漆黒の夜に君と。U[BL]
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#801 [ちか]
だってそれなら辻褄が合う。
昨日、廊下で楽しそうに話してたことも、夕食のときやたら透のこと聞いてきたことも、今朝透の家に泊まるって言ったらダメだって突っ掛かってきたことも。…
ポタ…ポタ…
気づけば頬を伝って
幾つもの水滴が溢れだしていた。
午後の授業の真っ最中、
もうすでに教師の張り上げる声など耳に入れる余裕は無い。
必死に擦ってもなかなかその涙は止まらない。
俺は机に上半身を突っ伏して、バレないようにするのに必死だった。
:11/07/08 23:07 :Android :oC0bKfsc
#802 [ちか]
なんとかそれで授業はやり過ごせたものの、
「目、赤いぞ。」
一番気づかれたくない人に、誤魔化しは効かなかった。
HRを終えて放課後の教室はもう俺達以外に人は無く、厚い冬の雲からの夕日が射し込めるだけのガラリとした雰囲気になっていた。
「あ、さっきまで寝てたから…」
もう俺が絶対事情を説明しないことを分かっているのか、あえて透はそれ以上深入りしようとはしない。
「あの、今日、透の家行っていい…?」
甘えていることは分かってる。
事情も説明せずにこんな風に頼むのは無私の良い話だと言うことも。
それでも、やっぱりこんなときに頼れるのは透しか居ないんだ。
「今から生徒会の会議あるからちょっと待たせると思うけど、それでも良いなら良いよ。」
その返事に俺は無言で頷いた。
:11/07/09 00:56 :Android :5xLSuFVA
#803 [ちか]
「じゃあ行ってくるな。」
そう言って教室を出ていった背中を見送ったあと、今度こそ俺は溺れるように深い眠りに落ちた。
──────────────────………
─────────────────────……
:11/07/09 01:02 :Android :5xLSuFVA
#804 [ちか]
― 透 side.―
会議があるというのは
ウソ。
でも用事を済ますことに変わりはなかった。
やらなきゃいけないことがあるから。
生徒会室はもうすでに鍵が空いていて、
開けると静けさの中で立て付けの悪い戸の音が廊下に響いた。
:11/07/09 01:09 :Android :5xLSuFVA
#805 [KAZUHA]
Tから見てます!!!!
続きが気になります///
:11/08/27 02:35 :F904i :pBsYaRfw
#806 [ちか]
>>806 KAZUHAさま
ありがとうございます(*^^*)
不定期極まりなくてすいません
:11/09/10 14:10 :Android :r3.xBClY
#807 [ちか]
「お待たせしました、」
静かな室内に、
その声はよく通った。
窓際で腕組みする姿が夕日に照らされて、シルエットを作っている。
「先輩。」
ギロリと切れ長の瞳が俺を捕らえた。
ああ、ご機嫌ななめですか。
「話って。」
なに?の二文字まで省きたくなるほどの不機嫌らしい。
俺だってこんなやつと長々話すつもりなんか甚だ無いっつーの。
:11/09/10 14:15 :Android :r3.xBClY
#808 [ちか]
「今朝のアレなんですか。」
余計にこの人の機嫌が悪くなることは重々承知の上で、そんな質問を投げ掛けた。
「君には関係ない。」
「いや、冥は俺の大事なやつなんで。」
関係ない、で片付けられちゃ俺の怒りが収まらないんだよ、生徒会長さん。
言ったよね、俺。
:11/09/10 14:21 :Android :r3.xBClY
#809 [ちか]
「冥のこと、傷つけたらぶっ殺す。
って、言いましたよね、俺。」
冷ややかな微笑みすら出来ないほど、俺の怒りは自分で気づかないうちに頂点に来ていたようだ。
そして被せるように言い放つ。
「冥は返してもらいますから。」
そう、取り返すんだ。
端からあんたのモノだったわけじゃない。
冷えきった室内はなんとも言えない空気を淀ませ、徐々に影を広げ出していた。
:11/09/10 14:30 :Android :r3.xBClY
#810 [ちか]
ダメだ、だのなんだの、返事が返ってくると身構えてたのに、それ以上この人は言葉を発することはなかった。
用の無い沈黙なんて要らない。
ただでさえ待たせてるんだから。
早く出ていけ、
そう言わんばかりに影が室内を覆い、この人もそれに紛れて黒い影となっている。
「じゃあ、用はそれだけなんで。」
それだけ呟いて
俺は振り返り、戸に手を掛けた。
その時。
:11/09/10 18:43 :Android :r3.xBClY
#811 [ちか]
「………冥のこと、よろしく頼む。」
は?
今なんて、
思わず振り返って見たその人はほぼ全てが影になっていたが、なぜかその表情だけは嫌になるほど見て取ることが出来た。
だってそれはいつも俺がアイツに向ける、……―――
切ない表情(カオ)。
:11/09/10 19:00 :Android :r3.xBClY
#812 [ちか]
開きかけていた戸の隙間から、容赦無く冷たい風が吹き込んできた。
それは俺の動揺を拐うように吹き抜け、後ろから視線を送ってくるソイツにもきっと同じように髪を掠めているのだろう。
俺はその勢いに乗って再び向き直り、足を外に一歩踏み込ませた。
「……言われなくても。」
吐き捨てるようにそう言って
バタン、と大きく音を立てて閉めたのは、苛立ちを隠しきれなかった俺の未熟さ故の行為。
「…さみぃ。」
早く教室に戻ろう。
冥が待ってる。
待ってるんだから。
:11/09/10 19:11 :Android :r3.xBClY
#813 [ちか]
― 冥side.―
夢を見ていた。
いつかの夜の、
漆黒のシルエットに
助けられた時の。
それから、
何度も愛された時の、
その顔と言葉も。
「冥、愛してる。」
そう言って、俺の髪に長い指を絡ませて
何度も何度も囁いて。
愛してる、って、
ずっと、って、
そう言ったのに、
恭弥。
恭弥。
恭弥。……――――
:11/09/10 19:22 :Android :r3.xBClY
#814 [ちか]
……い、
おい、
「…い。めい。起きろ。」
「ん〜…え?あ、…お、おはよっ、透。」
やっべ。
いつの間に寝ちゃってたんだろ、俺。
「おはようの時間はとっくに過ぎてるっつーの。バカ。」
:11/09/10 19:26 :Android :r3.xBClY
#815 [ちか]
バカ、って言うくせにその笑顔は優しい。
挙げ句、軽く頭をわしゃわしゃと撫でられると、反抗するに出来なくて、なんかもう、自分でもワケわからない感情になった。
そんななされるがままの状態で、おもむろに携帯のディスプレイに目をやると時刻はすでに下校時間を過ぎていた。
「やっべ!!え、うそだろ!?ごめん、もっと早くに起こしてくれてよかったのに!」
:11/09/10 21:38 :Android :r3.xBClY
#816 [ちか]
焦って、
両手を勢いよく机に付け立ち上がろうとしたが、
長時間枕にしていた左腕は完全に麻痺しているようでだらしなく垂れ下がり、俺は呆気なくバランスを崩した。
「ひっ…?!」
ドサッ、と重みのある音が辺りに響いた。
「「ってー…。」」
え、あれ、
でもなんか痛くな…い?
:11/09/10 21:46 :Android :r3.xBClY
#817 [ちか]
「お前、軽すぎじゃね?」
な、な、な、
「×%☆₩$◆@●〜っ?!」
なんで
俺、透に覆い被さってんの?!
てか、
それを言うなら、
顔近すぎじゃね?!
:11/09/10 21:52 :Android :r3.xBClY
#818 [ちか]
「ったく、危なっかしーな、お前は。」
「ご、ごめん…、」
じゃなくて!!
この体勢、端から見れば
俺が透を押し倒してるみたいだ。
俺たち以外に誰もいない教室で、
こんな体勢って、
なんか危険な匂いしかしないんですけど!
「すぐ退(ド)くから…っ」
しかし、
透は退こうとした俺を引き寄せ、
俺は呆気なくその胸に顔を埋めてしまった。
:11/09/10 22:00 :Android :r3.xBClY
#819 [ちか]
「ふぐっ、う…?!」
なになになに。
訳わかんねーって!
この展開なに、
俺たちのこの抱擁なに、
え、もう俺パニックなんですけど。
息をするのも苦しいほど、
きつく締め付けられて
鼓動も上がり、俺の顔は真っ赤になっていた。
透の腕から逃れようと必死にもがき、
漸く埋めていた顔を離すことが出来た。
がしかし、その瞬間目が合うのは必然的なことで。
:11/09/11 02:09 :Android :ljqRaiOw
#820 [ちか]
沈黙に沈黙が重なり、
また沈黙。
真顔で俺を見つめるその瞳に
俺の焦った顔が映って見える。
耐えかねる空気がそこにあって、俺は口をパクパクと動かすだけ。
しかしそれも、
声を出すことは出来ず
空気を吸っては吐く原始的な動作しか出来なかった。
「あ……、あの、とお…、」
「…………プッ、アホ面。」
:11/09/11 12:21 :Android :ljqRaiOw
#821 [ちか]
「なっ、…!!!?」
「あはははは!!ひー、おっかしー!
なに顔真っ赤にしてんだよ、バーカ」
透はさっきまでの真剣な顔が嘘のように目の前で笑い転げている。
俺、こいつと親友のつもりだけど、
ときどき、
「読めねぇときがある…。」
「え、なんか言った?」
「いや…」
なんでもない。
.
:11/09/11 15:44 :Android :ljqRaiOw
#822 [ちか]
それから俺たちは
宿直の先生に見つからないように夜の校舎から裏門まで走り、こっそり抜け出して透の家に帰った。
こんなことしたの、
いつぶりだっけ。
楽しいなぁ、懐かしくて。
……―――――
…―――
――
:11/09/11 16:10 :Android :ljqRaiOw
#823 [ちか]
― 恭弥side.―
もう、いい加減迷惑なんだよ…っ
最後に交わしたのは
悲しくもあり、
それ以上に僕の決心を固くさせた。
やっぱり
僕は冥から離れた方が良い。
これ以上、冥を苦しめるくらいなら。
:11/09/12 00:38 :Android :8pbz01wM
#824 [ちか]
ここ最近ずっと考えていた。
蓮見透という人間の存在を
頭の片隅で意識しながら。
最初は
冥を誰にもやりたくない、
僕だけのものにしたい、
彼にも譲れない、
そんな風に思っていた。
だけど、
:11/09/12 00:41 :Android :8pbz01wM
#825 [ちか]
徐々にその独占欲は
冥の幸せを優先したいと思う感情に呑まれるようになった。
こんなのは初めてだ。
他人の幸せを一番に考えるなんて。
そして、
その感情が加速するにつれて、
僕はあることに気づいた。
僕では、冥を幸せには出来ないということに。
:11/09/12 00:46 :Android :8pbz01wM
#826 [ちか]
僕は、
どうしても自分の欲で冥を呑み込んでしまう。
僕から離したくなくなって、
でもそれは冥の自由も同時に奪ってしまう。
きっと幸せも。……
それならいっそ、
冥から離れることが
僕が冥に出来る優しさなんじゃないか。
:11/09/12 00:51 :Android :8pbz01wM
#827 [ちか]
案の定、
今朝のようなことになった。
冥は自由を望んでいた。
知らず知らずのうちに僕は僕を押し付けて、苦しめていたんだ。
もうそんなことはしないから、
幸せになってほしい。
そんな思いで、
親友に引っ張られていく冥の後ろ姿を、焼き付けるように見つめた。
柄にもなく、涙が込み上げて
居たたまれなくなって静かに目を閉じた。
さようなら。
:11/09/12 00:57 :Android :8pbz01wM
#828 [ちか]
そんな風に呟くと、
脳裏に焼きついた冥の姿が滲んで
僕はただ、
そこに立ち尽くすことしかできなかった。
………――――
……―――
…――
:11/09/12 13:36 :PC/0 :sdX/PGUo
#829 [ちか]
*
はい、とりあえず
恭弥sideの話もここで区切り、
この話の前編と言える場面まで
終了しました。
ご無沙汰しております。
毎度不定期な更新で申し訳ありません。
スマートフォンから更新していたのですが、不具合で投稿出来ないのでPCから書いています。
治り次第、また携帯からの更新となりますがどちらにせよ私には変わりないのでご安心ください。
ではまた後ほど。
:11/09/12 13:41 :PC/0 :sdX/PGUo
#830 [ちか]
― 冥side.―
それから当分一人暮らしの部屋が見つかるまで、俺は透の家にお世話になることになった。
急な頼み事だったにも関わらず透のおじさんもおばさんも、まるで自分ん家(チ)の子供みたいに温かく迎えてくれた。
おばさんの得意料理の煮物が美味しくて、懐かしさと昔への恋しさで気持ちはいっぱいになっていた。
だけど。
.
:11/09/13 16:29 :Android :tm2WO/gQ
#831 [ちか]
ふと、夜になると
恭弥の顔が浮かんできて
溜め息が漏れる。
今日も。
「はぁ…」
また、こうやって。
:11/09/13 16:31 :Android :tm2WO/gQ
#832 [ちか]
感情に嘘はつけない。
突き放されたって
突き放したって
好きなのには変わりなくて
平気なフリをしても
それは余計に俺の内心を浮き彫りにさせて
あぁ、あいつじゃなきゃダメなんだ。
って改めて自覚することでしかなかった。
:11/09/17 18:29 :Android :xGmkdDcg
#833 [ちか]
「なんだよ、そんな溜め息ばっかついて。」
いきなりの声に
俺は戸惑いを隠し切れず
「えっ?!あ、いや…っ、別に?!」
動揺の隠しきれない裏返った返事をする。
透は特に興味も無さそうに
「ふーん。」と呟くと、
風呂から上がったばかりなのであろう水滴の滴る自分の頭をタオルで乱暴に掻いた。
「…風呂、空いたけど、入んねーの?」
:11/09/17 18:39 :Android :xGmkdDcg
#834 [ちか]
「お、おう、入る!今すぐ入る!!」
愛想笑いを振り撒いてそう言うと
俺は着替えを手に取り、
部屋のドアノブを握った。
「……なぁ、透。」
捻りかけたその手を止めて
後ろにいる透に向かい問いを投げた。
あえて顔を見ない俺は、ズルい。
:11/09/17 21:25 :Android :xGmkdDcg
#835 [ちか]
「ん?」
背後では布が髪を掻く音に紛れて、短い返事が返される。
俺はそのまま持っていた着替えをすがる様に握り直し、言葉を繋げた。
「例えばの話だけどさ、」
「うん」
「もし好きな人に」
「うん」
「急に別れてって言われたら、……透ならどうする?」
我ながら単刀直入な質問だと思い、
そんな風にしか聞けない自分に内心で叱咤する。
:11/09/20 00:17 :Android :B0XKYw7A
#836 [ちか]
「あ…ほら、クラスの奴からそういう相談されてさ!!俺、そういう経験あんまり無いし、透昔からモテてたじゃん?!透なら分かるんじゃないかなーって。はは…は」
沈黙が俺を饒舌にさせる。
苦し紛れの苦笑いが痛々しい。
もういっそのこと、
やっぱ今のナシ、と言って逃げてしまった方がいいんじゃないか。
そんな風にさえ思っていた時、
「俺なら…」
漸く返ってきた答えに
俺は唾を飲んだ。
:11/09/20 11:33 :Android :B0XKYw7A
#837 [ちか]
「本当に大事な相手なら、ちゃんと話し合いたい…って思うかな。」
冗談めかした俺のトーンとは逆に、透の声は真摯だった。
“本当に大事な相手なら”……―――
その言葉の重みに思わず、黙りこんでしまう。
「なに、お前、そんなん事でさっきから溜め息ついてたわけ?相変わらずお人好しだなぁ、お前は〜。さっさと風呂入れ。」
ドアの前で固まっている俺を
透は背中を押すように言葉で促した。
まるで俺の考えていることが全てお見通しかのように。
:11/09/20 11:41 :Android :B0XKYw7A
#838 [ちゅん]
この小説 好きです
頑張って下さい^^
:11/09/21 22:25 :F02B :m3OK/Je.
#839 [ちか]
>>838 ちゅんさま.
嬉しいお言葉ありがとうございます(;o;)
そう言っていただけると幸せです〜*
これからも頑張るので、
また感想くださいねっ
感想板もあるので、よかったらそちらにも来てみてください♪
:11/09/22 16:44 :Android :laGvjmfE
#840 [ちか]
「だ、だよなっ!なんかすっきりした、さんきゅ!」
俺はそう言って忙しなくバスルームのある一階へと降りていった。
透は
一体、誰を思い浮かべて
“本当に大事な人”と言ったのだろう…――
そんなことを考えながら。
:11/09/22 16:50 :Android :laGvjmfE
#841 [ちか]
散々、風呂の催促を渋ったためか
湯船は少しぬるくなっていた。
しかしそれが
心地よいとも言える。
「…話し合わなきゃな。」
俺はそんな呟きを空間に溶かして
潜るように顔を水面下に沈めた。
…………―――――――
……―――――
:11/09/22 16:59 :Android :laGvjmfE
#842 [ちか]
翌朝、
冬の朝がまるで透を叩き起こして参加した朝礼は、いつもの恭弥の場所にいつの間にか新しい生徒会長が立っていた。
気づかないうちにも月日は過ぎて行くのか。
そんなことを今さらのように思い知りながら、同時に思いを固くする。
過ぎていく月日ご早いならなおさら、
風化しないうちにちゃんと自分の気持ちを伝えよう。と。
:11/09/22 17:25 :Android :laGvjmfE
#843 [ちか]
※訂正※
>>840一番大事な人→×
一番大事な相手→○
>>842冬の朝がまるで透を→×
冬の朝がまるで苦手な透を→○
すいません!
その他変換ミスが時々ありますが、言い回しだけ訂正させていただきました。
:11/09/22 17:51 :Android :laGvjmfE
#844 [ちか]
とは言ったものの、
正直どのタイミングで話し掛ければいいか、分からない。
恭弥の周りはいつも生徒教師関係なく人でいっぱいだったし、
そんな中でいきなりズカズカと会いに来て、
話し合おうなんて、
そんなことは無鉄砲な自分でさえもさすがに躊躇せずにはいられなかった。
さあ、どうしたものか。
話し掛ける術を
ひたすら無い頭で考える授業中。
:11/09/23 00:46 :Android :qQuJKEhM
#845 [ちか]
目の前ではxがどうだ、とか、yがああだ、とかの説明と共に果てしなく続くように思える方程式が教師の持つチョークから黒板に写されていく。
考え事をしていても、
どうしてもその文字式や教師の言葉、チョークの音に気が散って集中することが出来ない。
もっとも、本来集中すべきなのはこの授業なんだけど。
俺は意を決して手を挙げた。
「せんせー、吐き気するんで保健室行っていいですか。」
精一杯の演技をしながら。
このままでは授業も考え事も集中出来ないし、それなら、と考え事を優先させての小芝居だった。
:11/09/23 00:56 :Android :qQuJKEhM
#846 [ちか]
幸い、芝居上手くいったようで怪しまれずに保健室まで行くことが出来た。
「失礼しまーす…」
先客を気にしてゆっくりと開けたが、そこに保険医の姿は無かった。
なんだ、ラッキー。
そんなことを思いながら、ふと並んでいるベッドに目をやると、奥の1つだけカーテンが閉められている。
先客はアリか。
とは言え、仮病でやってきたから保険医に見つかれば厄介だが生徒ともなれば気にする必要もないだろう。
そう思って隣のベッドに腰を下ろした。
:11/09/23 13:35 :Android :qQuJKEhM
#847 [我輩は匿名である]
この小説大好きで何回も読んじゃってます(笑)
最近更新されていて嬉しいです(´ω`*)
主さんのペースで頑張って下さい!
:11/09/23 20:21 :F01C :Y9tIiR5k
#848 [ちか]
>>847 匿名さま.
ほんまですか!(*^^*)
書き手としても小説にとっても本当に嬉しい誉め言葉です。ありがとうございます!
いつも不定期ですいません。。
この一週間は順調に更新できると思います!
感想板にもぜひ遊びに来てください(^^)
:11/09/23 21:58 :Android :qQuJKEhM
#849 [ちか]
>>846続き
ガラガラ…
腰かけたとほぼ同時に戸が開く音がした。
「あら、誰か来てたの?ごめんねー、用事で出てたのよー。」
不味いタイミング。
軽く詫びを入れる保険医に、俺は心の中で呟く。
「あ、いや大丈夫です。ただの風邪だと思うんで、寝てれば治ると思います…」
頼む。
のってくれ。
内心で何度も願うように呟いた。
「…そう?…じゃあ、申し訳ないけどもう少し出てていいかしら?」
その返事待ってました。
と言わんばかりに、俺は保険医の死角側の手でガッツポーズをとった。
:11/09/23 22:07 :Android :qQuJKEhM
#850 [ちか]
「じゃあ、すぐ戻るから寝ててねー。あ、隣に寝てる子も起こさないように!」
保険医はそれだけ言って、疾風のごとく去っていった。
やっと落ち着いて考え事に集中出来る。
安堵の息と共に俺は真後ろに倒れこんだ。
仰向けの体勢で薄汚れた天井を仰ぐ。
どうすればいいんだろうか。
考えても考えても、堂々巡りでまるで答えに辿り着かない。
「参ったなー。」
終いにはため息混じりの声が漏れる次第だ。
:11/09/23 22:13 :Android :qQuJKEhM
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