかねる空気がそこにあって、俺は口をパクパクと動かすだけ。

しかしそれも、
声を出すことは出来ず
空気を吸っては吐く原始的な動作しか出来なかった。


「あ……、あの、とお…、」


「…………プッ、アホ面。」

⏰:11/09/11 12:21 📱:Android 🆔:ljqRaiOw


#821 [ちか]
「なっ、…!!!?」

「あはははは!!ひー、おっかしー!
なに顔真っ赤にしてんだよ、バーカ」

透はさっきまでの真剣な顔が嘘のように目の前で笑い転げている。


俺、こいつと親友のつもりだけど、
ときどき、

「読めねぇときがある…。」

「え、なんか言った?」

「いや…」

なんでもない。

⏰:11/09/11 15:44 📱:Android 🆔:ljqRaiOw


#822 [ちか]
それから俺たちは
宿直の先生に見つからないように夜の校舎から裏門まで走り、こっそり抜け出して透の家に帰った。


こんなことしたの、
いつぶりだっけ。


楽しいなぁ、懐かしくて。
……―――――
…―――
――

⏰:11/09/11 16:10 📱:Android 🆔:ljqRaiOw


#823 [ちか]
― 恭弥side.―

もう、いい加減迷惑なんだよ…っ



最後に交わしたのは
悲しくもあり、
それ以上に僕の決心を固くさせた。


やっぱり
僕は冥から離れた方が良い。

これ以上、冥を苦しめるくらいなら。

⏰:11/09/12 00:38 📱:Android 🆔:8pbz01wM


#824 [ちか]
ここ最近ずっと考えていた。


蓮見透という人間の存在を
頭の片隅で意識しながら。


最初は
冥を誰にもやりたくない、
僕だけのものにしたい、
彼にも譲れない、
そんな風に思っていた。

だけど、

⏰:11/09/12 00:41 📱:Android 🆔:8pbz01wM


#825 [ちか]
徐々にその独占欲は
冥の幸せを優先したいと思う感情に呑まれるようになった。


こんなのは初めてだ。
他人の幸せを一番に考えるなんて。

そして、
その感情が加速するにつれて、
僕はあることに気づいた。

僕では、冥を幸せには出来ないということに。

⏰:11/09/12 00:46 📱:Android 🆔:8pbz01wM


#826 [ちか]
僕は、
どうしても自分の欲で冥を呑み込んでしまう。

僕から離したくなくなって、
でもそれは冥の自由も同時に奪ってしまう。

きっと幸せも。……


それならいっそ、
冥から離れることが
僕が冥に出来る優しさなんじゃないか。

⏰:11/09/12 00:51 📱:Android 🆔:8pbz01wM


#827 [ちか]
案の定、
今朝のようなことになった。


冥は自由を望んでいた。

知らず知らずのうちに僕は僕を押し付けて、苦しめていたんだ。


もうそんなことはしないから、
幸せになってほしい。

そんな思いで、
親友に引っ張られていく冥の後ろ姿を、焼き付けるように見つめた。

柄にもなく、涙が込み上げて
居たたまれなくなって静かに目を閉じた。


さようなら。

⏰:11/09/12 00:57 📱:Android 🆔:8pbz01wM


#828 [ちか]
そんな風に呟くと、


脳裏に焼きついた冥の姿が滲んで


僕はただ、

そこに立ち尽くすことしかできなかった。

………――――
……―――
…――

⏰:11/09/12 13:36 📱:PC/0 🆔:sdX/PGUo


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