漆黒の夜に君と。U[BL]
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#795 [ちか]
取り繕う言葉を頭の中のボキャブラリーという棚から片っ端に探し回っても、適当な言葉は見つからず、ただただ口がもごつくだけ。
「…ま、無理して聞きはしないから。元気だせよ。」
ふわりと大きな手が俺の頭を優しく撫でた。
そうだった。
透は俺が落ち込んだとき、いつもこうやって慰めてくれていた。
俺はそれに幾度となく救われてきたし、それが好きだった。
:11/06/16 00:39 :P906i :8oj82JQ.
#796 [ちか]
撫でた頭にほのかな暖かみを残して、その手は俺の前で揺れている。
その少し後ろをとぼとぼ歩く。
心配してくれてるのに、
事情も説明出来ないのは
理不尽すぎないかな。
そんなことを考えながら、
数歩前を歩く自分より広く頼もしい背中を眺めた。
:11/07/06 15:41 :Android :W50FArGo
#797 [ちか]
「あの、透…、」
「ん?」
呼び掛けられて振り向いた透をまだまっすぐには見れない。
「いや…、なんでもない。」
喉まで来ていた言葉を
寸前で飲み込む。
やっぱり自分と恭弥の関係を思いきって言う気にはなれない。
普通ではないことは自分が一番よく分かっているから。
それをあえて第三者から指摘されるのは、やっぱりツラい。
それが透だとなおさら。
:11/07/06 15:50 :Android :W50FArGo
#798 [ちか]
もう半ば呆れられているのか透は苦笑とも言える精一杯の優しい表情(カオ)で笑うだけだった。
「後ろじゃなくてこっち来いよ。」
それでも透はやさしいのだ、と
こんなときに思い知らされる。
そして、それに比べて俺は、と言う皮肉が必ずついてくる。
俯いたまま、返事をすることもなく小走りで駆け寄り横に並んだ。
「…寒いな。」
頭一つ分高い透の顔は、
もうマフラーが半分程覆ってよく見えなかった。
:11/07/06 16:08 :Android :W50FArGo
#799 [ちか]
勢いで出ていくとは言ったものの、
心にはぽっかり穴が空いてるみたいだった。
何かしたんだろうか。
…飽きられたんだろうか。
考えてみれば、
ふと頭を過ったのは昨日と今朝の恭弥の様子。
明らかにいつもとは違った。
:11/07/08 01:13 :Android :oC0bKfsc
#800 [ちか]
そういえば、
やたら透のことを気にかけていた。
「もしかして、」
思わず口から出た言葉の続きを慌てて飲み込んだ。
もしかして、
恭弥は透のことが好きなんじゃ…
そんな想像が脳裏を過る。
:11/07/08 01:21 :Android :oC0bKfsc
#801 [ちか]
だってそれなら辻褄が合う。
昨日、廊下で楽しそうに話してたことも、夕食のときやたら透のこと聞いてきたことも、今朝透の家に泊まるって言ったらダメだって突っ掛かってきたことも。…
ポタ…ポタ…
気づけば頬を伝って
幾つもの水滴が溢れだしていた。
午後の授業の真っ最中、
もうすでに教師の張り上げる声など耳に入れる余裕は無い。
必死に擦ってもなかなかその涙は止まらない。
俺は机に上半身を突っ伏して、バレないようにするのに必死だった。
:11/07/08 23:07 :Android :oC0bKfsc
#802 [ちか]
なんとかそれで授業はやり過ごせたものの、
「目、赤いぞ。」
一番気づかれたくない人に、誤魔化しは効かなかった。
HRを終えて放課後の教室はもう俺達以外に人は無く、厚い冬の雲からの夕日が射し込めるだけのガラリとした雰囲気になっていた。
「あ、さっきまで寝てたから…」
もう俺が絶対事情を説明しないことを分かっているのか、あえて透はそれ以上深入りしようとはしない。
「あの、今日、透の家行っていい…?」
甘えていることは分かってる。
事情も説明せずにこんな風に頼むのは無私の良い話だと言うことも。
それでも、やっぱりこんなときに頼れるのは透しか居ないんだ。
「今から生徒会の会議あるからちょっと待たせると思うけど、それでも良いなら良いよ。」
その返事に俺は無言で頷いた。
:11/07/09 00:56 :Android :5xLSuFVA
#803 [ちか]
「じゃあ行ってくるな。」
そう言って教室を出ていった背中を見送ったあと、今度こそ俺は溺れるように深い眠りに落ちた。
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:11/07/09 01:02 :Android :5xLSuFVA
#804 [ちか]
― 透 side.―
会議があるというのは
ウソ。
でも用事を済ますことに変わりはなかった。
やらなきゃいけないことがあるから。
生徒会室はもうすでに鍵が空いていて、
開けると静けさの中で立て付けの悪い戸の音が廊下に響いた。
:11/07/09 01:09 :Android :5xLSuFVA
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