漆黒の夜に君と。U[BL]
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#858 [ちか]
俺たち以外に誰もいないこの空間。
張り詰められた空気はまるで糸のようだ。
掴んだ手は冷たく、
また、その声も冷たかった。
「離して、急いでるんだ。」
「なら、今日6時に学校の近くのファミレスの前で待ってる…っ、だからっ…、」
「離せって言ってるだろ…!!」
遮るようにして、恭弥は俺の手を振りほどいた。
そのまま、その背中は遠くなっていく。
:11/09/24 01:41 :Android :MNDcM4s6
#859 [ちか]
「俺待ってるから!!あんたが来るまでずっと…―――、ずっと待ってるから!」
遠退いていく背中に、
精一杯届くように俺は叫んだ。
周りの目など頭にも入らず、
ただ、必死に、去っていく恭弥に向けて。
途切れそうな糸を繋ぎ止めたい一心で、
そうすることしか俺には出来なかったんだ。
:11/09/24 01:46 :Android :MNDcM4s6
#860 [ちか]
それから授業なんて手につかなかった。
いや、いつものことなんだけど。
その最上級みたいな。
今更ながら、
話して何になるんだ、なんて答えようのない自問自答が頭を巡る。
気づけばホームルームも終わり、窓の外はオレンジに染まっていた。
「日下ー、」
:11/09/25 20:30 :Android :lAqmw6zM
#861 [ちか]
「はい?」
名前を呼んだのは担任の前田だった。
「お前今日残れ。」
「は?!なんで?!」
咄嗟のことに、口調も姿勢も前のめりになると、前田は俺の左足を思いっきり蹴った。
「いってぇ〜!!」
「誰にタメ口きいてんだ、クソガキ。」
生徒をクソガキ呼ばわりかよ!
思わずそう叱咤しそうになったが、痛みのあまり声も出なかった。
前田は続ける。
「お前この前の古文の点数分かってんの?学年最低だぞ。
追試のためにもっかい作るのめんどくせーから、備品室の片付けで免除してやるよ。」
:11/09/25 20:52 :Android :lAqmw6zM
#862 [ちか]
よかったな、俺が寛大で、と付け加えて前田は満足げに笑った。
しかし今日の俺はそんなことしてる暇がない。
「や、今日は大事な用事があって…!」
「用事と成績どっちが大事だ」
「用事です」
「バカたれ」
間髪入れずにテンポの良い押し合いが始まる。
「だから今日だけは無理なんですって!!」
これでもかと言わんばかりに懇願した瞳でそう言うと、前田は「あぁ?んー、」とあからさまに気だるそうに唸った。
:11/09/26 17:10 :Android :O9JTdECU
#863 [ちか]
暫く地響きのような唸り声をあげた後、前田が渋々といった調子で口を開く。
「その用事って何時からよ?」
「6時」
そこで、また俺の頭に鉄拳が降る。
“6時です”だろ、と言う言葉と共に。
「6時れす…」
もはや痛みで呂律すら上手く回らない。
涙目で殴られた箇所を擦っている間に前田はニヤリと微笑みかけた。
背筋がゾクッとした。
「なら問題ないだろ!片付けなんか一時間ありゃ終わるし、まだ4時じゃねーか余裕余裕。」
あー、
なんで正直に時間言っちゃったんだろ…
:11/09/26 17:18 :Android :O9JTdECU
#864 [ちか]
「つーことで、よろしくー♪備品室はもう空けてあっから〜」
ヒラヒラと手を降りながら、そんな言葉を残し前田は去っていった。
「今日の俺ついてねぇ〜。とおる〜(泣)」
嘆くように透の方へ駆け寄ると、めんどくさそうに頭を撫でられた。
「なに、どしたー?」
「さっき前田に備品室の片付け頼まれたー」
「うわー、どんまい。」
どんまい、なんて言葉を選んでおきなかがら微妙に笑って見えるのは気のせいだろうか。
:11/09/26 17:25 :Android :O9JTdECU
#865 [ちか]
面白くない、と俺がふくれていると、廊下の方で透を呼ぶ声がした。
「蓮見ー、」
それを辿るように透がくるりと振り返るとクラスメイトとその隣に女の子。
「なにー?」
俺は呼ばれる方へ駆け寄っていく透の背中が見えなくなった後、さっきまで透が座っていた椅子に腰を下ろし、机に突っ伏した。
:11/09/26 22:48 :Android :O9JTdECU
#866 [ちか]
そろそろ行かなきゃなー
さっさと片付けてこよ
そんなことを思いながら、結局だらだらと突っ伏したままどれくらい経っただろうか。
透が帰ってきた。
「あ、おかえりー、」
「ん、ただいま」
「なんだったー?」
「告白された」
は?!
そんなあっさりと何を言ってんの、こいつ!!
:11/09/26 22:54 :Android :O9JTdECU
#867 [ちか]
俺のリアクションに比べ、透の顔は至ってクール。
透、オッケーしたのかな。
したらなんか…寂しいかも。
「で、返事は…」
「断った」
そうなんだ、と相槌を打ったあと、心の中でホッとしている自分がいた。
なんだよ、ホッて!ホッてなんだ、俺!
:11/09/26 22:57 :Android :O9JTdECU
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