漆黒の夜に君と｡Ⅱ[BL]

｢‥‥‥あ、もしもし俺です、日下です
はい、ご無沙汰してます
あの、ちょっとお願いが
あるんですけど…──｣

思い起こせばこの一本の電話から俺たちはズレていったんだ。‥‥────

───────‥‥
───‥

放課後、俺は久しぶりに電車に乗った。

恭弥の車を断って乗り込んだ電車が行くのは、懐かしくて歩き慣れた街の駅。

ｶﾗﾝ、ｺﾛﾝ

久しぶりに押した扉は案外軽く開いた。

｢おー久しぶり！｣

相変わらずの明るさがさらに懐かしさを醸し出した。

店の匂いも流れる音楽の雰囲気も何一つ変わってない

｢お久しぶりです、店長。｣

懐かしいなあ

｢急に電話してくるから、なんかあったのかと思ったわ。｣

｢すいません…。でも俺が言うのもなんですけど、本当に良いんですか？｣

店長はグラスを磨きながら穏やかに笑う。

｢もちろん。｣

今の俺にはこの笑顔が身に染みるようにありがたい。

｢ありがとうございます！｣

よし！
恭弥のためだし
頑張って稼ぐぞ！

― 恭弥 side.―

最近冥がおかしい。

どう考えても何か
隠してるようにしか見えないんだけど。

だいたい…

｢今何時だと思ってるの？｣

深夜３時帰宅って
どう言うこと？

｢ご、ごめん…なさい(汗)｣

｢答えになってない。｣

なんで目をそらすんだ。

壁に両手をついて
冥を挟むような体勢をとる

｢ちゃんと答えなきゃこのまま襲う。｣

もちろん答えたとしても
そうするけど。

冥は一向にこっちを見ようとしない。

｢ど…どいてよ｣

｢やだ。｣

なんなのこの感覚。
変な胸騒ぎ。

こうなったら無理にでも吐かせてあげる。

冥の顎を強く上げ、無理矢理に唇を重ねた。

｢ん…ぅ‥ふ…っ｣

苦しそうに僕の服を握る冥

｢んん…っ!!や…だって…ば!!!!｣

ドン.

｢と、とにかく今日はいやなんだよ！
おやすみ!!!!｣

バタンｯ.

ドアが強く閉まる音が響いて暫くして僕はズルズルと廊下に座りこんだ。

なに？
どういうこと？

｢‥‥‥拒否された‥？｣

― 冥side.―

次の朝、目が覚めると恭弥の姿は無かった。

いつもなら寝込み襲ってくるはずの恭弥が居ないことに違和感を感じて部屋を見渡すと、

小さなテーブルの上に一枚髪が置かれていた。