漆黒の夜に君と。U[BL]
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#853 [ちか]
って!!!!!

冷静な分析してる場合じゃない!


この人、今、黒羽くん、って…っ―――




まさかと思いながら隣のベッドにチラリと瞳だけ動かすと、ちょうどカーテンが開いて目があった。

⏰:11/09/24 01:13 📱:Android 🆔:MNDcM4s6


#854 [ちか]
きょう……や――――

思わず口に出してしまいそうになった名前を必死で飲み込む。

一瞬合った瞳は一瞬でそらされ、
代わりに労いの言葉をかけた女子生徒に向けられた。

「大丈夫だよ、ごめん心配かけて。もう行くから先に戻ってて。」

至って普通に、しかし気だるさのある声でそういうと女子生徒も多少の間を空けて、再び教室に戻っていった。


なんだよ、心配してくれる女の子も居るじゃん。
可愛いし。

やっぱり俺なんか居なくても、困らないんだよな、コイツは。

半ばふて腐れてそんなことを思う。

⏰:11/09/24 01:20 📱:Android 🆔:MNDcM4s6


#855 [ちか]
しかし、
自分の意思を伝えることは
それとは関係ない。

俺がちゃんと、言っておきたいだけなんだから。

ふて腐れている場合じゃないんだ。

このタイミングを逃してはならないと、俺は意を決して恭弥の居る方へ体を向けた。

⏰:11/09/24 01:22 📱:Android 🆔:MNDcM4s6


#856 [ちか]
「恭弥、あの、」

そう名前を呼んだとき、
冷たい目が俺を容赦なく刺した。

「…もう話しかけないでほしい」

ズキン

と確かに胸が痛んだ。

すぐ目の前に居るソイツが急に遠くに感じる。
だけど、引いてなどいられないと自分を励まし、言葉を繋げた。

⏰:11/09/24 01:27 📱:Android 🆔:MNDcM4s6


#857 [ちか]
「でも、ちゃんと話したいことがあって…っ」

噛みつくように言うと、
恭弥は一瞬だけ迷ったような顔を見せて立ち上がった。

「………僕には話すことなんて無い。」

「あんたに無くても俺にはあるんだよ!!」

なんで取り合ってくれないんだよ、
取り合ってくれようとさえしてくれないんだよ…―――っ

「恭弥っ……!!」

保健室を出ようとする恭弥の手を俺は咄嗟に掴んだ。
思わず力が入る。

⏰:11/09/24 01:34 📱:Android 🆔:MNDcM4s6


#858 [ちか]
俺たち以外に誰もいないこの空間。
張り詰められた空気はまるで糸のようだ。

掴んだ手は冷たく、
また、その声も冷たかった。

「離して、急いでるんだ。」

「なら、今日6時に学校の近くのファミレスの前で待ってる…っ、だからっ…、」

「離せって言ってるだろ…!!」

遮るようにして、恭弥は俺の手を振りほどいた。

そのまま、その背中は遠くなっていく。

⏰:11/09/24 01:41 📱:Android 🆔:MNDcM4s6


#859 [ちか]
「俺待ってるから!!あんたが来るまでずっと…―――、ずっと待ってるから!」


遠退いていく背中に、
精一杯届くように俺は叫んだ。

周りの目など頭にも入らず、

ただ、必死に、去っていく恭弥に向けて。


途切れそうな糸を繋ぎ止めたい一心で、
そうすることしか俺には出来なかったんだ。

⏰:11/09/24 01:46 📱:Android 🆔:MNDcM4s6


#860 [ちか]
それから授業なんて手につかなかった。
いや、いつものことなんだけど。
その最上級みたいな。

今更ながら、
話して何になるんだ、なんて答えようのない自問自答が頭を巡る。

気づけばホームルームも終わり、窓の外はオレンジに染まっていた。

「日下ー、」

⏰:11/09/25 20:30 📱:Android 🆔:lAqmw6zM


#861 [ちか]
「はい?」

名前を呼んだのは担任の前田だった。

「お前今日残れ。」

「は?!なんで?!」

咄嗟のことに、口調も姿勢も前のめりになると、前田は俺の左足を思いっきり蹴った。

「いってぇ〜!!」

「誰にタメ口きいてんだ、クソガキ。」

生徒をクソガキ呼ばわりかよ!

思わずそう叱咤しそうになったが、痛みのあまり声も出なかった。

前田は続ける。

「お前この前の古文の点数分かってんの?学年最低だぞ。
追試のためにもっかい作るのめんどくせーから、備品室の片付けで免除してやるよ。」

⏰:11/09/25 20:52 📱:Android 🆔:lAqmw6zM


#862 [ちか]
よかったな、俺が寛大で、と付け加えて前田は満足げに笑った。

しかし今日の俺はそんなことしてる暇がない。

「や、今日は大事な用事があって…!」

「用事と成績どっちが大事だ」

「用事です」

「バカたれ」

間髪入れずにテンポの良い押し合いが始まる。

「だから今日だけは無理なんですって!!」

これでもかと言わんばかりに懇願した瞳でそう言うと、前田は「あぁ?んー、」とあからさまに気だるそうに唸った。

⏰:11/09/26 17:10 📱:Android 🆔:O9JTdECU


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