悪 魔 の 誕 生 日
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#401 [七瀬]
「ああ。
この鏡を織部先輩に返しとけばいいんですね。」
どうやら、
俺の言葉の意図を読み取ってくれたみたい。
ありがたい。
でも
『ううん、
やっぱりいいよ。』
「あ…そうですか。」
:09/05/02 15:25
:N703iD
:zhG.CytU
#402 [七瀬]
なにしに来たんだ、
この人は
みたいな顔で見てくる。
そりゃ、そうだわな。
『自分で返すよ。』
こういうのは、
俺から美里に返さなきゃ。
『だから、悪いけどちょっとだけ、邪魔するね。』
:09/05/02 15:28
:N703iD
:zhG.CytU
#403 [七瀬]
「あ、はい。どうぞ。
えーと、織部先輩呼んできましょうか?」
『ありがと。
でもいい。それも自分でするから。』
マネージャーらしき子に
お礼を言って、
美里の元へと向かう。
『美里。』
久々に呼ぶな、この名前。
:09/05/02 15:32
:N703iD
:zhG.CytU
#404 [七瀬]
「雷…」
振り返った美里は驚いてるみたい。
『これ。朝借りたやつ。』
鏡を差し出す。
『ありがとう。』
「ああ、これね。」
手を伸ばす美里。
:09/05/02 15:35
:N703iD
:zhG.CytU
#405 [七瀬]
「捨ててくれてよかったのに。」
小声でよく聞こえない。
『え?』
「別に、返してくれなくてもいいのに。」
『そうなの?』
「うん。だいぶ痛んでたから、もう捨てようと思ってたの。」
:09/05/02 15:39
:N703iD
:zhG.CytU
#406 [七瀬]
『そっか。
でも、よかったよ。』
「なにが?」
『謝りたかったし。』
「…なに今さら。」
『んと今さらだよな。』
黙って俺を見る美里。
『ごめんな、美里。』
:09/05/02 18:21
:N703iD
:zhG.CytU
#407 [七瀬]
「…謝らないで。」
『美里…』
前は、そんな潤んだ目は
嫌いだったのに、
今は、申し訳ない気持ちからか、そんなに嫌じゃなかった。
「謝るくらいなら、
もう一度…」
『美里。』
美里の言葉を遮る。
:09/05/02 18:33
:N703iD
:zhG.CytU
#408 [七瀬]
『ほんと申し訳ないと思ってる。』
「だったら…」
俺の腕をギュッと握る。
『ごめん。
俺、好きな人ができた。』
声がかすれた。
「好きな人?
そんなの雷らしくないよ」
:09/05/02 18:40
:N703iD
:zhG.CytU
#409 [七瀬]
『確かに…
俺らしくねぇな。』
「いつもの雷は、ナルシストで変態で…」
『バカ?』
「違う!超超超ーバカ!!」
ほんと、
ひどい言われよう…
『ハハッ…ひどいな。
美里ちゃん。』
「ほんとのことじゃん。」
:09/05/02 18:46
:N703iD
:zhG.CytU
#410 [七瀬]
そう顔を上げた美里の目が赤くなっているのと、
美里が顔を押しつけていたところの部分がひんやりしているのに気付く。
「ま、今でもバカだけど。」
『バカで結構。』
「言っとくけど、ぜーったい後悔するから。」
『後悔?』
:09/05/02 18:51
:N703iD
:zhG.CytU
#411 [七瀬]
「そ。私をフッた後悔。」
『おー、怖。』
小さな笑い声が
広いグランドに響いた。
「変わったね、あんた。」
しばらくの沈黙のあと、
美里がぽつりと言った。
:09/05/02 18:56
:N703iD
:zhG.CytU
#412 [七瀬]
京介に言われて、
美里にも言われたこの言葉。
「悔しいけど変わった。」
『男前になったかな。』
鏡を見る身振りをした。
「…ほんとバカだね。」
『だーかーら!
バカで結構だってば。』
:09/05/02 19:00
:N703iD
:zhG.CytU
#413 [七瀬]
「一生バカだ、一生。」
『死ぬまでバカでいてやろーじゃんか。』
「…ありがと、雷。」
『…こちらこそ。』
ありがとう、美里。
「じゃあ部活あるから。」
『ん。ばいばい。』
:09/05/02 19:04
:N703iD
:zhG.CytU
#414 [七瀬]
最後に笑った美里の顔と、
軽やかにハードルを飛び越える姿が、美しかったのを今でも覚えている。
この日は一生忘れない。
だって、
新しいスタートであり、
分岐点だから。
:09/05/02 19:08
:N703iD
:zhG.CytU
#415 [七瀬]
さて。
あとはゆかちゃんだ。
どうしようか…
そう思っていたら、
「らーい!」
校門前には、
いつもの姫じゃなくって、ゆかちゃんが。
以心伝心?
:09/05/02 19:16
:N703iD
:zhG.CytU
#416 [七瀬]
『ゆかちゃん。』
駆け寄る。
「ね〜、デートしよ〜」
『ゆかちゃ…』
「大丈夫だよ。」
『えっ?』
「先輩なら、今日委員会だし。だいじょーぶ!!」
手をブイにする
ゆかちゃん。
:09/05/03 10:15
:N703iD
:OTnNBzCw
#417 [七瀬]
『そういう問題じゃなくってね。』
ふぅ
深呼吸して、一つ息をつく。
『俺ね…』
「さっ、早く!!」
『ゆっゆかちゃん!?』
裾をおもいっきり引っ張られていた。
:09/05/03 10:19
:N703iD
:OTnNBzCw
#418 [七瀬]
『ど、どこ行くの?』
「ないしょー!!」
走る。
そんなに速くないし、
そんなに強い力でもない。
振りほどこうと思えば、
そう出来た。
けど、それが出来なかったのは
ゆかちゃんが姫と被ってしまっていたから。
:09/05/03 10:22
:N703iD
:OTnNBzCw
#419 [七瀬]
その走るゆかちゃんが
出会った時の姫に見えた。
いきなり裾を引っ張られ、行き先も分からず、
なにをするのかも分からない。
だんだん視界がぼやけて、
『姫?』
姫がいるように、錯覚してきた。
:09/05/03 10:26
:N703iD
:OTnNBzCw
#420 [七瀬]
そこには、
あの時の姫がいて、
素性も名前も知らなくってもちろん誕生日も分からない。
そんな女に振り回されてて
うざいはずなのに、
手放せなくて。
あの時から、
俺は夢を見ているのだろうか。
:09/05/03 10:30
:N703iD
:OTnNBzCw
#421 [七瀬]
「着いたよ。」
『え、姫?』
「ちょっと、
なにボケてんの、雷〜!!」
『あ…ゆかちゃん。』
夢は覚めたみたい。
前にはケラケラと笑う
ゆかちゃんと
ホテル。
:09/05/03 10:40
:N703iD
:OTnNBzCw
#422 [七瀬]
「入ろぉ〜」
ルンルン気分で入ろうとするゆかちゃんに
「雷?どうしたの?」
立ち止まる。
『…俺…やっぱり……』
「はいっ!
お城にご招待〜!!」
手を引かれ、
お城にご招待された。
:09/05/03 10:44
:N703iD
:OTnNBzCw
#423 [七瀬]
俺、このままいくと
ゆかちゃんと…
「えっとね〜」
俺がぼんやり考えている間にも、
ゆかちゃんは一人で楽しそうに部屋を選んでいる。
頭の中は意外と冷静で
自分でもびっくりするくらい。
:09/05/04 00:58
:N703iD
:id.Osk0g
#424 [七瀬]
「ここがいいな!」
ゆかちゃんに連れられ、
入った部屋は、
ほんとにお姫さまが住んでいそうな部屋だった。
「かっわいい〜!!」
はしゃぐゆかちゃんに
立ち尽くす俺。
姫もここに連れてきたら、喜ぶかな。
:09/05/04 01:01
:N703iD
:id.Osk0g
#425 [七瀬]
10分くらい、
広い部屋でキャッキャ言ってたゆかちゃんが
ふかふかのベットに座る。
なんとなく、これから起こる出来事が分かった。
元悪魔でしたからね。笑
「雷。」
ゆかちゃんが妖しく笑う。
:09/05/04 01:05
:N703iD
:id.Osk0g
#426 [七瀬]
「今日、
なんの日か知ってる?」
今日?
『…知らない。』
ここに入ってから、
初めて声を発した。
「えー、ほんとに?
信じらんない〜」
ブーブー言うゆかちゃん。
:09/05/04 01:07
:N703iD
:id.Osk0g
#427 [七瀬]
が、やがてまた妖しい笑みを浮かべた。
「今日はね、
私と雷の誕生日でしょ?」
あー、あれ嘘なのに。
まだ信じてたんだ。
心中で悪態をつく。
「でね、この部屋は私から雷への誕生日プレゼントだよ?」
:09/05/04 01:10
:N703iD
:id.Osk0g
#428 [七瀬]
そんな誕生日プレゼント…
いらない。
「でね、雷はゆかに
なにくれるのかな。」
『…なにが欲しいの?』
わかってても、
わざと聞く。
すると、ゆかちゃんは
クスッと笑った。
:09/05/04 01:14
:N703iD
:id.Osk0g
#429 [七瀬]
「雷は相変わらず意地悪だなぁ…
先輩が言ってたのは、このことなのかな。」
姫が言ってたこと?
「雷は悪魔なんだ…ってこと。」
バサッ
俺はゆかちゃんを
押し倒す。
:09/05/04 01:17
:N703iD
:id.Osk0g
#430 [七瀬]
「雷をちょうだい?」
そうやって
真っ黒な瞳を俺に向けてくる。
あ〜、うぜぇな。
バカじゃねえの?
やっぱり、俺はこういう目は苦手みたいだ。
ゆっくり、ゆっくりと
唇をゆかちゃんへと近付けていった。
:09/05/04 01:23
:N703iD
:id.Osk0g
#431 [七瀬]
「ねえちゃん。」
「なに、真王。」
「今日は連れて来ないの?」
「誰を?」
「はぁ…わかってるくせに素直じゃないね。」
「だから!……なにがよ。」
「“なにが”って…
ねえちゃん明らか変だよ。遊園地に行った日から。」
:09/05/04 02:09
:N703iD
:id.Osk0g
#432 [七瀬]
「変って、どこがよ。
姫は至って、いつもどおりだし!!」
「ふ〜ん…」
「…なによ、その顔は。」
「べっつに〜」
「あ〜!もう!!
なんなのよ、いったい!」
「雷にいちゃん…でしょ。」
:09/05/04 02:13
:N703iD
:id.Osk0g
#433 [七瀬]
「………」
「あ〜あぁ〜、黙っちゃって。
だいたいねえちゃんは、分かりやすいんだよなぁ。」
「……分かりやすい?」
「そっ。すーぐ顔に出る。」
「えっ?姫、そんなに顔に出てる?」
「出てるな。
つっても、そうなりだしたのは…」
:09/05/04 02:17
:N703iD
:id.Osk0g
#434 [七瀬]
「そうなりだしたのは…
ってなによ。」
「知りたい?」
「………」
「知りたくないの?」
「……………」
「ねえちゃん?」
「…真王。」
「なに。」
:09/05/04 02:20
:N703iD
:id.Osk0g
#435 [七瀬]
「あんた、いつ頃からそんなにズル賢くなったの。」
「ねえちゃんに似たんじゃね?俺も一応悪魔だし。」
「はぁ…ごめんごめん。
姫の負けだから教えて?」
「やーっと素直になった。」
「その顔…ほんとムカつく」
「だかーらっ!
仕方ないっしょ。
ねえちゃんに似たんだし」
:09/05/04 02:26
:N703iD
:id.Osk0g
#436 [七瀬]
「ほんと…そうかもね。」
:09/05/04 02:33
:N703iD
:id.Osk0g
#437 [七瀬]
「雷?」
『………』
「どうしたの?
そんなに黙って。」
『なあ…ゆかちゃん。』
冷たい目を
下にいる女に向けた。
「な、なに?」
:09/05/04 02:36
:N703iD
:id.Osk0g
#438 [七瀬]
『そんなに俺とヤりたいわけ?』
すると、
怖じけ付いてた顔が
「そうだよ?」
誘発的な目付きへと
戻った。
『…そう。』
「そう。」
しばらくの沈黙とともに
見つめ合う。
:09/05/04 02:42
:N703iD
:id.Osk0g
#439 [七瀬]
『ね。』
「うん?」
『質問していい?』
「どうしたの?いきなり。」
『質問しちゃだめ?』
まだ、ゆかちゃんに覆いかぶさったまま聞く。
「いいけど…ちゃんと後でプレゼントちょうだいね?」
:09/05/04 15:56
:N703iD
:id.Osk0g
#440 [七瀬]
コクリと頷いた。
「じゃ〜、
なんでもどーぞ。」
『……これってさぁ。
浮気になるの?』
「浮気?なに言ってんの〜」
一人ハハッと笑うゆかちゃんに
『まぢで答えて。』
真剣な俺。
:09/05/04 15:59
:N703iD
:id.Osk0g
#441 [七瀬]
「ならないよ。」
真っ黒な目が俺を捕えた。
「ならないに決まってんじゃん。」
『…それは、まだヤってないから?』
「ううん。そうじゃなくて浮気以前の問題じゃん。」
『浮気以前?』
:09/05/04 16:02
:N703iD
:id.Osk0g
#442 [七瀬]
「だって遊びだもの。」
『その“遊び”自体が浮気じゃないの?』
「うん、そう考える人もいるね。」
『…じゃあ、ゆかちゃんが遊びは浮気じゃないって思ってるだけなんだ。』
「いや、遊びは浮気でしょ」
『どっちなの。』
:09/05/04 16:07
:N703iD
:id.Osk0g
#443 [七瀬]
「だから、遊びは浮気だって。」
『…俺が気短いの知ってるだろ。あんまイライラさせんな。』
「私だって、ほんとは気短いの。
イライラさせないで。」
『………』
この女、
喧嘩売ってんのか?
:09/05/04 16:10
:N703iD
:id.Osk0g
#444 [七瀬]
「だから、浮気にはならないってば。遊びだもん。」
『いい加減にし…』
「雷は遊びなんでしょ?」
その黒く深い目に
吸い込まれてしまいそう。
「私も、真姫先輩も。」
:09/05/04 16:15
:N703iD
:id.Osk0g
#445 [七瀬]
姫が遊び?
「じゃあ浮気じゃないじゃん。
私も、先輩も遊びなら別にバレたっていつものように捨てちゃえばいいだけなんだから。」
『………』
「謎は解けたかな〜、悪魔さん。」
ニコッと笑い掛ける。
:09/05/04 16:19
:N703iD
:id.Osk0g
#446 [七瀬]
『うん、解けたよ。』
「じゃあ、もうそろそろ…」
『あと一つだけ。』
「もお〜、まだあるの〜?」
『あと一つだけだから。』
黒い瞳が揺れた。
:09/05/04 16:23
:N703iD
:id.Osk0g
#447 [七瀬]
「なに。」
イラついた様子の女。
『ゆかちゃんは浮気になるんじゃないの?』
ジッと見て、
しばらくの沈黙。
『彼氏いんだろ?』
「いるよ。」
:09/05/04 17:02
:N703iD
:id.Osk0g
#448 [七瀬]
そして、また口元に笑みを浮かべる女。
「私は浮気になっちゃうけどね。」
ただ、今回は少し悲しげな笑みだった。
『そう。』
俺の冷たい目は変わらず、健在している。
『プレゼント…ほしいんだろ?』
:09/05/04 17:25
:N703iD
:id.Osk0g
#449 [七瀬]
「うん。ほしい。」
この女の目は冷たいというより、冷めていた。
「早くちょうだい。」
『目、閉じて。』
スッと閉じた目を見ながら、また顔を近付ける。
眠り姫を目覚めさせるようにキスをした。
:09/05/04 17:30
:N703iD
:id.Osk0g
#450 [七瀬]
目を開けると、
そこには、
きっとお姫さまがいて
真っ茶色な瞳
くるくるした茶色い髪
いちごのような唇
そして、意地悪に笑う。
:09/05/04 17:36
:N703iD
:id.Osk0g
#451 [七瀬]
きっと、そう。
目を開けると
真っ黒な瞳
黒いストレートな髪
そして、さっきまで俺のと触れ合っていた唇
:09/05/04 17:39
:N703iD
:id.Osk0g
#452 [七瀬]
一気に現実に引き戻される。
:09/05/05 00:24
:N703iD
:qG..w3f.
#453 [七瀬]
「あ!!」
「なに、どうしたの?」
「ねえちゃん、
外、雨降ってる。」
「雨?…やだ、ほんと。」
ポツリポツリ
「あ〜、
明日は体育、グラウンドなのに…最悪だわ。」
:09/05/05 00:30
:N703iD
:qG..w3f.
#454 [七瀬]
「俺も明日、体育あるし。」
「ほんと、ついてない。」
「10日間ちょっと前から。」
「え?」
「さっきの答え。」
「さっきの…」
「“ねえちゃんが顔に出やすくなったのは”だよ。」
:09/05/05 00:36
:N703iD
:qG..w3f.
#455 [七瀬]
「それって…」
「そうだよ。
ねえちゃんが雷にいちゃんと付き合い始めたとき。」
「………」
「なんか、ねえちゃん、
その時くらいから、
毎日楽しそうに帰って来るようになったんだよなあ」
:09/05/05 00:40
:N703iD
:qG..w3f.
#456 [七瀬]
ポツポツポツ
「…雨、止みそうにないわね。」
「それなのに、
昨日から、ずーっとブスッとしてるから、なにかあったのかな…って。」
「…………」
「で、ねえちゃんをこんな顔にしたのは、一人しかいないっしょ。」
:09/05/05 00:43
:N703iD
:qG..w3f.
#457 [七瀬]
ザーーザーー
「ほんと。雨、止みそうにないな。
しかも、さっきよりひどくなってる。」
「…ほんとね。」
「このままじゃ、家に帰るのも一苦労だな。」
「…そうね。」
:09/05/05 00:47
:N703iD
:qG..w3f.
#458 [七瀬]
「ねえちゃん、知ってた?」
「…なにを?」
「今日さ、
ねえちゃんの学校の近くにあるバカな高校が、
その中でも留年しそうな、とびっきりのバカの強制補修を行ってるんだって。」
「…それ本当?」
「今ごろ、その補修も終わってるかもね。」
:09/05/05 00:54
:N703iD
:qG..w3f.
#459 [七瀬]
「真王。」
「ん?なに、ねえちゃん。」
「ちょっと出かけてくる。」
「どこ行くの?」
「学校に忘れ物しちゃったみたいだから、取りに帰る。とっても大切なものなの。」
:09/05/05 00:59
:N703iD
:qG..w3f.
#460 [七瀬]
「ふ〜ん、
ねえちゃんも大変だね。」
「すぐ帰って来る。
パパたちにも言っといて」
「わかった。」
「じゃあ、よろしくね!!」
「いってらっしゃ〜い。」
:09/05/05 01:07
:N703iD
:qG..w3f.
#461 [七瀬]
「しょうがないなあ。」
遠くで雨の音が聞こえた。
「プレゼントはこれで満足してあげる。」
だんだん大きくなる水の音と
この部屋に寂しく響く声。
:09/05/05 15:18
:N703iD
:qG..w3f.
#462 [七瀬]
『…ありがと。』
寂しく響いたのは、
俺の声の方かもしれない。
「そんな顔されてまで、
欲しいと思わないよ〜!!」
ハハハ〜と、
やけに高い笑い声は、
今の空気には似合わない。
:09/05/05 15:28
:N703iD
:qG..w3f.
#463 [七瀬]
『そんな顔って、どんな顔?』
「もー、また質問?
気の長いゆかちゃんも、もうそろそろイライラしてきたよ〜?」
『…さっきは気短いっつってたじゃん。』
「女は気まぐれなの〜!!」
相変わらず、不釣り合いなほど甲高い声。
:09/05/05 20:43
:N703iD
:qG..w3f.
#464 [七瀬]
「そんなに知りたいなら、鏡を見なさいっ!!」
『鏡なんて持ってねーし、見ても多分わかんない。』
握っていた細い手首を離しベットの横に寝転んだ。
「それもそっか〜!」
しばらくの沈黙が流れる。
:09/05/05 20:47
:N703iD
:qG..w3f.
#465 [七瀬]
高い高い天井を見上げる。
姫の家も、こんなに天井が高かったなあ。
「ね、
きっとこんな顔だよ。」
『こんな顔って?』
上を見上げたまま聞く。
「今の私みたいな顔。」
:09/05/05 20:50
:N703iD
:qG..w3f.
#466 [七瀬]
横を見る。
『ぷっ…』
「なによ。」
『俺、
そんな変な顔してる?』
「変な顔とは失礼な!
女の子なのに〜!!」
そこには、ぽっぺを双方向に引っ張って、ベロを出してる女。
:09/05/05 20:54
:N703iD
:qG..w3f.
#467 [七瀬]
『ごめんごめん。
でも、その顔はヤバいな。そんなひどい顔してたなんて…』
「でしょ?
せっかくの美男子が台無しだよっ!」
『…ん。』
ほんとひどい顔。
『でも、ゆかちゃんには負けるよ。』
:09/05/05 20:58
:N703iD
:qG..w3f.
#468 [七瀬]
「だから、さっきからひどいってば〜!!」
『うん、ごめん。』
「もぉ〜、
雷なんて嫌いっ!」
『…ん。』
こんな顔、初めて。
『ゆかちゃん…』
:09/05/05 21:02
:N703iD
:qG..w3f.
#469 [七瀬]
「ほんっ…と、グズッ‥
だい‥‥きらい…」
そんな顔、初めて見たよ。
そんな、ひどい顔。
:09/05/05 21:07
:N703iD
:qG..w3f.
#470 [七瀬]
ぴちゃぴちゃぴちゃ…
走るたびに
水や泥が足にかかる。
ほんと最悪。
冷たい。
「ハァ、ハァ‥」
なのに、なぜ息を切らしてまで、走ってるのかしら。
:09/05/05 21:13
:N703iD
:qG..w3f.
#471 [七瀬]
私、変ね。
近ごろ変よ、私。
こんな必死になって
バカみたい。
こんな苦しい気持ちになって
いつもの私はどこに行ったのかしら。
:09/05/05 22:27
:N703iD
:qG..w3f.
#472 [七瀬]
「え?もういない?」
「うん。先、帰っててって言ったし、もうとっくに帰ったんじゃねーかな。」
「で、でも強制補習があるんじゃ‥」
「強制補習?なにそれ。」
そうやって、怪訝な顔をしているのは、
確か、雷のお友達の‥
:09/05/05 22:31
:N703iD
:qG..w3f.
#473 [七瀬]
「京介‥くん?だったかしら。」
「ああ、うん。
そうだけど‥‥?」
「それほんとなの?
補習なんてないって。」
「うん。特に聞いてないし確か今日は職員会議があっから、補習なんてしてる暇ないよ。」
:09/05/05 22:35
:N703iD
:qG..w3f.
#474 [七瀬]
真王に一本やられた。
「そう。ありがとう。
じゃあ雷は、もう家に帰ってるのかしら。」
胸を撫で下ろす。
ほんとバカみたい。
たった一人の男のために、こんなにホッとして。
「さあ?
でも俺はてっきり真姫ちゃんと一緒かと思ってたよ」
:09/05/05 22:38
:N703iD
:qG..w3f.
#475 [七瀬]
安心したのも束の間。
「いや〜、雷が校門にいた女の子と走っていくのが、窓から見えてさ。」
誰それ、
私は委員会だったし‥
「で、いつも真姫ちゃんが校門で雷待ってたから、今日もそうなのかなって思っただけだけど‥
俺の勘違いだったんだな」
:09/05/05 22:43
:N703iD
:qG..w3f.
#476 [七瀬]
やだ‥
さっきよりも大きくなって襲いかかってくる不安に、心臓が痛い。
「でもよく考えたら、背丈も全然違ったし、
遠かったから、よく見えなかったけど、
髪の色も違ってたような‥でも制服はハナジョウだったから。」
胸の痛みが和らぐことはない。
:09/05/05 22:48
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:qG..w3f.
#477 [七瀬]
「誰なの、それ‥」
思わず、口に出てしまってた。
すると、雷のお友達は
まずいというような顔をした。
「いや、でもね。
何回も言うけど、遠かったし雷じゃなかったかも…」
私が聞きたいのは、
そういうことじゃない‥
:09/05/05 22:53
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#478 [七瀬]
「ちょ、ちょっと、
ま、まひめちゃん!?」
また雨の中、飛び出した。
:09/05/05 22:55
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#479 [七瀬]
雨がすごい。
ホテルにいても、
ザーザーザーザー聞こえる。
「もうそろそろ出よっか。」
さっきまで、泣いてたゆかちゃんがぽつりと言った。
:09/05/05 23:03
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#480 [七瀬]
「素敵な素敵な誕生日プレゼントも貰ったしね〜」
ゆかちゃん‥ごめんね。
『あ、でも外雨だよ。
傘持ってないし‥‥』
「バカ!男なら濡れて帰りなさいっ!」
ゆかちゃんが
ポンと俺の肩を叩いた。
:09/05/05 23:07
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#481 [七瀬]
「先輩‥待ってるんでしょ」
『‥‥うん。』
そうだ、姫が待ってる。
「てか、女遊びしない雷なんて、やっぱ変だね〜」
『やっぱり違和感ある?』
苦笑いしながら、自分自身感じてたことを、聞いてみる。
:09/05/05 23:12
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#482 [七瀬]
「違和感ありありだよ〜!!」
ポンポンとまた肩を叩く。
『やっぱりそっか。』
「うん。
でも先輩の方が変かも。」
『えっ、姫の方が?』
意外な答えに
つい声が上ずってしまう。
:09/05/05 23:15
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#483 [七瀬]
「なんかね〜、
先輩バカになった。」
『え‥?』
しまった。
まさか
俺のバカが移っちゃった?
「先輩、バカみたいに笑うようになった。」
:09/05/05 23:18
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#484 [七瀬]
『バカみたいに笑う‥?』
って、なにそれ。
「うん。
前は、笑うって言っても、おとなしくってゆーか‥‥なんというか‥無理して笑ってたって感じがした。」
『無理に笑う‥』
あの姫が‥?
想像できない。
:09/05/05 23:22
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#485 [七瀬]
いつも意地悪な顔して
勝ち誇ったような笑顔が頭に染み付いて、離れないのに‥
姫の無理した笑顔なんて、見たくない。
「それなのに、学校でも大声で笑ったり‥心から楽しんでるようになったの。」
ゆかちゃんは続けた。
:09/05/05 23:26
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#486 [七瀬]
「私、一目でわかった。
先輩、恋してるんだって」
その言葉を聞いた瞬間、
心からふつふつとなにかが沸き上がってくるのを感じた。
「とっても、かわいく見えた。恋をしたら、きれいになるっていうけど、あれほんとなんだね。」
姫は初めて見た時から、
きれいな顔立ちをしてたからか、ゆかちゃんに言われるまで気付かなかった。
:09/05/05 23:36
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#487 [七瀬]
「まあ、先輩の相手が、
まーさか雷だったとは、夢にも思わなかったけど。」
『‥ごめんなさい。』
「チャラい雷が‥ってこともあったけど、
先輩が雷を選んだってことの方が信じられない。
未だに。」
『未だにって…そんなに?』
:09/05/05 23:40
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#488 [七瀬]
「うん。い・ま・だ・に!!」
べーと舌を出すゆかちゃんに
『‥なんかショック。』
ショックを隠しきれない。
「でも、わかった。
なんで、雷なのかって。」
『なんで?』
:09/05/05 23:44
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#489 [七瀬]
知りたい
知りたい
知りたい気持ちで
いっぱい。
「それはね‥‥」
ゆかちゃんの口元が
揺れる。
:09/05/05 23:47
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#490 [七瀬]
「きれいになるのは、
女の子だけじゃないのよ」
『え?』
ゆかちゃんの言葉の
意味がよくわからない。
「鈍いなぁ〜。
私、気短いんだから、
あんまりイライラさせないでっ!!」
横でニヤニヤ笑う
ゆかちゃん。
:09/05/05 23:52
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#491 [七瀬]
『あれ?
さっきまで、気が長〜いゆかちゃんじゃなかったっけ。』
ニヤニヤするゆかちゃんにこっちもニヤニヤ仕返す。
すると、案の定
「女は気まぐれなの〜!!」
満面の笑みで答えた。
:09/05/05 23:54
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#492 [七瀬]
『じゃー、気まぐれゆかちゃん、教えて。』
「気まぐれゆかちゃんが、教えてやろうじゃないか」
まったく‥
『お願いします。』
世話が焼ける。
って、
俺に言われたくないか。
:09/05/05 23:57
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#493 [七瀬]
「だから、きれいになったのは真姫先輩だけじゃないの〜!」
『うーん、
もうちょっと詳しく‥‥』
「世話が焼けるなあ。」
さっき思ってたことを
口に出して返される。
「雷もきれいになった。」
:09/05/06 00:00
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#494 [七瀬]
は‥‥?
ますますわかんない。
『ん〜、俺はきれいよりも、かっこいいって言われた方がうれしい‥‥』
「雷は十分かっこいーよ!」
あら、ありがと。
:09/05/06 00:03
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#495 [七瀬]
「でも、そういう外見的にじゃなくて、
なんというか‥こう‥‥
心がきれいになった。」
『こころ?』
「うん。
ほら、今みたいに私に謝ってくれたり。
前までの雷なら、遊びの女に謝るなんて、絶対しなかったじゃん。」
まあ‥確かに。
:09/05/06 00:07
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#496 [七瀬]
「なのに、ただその場しのぎじゃなくて、真剣に向き合ってくれた。」
京介や美里が言いたった
“変わった”はこのことだったのだろうか。
「それだけでも、
だいぶ救われるよ。」
ただ俺は、自分のしてきたことに、けじめをつけるためにしたことなのに。
:09/05/06 00:11
:N703iD
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#497 [七瀬]
そして、
姫のそばにいたいがためにしようとしたことなのに。
「心がきれいになった。」
こんな風に感じてくれた人がいたなんて。
『‥たまには、きれいって言われるのも悪くないな』
なんて、
俺は幸せ者なんだろう。
:09/05/06 00:15
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#498 [七瀬]
「ああ〜、私もきれいって言われたい〜!」
『そういうのは、彼氏に言ってもらえよ。』
「言われなくても、そのつもりだから!!
もう二度と雷みたいな、チャラ男には引っ掛かりません!」
『さすがはハナジョウ!
頭いい!!学習能力がある』
:09/05/06 00:19
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#499 [七瀬]
「雷の学校と一緒にしないでよね〜!」
『あ、俺の高校バカにし過ぎっしょ。
俺だって、勉強は出来ないけど、学習能力はあるし』
「ふ〜ん、じゃ、次は同じ失敗しちゃダメだよ?
悪魔さん。」
その言葉に頷いた。
:09/05/06 00:23
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#500 [七瀬]
「出よっ!」
ホテルを出ても、
やっぱり雨は降ってて、
じめじめしていた。
だけど、
心のモヤモヤはなくなってて、
きっと、今の俺は晴れ。
:09/05/06 00:26
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#501 [七瀬]
「寒‥っ」
容赦ない雨に体が凍える。
雷‥どこにいるの?
あれから、学校を出たのはいいけど、傘を忘れてしまった。
とりに行こうか迷ったけど止めた。
:09/05/06 01:31
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