漆黒の夜に君と。U[BL]
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#105 [ちか]
我に返ったのは、ピタリとその白い手首が動きを止めた時だった。

ハッとした俺は、その場からどうしたらいいか分からなくなり立ち尽くした。


そんな俺に鋭い碧眼が向く。



「いつまでそうしてる気?」

⏰:09/05/07 20:52 📱:P906i 🆔:ltv73rLQ


#106 [ちか]
「あ…っ、えっとその…ッ」

冷たい瞳が言葉の自由を奪う。
両手だけが空間を掻いた。


凌さんはそんな俺を暫く見つめた後、大きくため息をついて手招きをする素振りを見せた。

⏰:09/05/07 21:23 📱:P906i 🆔:ltv73rLQ


#107 [ちか]
俺は戸惑いながらも、小走りで凌さんに近寄った

「盗み見なんて悪趣味な事されるくらいなら、近くに居た方がマシ。」

相変わらずの無表情が言葉にトゲをつける。

だけど俺は嬉しかった。
あの綺麗な旋律を近くで聴けると思うと自然と顔が緩んでいた。

「そ、それって見てていいってことですよね…?」

恐る恐るそう聞くと、凌さんは初めて柔らかい笑みを見せた。

「今日だけ特別、ね。」

⏰:09/05/07 23:18 📱:P906i 🆔:ltv73rLQ


#108 [ちか]
そして白い手首は再び動きだす。

俺はペタリと座りこんで、それをじっと見続けた。


指先から足の爪先まで、本当に整った、中性的な容姿。

時々風に靡くブロンドの髪がキラキラと輝いて美しかった。

こうしてみるとやっぱり女の人に見える。
それくらい綺麗だった。

⏰:09/05/08 21:00 📱:P906i 🆔:0YEHIE/g


#109 [ちか]
暫くすると凌さんは手を止めた。

さっきのように急にではなく、余韻を残すようにゆっくりと丁寧に。


どうやら曲が終わったみたいだ。

それを合図するかのように碧眼は目線を落として、俺を写した。

その澄みきった碧(アオ)に吸い込まれそうになる。

⏰:09/05/08 23:14 📱:P906i 🆔:0YEHIE/g


#110 [ちか]
「なんで泣いてるの?」

「え‥‥?」


言われるまで全く気づかなかったが、触れてみると頬は確かに濡れていた。


「良く分かんないけど、なんか凌さんの弾いてた曲聴いてたらなんか胸の奥が苦しくなって‥‥―――」


綺麗で優しいけど、どこか哀しくて寂しさが伝わってくる。

⏰:09/05/09 20:28 📱:P906i 🆔:zjxVugOY


#111 [ちか]
凌さんは俺の言葉に、ただ「そう。」とだけ返事して、俺の隣に腰を下ろした。

目線が同じ位置になったところで、俺は口を開く。


「‥なんて曲なんですか?」

すると凌さんは少し考えるような素振りを見せたあと呟いた。

「まだ決まってない。」

「まだ‥?」


.

⏰:09/05/09 20:34 📱:P906i 🆔:zjxVugOY


#112 [ちか]
「思い浮かんだ音を並べただけだから、まだ曲としては決まってないんだ。」

そう言って凌さんはバイオリンを指でなぞった。

「それってその、つまり凌さんが作ったってことですか?」

「うん。」

その瞬間空気はシンと静かになった。

そして…

⏰:09/05/09 21:00 📱:P906i 🆔:zjxVugOY


#113 [ちか]
「すっげー!!!」

星がキラキラと瞬く夜空に俺の声は響き渡った。

凌さんは驚いたように目を丸くしている。

俺は興奮状態。

「自分で作るとかすごすぎ!!!天才?!」

目を大きくさせてそう言う俺に、凌さんは驚いた顔を見せた後暫くして「ぷっ」と吹き出して笑った。

⏰:09/05/10 07:45 📱:P906i 🆔:5M2wVrvQ


#114 [ちか]
「天才って…ぷっはは、なんか分かる気がするな。」

「だ、だってホントにすごいし!!!///ってか分かるって何がですか?」

笑われたことで恥ずかしさが込み上がってくる。


「ん?恭が君を選んだ理由。」

「あ、そう言う意味ですか〜あははは…、」



って!!!
えぇ?!?!

⏰:09/05/10 20:47 📱:P906i 🆔:5M2wVrvQ


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