漆黒の夜に君と。U[BL]
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#810 [ちか]
ダメだ、だのなんだの、返事が返ってくると身構えてたのに、それ以上この人は言葉を発することはなかった。
用の無い沈黙なんて要らない。
ただでさえ待たせてるんだから。
早く出ていけ、
そう言わんばかりに影が室内を覆い、この人もそれに紛れて黒い影となっている。
「じゃあ、用はそれだけなんで。」
それだけ呟いて
俺は振り返り、戸に手を掛けた。
その時。
:11/09/10 18:43 :Android :r3.xBClY
#811 [ちか]
「………冥のこと、よろしく頼む。」
は?
今なんて、
思わず振り返って見たその人はほぼ全てが影になっていたが、なぜかその表情だけは嫌になるほど見て取ることが出来た。
だってそれはいつも俺がアイツに向ける、……―――
切ない表情(カオ)。
:11/09/10 19:00 :Android :r3.xBClY
#812 [ちか]
開きかけていた戸の隙間から、容赦無く冷たい風が吹き込んできた。
それは俺の動揺を拐うように吹き抜け、後ろから視線を送ってくるソイツにもきっと同じように髪を掠めているのだろう。
俺はその勢いに乗って再び向き直り、足を外に一歩踏み込ませた。
「……言われなくても。」
吐き捨てるようにそう言って
バタン、と大きく音を立てて閉めたのは、苛立ちを隠しきれなかった俺の未熟さ故の行為。
「…さみぃ。」
早く教室に戻ろう。
冥が待ってる。
待ってるんだから。
:11/09/10 19:11 :Android :r3.xBClY
#813 [ちか]
― 冥side.―
夢を見ていた。
いつかの夜の、
漆黒のシルエットに
助けられた時の。
それから、
何度も愛された時の、
その顔と言葉も。
「冥、愛してる。」
そう言って、俺の髪に長い指を絡ませて
何度も何度も囁いて。
愛してる、って、
ずっと、って、
そう言ったのに、
恭弥。
恭弥。
恭弥。……――――
:11/09/10 19:22 :Android :r3.xBClY
#814 [ちか]
……い、
おい、
「…い。めい。起きろ。」
「ん〜…え?あ、…お、おはよっ、透。」
やっべ。
いつの間に寝ちゃってたんだろ、俺。
「おはようの時間はとっくに過ぎてるっつーの。バカ。」
:11/09/10 19:26 :Android :r3.xBClY
#815 [ちか]
バカ、って言うくせにその笑顔は優しい。
挙げ句、軽く頭をわしゃわしゃと撫でられると、反抗するに出来なくて、なんかもう、自分でもワケわからない感情になった。
そんななされるがままの状態で、おもむろに携帯のディスプレイに目をやると時刻はすでに下校時間を過ぎていた。
「やっべ!!え、うそだろ!?ごめん、もっと早くに起こしてくれてよかったのに!」
:11/09/10 21:38 :Android :r3.xBClY
#816 [ちか]
焦って、
両手を勢いよく机に付け立ち上がろうとしたが、
長時間枕にしていた左腕は完全に麻痺しているようでだらしなく垂れ下がり、俺は呆気なくバランスを崩した。
「ひっ…?!」
ドサッ、と重みのある音が辺りに響いた。
「「ってー…。」」
え、あれ、
でもなんか痛くな…い?
:11/09/10 21:46 :Android :r3.xBClY
#817 [ちか]
「お前、軽すぎじゃね?」
な、な、な、
「×%☆₩$◆@●〜っ?!」
なんで
俺、透に覆い被さってんの?!
てか、
それを言うなら、
顔近すぎじゃね?!
:11/09/10 21:52 :Android :r3.xBClY
#818 [ちか]
「ったく、危なっかしーな、お前は。」
「ご、ごめん…、」
じゃなくて!!
この体勢、端から見れば
俺が透を押し倒してるみたいだ。
俺たち以外に誰もいない教室で、
こんな体勢って、
なんか危険な匂いしかしないんですけど!
「すぐ退(ド)くから…っ」
しかし、
透は退こうとした俺を引き寄せ、
俺は呆気なくその胸に顔を埋めてしまった。
:11/09/10 22:00 :Android :r3.xBClY
#819 [ちか]
「ふぐっ、う…?!」
なになになに。
訳わかんねーって!
この展開なに、
俺たちのこの抱擁なに、
え、もう俺パニックなんですけど。
息をするのも苦しいほど、
きつく締め付けられて
鼓動も上がり、俺の顔は真っ赤になっていた。
透の腕から逃れようと必死にもがき、
漸く埋めていた顔を離すことが出来た。
がしかし、その瞬間目が合うのは必然的なことで。
:11/09/11 02:09 :Android :ljqRaiOw
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