悪 魔 の 誕 生 日
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#401 [七瀬]
 
「ああ。
この鏡を織部先輩に返しとけばいいんですね。」

どうやら、
俺の言葉の意図を読み取ってくれたみたい。

ありがたい。


でも

『ううん、
やっぱりいいよ。』

「あ…そうですか。」
 

⏰:09/05/02 15:25 📱:N703iD 🆔:zhG.CytU


#402 [七瀬]
 
なにしに来たんだ、
この人は

みたいな顔で見てくる。


そりゃ、そうだわな。

『自分で返すよ。』


こういうのは、
俺から美里に返さなきゃ。


『だから、悪いけどちょっとだけ、邪魔するね。』
 

⏰:09/05/02 15:28 📱:N703iD 🆔:zhG.CytU


#403 [七瀬]
 
「あ、はい。どうぞ。
えーと、織部先輩呼んできましょうか?」

『ありがと。
でもいい。それも自分でするから。』


マネージャーらしき子に
お礼を言って、
美里の元へと向かう。


『美里。』

久々に呼ぶな、この名前。 

⏰:09/05/02 15:32 📱:N703iD 🆔:zhG.CytU


#404 [七瀬]
 
「雷…」

振り返った美里は驚いてるみたい。


『これ。朝借りたやつ。』

鏡を差し出す。


『ありがとう。』


「ああ、これね。」

手を伸ばす美里。

⏰:09/05/02 15:35 📱:N703iD 🆔:zhG.CytU


#405 [七瀬]
 
「捨ててくれてよかったのに。」


小声でよく聞こえない。

『え?』

「別に、返してくれなくてもいいのに。」


『そうなの?』

「うん。だいぶ痛んでたから、もう捨てようと思ってたの。」

⏰:09/05/02 15:39 📱:N703iD 🆔:zhG.CytU


#406 [七瀬]
 
『そっか。
でも、よかったよ。』

「なにが?」


『謝りたかったし。』


「…なに今さら。」

『んと今さらだよな。』

黙って俺を見る美里。


『ごめんな、美里。』
 

⏰:09/05/02 18:21 📱:N703iD 🆔:zhG.CytU


#407 [七瀬]
 
「…謝らないで。」

『美里…』


前は、そんな潤んだ目は
嫌いだったのに、

今は、申し訳ない気持ちからか、そんなに嫌じゃなかった。


「謝るくらいなら、
もう一度…」

『美里。』

美里の言葉を遮る。

⏰:09/05/02 18:33 📱:N703iD 🆔:zhG.CytU


#408 [七瀬]
 
『ほんと申し訳ないと思ってる。』

「だったら…」

俺の腕をギュッと握る。



『ごめん。
俺、好きな人ができた。』

声がかすれた。


「好きな人?
そんなの雷らしくないよ」 

⏰:09/05/02 18:40 📱:N703iD 🆔:zhG.CytU


#409 [七瀬]
 
『確かに…
俺らしくねぇな。』

「いつもの雷は、ナルシストで変態で…」


『バカ?』

「違う!超超超ーバカ!!」

ほんと、
ひどい言われよう…


『ハハッ…ひどいな。
美里ちゃん。』

「ほんとのことじゃん。」

⏰:09/05/02 18:46 📱:N703iD 🆔:zhG.CytU


#410 [七瀬]
 
そう顔を上げた美里の目が赤くなっているのと、

美里が顔を押しつけていたところの部分がひんやりしているのに気付く。


「ま、今でもバカだけど。」

『バカで結構。』


「言っとくけど、ぜーったい後悔するから。」

『後悔?』

⏰:09/05/02 18:51 📱:N703iD 🆔:zhG.CytU


#411 [七瀬]
 
「そ。私をフッた後悔。」

『おー、怖。』

小さな笑い声が
広いグランドに響いた。




「変わったね、あんた。」


しばらくの沈黙のあと、
美里がぽつりと言った。
 

⏰:09/05/02 18:56 📱:N703iD 🆔:zhG.CytU


#412 [七瀬]
 
京介に言われて、
美里にも言われたこの言葉。


「悔しいけど変わった。」

『男前になったかな。』

鏡を見る身振りをした。


「…ほんとバカだね。」

『だーかーら!
バカで結構だってば。』
 

⏰:09/05/02 19:00 📱:N703iD 🆔:zhG.CytU


#413 [七瀬]
 
「一生バカだ、一生。」

『死ぬまでバカでいてやろーじゃんか。』



「…ありがと、雷。」


『…こちらこそ。』


ありがとう、美里。

「じゃあ部活あるから。」

『ん。ばいばい。』
 

⏰:09/05/02 19:04 📱:N703iD 🆔:zhG.CytU


#414 [七瀬]
 
最後に笑った美里の顔と、

軽やかにハードルを飛び越える姿が、美しかったのを今でも覚えている。


この日は一生忘れない。


だって、


新しいスタートであり、

分岐点だから。

⏰:09/05/02 19:08 📱:N703iD 🆔:zhG.CytU


#415 [七瀬]
 
さて。

あとはゆかちゃんだ。


どうしようか…

そう思っていたら、


「らーい!」

校門前には、


いつもの姫じゃなくって、ゆかちゃんが。

以心伝心?

⏰:09/05/02 19:16 📱:N703iD 🆔:zhG.CytU


#416 [七瀬]
 
『ゆかちゃん。』

駆け寄る。


「ね〜、デートしよ〜」

『ゆかちゃ…』

「大丈夫だよ。」

『えっ?』


「先輩なら、今日委員会だし。だいじょーぶ!!」

手をブイにする
ゆかちゃん。

⏰:09/05/03 10:15 📱:N703iD 🆔:OTnNBzCw


#417 [七瀬]
 
『そういう問題じゃなくってね。』

ふぅ

深呼吸して、一つ息をつく。


『俺ね…』

「さっ、早く!!」


『ゆっゆかちゃん!?』

裾をおもいっきり引っ張られていた。

⏰:09/05/03 10:19 📱:N703iD 🆔:OTnNBzCw


#418 [七瀬]
 
『ど、どこ行くの?』

「ないしょー!!」

走る。


そんなに速くないし、
そんなに強い力でもない。

振りほどこうと思えば、
そう出来た。

けど、それが出来なかったのは


ゆかちゃんが姫と被ってしまっていたから。

⏰:09/05/03 10:22 📱:N703iD 🆔:OTnNBzCw


#419 [七瀬]
 
その走るゆかちゃんが
出会った時の姫に見えた。


いきなり裾を引っ張られ、行き先も分からず、
なにをするのかも分からない。


だんだん視界がぼやけて、


『姫?』

姫がいるように、錯覚してきた。

⏰:09/05/03 10:26 📱:N703iD 🆔:OTnNBzCw


#420 [七瀬]
 
そこには、
あの時の姫がいて、

素性も名前も知らなくってもちろん誕生日も分からない。

そんな女に振り回されてて


うざいはずなのに、
手放せなくて。


あの時から、
俺は夢を見ているのだろうか。

⏰:09/05/03 10:30 📱:N703iD 🆔:OTnNBzCw


#421 [七瀬]
 
 
「着いたよ。」

『え、姫?』

「ちょっと、
なにボケてんの、雷〜!!」

『あ…ゆかちゃん。』


夢は覚めたみたい。

前にはケラケラと笑う
ゆかちゃんと


ホテル。

⏰:09/05/03 10:40 📱:N703iD 🆔:OTnNBzCw


#422 [七瀬]
 
「入ろぉ〜」

ルンルン気分で入ろうとするゆかちゃんに


「雷?どうしたの?」

立ち止まる。


『…俺…やっぱり……』

「はいっ!
お城にご招待〜!!」

手を引かれ、
お城にご招待された。

⏰:09/05/03 10:44 📱:N703iD 🆔:OTnNBzCw


#423 [七瀬]
 
俺、このままいくと
ゆかちゃんと…


「えっとね〜」

俺がぼんやり考えている間にも、

ゆかちゃんは一人で楽しそうに部屋を選んでいる。


頭の中は意外と冷静で
自分でもびっくりするくらい。

⏰:09/05/04 00:58 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


#424 [七瀬]
 
「ここがいいな!」

ゆかちゃんに連れられ、
入った部屋は、
ほんとにお姫さまが住んでいそうな部屋だった。


「かっわいい〜!!」

はしゃぐゆかちゃんに
立ち尽くす俺。


姫もここに連れてきたら、喜ぶかな。
 

⏰:09/05/04 01:01 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


#425 [七瀬]
 
10分くらい、
広い部屋でキャッキャ言ってたゆかちゃんが

ふかふかのベットに座る。


なんとなく、これから起こる出来事が分かった。

元悪魔でしたからね。笑



「雷。」

ゆかちゃんが妖しく笑う。 

⏰:09/05/04 01:05 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


#426 [七瀬]
 
「今日、
なんの日か知ってる?」

今日?


『…知らない。』

ここに入ってから、
初めて声を発した。


「えー、ほんとに?
信じらんない〜」

ブーブー言うゆかちゃん。 

⏰:09/05/04 01:07 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


#427 [七瀬]
 
が、やがてまた妖しい笑みを浮かべた。


「今日はね、
私と雷の誕生日でしょ?」


あー、あれ嘘なのに。
まだ信じてたんだ。

心中で悪態をつく。


「でね、この部屋は私から雷への誕生日プレゼントだよ?」
 

⏰:09/05/04 01:10 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


#428 [七瀬]
 
そんな誕生日プレゼント…


いらない。


「でね、雷はゆかに
なにくれるのかな。」


『…なにが欲しいの?』

わかってても、
わざと聞く。


すると、ゆかちゃんは
クスッと笑った。

⏰:09/05/04 01:14 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


#429 [七瀬]
 
「雷は相変わらず意地悪だなぁ…
先輩が言ってたのは、このことなのかな。」

姫が言ってたこと?


「雷は悪魔なんだ…ってこと。」



バサッ


俺はゆかちゃんを
押し倒す。

⏰:09/05/04 01:17 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


#430 [七瀬]
 
 
「雷をちょうだい?」

そうやって
真っ黒な瞳を俺に向けてくる。


あ〜、うぜぇな。
バカじゃねえの?

やっぱり、俺はこういう目は苦手みたいだ。



ゆっくり、ゆっくりと
唇をゆかちゃんへと近付けていった。

⏰:09/05/04 01:23 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


#431 [七瀬]
 
 
 
「ねえちゃん。」

「なに、真王。」


「今日は連れて来ないの?」

「誰を?」

「はぁ…わかってるくせに素直じゃないね。」

「だから!……なにがよ。」

「“なにが”って…
ねえちゃん明らか変だよ。遊園地に行った日から。」

⏰:09/05/04 02:09 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


#432 [七瀬]
 
「変って、どこがよ。
姫は至って、いつもどおりだし!!」

「ふ〜ん…」


「…なによ、その顔は。」

「べっつに〜」

「あ〜!もう!!
なんなのよ、いったい!」



「雷にいちゃん…でしょ。」 

⏰:09/05/04 02:13 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


#433 [七瀬]
 
 
「………」

「あ〜あぁ〜、黙っちゃって。
だいたいねえちゃんは、分かりやすいんだよなぁ。」


「……分かりやすい?」

「そっ。すーぐ顔に出る。」

「えっ?姫、そんなに顔に出てる?」

「出てるな。
つっても、そうなりだしたのは…」

⏰:09/05/04 02:17 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


#434 [七瀬]
 
「そうなりだしたのは…
ってなによ。」

「知りたい?」


「………」

「知りたくないの?」


「……………」

「ねえちゃん?」


「…真王。」

「なに。」

⏰:09/05/04 02:20 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


#435 [七瀬]
 
 
「あんた、いつ頃からそんなにズル賢くなったの。」

「ねえちゃんに似たんじゃね?俺も一応悪魔だし。」

「はぁ…ごめんごめん。
姫の負けだから教えて?」

「やーっと素直になった。」


「その顔…ほんとムカつく」

「だかーらっ!
仕方ないっしょ。
ねえちゃんに似たんだし」 

⏰:09/05/04 02:26 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


#436 [七瀬]
 
 
 
 
「ほんと…そうかもね。」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

⏰:09/05/04 02:33 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


#437 [七瀬]
 
 
 
「雷?」

『………』


「どうしたの?
そんなに黙って。」

『なあ…ゆかちゃん。』

冷たい目を
下にいる女に向けた。



「な、なに?」
 

⏰:09/05/04 02:36 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


#438 [七瀬]
『そんなに俺とヤりたいわけ?』


すると、
怖じけ付いてた顔が

「そうだよ?」

誘発的な目付きへと
戻った。


『…そう。』

「そう。」


しばらくの沈黙とともに
見つめ合う。

⏰:09/05/04 02:42 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


#439 [七瀬]
 
 
『ね。』

「うん?」


『質問していい?』

「どうしたの?いきなり。」

『質問しちゃだめ?』

まだ、ゆかちゃんに覆いかぶさったまま聞く。


「いいけど…ちゃんと後でプレゼントちょうだいね?」

⏰:09/05/04 15:56 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


#440 [七瀬]
 
コクリと頷いた。


「じゃ〜、
なんでもどーぞ。」


『……これってさぁ。
浮気になるの?』

「浮気?なに言ってんの〜」

一人ハハッと笑うゆかちゃんに


『まぢで答えて。』

真剣な俺。

⏰:09/05/04 15:59 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


#441 [七瀬]
 
 
「ならないよ。」

真っ黒な目が俺を捕えた。


「ならないに決まってんじゃん。」


『…それは、まだヤってないから?』

「ううん。そうじゃなくて浮気以前の問題じゃん。」


『浮気以前?』
 

⏰:09/05/04 16:02 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


#442 [七瀬]
 
 
「だって遊びだもの。」

『その“遊び”自体が浮気じゃないの?』

「うん、そう考える人もいるね。」

『…じゃあ、ゆかちゃんが遊びは浮気じゃないって思ってるだけなんだ。』



「いや、遊びは浮気でしょ」

『どっちなの。』
 

⏰:09/05/04 16:07 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


#443 [七瀬]
 
「だから、遊びは浮気だって。」


『…俺が気短いの知ってるだろ。あんまイライラさせんな。』


「私だって、ほんとは気短いの。
イライラさせないで。」



『………』

この女、
喧嘩売ってんのか?

⏰:09/05/04 16:10 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


#444 [七瀬]
 
 
「だから、浮気にはならないってば。遊びだもん。」


『いい加減にし…』

「雷は遊びなんでしょ?」


その黒く深い目に
吸い込まれてしまいそう。



「私も、真姫先輩も。」
 

⏰:09/05/04 16:15 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


#445 [七瀬]
 
姫が遊び?



「じゃあ浮気じゃないじゃん。
私も、先輩も遊びなら別にバレたっていつものように捨てちゃえばいいだけなんだから。」


『………』


「謎は解けたかな〜、悪魔さん。」

ニコッと笑い掛ける。

⏰:09/05/04 16:19 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


#446 [七瀬]
 
 
『うん、解けたよ。』


「じゃあ、もうそろそろ…」


『あと一つだけ。』


「もお〜、まだあるの〜?」


『あと一つだけだから。』


黒い瞳が揺れた。

⏰:09/05/04 16:23 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


#447 [七瀬]
 
 
「なに。」

イラついた様子の女。


『ゆかちゃんは浮気になるんじゃないの?』

ジッと見て、
しばらくの沈黙。



『彼氏いんだろ?』


「いるよ。」
 

⏰:09/05/04 17:02 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


#448 [七瀬]
 
そして、また口元に笑みを浮かべる女。


「私は浮気になっちゃうけどね。」

ただ、今回は少し悲しげな笑みだった。


『そう。』

俺の冷たい目は変わらず、健在している。


『プレゼント…ほしいんだろ?』

⏰:09/05/04 17:25 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


#449 [七瀬]
 
 
「うん。ほしい。」

この女の目は冷たいというより、冷めていた。


「早くちょうだい。」


『目、閉じて。』

スッと閉じた目を見ながら、また顔を近付ける。



眠り姫を目覚めさせるようにキスをした。

⏰:09/05/04 17:30 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


#450 [七瀬]
 
 
 
目を開けると、


そこには、
きっとお姫さまがいて


真っ茶色な瞳
くるくるした茶色い髪
いちごのような唇



そして、意地悪に笑う。
 
 

⏰:09/05/04 17:36 📱:N703iD 🆔:id.Osk0g


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