漆黒の夜に君と。U[BL]
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#874 [ちか]
「ごめん、今日は大事な用事あるから先帰ってて。」

大事な用事、という言葉に透は怪訝な顔をする。
心配性は相変わらずだ。

「心配しなくても遅くならないようにするから大丈夫だって!じゃあ俺、片付け行ってくるな!透も部活頑張れよー!」


半ば強制終了と言った形で会話を切り上げたのは、これ以上話すと透に感づかれそうだったから。

そうして一方的な言葉を投げて、俺はそのまま備品室へと走った。

⏰:11/09/30 00:37 📱:Android 🆔:M6gMnZ3I


#875 [ちか]
備品室は別名、物置小屋。

なんでも分別なく荷物が運ばれるせいで、備品室の片付けというのは気の遠くなる作業を暗に示唆しているようなものだった。


そんなところだから、場所も校舎の一番奥、人気が少なく、ホコリっぽい。

ガラ...ガラ...

立て付けの悪い戸を力ずくで開けると、覚悟していた通りの有り様だった。

「……さっさと終わらせよ…。」


自分に言い聞かせるように呟いて、俺は目の前のゴミに手を伸ばした。

⏰:11/10/01 18:37 📱:Android 🆔:g.cKTL3o


#876 [ちか]
一時間はゆうに越えた頃、
ようやく備品室は本来の姿に戻りかけていた。

備品室の間取りは単純だが、小さな収納部屋が中に1つある。

あとはそこさえ終われば終了…と言った感じで、俺は収納部屋に足を踏み入れたのだった。

それが悲劇の引き金と知らずに。

⏰:11/10/01 18:42 📱:Android 🆔:g.cKTL3o


#877 [ちか]
俺が収納部屋に入ってすぐの頃、
前田が備品室を訪ねてきていたことに俺は全く気づかない。

「日下ー?片付け終わったかー?」

そんな呼び掛けも、一枚の戸を隔てた小部屋で片付けに没頭していたため聞き逃してしまい、返事など出来ない。

「おー、キレイになってんじゃん。……6時前だしもう帰ったのか。」

そう納得した前田が備品室の鍵を閉めて職員室に戻っていったことさえ、気づかなかったんだ。……――――

⏰:11/10/01 18:49 📱:Android 🆔:g.cKTL3o


#878 [ちか]
「あれ?」

鍵が閉められてると気づいたのは、それから数分後のことだった。

最初は、立て付けの悪さを疑い力ずくで引いてみたが戸はビクともしない。

「え?!なんで?!うそ、は??!」

パニックになった俺はところ構わず、叫んだ。
誰か気づいてくれ。

そんな期待を抱いて。


しかし、ここ校舎の一番奥。
元々人通りがすくない上に、こんな夕方にわざわざ来る奴なんてまず居ない。

「うそだろ……」


携帯のディスプレイはすでに5時50分を表示していた。
―――――――……………
―――――…………
―――………

⏰:11/10/01 18:56 📱:Android 🆔:g.cKTL3o


#879 [ちか]
― 恭弥side.―


俺、待ってるから
あんたが来るまでずっと、
ずっと待ってるから  ……―――


冥のその言葉が何度も頭の中で繰り返された。
放課後になってもそれは変わらなかった。


今日は柄にもなく本当に熱が出て、保健室で休んでいた。
そんな矢先、まさか冥に会うなんて。
なんてタイミングなんだよ、と、苦笑すら溢れた。

僕は冷静を装えていただろうか。
そんなこと考えるだけ無駄だった。


掴まれた手首を指でなぞる。

⏰:11/10/01 19:02 📱:Android 🆔:g.cKTL3o


#880 [ちか]
「………………行ってみるか。」


ずっと待つ、
なんて言うから、行ってすぐに帰れと告げるだけだ。

そんな風に自分を納得させて、学校を後にした。
迎えの車を断って。

⏰:11/10/01 19:05 📱:Android 🆔:g.cKTL3o


#881 [ちか]
ファミレスの前に着いたのは5時きっかりだった。


「なに一時間前から来てるんだか。。」


呆れて自分に嘆く。


仕方なく、なんてそんなのは建前で本当は会いたくてしかたないと気づくと、気恥ずかしさでマフラーに顔を埋めた。


冬の5時はすっかり影を落として光るネオンを見ながらぼんやりと俯いた。


「寒いな。」

そんな呟きは白い息と一緒に、行き交う人々の中へと溶けていった。

……―――――
…――――

⏰:11/10/01 19:14 📱:Android 🆔:g.cKTL3o


#882 [ちか]
― 冥side.―

慌てて透に電話をかける。

「…あっ、もしもし透?!」

しかし、安心したのもつかの間、
《こちらは留守番電話サービスです…,》

機械的な音声に項垂れて電話を切る。

他に連絡の取れる奴…

思い付くままに電話をかけてみる。
数人にかけていくうちに、一人と電話が繋がった。

⏰:11/10/01 22:44 📱:Android 🆔:g.cKTL3o


#883 [ちか]
『おー、どしたん日下ー』

『あのさ、今どこ居る?!』

『えー?今?学校の近くのゲーセン〜』

俺はその返事に思わずガッツポーズを取った。
近くなら頼めば来てくれる、はず!

俺が安堵の息をついている間に
電話の向こうでは
誰?、日下、なんで?、と言った風な会話がなされている。
数人で遊んでるみたいだ。

俺は噛みつくように携帯に話しかけた。

『あ、あのさ、今から学校に、』

『え?ごめん、なんて?』

オメーらうっせーって、と叫ぶ友人の声が聞こえる。
ゲーセンという場所柄、騒々しくてきこえづらいのだろう。

『ごめんごめん、え、なに学校?学校がなんて?』

『あの、俺今、』ップ…ツーツーツー


「えぇ?!もしもし?!あれ?!は?!」

暫く応答のない電話に話しかけたあと、ディスプレイに目を落として漸く分かった。


携帯の寿命切れ。

⏰:11/10/01 23:00 📱:Android 🆔:g.cKTL3o


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