漆黒の夜に君と。U[BL]
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#899 [ちか]
その瞬間けたたましい音と共に戸が室内に倒れた。
倒れた拍子に戸に嵌め込まれていたガラスが床に散らばる。
「案外、開くもんだな。」
思いっきり打ち付けた体にじんわりと痛みが滲んだ。
「冥、ケガしてない?」
目の前には涙の溜まった目を丸くした冥が突っ立っている。
俺がそう訪ねると、何度も頷いた。
よかった。無事で。
「お待たせ。」
自然と笑みが溢れる。
:11/10/02 16:12 :Android :LOoeYdJY
#900 [ちか]
「本気で死ぬかと思った〜…」
半泣きのそいつを宥めるように、頭を叩いた。
「ったく、お前はほんとに心配ばっかりかけさせて…」
「ごめんなさい…」
冥は身を縮こめて謝ると、その拍子に無惨に倒れた戸の姿が目に入った。
「あれ、どうしよっか…」
責任を感じるような面持ちでソレを眺める冥。
俺がさせたいのはそんな顔じゃない。
だから、
:11/10/02 20:30 :Android :LOoeYdJY
#901 [ちか]
「あれは俺が何とかしとくから。」
「え、でも、俺のせいだし、」
俺は深くため息をついて冥を見据えた。
「…大事な用事、あるんだろ?」
それでも、冥は
でも、だの、なんだの言って動こうとしない。
「あのなー、」
半乾きの髪を掻いて、冥を睨んだ。
「…どうせなら最後までかっこつけさせてくれる?」
:11/10/02 20:36 :Android :LOoeYdJY
#902 [ちか]
「……ありがとうっ」
ほら、
俺がさせたかったのは
その笑顔。
:11/10/02 20:39 :Android :LOoeYdJY
#903 [ちか]
そのまま走り去った冥の姿が見えなくなったのを確認して、俺は壁を背にそのまま座り込んだ。
倒した拍子で散らばったガラスに
軽く腕を切ったことに気づいた。
触れてみて
いてっ、とつい口から溢れた。
そしてふいに呆れたような笑みが出る。
「…俺のお人好し。」
―――――…………
―――…………
――………
:11/10/02 20:46 :Android :LOoeYdJY
#904 [ちか]
― 恭弥side.―
時計を見る。
とうに約束の時間は過ぎ、7時を回っていた。
苦笑に近い笑いが出る。
降りだした雨が容赦なく体を打ちつけ、自分の愚かさがさらに浮き彫りになったような気分になる。
「バカみたいだ…」
:11/10/02 20:52 :Android :LOoeYdJY
#905 [ちか]
突き放しておきながら、
結局何かに期待していた。
期待していたのは自分だけだったと、
思い知らされた。
一時間前から来て、
約束の時間が来て、
雨が降ってもその場から動く気はしなかった。
正しくは、
傘でも買っているうちに来たらすれ違ってしまうと思うと、動けなかった。
:11/10/02 20:55 :Android :LOoeYdJY
#906 [ちか]
「自業自得かな。」
虚しさが増すだけと分かってはいるが、言葉にすると漸く重い足を動かすことが出来た。
もう冥にそんな気はないんだ。
今さら、なんだ。
僕が自分で決めたこと。
:11/10/02 20:59 :Android :LOoeYdJY
#907 [ちか]
すっかり濡れて重たくなった制服が虚しさを煽り、家に帰ることは憚られた。
自ずと足は自宅と逆の方向に歩き始める。
霞む視界には人混みとネオンの光。
そこに冥の姿はやはり無かった。
:11/10/02 21:05 :Android :LOoeYdJY
#908 [ちか]
― 冥side.―
はぁ…はぁっ……
全速力で走って、
漸く約束の場所に着いた。
が、すでに時計は7時を少し回ったところだった。
「くそっ……」
恭弥の姿は無い。
雨に濡れた髪が鬱陶しいほどまとわりつく。
まるで、自分の気持ちにまさ絡み付くように。
終わっちゃうのかな、俺たち。
:11/10/02 21:09 :Android :LOoeYdJY
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