悪 魔 の 誕 生 日
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#3 [七瀬]
「もう少しですよ。
頑張って下さい!
肩の力抜いて……そうだ。一緒に深呼吸しましょう。スゥーハースゥーハー。」
目の前にいる看護師さんに促され、深く息を吸い込む。
そして、その息をなるべく長く吐く。
スゥーハースゥーハー。
:09/04/12 00:49
:N703iD
:uqDmmwIM
#4 [七瀬]
「もうお腹まで出かかっていますよ。」
そうやって、こめかみに流れる汗を拭いてくれる。
今日は生憎の大雨。
雷のゴロゴロとゆう音が
遠くに聞こえる。
「ん゛ん゙ん゙ーーー!!」
再び息を吸い込んだ後、
思いっきり力んだ。
:09/04/12 00:53
:N703iD
:uqDmmwIM
#5 [七瀬]
その瞬間
ピカッ ゴロゴロゴロゴロドーーン!!
雷の落ちる音が聞こえたと同時に
オギャアー!
という愛しい我が子の
泣き声が聞こえた。
:09/04/12 00:57
:N703iD
:uqDmmwIM
#6 [七瀬]
“ 悪 魔 の 誕 生 日 ”
:09/04/12 00:58
:N703iD
:uqDmmwIM
#7 [七瀬]
「ねぇねぇ〜!!
今日はなんの日か覚えてるでしょー?」
『忘れるわけないじゃん!俺と美里の誕生日!!』
「雷、
覚えててくれたんだっ!!」
『あったりまえだろ!』
:09/04/12 01:02
:N703iD
:uqDmmwIM
#8 [七瀬]
「お祝いしよ?今日。」
『わりぃ。
今日はダメなんだ。』
「えー?なんで?
私と雷の誕生日だよ??」
あー、めんどくせぇな。
知るかよ、そんなの。
『ごめん、美里。
またな!!』
そう言って立ち去った。
「ちょっと!雷ってば〜!!」
:09/04/12 11:13
:N703iD
:uqDmmwIM
#9 [七瀬]
ため息をしながら
教室を出た。
「お誕生日おめでとう!」
廊下を出たら、
横から声が。
チラッと目線だけ、そいつに向けた。
「お前は、ほぼ毎日が誕生日で羨ましいな。
で、“今日で”何歳になったわけ?」
:09/04/12 11:20
:N703iD
:uqDmmwIM
#10 [七瀬]
相変わらず、
嫌味ったらしいヤツだな。
『知らね。
もう80歳くらいじゃね。』
「俺のじぃちゃんより年上じゃん。」
ハハッと笑ってゆう。
「お前、ほんと悪魔だな。」
『京介。』
「ん?」
:09/04/12 11:27
:N703iD
:uqDmmwIM
#11 [七瀬]
『悪魔ってゆーのも、
結構、疲れるもんだぜ。』
そう言って、
俺は学校を後にした。
細かく言うと、サボった。
かなり申し遅れたけど
俺の名前は岩崎雷(イワサキライ)
で、さっきのヤツが
京介(キョウスケ)
俺のダチ。
2人とも、県内で5本の指に入るほどの超バカ高に通う17歳、つまり高2。
:09/04/12 11:35
:N703iD
:uqDmmwIM
#12 [七瀬]
さっき京介が言ったように俺にはほぼ毎日が誕生日。
なぜかって?
それは俺が
だらしないからかな。
特に女に。
俺は勉強も生活も全部、
テキトーだが、
女のことに関しては
もっとテキトー。
その割には、女遊びが大好き。
:09/04/12 11:40
:N703iD
:uqDmmwIM
#13 [七瀬]
そんな俺がつく嘘…
まあ俺は
冗談のつもりなんだけど。
とりあえず、そういう嘘が俺の毎日を誕生日にしてしまった。
って言ってもね?
誰でも一回は、
つくような嘘なんだぜ?
いや、ほんとに!
:09/04/12 11:45
:N703iD
:uqDmmwIM
#14 [七瀬]
ただ女に
“誕生日いつ〜??”
って聞かれた時に、
“〇〇ちゃんは?”
って聞き返して、
“えー、私は〜”
ってバカみたいに言うのを
“うっそ!まぢ?
俺と一緒〜!!”
って言うだけ。
ほんとそれだけなのに。
:09/04/12 11:49
:N703iD
:uqDmmwIM
#15 [七瀬]
大体、女はその後に
“やだっ!運命じゃん!!”
って、一人喜ぶか、
“じゃーさ、
その日お祝いしよーよ!”
って果たされることのない約束をするのか…
たまに
食事したりするけどね。
俺がヒマな時とか。
まあ、そのどっちかだな!
:09/04/12 11:54
:N703iD
:uqDmmwIM
#16 [七瀬]
とりあえず、
誕生日を聞かれた時に
これを言って喜ばない女はまずいない。
それで盛り上がって、
ホテルに直行!!
みたいな?
そんでね〜、
誕生日プレゼント。
これも、全然ふつーの俺にとってなにもない日に
いきなり貰えたり、
これが
ほんとのサプライズ!
:09/04/12 12:00
:N703iD
:uqDmmwIM
#17 [七瀬]
後、さっきみたいに
“今日はなんの日でしょう?”って
聞かれても簡単に答えられる。
一回や二回、遊んだだけの女の誕生日なんて
覚えられないでしょ。
こういう時、便利なんだよね〜!
“一緒”って言っておけば間違いないし。
“覚えててくれたんだ〜”ってバカみたいに喜ぶんだよなこれが…
あ、さっきみたいにね。
:09/04/12 12:08
:N703iD
:uqDmmwIM
#18 [七瀬]
そんな俺を京介は
“悪魔”と呼ぶ。
でも、良いことばっかりじゃないんだよなあ〜。
やっぱテキトーな俺には
めんどくせぇし。
毎日毎日、誕生日…
さすがに飽きてくる。
“おめでとう”と群がってくる女たちもウザい。
:09/04/12 12:31
:N703iD
:uqDmmwIM
#19 [七瀬]
「ね、そこのあなた。」
ん、逆ナンか?
別に珍しくないけど。
『な〜に?』
いつもみたいに調子良く
振り向いた。
その瞬間、俺は目を見開いた。
…外人?
:09/04/12 13:40
:N703iD
:uqDmmwIM
#20 [七瀬]
『…俺?』
フランス人か?
なぜか突発的にそう思った。
やべー、俺フランス語どころか英語すらまともに話せないぜ。
「そう、そこのあなた。」
そこには色素の薄い髪に
真っ白な肌。
極め付けは焦げ茶の瞳の
チビな女。
ってか、めちゃめちゃ日本語しゃべってんじゃん!
:09/04/12 13:45
:N703iD
:uqDmmwIM
#21 [七瀬]
『えーと、俺になにか?』
とりあえず日本語話せるみたいだし、いっか。
すると、その外人?は
ニコッと笑って、言った。
「私と
付き合ってくれない?」
:09/04/12 17:30
:N703iD
:uqDmmwIM
#22 [七瀬]
『は?』
逆ナンつっても、
ここまでストレートなのは初めてだな。
「だーから、付き合って?」
『観光案内?』
こう考えるのが
一番まとも…
「そうじゃなくって」
次はクスッと怪しげに笑った。
:09/04/12 17:34
:N703iD
:uqDmmwIM
#23 [七瀬]
「ボーイフレンドになってとゆう意味。」
『え?
って!!ちょっと……』
聞き返す前に
制服の裾を思いっきり引っ張られていた。
『ねぇ、ちょっと!
ねぇ!!どこ行くの!』
なにも答えない外人女。
:09/04/12 17:39
:N703iD
:uqDmmwIM
#24 [七瀬]
5分くらい、振り回されて俺はもうヘトヘト。
チビのくせに
すごい力だな、この女。
「あっ!」
いきなり止まる謎の女。
そして振り向いて
俺に
「駅ってどこにあるの?」
ってペロッと舌を出した。
:09/04/12 17:43
:N703iD
:uqDmmwIM
#25 [七瀬]
はあ!?
なに言ってんだよ、この女。
内心イライラしてたけど
相手はガキだし外人?だし…女だし。
『…ずいぶん前に通り過ぎたけど。』
無愛想だけど
十分、我慢したつもり。
「そ。
じゃあ戻ろっ!!」
:09/04/12 17:48
:N703iD
:uqDmmwIM
#26 [七瀬]
そんな俺の好意を
この女はあっさりとスルーしたどころか
また走りだした。
もう勘弁してくれよー!!
『ハァ…ハァハァ……』
やっと駅に着いた。
これで、この謎の女とも
おさらばできる。
:09/04/12 17:52
:N703iD
:uqDmmwIM
#27 [七瀬]
『ハァ…無事に駅着いて、良かったな。』
息を整える。
『じゃあ俺はこれで…』
そう立ち去ろうとした
瞬間
グイッ
またかよ!
「電車乗ろっ」
:09/04/12 17:58
:N703iD
:uqDmmwIM
#28 [七瀬]
『なに言って…』
「デートデート〜」
そう楽しそうに笑う女。
俺のイライラは最高潮に。
『いい加減にしろよ!!
いきなり“付き合え”だの“デート”だの…
俺もヒマじゃねぇんだよ』
ヒマ人だけどね。
まあ、知らん女に振り回されて…
俺、実は気短いんだよ。
:09/04/12 18:03
:N703iD
:uqDmmwIM
#29 [七瀬]
『それにお前の
ボーイフレンドになったつもりもない。』
きついけど、
はっきり言わないと…
こういうヤツは質が悪い。
女はうつむいている。
…ちょっと言い過ぎた?
『その…ちょっと言い過ぎたかな?大丈…』
:09/04/12 18:06
:N703iD
:uqDmmwIM
#30 [七瀬]
顔を上げた女。
…笑ってる?
「そう…そうだよね。」
悲しそうに笑う。
泣かれたりすると、ウザいけど、
こんな顔されると…
ちょっと後悔すんだよな。
『え…と。』
:09/04/12 18:10
:N703iD
:uqDmmwIM
#31 [七瀬]
「私…20歳まで生きられないんだよねぇ。」
え?
「死ぬまで一回、デートしてみたくって。
彼氏とか憧れてて…ね。」
引きつってる笑顔が、
真実を語っていた。
「でも、なんかごめんね!見ず知らずなのに…
いきなり迷惑だよね!!」
:09/04/12 20:00
:N703iD
:uqDmmwIM
#32 [七瀬]
『いや…その。』
涙を流すわけでもなく、
ただ真っすぐに、その茶色い瞳を空へと向けていた。
『よし!行こっ!!』
「え…いいの?」
彼女の目が輝きだす。
:09/04/12 20:03
:N703iD
:uqDmmwIM
#33 [七瀬]
「わあ!!」
彼女は歓声を上げた。
目はキラキラしたまま。
「あれ!
あれ乗りたあーい!!」
指差す先には
メリーゴーランド。
軽やかなメロディーが流れる中、
子供たちが並ぶ列の最後に2人で並んだ。
:09/04/12 20:13
:N703iD
:uqDmmwIM
#34 [七瀬]
メリーゴーランドなんて
子供みたいな乗り物に
乗って楽しいのか?
そう思ったけれど
横顔を見る限りは楽しいんだろうな。
「お待たせしました。」
ガチャと鎖が開くと
今まで乗っていた子供たちが降りて、並んでいた俺たちの列が入った。
:09/04/12 21:38
:N703iD
:uqDmmwIM
#35 [七瀬]
「あれ!」
『え?…って、おいっ!』
俺の声を無視して
あの女は、子供らを押してまで、一番大きな白馬に乗っかった。
「ねぇねぇ!
早く早くー!!」
『え?俺も乗るの?』
「当たり前ー!!」
:09/04/12 21:47
:N703iD
:uqDmmwIM
#36 [七瀬]
ただでさえ、
周りの目が痛いのに
大人2人が
メリーゴーランド?
…なんて絶対無理!
「早くってばあ!!」
『いや…その、
俺は止めとくよ…』
「なんで?
なんでなんでー??」
:09/04/12 21:51
:N703iD
:uqDmmwIM
#37 [七瀬]
今さらだけど
なんなんだ、この女は。
3歳児か?
それに、
さっきの悲しそうな顔…
今は微塵も感じられない。
失敗した…
やっぱり、こんな
訳の分かんねぇヤツに付き合うんじゃなかった。
俺は後悔し始めていた。
:09/04/12 21:56
:N703iD
:uqDmmwIM
#38 [七瀬]
あの時、
俺は、この女に同情したのだろうか。
ただ、
なぜか、揺れている彼女の真っ茶色な瞳を見て
ほっとけなくなったんだ。
:09/04/12 22:32
:N703iD
:uqDmmwIM
#39 [七瀬]
「あの〜お客様。
危ないので……」
アナウンスの人が
そう言ってくれなかったら俺は今頃、顔から火を吹いていただろう。
あの女は仕方なくといった感じで諦めてくれたようだ。
「ちゃんと写真、撮っててよね!」
:09/04/12 22:35
:N703iD
:uqDmmwIM
#40 [七瀬]
そう言ってたのを
思い出し、
インスタントカメラを構えた。
……お姫さまみたい。
子供だらけのメリーゴーランドで一人浮いてる彼女。
色素の薄い髪が太陽の日差しで、より美しさを際立たせている。
:09/04/12 22:40
:N703iD
:uqDmmwIM
#41 [七瀬]
無邪気に笑う彼女。
周りの目に
気にも止めないで、
白馬にまたがる彼女は
昔、読んだ童話に出てくるような
本物のお姫さまみたいだった。
そんな姿に、
ついレンズ越しに見とれていた。
:09/04/12 22:45
:N703iD
:uqDmmwIM
#42 [七瀬]
「ねぇ〜
ちゃんと撮ってくれた?」
『あ…ああ。』
気付くとメリーゴーランドはもう止まっていて、
あの女が目の前にいた。
「どれどれ…って全然撮れてないじゃ〜ん!!」
あなたに見とれてて
撮れませんでした。
なんて言えるわけない。
:09/04/12 22:57
:N703iD
:uqDmmwIM
#43 [七瀬]
『ごめん…』
「もうしっかりしてよね。」
こんな言い方されて
さっきみたいにムカつくはずなのに…
なぜか素直に頷いている自分がいた。
「ま、いいよ。
次、あれ行こーよ!」
そうやって、やっぱり俺の制服の裾を引っ張った。
:09/04/12 23:01
:N703iD
:uqDmmwIM
#44 [七瀬]
「あ、あれ食べたい!!」
コーヒーカップやら
なんやら…
幼稚園児が乗りそうな
乗り物ばっかり片っ端から乗った後、
そうやってクレープを指さした。
『はいはい。』
彼女をベンチに座らせて
俺は、ジュースとクレープを買いに行った。
:09/04/12 23:07
:N703iD
:uqDmmwIM
#45 [七瀬]
クレープ屋のおじさんが
丁寧に生クリームをのせている。
俺…やっぱり変だな。
だって、今日会ったばかりの見ず知らずの女に振り回されて…
しかも黙って言うこと聞いてるし。
なんか、あの女のペースにはまってる。
:09/04/12 23:10
:N703iD
:uqDmmwIM
#46 [七瀬]
「はい、クレープ2つとジュース2つで1000円ちょうどね。」
お金を渡して、あの女の待つベンチへと戻った。
「ふわふわ〜」
クレープを頬張る彼女。
結構、
キレイな顔してんだな。
その横顔を見て思う。
:09/04/12 23:15
:N703iD
:uqDmmwIM
#47 [七瀬]
横顔だと鼻筋の通った鼻がより強調されて見える。
ほんとフランス人みたい。
ってか絶対フランス人だ、これは。
大人っぽい。
けど、どこか幼さがある。
なんでだろう。
:09/04/12 23:18
:N703iD
:uqDmmwIM
#48 [七瀬]
座っている彼女の
上から下をゆっくりと吟味した。
あ、そうか!
なぜ、この女に幼さがあるのか…
それは
とてつもなくチビだから。
:09/04/12 23:21
:N703iD
:uqDmmwIM
#49 [七瀬]
チビといっても
なんというか…
まあ、簡単に言えば
顔は外人っぽくって
体は日本人とゆうか子供。
顔だけ見れば、大人っぽいのに
体と全体で見ると、どうしても幼く見えてしまう。
俺が最初にガキと思ったのは、このせいだろう。
:09/04/12 23:26
:N703iD
:uqDmmwIM
#50 [七瀬]
なんともアンバランス。
スタイルも決して良いとは言えない。
でも、そのアンバランスさが彼女の魅力に見えた。
こう他の女にはないような…
不思議な魅力。
けど、今思うと
それは魔力だったのかもしれない。
俺を虜にした魔力…
:09/04/12 23:33
:N703iD
:uqDmmwIM
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