漆黒の夜に君と。U[BL]
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#279 [ちか]
走ってきたのか、肩で息をする凌。
そんな凌を見てただ呆然とする俺。


「なんで…お前が……、」

『此処にいるのか』と言い終わる前に、手首を掴まれた。

「えっ…ちょ‥‥え?!!?」

状況を把握出来ずパニック状態のまま、俺は凌に引っ張られる形で走り出す。

後ろを見ると、踞(ウズクマ)っている男が遠くなっていくのが見えた。‥‥───

⏰:09/07/23 19:02 📱:P906i 🆔:x5f2JRqo


#280 [ちか]
ハァ‥‥ッ‥ハァ‥ハァ‥──

「ちょ、どこまで行くねん!?」

どれくらい走っただろうか
息が上がり、体力にも限界が近づいてきた頃、漸く凌は足を止めた。

凌は俺に背中を向けたまま返事をしない。

「ハァッハァ‥おい、なんとか言え‥や‥──い゙っ!!?」


パン!!!

と斬れの良い音が辺りに響き渡り、俺の頬は滲むように痛みだした。

⏰:09/07/23 19:36 📱:P906i 🆔:x5f2JRqo


#281 [ちか]
「何してんだよ!!!!
なんで逃げないわけ?!!
馬鹿か?!!」

振り向いた凌は、今まで見たことがないくらい怒りの表情を露(アラワ)にした。

凌の平手打ちを受け混乱するが、じんじんとする痛みで我に戻る。

「…っな、お前には関係無いやろ!!!!」

お前に‥‥──
お前なんかに‥‥───

「お前なんかに俺の何が分かんねん……っ!!!!」

気が付けばそう叫んでいた

⏰:09/07/23 19:56 📱:P906i 🆔:x5f2JRqo


#282 [ちか]
シンと静まりかえる辺り。
しかし凌に驚いたような素振りはない。
それどころか、

「あぁ、分かんないよ。」

そう言って俺を怒りのこもった目で睨み付ける。
俺もその表情に一瞬怯んだが、言い返そうと口を開く。

「それやったら、もう…「分かんないから、分かろうとしてんだよ。」

その声は『怒り』とはまた違う、何とも言えない静けさがあった。

⏰:09/07/23 23:12 📱:P906i 🆔:x5f2JRqo


#283 [ちか]
「…う、嘘や!!嘘つくな!!
分かろうとなんか‥─ッ」

分かろうとなんか、
今まで誰一人かてしてくれへんかったやんか。

嘘なんかいらんねん…っ
嘘なんか‥──

込み上がってくる何かが、俺の感情をコントロール出来なくする。

震える身体。
怯えるように耳を塞ぐ俺はまるで子供のようで。
冷めきった心が全てを拒絶する。

しかし突然、身体に温かさを感じた。

⏰:09/07/23 23:20 📱:P906i 🆔:x5f2JRqo


#284 [ちか]
「大丈夫。大丈夫だから。」

耳元で鳴るその声と苦しいほどの締め付けは不思議なほど俺を落ち着かせていく。

けど、心の何処かで
まだソレを信じられない俺が居る。

「は、離せや…っ!!!」

みんないつかは離れていく
俺から遠くなっていく

それなら最初から、そんなモノ要らん‥


「もう一人で抱え込むなよ」

⏰:09/07/23 23:31 📱:P906i 🆔:x5f2JRqo


#285 [ちか]
「お前が辛い時は、その辛さ俺も半分背負うから。
だから逃げたりすんなよ。
目そらすなよ‥──
一緒に受け止めてやるから。」


そう言って凌はさらに締め付けを強くした。

───‥『一緒に』…


ポタ‥─ッ

凌の肩に小さな円が滲む。
それは連続的に。
そして零れ落ちるように。

何かの歯止めが取れたかのように俺の瞳(メ)からは大粒の涙が溢れ出した。

⏰:09/07/24 22:52 📱:P906i 🆔:CzAz7gTI


#286 [ちか]
そうか。

「お…俺は‥──っ」

俺は、

「ずっと…」

孤独を忘れさせてくれる人じゃなくて、

「ずっと独りで‥──ッ」

一緒に受け止めてくれる人を探してた‥──
       ずっと。

⏰:09/07/24 23:05 📱:P906i 🆔:CzAz7gTI


#287 [ちか]
「大丈夫。大丈夫だから。
もう独りじゃないから。」

「うっ…グス‥‥うぅ…っ」


俺をあやすようなその手つきが優しかったから、
余計に涙が止まらなくなって

俺はまるで子供のように泣いた。
声が枯れるまで。


月明かりに照らされて
涙はキラリと光った。

――――――――――――
――――――――――――

⏰:09/07/24 23:10 📱:P906i 🆔:CzAz7gTI


#288 [ちか]
― 冥side.―

「あーっ!!!!!
ちょ、恭弥ぁっ!!!!(怒)」

「ん?」

俺は朝から鏡を通して、後ろでコーヒーの入ったティーカップをすする恭弥を睨む。

そんな俺に暢気な返事を返す恭弥。

「見えるトコにはつけんなってあれだけ言ったのに!!//
どーしてくれんの、コレ!!」

"コレ"の正体、それは

「僕のモノって印だもん。
見えるトコじゃないと分かんないでしょ?」

赤い小さな痕。

⏰:09/07/24 23:18 📱:P906i 🆔:CzAz7gTI


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