漆黒の夜に君と。U[BL]
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#877 [ちか]
俺が収納部屋に入ってすぐの頃、
前田が備品室を訪ねてきていたことに俺は全く気づかない。

「日下ー?片付け終わったかー?」

そんな呼び掛けも、一枚の戸を隔てた小部屋で片付けに没頭していたため聞き逃してしまい、返事など出来ない。

「おー、キレイになってんじゃん。……6時前だしもう帰ったのか。」

そう納得した前田が備品室の鍵を閉めて職員室に戻っていったことさえ、気づかなかったんだ。……――――

⏰:11/10/01 18:49 📱:Android 🆔:g.cKTL3o


#878 [ちか]
「あれ?」

鍵が閉められてると気づいたのは、それから数分後のことだった。

最初は、立て付けの悪さを疑い力ずくで引いてみたが戸はビクともしない。

「え?!なんで?!うそ、は??!」

パニックになった俺はところ構わず、叫んだ。
誰か気づいてくれ。

そんな期待を抱いて。


しかし、ここ校舎の一番奥。
元々人通りがすくない上に、こんな夕方にわざわざ来る奴なんてまず居ない。

「うそだろ……」


携帯のディスプレイはすでに5時50分を表示していた。
―――――――……………
―――――…………
―――………

⏰:11/10/01 18:56 📱:Android 🆔:g.cKTL3o


#879 [ちか]
― 恭弥side.―


俺、待ってるから
あんたが来るまでずっと、
ずっと待ってるから  ……―――


冥のその言葉が何度も頭の中で繰り返された。
放課後になってもそれは変わらなかった。


今日は柄にもなく本当に熱が出て、保健室で休んでいた。
そんな矢先、まさか冥に会うなんて。
なんてタイミングなんだよ、と、苦笑すら溢れた。

僕は冷静を装えていただろうか。
そんなこと考えるだけ無駄だった。


掴まれた手首を指でなぞる。

⏰:11/10/01 19:02 📱:Android 🆔:g.cKTL3o


#880 [ちか]
「………………行ってみるか。」


ずっと待つ、
なんて言うから、行ってすぐに帰れと告げるだけだ。

そんな風に自分を納得させて、学校を後にした。
迎えの車を断って。

⏰:11/10/01 19:05 📱:Android 🆔:g.cKTL3o


#881 [ちか]
ファミレスの前に着いたのは5時きっかりだった。


「なに一時間前から来てるんだか。。」


呆れて自分に嘆く。


仕方なく、なんてそんなのは建前で本当は会いたくてしかたないと気づくと、気恥ずかしさでマフラーに顔を埋めた。


冬の5時はすっかり影を落として光るネオンを見ながらぼんやりと俯いた。


「寒いな。」

そんな呟きは白い息と一緒に、行き交う人々の中へと溶けていった。

……―――――
…――――

⏰:11/10/01 19:14 📱:Android 🆔:g.cKTL3o


#882 [ちか]
― 冥side.―

慌てて透に電話をかける。

「…あっ、もしもし透?!」

しかし、安心したのもつかの間、
《こちらは留守番電話サービスです…,》

機械的な音声に項垂れて電話を切る。

他に連絡の取れる奴…

思い付くままに電話をかけてみる。
数人にかけていくうちに、一人と電話が繋がった。

⏰:11/10/01 22:44 📱:Android 🆔:g.cKTL3o


#883 [ちか]
『おー、どしたん日下ー』

『あのさ、今どこ居る?!』

『えー?今?学校の近くのゲーセン〜』

俺はその返事に思わずガッツポーズを取った。
近くなら頼めば来てくれる、はず!

俺が安堵の息をついている間に
電話の向こうでは
誰?、日下、なんで?、と言った風な会話がなされている。
数人で遊んでるみたいだ。

俺は噛みつくように携帯に話しかけた。

『あ、あのさ、今から学校に、』

『え?ごめん、なんて?』

オメーらうっせーって、と叫ぶ友人の声が聞こえる。
ゲーセンという場所柄、騒々しくてきこえづらいのだろう。

『ごめんごめん、え、なに学校?学校がなんて?』

『あの、俺今、』ップ…ツーツーツー


「えぇ?!もしもし?!あれ?!は?!」

暫く応答のない電話に話しかけたあと、ディスプレイに目を落として漸く分かった。


携帯の寿命切れ。

⏰:11/10/01 23:00 📱:Android 🆔:g.cKTL3o


#884 [ちか]
「まじかよー…」


俺はその場にへたりこんだ。

恭弥との約束が。

もうきっと6時を回っている。


「どうしたらいいんだよ…」

そう呟いて俺は項垂れるしかなかった。

⏰:11/10/01 23:05 📱:Android 🆔:g.cKTL3o


#885 [ちか]
― 透side.―

「いやー、雨降るとか聞いてねえよなー!」

そう話しかけてきたのは、同じサッカー部の同期だった。

「そうだなー」

「うわ、パンツまでびっしょびしょだし。」

「うんー」

ちょうど部活もラストスパートのとき、急に降りだした雨のせいで早めに部活が終わった俺たちは更衣室で着替えたり、くだらない話をしていた。

「お前、今日集中力無さすぎだろー」

「ん、ごめん」


確かにそうだ。
冥の大事な用事とやらが気になって、気が気じゃなかった。

⏰:11/10/02 00:48 📱:Android 🆔:LOoeYdJY


#886 [ちか]
「いや、いんじゃね?お前にしては珍しいっつーか。」

そんな風に言いながらそいつは鼻歌混じりに着替えをロッカーから探していた。

珍しい、か。


珍しくなんかないんだけどな。

俺はいつだって冥(アイツ)のこととなると、いっぱいいっぱいになる。

⏰:11/10/02 01:10 📱:Android 🆔:LOoeYdJY


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