漆黒の夜に君と。U[BL]
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#100 [ちか]
― 冥side.―
恭弥が出ていったあと、俺達に残されたのはどうしようもない沈黙だった。
黙々と食事を続ける凌さん。
ちょっと食べ過ぎなんじゃ‥‥――と思ったけど、そんな事を言える雰囲気じゃなかった。
あまりにもそんな時間が長く続くもんだから、耐えきれなくなって俺は風呂にでも入ろうと席を立った。
:09/05/07 19:15 :P906i :ltv73rLQ
#101 [ちか]
と、言っても実は俺、かなりの方向音痴‥‥。
時々すれ違うメイドさん達に何度も何度も場所を聞いては迷い、最終的には案内されると言う形でそこに辿り着いた。
アジアンテイストな造りのバスルームからは夜空に浮かぶ月によってキラキラと輝く海がよく見えた。
「明日は海行けるかな‥。」
そんなか細い独り言は、お湯の中に溶けていった。
:09/05/07 19:24 :P906i :ltv73rLQ
#102 [ちか]
「あっちぃー‥」
長く入りすぎて身体はかなりの熱を帯びていた。
俺は顔の周辺をパタパタと仰ぎながら熱を冷ますが、熱は尚も俺の身体を支配し続ける。
仕方無しに俺は夜風にでもあたろうと、バスルームのすぐ傍にあった窓から庭に出た。
:09/05/07 19:43 :P906i :ltv73rLQ
#103 [ちか]
熱のせいでぼんやりとする頭と、フラフラな足取り。
よろよろとその辺を歩いていると、不意に何処からか綺麗な音色が聞こえてきた。
‥───♪‥〜〜♪
「あれ‥‥?」
音のする方へ進むと、段々と人影が見えてきた。
:09/05/07 20:34 :P906i :ltv73rLQ
#104 [ちか]
「‥‥―――!!!」
俺の目に飛び込んできたのは、雪のように真っ白で細い手でバイオリンを弾く凌さんの姿だった。
月明かりがちょうどスポットライトかのように凌さんを照らしていて、さらにその美しさを引き立たせている。
あまりに綺麗な旋律と容姿に俺は思わず暫くの間見とれてしまっていた。
:09/05/07 20:40 :P906i :ltv73rLQ
#105 [ちか]
我に返ったのは、ピタリとその白い手首が動きを止めた時だった。
ハッとした俺は、その場からどうしたらいいか分からなくなり立ち尽くした。
そんな俺に鋭い碧眼が向く。
「いつまでそうしてる気?」
:09/05/07 20:52 :P906i :ltv73rLQ
#106 [ちか]
「あ…っ、えっとその…ッ」
冷たい瞳が言葉の自由を奪う。
両手だけが空間を掻いた。
凌さんはそんな俺を暫く見つめた後、大きくため息をついて手招きをする素振りを見せた。
:09/05/07 21:23 :P906i :ltv73rLQ
#107 [ちか]
俺は戸惑いながらも、小走りで凌さんに近寄った
「盗み見なんて悪趣味な事されるくらいなら、近くに居た方がマシ。」
相変わらずの無表情が言葉にトゲをつける。
だけど俺は嬉しかった。
あの綺麗な旋律を近くで聴けると思うと自然と顔が緩んでいた。
「そ、それって見てていいってことですよね…?」
恐る恐るそう聞くと、凌さんは初めて柔らかい笑みを見せた。
「今日だけ特別、ね。」
:09/05/07 23:18 :P906i :ltv73rLQ
#108 [ちか]
そして白い手首は再び動きだす。
俺はペタリと座りこんで、それをじっと見続けた。
指先から足の爪先まで、本当に整った、中性的な容姿。
時々風に靡くブロンドの髪がキラキラと輝いて美しかった。
こうしてみるとやっぱり女の人に見える。
それくらい綺麗だった。
:09/05/08 21:00 :P906i :0YEHIE/g
#109 [ちか]
暫くすると凌さんは手を止めた。
さっきのように急にではなく、余韻を残すようにゆっくりと丁寧に。
どうやら曲が終わったみたいだ。
それを合図するかのように碧眼は目線を落として、俺を写した。
その澄みきった碧(アオ)に吸い込まれそうになる。
:09/05/08 23:14 :P906i :0YEHIE/g
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