漆黒の夜に君と。U[BL]
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#801 [ちか]
だってそれなら辻褄が合う。

昨日、廊下で楽しそうに話してたことも、夕食のときやたら透のこと聞いてきたことも、今朝透の家に泊まるって言ったらダメだって突っ掛かってきたことも。…


ポタ…ポタ…

気づけば頬を伝って
幾つもの水滴が溢れだしていた。


午後の授業の真っ最中、
もうすでに教師の張り上げる声など耳に入れる余裕は無い。


必死に擦ってもなかなかその涙は止まらない。


俺は机に上半身を突っ伏して、バレないようにするのに必死だった。

⏰:11/07/08 23:07 📱:Android 🆔:oC0bKfsc


#802 [ちか]
なんとかそれで授業はやり過ごせたものの、

「目、赤いぞ。」


一番気づかれたくない人に、誤魔化しは効かなかった。


HRを終えて放課後の教室はもう俺達以外に人は無く、厚い冬の雲からの夕日が射し込めるだけのガラリとした雰囲気になっていた。

「あ、さっきまで寝てたから…」


もう俺が絶対事情を説明しないことを分かっているのか、あえて透はそれ以上深入りしようとはしない。


「あの、今日、透の家行っていい…?」

甘えていることは分かってる。
事情も説明せずにこんな風に頼むのは無私の良い話だと言うことも。

それでも、やっぱりこんなときに頼れるのは透しか居ないんだ。

「今から生徒会の会議あるからちょっと待たせると思うけど、それでも良いなら良いよ。」

その返事に俺は無言で頷いた。

⏰:11/07/09 00:56 📱:Android 🆔:5xLSuFVA


#803 [ちか]
「じゃあ行ってくるな。」

そう言って教室を出ていった背中を見送ったあと、今度こそ俺は溺れるように深い眠りに落ちた。


──────────────────………
─────────────────────……

⏰:11/07/09 01:02 📱:Android 🆔:5xLSuFVA


#804 [ちか]
― 透 side.―


会議があるというのは
ウソ。


でも用事を済ますことに変わりはなかった。

やらなきゃいけないことがあるから。



生徒会室はもうすでに鍵が空いていて、
開けると静けさの中で立て付けの悪い戸の音が廊下に響いた。

⏰:11/07/09 01:09 📱:Android 🆔:5xLSuFVA


#805 [KAZUHA]
Tから見てます!!!!
続きが気になります///

⏰:11/08/27 02:35 📱:F904i 🆔:pBsYaRfw


#806 [ちか]
>>806 KAZUHAさま

ありがとうございます(*^^*)
不定期極まりなくてすいません

⏰:11/09/10 14:10 📱:Android 🆔:r3.xBClY


#807 [ちか]
「お待たせしました、」


静かな室内に、
その声はよく通った。

窓際で腕組みする姿が夕日に照らされて、シルエットを作っている。

「先輩。」


ギロリと切れ長の瞳が俺を捕らえた。
ああ、ご機嫌ななめですか。


「話って。」

なに?の二文字まで省きたくなるほどの不機嫌らしい。

俺だってこんなやつと長々話すつもりなんか甚だ無いっつーの。

⏰:11/09/10 14:15 📱:Android 🆔:r3.xBClY


#808 [ちか]
「今朝のアレなんですか。」

余計にこの人の機嫌が悪くなることは重々承知の上で、そんな質問を投げ掛けた。

「君には関係ない。」

「いや、冥は俺の大事なやつなんで。」


関係ない、で片付けられちゃ俺の怒りが収まらないんだよ、生徒会長さん。

言ったよね、俺。

⏰:11/09/10 14:21 📱:Android 🆔:r3.xBClY


#809 [ちか]
「冥のこと、傷つけたらぶっ殺す。
って、言いましたよね、俺。」

冷ややかな微笑みすら出来ないほど、俺の怒りは自分で気づかないうちに頂点に来ていたようだ。


そして被せるように言い放つ。


「冥は返してもらいますから。」



そう、取り返すんだ。
端からあんたのモノだったわけじゃない。

冷えきった室内はなんとも言えない空気を淀ませ、徐々に影を広げ出していた。

⏰:11/09/10 14:30 📱:Android 🆔:r3.xBClY


#810 [ちか]
ダメだ、だのなんだの、返事が返ってくると身構えてたのに、それ以上この人は言葉を発することはなかった。


用の無い沈黙なんて要らない。

ただでさえ待たせてるんだから。

早く出ていけ、
そう言わんばかりに影が室内を覆い、この人もそれに紛れて黒い影となっている。

「じゃあ、用はそれだけなんで。」


それだけ呟いて
俺は振り返り、戸に手を掛けた。

その時。

⏰:11/09/10 18:43 📱:Android 🆔:r3.xBClY


#811 [ちか]
「………冥のこと、よろしく頼む。」


は?

今なんて、

思わず振り返って見たその人はほぼ全てが影になっていたが、なぜかその表情だけは嫌になるほど見て取ることが出来た。

だってそれはいつも俺がアイツに向ける、……―――

切ない表情(カオ)。

⏰:11/09/10 19:00 📱:Android 🆔:r3.xBClY


#812 [ちか]
開きかけていた戸の隙間から、容赦無く冷たい風が吹き込んできた。

それは俺の動揺を拐うように吹き抜け、後ろから視線を送ってくるソイツにもきっと同じように髪を掠めているのだろう。


俺はその勢いに乗って再び向き直り、足を外に一歩踏み込ませた。

「……言われなくても。」

吐き捨てるようにそう言って
バタン、と大きく音を立てて閉めたのは、苛立ちを隠しきれなかった俺の未熟さ故の行為。

「…さみぃ。」

早く教室に戻ろう。
冥が待ってる。

待ってるんだから。

⏰:11/09/10 19:11 📱:Android 🆔:r3.xBClY


#813 [ちか]
― 冥side.―


夢を見ていた。

いつかの夜の、
漆黒のシルエットに
助けられた時の。

それから、

何度も愛された時の、
その顔と言葉も。

「冥、愛してる。」

そう言って、俺の髪に長い指を絡ませて
何度も何度も囁いて。

愛してる、って、
ずっと、って、
そう言ったのに、


恭弥。
恭弥。
恭弥。……――――

⏰:11/09/10 19:22 📱:Android 🆔:r3.xBClY


#814 [ちか]
……い、


おい、


「…い。めい。起きろ。」


「ん〜…え?あ、…お、おはよっ、透。」


やっべ。

いつの間に寝ちゃってたんだろ、俺。

「おはようの時間はとっくに過ぎてるっつーの。バカ。」

⏰:11/09/10 19:26 📱:Android 🆔:r3.xBClY


#815 [ちか]
バカ、って言うくせにその笑顔は優しい。


挙げ句、軽く頭をわしゃわしゃと撫でられると、反抗するに出来なくて、なんかもう、自分でもワケわからない感情になった。


そんななされるがままの状態で、おもむろに携帯のディスプレイに目をやると時刻はすでに下校時間を過ぎていた。


「やっべ!!え、うそだろ!?ごめん、もっと早くに起こしてくれてよかったのに!」

⏰:11/09/10 21:38 📱:Android 🆔:r3.xBClY


#816 [ちか]
焦って、
両手を勢いよく机に付け立ち上がろうとしたが、
長時間枕にしていた左腕は完全に麻痺しているようでだらしなく垂れ下がり、俺は呆気なくバランスを崩した。


「ひっ…?!」

ドサッ、と重みのある音が辺りに響いた。

「「ってー…。」」

え、あれ、
でもなんか痛くな…い?

⏰:11/09/10 21:46 📱:Android 🆔:r3.xBClY


#817 [ちか]
「お前、軽すぎじゃね?」

な、な、な、

「×%☆₩$◆@●〜っ?!」

なんで
俺、透に覆い被さってんの?!

てか、
それを言うなら、
顔近すぎじゃね?!

⏰:11/09/10 21:52 📱:Android 🆔:r3.xBClY


#818 [ちか]
「ったく、危なっかしーな、お前は。」

「ご、ごめん…、」


じゃなくて!!
この体勢、端から見れば
俺が透を押し倒してるみたいだ。

俺たち以外に誰もいない教室で、
こんな体勢って、
なんか危険な匂いしかしないんですけど!


「すぐ退(ド)くから…っ」

しかし、
透は退こうとした俺を引き寄せ、
俺は呆気なくその胸に顔を埋めてしまった。

⏰:11/09/10 22:00 📱:Android 🆔:r3.xBClY


#819 [ちか]
「ふぐっ、う…?!」

なになになに。
訳わかんねーって!

この展開なに、
俺たちのこの抱擁なに、
え、もう俺パニックなんですけど。


息をするのも苦しいほど、
きつく締め付けられて
鼓動も上がり、俺の顔は真っ赤になっていた。

透の腕から逃れようと必死にもがき、
漸く埋めていた顔を離すことが出来た。

がしかし、その瞬間目が合うのは必然的なことで。

⏰:11/09/11 02:09 📱:Android 🆔:ljqRaiOw


#820 [ちか]
沈黙に沈黙が重なり、
また沈黙。


真顔で俺を見つめるその瞳に
俺の焦った顔が映って見える。

耐えかねる空気がそこにあって、俺は口をパクパクと動かすだけ。

しかしそれも、
声を出すことは出来ず
空気を吸っては吐く原始的な動作しか出来なかった。


「あ……、あの、とお…、」


「…………プッ、アホ面。」

⏰:11/09/11 12:21 📱:Android 🆔:ljqRaiOw


#821 [ちか]
「なっ、…!!!?」

「あはははは!!ひー、おっかしー!
なに顔真っ赤にしてんだよ、バーカ」

透はさっきまでの真剣な顔が嘘のように目の前で笑い転げている。


俺、こいつと親友のつもりだけど、
ときどき、

「読めねぇときがある…。」

「え、なんか言った?」

「いや…」

なんでもない。

⏰:11/09/11 15:44 📱:Android 🆔:ljqRaiOw


#822 [ちか]
それから俺たちは
宿直の先生に見つからないように夜の校舎から裏門まで走り、こっそり抜け出して透の家に帰った。


こんなことしたの、
いつぶりだっけ。


楽しいなぁ、懐かしくて。
……―――――
…―――
――

⏰:11/09/11 16:10 📱:Android 🆔:ljqRaiOw


#823 [ちか]
― 恭弥side.―

もう、いい加減迷惑なんだよ…っ



最後に交わしたのは
悲しくもあり、
それ以上に僕の決心を固くさせた。


やっぱり
僕は冥から離れた方が良い。

これ以上、冥を苦しめるくらいなら。

⏰:11/09/12 00:38 📱:Android 🆔:8pbz01wM


#824 [ちか]
ここ最近ずっと考えていた。


蓮見透という人間の存在を
頭の片隅で意識しながら。


最初は
冥を誰にもやりたくない、
僕だけのものにしたい、
彼にも譲れない、
そんな風に思っていた。

だけど、

⏰:11/09/12 00:41 📱:Android 🆔:8pbz01wM


#825 [ちか]
徐々にその独占欲は
冥の幸せを優先したいと思う感情に呑まれるようになった。


こんなのは初めてだ。
他人の幸せを一番に考えるなんて。

そして、
その感情が加速するにつれて、
僕はあることに気づいた。

僕では、冥を幸せには出来ないということに。

⏰:11/09/12 00:46 📱:Android 🆔:8pbz01wM


#826 [ちか]
僕は、
どうしても自分の欲で冥を呑み込んでしまう。

僕から離したくなくなって、
でもそれは冥の自由も同時に奪ってしまう。

きっと幸せも。……


それならいっそ、
冥から離れることが
僕が冥に出来る優しさなんじゃないか。

⏰:11/09/12 00:51 📱:Android 🆔:8pbz01wM


#827 [ちか]
案の定、
今朝のようなことになった。


冥は自由を望んでいた。

知らず知らずのうちに僕は僕を押し付けて、苦しめていたんだ。


もうそんなことはしないから、
幸せになってほしい。

そんな思いで、
親友に引っ張られていく冥の後ろ姿を、焼き付けるように見つめた。

柄にもなく、涙が込み上げて
居たたまれなくなって静かに目を閉じた。


さようなら。

⏰:11/09/12 00:57 📱:Android 🆔:8pbz01wM


#828 [ちか]
そんな風に呟くと、


脳裏に焼きついた冥の姿が滲んで


僕はただ、

そこに立ち尽くすことしかできなかった。

………――――
……―――
…――

⏰:11/09/12 13:36 📱:PC/0 🆔:sdX/PGUo


#829 [ちか]


はい、とりあえず
恭弥sideの話もここで区切り、
この話の前編と言える場面まで
終了しました。

ご無沙汰しております。
毎度不定期な更新で申し訳ありません。

スマートフォンから更新していたのですが、不具合で投稿出来ないのでPCから書いています。

治り次第、また携帯からの更新となりますがどちらにせよ私には変わりないのでご安心ください。

ではまた後ほど。

⏰:11/09/12 13:41 📱:PC/0 🆔:sdX/PGUo


#830 [ちか]
― 冥side.―

それから当分一人暮らしの部屋が見つかるまで、俺は透の家にお世話になることになった。


急な頼み事だったにも関わらず透のおじさんもおばさんも、まるで自分ん家(チ)の子供みたいに温かく迎えてくれた。


おばさんの得意料理の煮物が美味しくて、懐かしさと昔への恋しさで気持ちはいっぱいになっていた。


だけど。

⏰:11/09/13 16:29 📱:Android 🆔:tm2WO/gQ


#831 [ちか]
ふと、夜になると


恭弥の顔が浮かんできて

溜め息が漏れる。


今日も。

「はぁ…」


また、こうやって。

⏰:11/09/13 16:31 📱:Android 🆔:tm2WO/gQ


#832 [ちか]
感情に嘘はつけない。

突き放されたって
突き放したって

好きなのには変わりなくて

平気なフリをしても
それは余計に俺の内心を浮き彫りにさせて

あぁ、あいつじゃなきゃダメなんだ。

って改めて自覚することでしかなかった。

⏰:11/09/17 18:29 📱:Android 🆔:xGmkdDcg


#833 [ちか]
「なんだよ、そんな溜め息ばっかついて。」

いきなりの声に
俺は戸惑いを隠し切れず

「えっ?!あ、いや…っ、別に?!」

動揺の隠しきれない裏返った返事をする。


透は特に興味も無さそうに
「ふーん。」と呟くと、
風呂から上がったばかりなのであろう水滴の滴る自分の頭をタオルで乱暴に掻いた。

「…風呂、空いたけど、入んねーの?」

⏰:11/09/17 18:39 📱:Android 🆔:xGmkdDcg


#834 [ちか]
「お、おう、入る!今すぐ入る!!」

愛想笑いを振り撒いてそう言うと
俺は着替えを手に取り、
部屋のドアノブを握った。

「……なぁ、透。」

捻りかけたその手を止めて
後ろにいる透に向かい問いを投げた。


あえて顔を見ない俺は、ズルい。

⏰:11/09/17 21:25 📱:Android 🆔:xGmkdDcg


#835 [ちか]
「ん?」

背後では布が髪を掻く音に紛れて、短い返事が返される。

俺はそのまま持っていた着替えをすがる様に握り直し、言葉を繋げた。

「例えばの話だけどさ、」

「うん」

「もし好きな人に」

「うん」

「急に別れてって言われたら、……透ならどうする?」


我ながら単刀直入な質問だと思い、
そんな風にしか聞けない自分に内心で叱咤する。

⏰:11/09/20 00:17 📱:Android 🆔:B0XKYw7A


#836 [ちか]
「あ…ほら、クラスの奴からそういう相談されてさ!!俺、そういう経験あんまり無いし、透昔からモテてたじゃん?!透なら分かるんじゃないかなーって。はは…は」


沈黙が俺を饒舌にさせる。

苦し紛れの苦笑いが痛々しい。

もういっそのこと、
やっぱ今のナシ、と言って逃げてしまった方がいいんじゃないか。

そんな風にさえ思っていた時、

「俺なら…」


漸く返ってきた答えに
俺は唾を飲んだ。

⏰:11/09/20 11:33 📱:Android 🆔:B0XKYw7A


#837 [ちか]
「本当に大事な相手なら、ちゃんと話し合いたい…って思うかな。」

冗談めかした俺のトーンとは逆に、透の声は真摯だった。


“本当に大事な相手なら”……―――

その言葉の重みに思わず、黙りこんでしまう。

「なに、お前、そんなん事でさっきから溜め息ついてたわけ?相変わらずお人好しだなぁ、お前は〜。さっさと風呂入れ。」

ドアの前で固まっている俺を
透は背中を押すように言葉で促した。


まるで俺の考えていることが全てお見通しかのように。

⏰:11/09/20 11:41 📱:Android 🆔:B0XKYw7A


#838 [ちゅん]
この小説 好きです 頑張って下さい^^

⏰:11/09/21 22:25 📱:F02B 🆔:m3OK/Je.


#839 [ちか]
>>838 ちゅんさま.

嬉しいお言葉ありがとうございます(;o;)
そう言っていただけると幸せです〜*
これからも頑張るので、
また感想くださいねっ
感想板もあるので、よかったらそちらにも来てみてください♪

⏰:11/09/22 16:44 📱:Android 🆔:laGvjmfE


#840 [ちか]
「だ、だよなっ!なんかすっきりした、さんきゅ!」

俺はそう言って忙しなくバスルームのある一階へと降りていった。


透は

一体、誰を思い浮かべて

“本当に大事な人”と言ったのだろう…――


そんなことを考えながら。

⏰:11/09/22 16:50 📱:Android 🆔:laGvjmfE


#841 [ちか]
散々、風呂の催促を渋ったためか
湯船は少しぬるくなっていた。

しかしそれが
心地よいとも言える。

「…話し合わなきゃな。」


俺はそんな呟きを空間に溶かして
潜るように顔を水面下に沈めた。

…………―――――――
……―――――

⏰:11/09/22 16:59 📱:Android 🆔:laGvjmfE


#842 [ちか]
翌朝、
冬の朝がまるで透を叩き起こして参加した朝礼は、いつもの恭弥の場所にいつの間にか新しい生徒会長が立っていた。


気づかないうちにも月日は過ぎて行くのか。

そんなことを今さらのように思い知りながら、同時に思いを固くする。

過ぎていく月日ご早いならなおさら、
風化しないうちにちゃんと自分の気持ちを伝えよう。と。

⏰:11/09/22 17:25 📱:Android 🆔:laGvjmfE


#843 [ちか]
※訂正※
>>840
一番大事な人→×
一番大事な相手→○

>>842
冬の朝がまるで透を→×
冬の朝がまるで苦手な透を→○

すいません!
その他変換ミスが時々ありますが、言い回しだけ訂正させていただきました。

⏰:11/09/22 17:51 📱:Android 🆔:laGvjmfE


#844 [ちか]
とは言ったものの、
正直どのタイミングで話し掛ければいいか、分からない。

恭弥の周りはいつも生徒教師関係なく人でいっぱいだったし、
そんな中でいきなりズカズカと会いに来て、
話し合おうなんて、
そんなことは無鉄砲な自分でさえもさすがに躊躇せずにはいられなかった。

さあ、どうしたものか。


話し掛ける術を
ひたすら無い頭で考える授業中。

⏰:11/09/23 00:46 📱:Android 🆔:qQuJKEhM


#845 [ちか]
目の前ではxがどうだ、とか、yがああだ、とかの説明と共に果てしなく続くように思える方程式が教師の持つチョークから黒板に写されていく。


考え事をしていても、
どうしてもその文字式や教師の言葉、チョークの音に気が散って集中することが出来ない。

もっとも、本来集中すべきなのはこの授業なんだけど。

俺は意を決して手を挙げた。

「せんせー、吐き気するんで保健室行っていいですか。」

精一杯の演技をしながら。

このままでは授業も考え事も集中出来ないし、それなら、と考え事を優先させての小芝居だった。

⏰:11/09/23 00:56 📱:Android 🆔:qQuJKEhM


#846 [ちか]
幸い、芝居上手くいったようで怪しまれずに保健室まで行くことが出来た。


「失礼しまーす…」

先客を気にしてゆっくりと開けたが、そこに保険医の姿は無かった。

なんだ、ラッキー。
そんなことを思いながら、ふと並んでいるベッドに目をやると、奥の1つだけカーテンが閉められている。

先客はアリか。

とは言え、仮病でやってきたから保険医に見つかれば厄介だが生徒ともなれば気にする必要もないだろう。

そう思って隣のベッドに腰を下ろした。

⏰:11/09/23 13:35 📱:Android 🆔:qQuJKEhM


#847 [我輩は匿名である]
この小説大好きで何回も読んじゃってます(笑)
最近更新されていて嬉しいです(´ω`*)
主さんのペースで頑張って下さい!

⏰:11/09/23 20:21 📱:F01C 🆔:Y9tIiR5k


#848 [ちか]
>>847 匿名さま.

ほんまですか!(*^^*)
書き手としても小説にとっても本当に嬉しい誉め言葉です。ありがとうございます!
いつも不定期ですいません。。
この一週間は順調に更新できると思います!
感想板にもぜひ遊びに来てください(^^)

⏰:11/09/23 21:58 📱:Android 🆔:qQuJKEhM


#849 [ちか]
>>846続き


ガラガラ…

腰かけたとほぼ同時に戸が開く音がした。

「あら、誰か来てたの?ごめんねー、用事で出てたのよー。」


不味いタイミング。

軽く詫びを入れる保険医に、俺は心の中で呟く。


「あ、いや大丈夫です。ただの風邪だと思うんで、寝てれば治ると思います…」

頼む。
のってくれ。

内心で何度も願うように呟いた。

「…そう?…じゃあ、申し訳ないけどもう少し出てていいかしら?」


その返事待ってました。
と言わんばかりに、俺は保険医の死角側の手でガッツポーズをとった。

⏰:11/09/23 22:07 📱:Android 🆔:qQuJKEhM


#850 [ちか]
「じゃあ、すぐ戻るから寝ててねー。あ、隣に寝てる子も起こさないように!」


保険医はそれだけ言って、疾風のごとく去っていった。

やっと落ち着いて考え事に集中出来る。

安堵の息と共に俺は真後ろに倒れこんだ。
仰向けの体勢で薄汚れた天井を仰ぐ。

どうすればいいんだろうか。
考えても考えても、堂々巡りでまるで答えに辿り着かない。

「参ったなー。」

終いにはため息混じりの声が漏れる次第だ。

⏰:11/09/23 22:13 📱:Android 🆔:qQuJKEhM


#851 [ちか]
暫くして授業の終わりを知らせる鐘が鳴った。

もうそんな時間か。
次の授業どうしようかな。
俺はそんな短絡的なことをぼんやり考えていた。

すると、また戸が開く音がする。

保険医が帰ってきたのか。
そう思ったが、そのわりに足音は配慮が足りない。

何かを患った客でもないだろう。

来客を見ようと、顔を出したそのとき。

⏰:11/09/23 22:18 📱:Android 🆔:qQuJKEhM


#852 [ちか]
「黒羽くん、大丈夫?」


俺が来客を覗き込むより先に、その声が届いた。

そして遅れるようにして顔を見る。

あ、この人、たしか副会長の…

名前こそ思い出せないが、一時期恭弥と噂にもなったあの女子生徒であることは間違いなかった。
正しくは、この人もきっと元副会長、になるんだろうな。

⏰:11/09/24 01:10 📱:Android 🆔:MNDcM4s6


#853 [ちか]
って!!!!!

冷静な分析してる場合じゃない!


この人、今、黒羽くん、って…っ―――




まさかと思いながら隣のベッドにチラリと瞳だけ動かすと、ちょうどカーテンが開いて目があった。

⏰:11/09/24 01:13 📱:Android 🆔:MNDcM4s6


#854 [ちか]
きょう……や――――

思わず口に出してしまいそうになった名前を必死で飲み込む。

一瞬合った瞳は一瞬でそらされ、
代わりに労いの言葉をかけた女子生徒に向けられた。

「大丈夫だよ、ごめん心配かけて。もう行くから先に戻ってて。」

至って普通に、しかし気だるさのある声でそういうと女子生徒も多少の間を空けて、再び教室に戻っていった。


なんだよ、心配してくれる女の子も居るじゃん。
可愛いし。

やっぱり俺なんか居なくても、困らないんだよな、コイツは。

半ばふて腐れてそんなことを思う。

⏰:11/09/24 01:20 📱:Android 🆔:MNDcM4s6


#855 [ちか]
しかし、
自分の意思を伝えることは
それとは関係ない。

俺がちゃんと、言っておきたいだけなんだから。

ふて腐れている場合じゃないんだ。

このタイミングを逃してはならないと、俺は意を決して恭弥の居る方へ体を向けた。

⏰:11/09/24 01:22 📱:Android 🆔:MNDcM4s6


#856 [ちか]
「恭弥、あの、」

そう名前を呼んだとき、
冷たい目が俺を容赦なく刺した。

「…もう話しかけないでほしい」

ズキン

と確かに胸が痛んだ。

すぐ目の前に居るソイツが急に遠くに感じる。
だけど、引いてなどいられないと自分を励まし、言葉を繋げた。

⏰:11/09/24 01:27 📱:Android 🆔:MNDcM4s6


#857 [ちか]
「でも、ちゃんと話したいことがあって…っ」

噛みつくように言うと、
恭弥は一瞬だけ迷ったような顔を見せて立ち上がった。

「………僕には話すことなんて無い。」

「あんたに無くても俺にはあるんだよ!!」

なんで取り合ってくれないんだよ、
取り合ってくれようとさえしてくれないんだよ…―――っ

「恭弥っ……!!」

保健室を出ようとする恭弥の手を俺は咄嗟に掴んだ。
思わず力が入る。

⏰:11/09/24 01:34 📱:Android 🆔:MNDcM4s6


#858 [ちか]
俺たち以外に誰もいないこの空間。
張り詰められた空気はまるで糸のようだ。

掴んだ手は冷たく、
また、その声も冷たかった。

「離して、急いでるんだ。」

「なら、今日6時に学校の近くのファミレスの前で待ってる…っ、だからっ…、」

「離せって言ってるだろ…!!」

遮るようにして、恭弥は俺の手を振りほどいた。

そのまま、その背中は遠くなっていく。

⏰:11/09/24 01:41 📱:Android 🆔:MNDcM4s6


#859 [ちか]
「俺待ってるから!!あんたが来るまでずっと…―――、ずっと待ってるから!」


遠退いていく背中に、
精一杯届くように俺は叫んだ。

周りの目など頭にも入らず、

ただ、必死に、去っていく恭弥に向けて。


途切れそうな糸を繋ぎ止めたい一心で、
そうすることしか俺には出来なかったんだ。

⏰:11/09/24 01:46 📱:Android 🆔:MNDcM4s6


#860 [ちか]
それから授業なんて手につかなかった。
いや、いつものことなんだけど。
その最上級みたいな。

今更ながら、
話して何になるんだ、なんて答えようのない自問自答が頭を巡る。

気づけばホームルームも終わり、窓の外はオレンジに染まっていた。

「日下ー、」

⏰:11/09/25 20:30 📱:Android 🆔:lAqmw6zM


#861 [ちか]
「はい?」

名前を呼んだのは担任の前田だった。

「お前今日残れ。」

「は?!なんで?!」

咄嗟のことに、口調も姿勢も前のめりになると、前田は俺の左足を思いっきり蹴った。

「いってぇ〜!!」

「誰にタメ口きいてんだ、クソガキ。」

生徒をクソガキ呼ばわりかよ!

思わずそう叱咤しそうになったが、痛みのあまり声も出なかった。

前田は続ける。

「お前この前の古文の点数分かってんの?学年最低だぞ。
追試のためにもっかい作るのめんどくせーから、備品室の片付けで免除してやるよ。」

⏰:11/09/25 20:52 📱:Android 🆔:lAqmw6zM


#862 [ちか]
よかったな、俺が寛大で、と付け加えて前田は満足げに笑った。

しかし今日の俺はそんなことしてる暇がない。

「や、今日は大事な用事があって…!」

「用事と成績どっちが大事だ」

「用事です」

「バカたれ」

間髪入れずにテンポの良い押し合いが始まる。

「だから今日だけは無理なんですって!!」

これでもかと言わんばかりに懇願した瞳でそう言うと、前田は「あぁ?んー、」とあからさまに気だるそうに唸った。

⏰:11/09/26 17:10 📱:Android 🆔:O9JTdECU


#863 [ちか]
暫く地響きのような唸り声をあげた後、前田が渋々といった調子で口を開く。

「その用事って何時からよ?」

「6時」

そこで、また俺の頭に鉄拳が降る。
“6時です”だろ、と言う言葉と共に。

「6時れす…」

もはや痛みで呂律すら上手く回らない。
涙目で殴られた箇所を擦っている間に前田はニヤリと微笑みかけた。
背筋がゾクッとした。

「なら問題ないだろ!片付けなんか一時間ありゃ終わるし、まだ4時じゃねーか余裕余裕。」

あー、
なんで正直に時間言っちゃったんだろ…

⏰:11/09/26 17:18 📱:Android 🆔:O9JTdECU


#864 [ちか]
「つーことで、よろしくー♪備品室はもう空けてあっから〜」

ヒラヒラと手を降りながら、そんな言葉を残し前田は去っていった。

「今日の俺ついてねぇ〜。とおる〜(泣)」

嘆くように透の方へ駆け寄ると、めんどくさそうに頭を撫でられた。

「なに、どしたー?」

「さっき前田に備品室の片付け頼まれたー」

「うわー、どんまい。」

どんまい、なんて言葉を選んでおきなかがら微妙に笑って見えるのは気のせいだろうか。

⏰:11/09/26 17:25 📱:Android 🆔:O9JTdECU


#865 [ちか]
面白くない、と俺がふくれていると、廊下の方で透を呼ぶ声がした。

「蓮見ー、」

それを辿るように透がくるりと振り返るとクラスメイトとその隣に女の子。

「なにー?」

俺は呼ばれる方へ駆け寄っていく透の背中が見えなくなった後、さっきまで透が座っていた椅子に腰を下ろし、机に突っ伏した。

⏰:11/09/26 22:48 📱:Android 🆔:O9JTdECU


#866 [ちか]
そろそろ行かなきゃなー

さっさと片付けてこよ

そんなことを思いながら、結局だらだらと突っ伏したままどれくらい経っただろうか。
透が帰ってきた。

「あ、おかえりー、」

「ん、ただいま」

「なんだったー?」

「告白された」

は?!
そんなあっさりと何を言ってんの、こいつ!!

⏰:11/09/26 22:54 📱:Android 🆔:O9JTdECU


#867 [ちか]
俺のリアクションに比べ、透の顔は至ってクール。

透、オッケーしたのかな。
したらなんか…寂しいかも。

「で、返事は…」

「断った」

そうなんだ、と相槌を打ったあと、心の中でホッとしている自分がいた。

なんだよ、ホッて!ホッてなんだ、俺!

⏰:11/09/26 22:57 📱:Android 🆔:O9JTdECU


#868 [ちか]
内心で自分自身にツッコミを入れ、話を続ける。

「で、でも可愛かったじゃん」

「お前は可愛かったらどんなか知らない女とも付き合うのか?」

「いや…付き合わない…です」

「だろ?」

はい…、と俺は縮こまった返事を返して仏頂面の透をチラリと見る。

幼なじみだからかあまり考えたこともなかったけど、
やっぱり透は端整な顔立ちをしている。
頭も運動神経も良いし、面倒見が良くて、人望があって、みんなにも優しくて。

考えているうちに自分が惨めになりそうなくらいだった。

⏰:11/09/27 18:34 📱:Android 🆔:eqbciHTs


#869 [ちか]
たぶん高校に入ってからも何度か告白をされていた気がする。
むしろ学年の中じゃ人気もある方だ。
その人気は上級生であっても変わらない。

でも、中学の頃に一度彼女が居たことがあったけど、それっきり透に彼女が出来たなんて聞いたことがない。


よくよく考えてみれば不思議だ。

なんでだろうか?

「なに人の顔じっと見てんの。」

「えっ!!あ、いやっ…」

チラリとしか見てなかったつもりが、いつの間にか凝視してしまっていたようだ。

⏰:11/09/27 19:06 📱:Android 🆔:eqbciHTs


#870 [ちか]
「よく考えたら、透、中学ん時以来彼女作らないなーって。なんでかなーって…」

俺は慌ててそらした目をもう一度透に向けて、またそらす。

見上げる姿勢のせいか、
透がいつもよりデカく頼もしい人間に見えた。

「あー、…俺好きな奴居るから。」

間があったのは一瞬。

開いた口が塞がらないとはまさにこの事。

⏰:11/09/28 01:07 📱:Android 🆔:g9cV2g72


#871 [ちか]
「〜〜っ……そんなの初耳なんだけどっ!!」

「だって言ってなかったし」


衝撃のあまりしどろもどろになる俺をよそに、透は飄々と語る。
この差は端から見れば滑稽極まりない。

なんで俺ばっか焦らなきゃなんないんだよ!!

と半ば逆ギレのような感情が芽生え、この際だからいろいろ聞き出してやる、と意気込んで俺は質問を投げた。

⏰:11/09/29 01:18 📱:Android 🆔:/gQR4j4Q


#872 [ちか]
「可愛い?」

「可愛いって言うよりは生意気…かなー」

「いつから好きなの?」

「だいぶ前」

「へえー、俺の知ってる人?」

「…………ひみつ。」

淡々と答えていた透がその時初めて黙った。

俺はそれに調子乗って追い討ちをかける。

「いいじゃん〜!俺も協力するって!
うちの学校?クラスは?なぁなぁ〜、教えろ…っい゛ってぇ゛!!」


どうやら調子に乗りすぎたみたいデス。

⏰:11/09/29 20:38 📱:Android 🆔:/gQR4j4Q


#873 [ちか]
「なにもしばかなくてもいいだろっ?!」

本日二回目の打撃をくらった頭を擦りながら言うと、透はしれっとしながら
「ごめん、つい手が」
と言って、これ見よがしに手をヒラヒラと見せた。

「それよりお前片付け行ってこなくていいのか?」

「あ。」


透の恋愛沙汰に気をとられ、すっかり忘れていた俺は、間抜けな声でそれを思い出した。

「部活終わる頃にはお前も終わってるだろ?今日帰りどうする?」

当然のようにそう訪ねてくる透に、俺は詫びるように片手を胸の前で立てた。

⏰:11/09/30 00:31 📱:Android 🆔:M6gMnZ3I


#874 [ちか]
「ごめん、今日は大事な用事あるから先帰ってて。」

大事な用事、という言葉に透は怪訝な顔をする。
心配性は相変わらずだ。

「心配しなくても遅くならないようにするから大丈夫だって!じゃあ俺、片付け行ってくるな!透も部活頑張れよー!」


半ば強制終了と言った形で会話を切り上げたのは、これ以上話すと透に感づかれそうだったから。

そうして一方的な言葉を投げて、俺はそのまま備品室へと走った。

⏰:11/09/30 00:37 📱:Android 🆔:M6gMnZ3I


#875 [ちか]
備品室は別名、物置小屋。

なんでも分別なく荷物が運ばれるせいで、備品室の片付けというのは気の遠くなる作業を暗に示唆しているようなものだった。


そんなところだから、場所も校舎の一番奥、人気が少なく、ホコリっぽい。

ガラ...ガラ...

立て付けの悪い戸を力ずくで開けると、覚悟していた通りの有り様だった。

「……さっさと終わらせよ…。」


自分に言い聞かせるように呟いて、俺は目の前のゴミに手を伸ばした。

⏰:11/10/01 18:37 📱:Android 🆔:g.cKTL3o


#876 [ちか]
一時間はゆうに越えた頃、
ようやく備品室は本来の姿に戻りかけていた。

備品室の間取りは単純だが、小さな収納部屋が中に1つある。

あとはそこさえ終われば終了…と言った感じで、俺は収納部屋に足を踏み入れたのだった。

それが悲劇の引き金と知らずに。

⏰:11/10/01 18:42 📱:Android 🆔:g.cKTL3o


#877 [ちか]
俺が収納部屋に入ってすぐの頃、
前田が備品室を訪ねてきていたことに俺は全く気づかない。

「日下ー?片付け終わったかー?」

そんな呼び掛けも、一枚の戸を隔てた小部屋で片付けに没頭していたため聞き逃してしまい、返事など出来ない。

「おー、キレイになってんじゃん。……6時前だしもう帰ったのか。」

そう納得した前田が備品室の鍵を閉めて職員室に戻っていったことさえ、気づかなかったんだ。……――――

⏰:11/10/01 18:49 📱:Android 🆔:g.cKTL3o


#878 [ちか]
「あれ?」

鍵が閉められてると気づいたのは、それから数分後のことだった。

最初は、立て付けの悪さを疑い力ずくで引いてみたが戸はビクともしない。

「え?!なんで?!うそ、は??!」

パニックになった俺はところ構わず、叫んだ。
誰か気づいてくれ。

そんな期待を抱いて。


しかし、ここ校舎の一番奥。
元々人通りがすくない上に、こんな夕方にわざわざ来る奴なんてまず居ない。

「うそだろ……」


携帯のディスプレイはすでに5時50分を表示していた。
―――――――……………
―――――…………
―――………

⏰:11/10/01 18:56 📱:Android 🆔:g.cKTL3o


#879 [ちか]
― 恭弥side.―


俺、待ってるから
あんたが来るまでずっと、
ずっと待ってるから  ……―――


冥のその言葉が何度も頭の中で繰り返された。
放課後になってもそれは変わらなかった。


今日は柄にもなく本当に熱が出て、保健室で休んでいた。
そんな矢先、まさか冥に会うなんて。
なんてタイミングなんだよ、と、苦笑すら溢れた。

僕は冷静を装えていただろうか。
そんなこと考えるだけ無駄だった。


掴まれた手首を指でなぞる。

⏰:11/10/01 19:02 📱:Android 🆔:g.cKTL3o


#880 [ちか]
「………………行ってみるか。」


ずっと待つ、
なんて言うから、行ってすぐに帰れと告げるだけだ。

そんな風に自分を納得させて、学校を後にした。
迎えの車を断って。

⏰:11/10/01 19:05 📱:Android 🆔:g.cKTL3o


#881 [ちか]
ファミレスの前に着いたのは5時きっかりだった。


「なに一時間前から来てるんだか。。」


呆れて自分に嘆く。


仕方なく、なんてそんなのは建前で本当は会いたくてしかたないと気づくと、気恥ずかしさでマフラーに顔を埋めた。


冬の5時はすっかり影を落として光るネオンを見ながらぼんやりと俯いた。


「寒いな。」

そんな呟きは白い息と一緒に、行き交う人々の中へと溶けていった。

……―――――
…――――

⏰:11/10/01 19:14 📱:Android 🆔:g.cKTL3o


#882 [ちか]
― 冥side.―

慌てて透に電話をかける。

「…あっ、もしもし透?!」

しかし、安心したのもつかの間、
《こちらは留守番電話サービスです…,》

機械的な音声に項垂れて電話を切る。

他に連絡の取れる奴…

思い付くままに電話をかけてみる。
数人にかけていくうちに、一人と電話が繋がった。

⏰:11/10/01 22:44 📱:Android 🆔:g.cKTL3o


#883 [ちか]
『おー、どしたん日下ー』

『あのさ、今どこ居る?!』

『えー?今?学校の近くのゲーセン〜』

俺はその返事に思わずガッツポーズを取った。
近くなら頼めば来てくれる、はず!

俺が安堵の息をついている間に
電話の向こうでは
誰?、日下、なんで?、と言った風な会話がなされている。
数人で遊んでるみたいだ。

俺は噛みつくように携帯に話しかけた。

『あ、あのさ、今から学校に、』

『え?ごめん、なんて?』

オメーらうっせーって、と叫ぶ友人の声が聞こえる。
ゲーセンという場所柄、騒々しくてきこえづらいのだろう。

『ごめんごめん、え、なに学校?学校がなんて?』

『あの、俺今、』ップ…ツーツーツー


「えぇ?!もしもし?!あれ?!は?!」

暫く応答のない電話に話しかけたあと、ディスプレイに目を落として漸く分かった。


携帯の寿命切れ。

⏰:11/10/01 23:00 📱:Android 🆔:g.cKTL3o


#884 [ちか]
「まじかよー…」


俺はその場にへたりこんだ。

恭弥との約束が。

もうきっと6時を回っている。


「どうしたらいいんだよ…」

そう呟いて俺は項垂れるしかなかった。

⏰:11/10/01 23:05 📱:Android 🆔:g.cKTL3o


#885 [ちか]
― 透side.―

「いやー、雨降るとか聞いてねえよなー!」

そう話しかけてきたのは、同じサッカー部の同期だった。

「そうだなー」

「うわ、パンツまでびっしょびしょだし。」

「うんー」

ちょうど部活もラストスパートのとき、急に降りだした雨のせいで早めに部活が終わった俺たちは更衣室で着替えたり、くだらない話をしていた。

「お前、今日集中力無さすぎだろー」

「ん、ごめん」


確かにそうだ。
冥の大事な用事とやらが気になって、気が気じゃなかった。

⏰:11/10/02 00:48 📱:Android 🆔:LOoeYdJY


#886 [ちか]
「いや、いんじゃね?お前にしては珍しいっつーか。」

そんな風に言いながらそいつは鼻歌混じりに着替えをロッカーから探していた。

珍しい、か。


珍しくなんかないんだけどな。

俺はいつだって冥(アイツ)のこととなると、いっぱいいっぱいになる。

⏰:11/10/02 01:10 📱:Android 🆔:LOoeYdJY


#887 [ちか]
「普段完璧なお前がぼーっとしてんの見るとさ、なんかホッとするし!」

「なんだよ、それー。誉め言葉?」

誉め言葉、誉め言葉、と言いながら漸く着替えを見つけたようだ。

普段完璧とは、俺も外面が良くなったもんだな。
なんて他人事のように解釈しながら、濡れた髪をタオルで雑に拭く。

「 ? 」

とその時、鞄からタオルを取った拍子に、その下にあった携帯が点滅していることに気づいた。

⏰:11/10/02 01:16 📱:Android 🆔:LOoeYdJY


#888 [ちか]
着信?

誰からだろうか。

そう思い、おもむろに不在着信の画面を表示する。


「冥?」

そこに表示されていたのは
冥の名前だった。

用事が無くなったのか?
一緒に帰る連絡かなにかだと思い、そのままリダイアルを押す。

しかし何回か呼び出しのコールがなったあとその電話に出たのは、

『お掛けになった電話は電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないため…』

と、機械的な女の声だった。

⏰:11/10/02 01:23 📱:Android 🆔:LOoeYdJY


#889 [ちか]
とは言え、大した用事でもないか。

もしかしたら教室で待ってるかも知れないと思い、着替えたあと、そっちを覗いたが冥の姿は無かった。


「やっぱ帰ったか?」

なんだか良くない予感が頭を過ったが、気のせいだろうとそのまま玄関口まで降りた。

外は大雨だ。

「傘、ねえよ。」

こんな時に隣に冥が居れば、
嫌いな雨も好きになれるのに。

なんて、
思ってる俺は欲が出すぎてるのだろうか。

虚無感に思わず失笑した時、
携帯のバイブが鳴った。

「もしもし?」

『あ、蓮見ー?』

電話の主は同じクラスの武内だった。
冥と仲が良いから自然と俺も仲良くなった、そんな流れの付き合いだ。

電話なんてよっぽど用がない限りしない。

⏰:11/10/02 01:35 📱:Android 🆔:LOoeYdJY


#890 [ちか]
「なに、どうしたー?」

当たり障りなく返事を返す。
その際に聞こえてくる騒がしさからゲーセンかカラオケに居ることは察しがついた。

自ずと聞こえやすくなるように、大きめの声量で話す。

向こうも素直に聞き取れたようで、スムーズな会話が期待できた。
その時。

『いやー、なんかさっき日下から電話あったんだけどさ、急に切れちゃって。かけ直したけど出ねーし。』

ああ、
武内にもかけてたのか。

そんな小さな嫉妬は心の隅に追いやって口や顔には出さない。

俺は至って冷静に相槌を打った。

⏰:11/10/02 01:42 📱:Android 🆔:LOoeYdJY


#891 [ちか]
『でさ、なんか学校、学校言っててな、なんかすげー焦ってたみたいだから、蓮見ならなんか分かるかなーって。』

学校?
焦ってる?

嫌な予感がしなくもない。


まさか。

俺は咄嗟に下駄箱に戻った。

冥の靴は……




まだある。

⏰:11/10/02 01:47 📱:Android 🆔:LOoeYdJY


#892 [ちか]
『ってあれ?蓮見?聞いてる?』


受話器の向こう側からそんな声がして咄嗟に言葉を返す。

「あ、聞いてる聞いてる。冥まだ学校みたいだから探すわ。連絡さんきゅ。」

そう言って一方的に通話を切った。


もう既に冷静を保ててはいない。

⏰:11/10/02 01:50 📱:Android 🆔:LOoeYdJY


#893 [ちか]
「どこ行ったんだよ、あのバカ…っ」


焦ってる。
その言葉が妙に引っ掛かる。

校舎内に居るのは確かだ。
教室には居なかった。

この雨じゃ中庭や屋上でもないはず。
そしたらアイツの居そうな場所は……、

「………備品室…っ」


そう呟いたと同時に、
俺の足は既に走り出していた。

⏰:11/10/02 01:56 📱:Android 🆔:LOoeYdJY


#894 [華子]
1から一気に読みました´ω`
面白いお話をありがとう
どうか2人が別れませんように

⏰:11/10/02 13:05 📱:SH08B 🆔:yVZPv3.k


#895 [ちか]
>>894 華子さま.

わりと長いシリーズなんですが
一気に読んでもらえて嬉しいです(*^^*)
こちらこそありがとうございます!
これから更新するので続きをお楽しみに♪
感想板もあるので遊びに来てくださいねっ

⏰:11/10/02 15:51 📱:Android 🆔:LOoeYdJY


#896 [ちか]
>>893

はぁっはぁっ…

「無駄に広いっつーの、この校舎…っ」

一気に階段をかけあがり、別館の最奥にある備品室に着く頃には既に息が上がっていた。

人気もなく、薄気味悪い。


「冥ー!!」

余っている体力から絞りように声を張り上げた。

すると、
「透?!」

紛れもない冥の声が耳を掠めた。

俺は備品室の戸を雑に叩く。

⏰:11/10/02 15:56 📱:Android 🆔:LOoeYdJY


#897 [ちか]
「冥?!こん中か?!」

問いかけに応えるように、内側でも戸を叩く音がする。

「なんか閉じ込められちゃって…」

いつからこうしていたのか、
すでに冥の声に覇気は無かった。

闇雲に戸を開けようとしてみたが、ビクともしない。

やはり鍵がかかっているようだ。

⏰:11/10/02 16:01 📱:Android 🆔:LOoeYdJY


#898 [ちか]
職員室まで鍵取りに行くか?


………いやもうめんどくさい。

それならいっそのこと、


「冥、そこ退いとけ。」

「へ?」

ガンッ

「透?!」

もう一度、ガンッと音が鳴る。

もう一度。

そして、

⏰:11/10/02 16:08 📱:Android 🆔:LOoeYdJY


#899 [ちか]
その瞬間けたたましい音と共に戸が室内に倒れた。
倒れた拍子に戸に嵌め込まれていたガラスが床に散らばる。

「案外、開くもんだな。」

思いっきり打ち付けた体にじんわりと痛みが滲んだ。


「冥、ケガしてない?」


目の前には涙の溜まった目を丸くした冥が突っ立っている。
俺がそう訪ねると、何度も頷いた。

よかった。無事で。

「お待たせ。」

自然と笑みが溢れる。

⏰:11/10/02 16:12 📱:Android 🆔:LOoeYdJY


#900 [ちか]
「本気で死ぬかと思った〜…」

半泣きのそいつを宥めるように、頭を叩いた。

「ったく、お前はほんとに心配ばっかりかけさせて…」

「ごめんなさい…」

冥は身を縮こめて謝ると、その拍子に無惨に倒れた戸の姿が目に入った。


「あれ、どうしよっか…」

責任を感じるような面持ちでソレを眺める冥。

俺がさせたいのはそんな顔じゃない。

だから、

⏰:11/10/02 20:30 📱:Android 🆔:LOoeYdJY


#901 [ちか]
「あれは俺が何とかしとくから。」

「え、でも、俺のせいだし、」


俺は深くため息をついて冥を見据えた。

「…大事な用事、あるんだろ?」

それでも、冥は
でも、だの、なんだの言って動こうとしない。

「あのなー、」

半乾きの髪を掻いて、冥を睨んだ。

「…どうせなら最後までかっこつけさせてくれる?」

⏰:11/10/02 20:36 📱:Android 🆔:LOoeYdJY


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