悪 魔 の 誕 生 日
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#500 [七瀬]
 
 
「出よっ!」



ホテルを出ても、
やっぱり雨は降ってて、
じめじめしていた。



だけど、

心のモヤモヤはなくなってて、


きっと、今の俺は晴れ。
 

⏰:09/05/06 00:26 📱:N703iD 🆔:p8oeFPTc


#501 [七瀬]
 
 
 
「寒‥っ」

容赦ない雨に体が凍える。



雷‥どこにいるの?


あれから、学校を出たのはいいけど、傘を忘れてしまった。

とりに行こうか迷ったけど止めた。

⏰:09/05/06 01:31 📱:N703iD 🆔:p8oeFPTc


#502 [七瀬]
 
私としたことが、
とんだミスをしちゃった。


「はあ‥」

自然に漏れるため息と
雨の冷たさで震える手。


そして、不安。


私らしくない。


“真姫”はもっと強くて、賢くって‥‥

⏰:09/05/06 01:35 📱:N703iD 🆔:p8oeFPTc


#503 [七瀬]
 
 
雷もきっと、
そんな私が好きなの。


“私”じゃなくて“真姫”



でも、私、
雷に出会ってから、


バカで
弱虫な

真姫に
なっちゃったみたい‥

⏰:09/05/06 02:26 📱:N703iD 🆔:p8oeFPTc


#504 [七瀬]
 
 
寒い
冷たい



怖い
苦しい




雷に会いたい‥
 
 
 

⏰:09/05/06 02:28 📱:N703iD 🆔:p8oeFPTc


#505 [七瀬]
 
 
 
そんな中で


ただ耳の全てを支配する




ザーーという音を聞いていた。
 
 
 
 

⏰:09/05/06 02:30 📱:N703iD 🆔:p8oeFPTc


#506 [七瀬]
 
 
 
うーん、
これからどうしようか。


俺はまだ、
ホテルの入り口にいた。


ゆかちゃんは、

「彼氏に誕生日お祝いしてもらうの〜!!」

って雨の中、走っていった。
 

⏰:09/05/06 13:35 📱:N703iD 🆔:p8oeFPTc


#507 [七瀬]
 
 
『うう〜、寒〜』

雨は止む気配すら、
見せない。


姫は、委員会終わって、
ちゃんと帰ったかな。


‥って、
きっと大丈夫だな。

姫のことだから、
事前に傘を持っていっているはず。

⏰:09/05/06 13:39 📱:N703iD 🆔:p8oeFPTc


#508 [七瀬]
 
あの悪魔のことだし、
今ごろ、意地悪な笑みを口に浮かべているはず。


‥なのに、


なぜこんなに
不安なんだろう。

なぜか、
姫が呼んでるような気がした。


バカな俺の勘なんて、
当てにできない。

⏰:09/05/06 13:46 📱:N703iD 🆔:p8oeFPTc


#509 [七瀬]
 
 
だけど、

居ても立ってもいられなくて、


当てにならない勘だけを頼りに、姫の元へと向かった。




足下を雨で濡らしながら。 
 

⏰:09/05/06 13:49 📱:N703iD 🆔:p8oeFPTc


#510 [七瀬]
 
 
やっぱり俺の勘は
当てにならなかった。 


あ〜、どこに行んだよ。


寒さと不安ばかりが増し、雨を含んだ靴が重い。

頭もびしょびしょ。 


今日、風呂入んなくても、いいかも。笑

⏰:09/05/06 13:52 📱:N703iD 🆔:p8oeFPTc


#511 [七瀬]
 
 
『‥っくしょん‥!!』

やっぱ撤回。


こりゃ今すぐ、風呂入んないと。


ほんと、今は4月下旬なのだろうか。


寒い、寒過ぎる。
 

⏰:09/05/06 13:56 📱:N703iD 🆔:p8oeFPTc


#512 [七瀬]
 
 
「‥‥い!らい!!」


『んあ?』

俺を呼ぶ声が聞こえて、
その声を辿っていくと


『京介。』

ばかやろーなダチの姿。


「お前、こんな雨降ってんのに、傘も差さねぇで、バカじゃねーの!?」

⏰:09/05/06 14:00 📱:N703iD 🆔:p8oeFPTc


#513 [七瀬]
 
『‥傘、忘れたんだから、しょーがねぇじゃん。』

またバカ呼ばわりかよ。


「はあ。
お前ら、どいつもこいつも‥」

京介が呆れたようにいう。


ん?

『京介、“どいつもこいつも”って‥』
 

⏰:09/05/06 14:03 📱:N703iD 🆔:p8oeFPTc


#514 [七瀬]
 
「はい、これ。」

そうやって、
手を差し出される。


『これって‥』


まだ、かすかに濡れているもの。


「そ。真姫ちゃんの傘。」


姫の傘。
 

⏰:09/05/06 14:05 📱:N703iD 🆔:p8oeFPTc


#515 [七瀬]
 
 
『なんで、京介が‥』


「真姫ちゃん、ここに来たし。」

京介は、
すぐそこの俺の学校を指さした。


『なんで…』

「お前が、傘ないんじゃないかって、心配してたみたい。」
 

⏰:09/05/06 14:08 📱:N703iD 🆔:p8oeFPTc


#516 [七瀬]
 
胸が熱くなるのを感じた。


「で、お前がハナジョウの子と、どっか行ったって、言ったら、血相変えて雨ん中、傘も差さずに飛び出していった。」

ゆかちゃんだ。


「俺はてっきり、真姫ちゃんだと思ってたから‥すまん‥。」


『いや、さんきゅ。京介』 

⏰:09/05/06 14:35 📱:N703iD 🆔:p8oeFPTc


#517 [七瀬]
 
 
そして、
また雨の中、飛び出す。



さっきよりも、
早く足を動かすと、やっぱり水が掛かって冷たい。


でも、そんなこと気にしている暇はなくって



今はただ、お姫さまを探すだけ。
 

⏰:09/05/06 14:39 📱:N703iD 🆔:p8oeFPTc


#518 [七瀬]
 
「ハァ‥ハァ‥‥」


やっぱ、俺の勘は当てにならない!!

それは、この30分間ほどで十分思ったこと。


姫は未だに見つからない。

でも、まだ京介が預かっててくれた姫の傘があったから、全身びしょびしょということは、免れた。

と、いってもピンクの傘は恥ずかしいけど。

⏰:09/05/06 14:46 📱:N703iD 🆔:p8oeFPTc


#519 [七瀬]
 
 
そうだ!


姫の携帯に‥


って、

俺、ケー番どころか、アドレスも知らない!!

デートの時は、姫がいつも校門に待ってたから‥


ああ〜っ、
俺って、役たたず!!
 

⏰:09/05/06 16:50 📱:N703iD 🆔:p8oeFPTc


#520 [七瀬]
 
 
無駄に光るディスプレイを見ながら、むしゃくしゃする。


しょうがない。


姫の家へ、行くか。




俺は、駅へ向かった。
 
 

⏰:09/05/06 16:52 📱:N703iD 🆔:p8oeFPTc


#521 [七瀬]
 
 
さすがに、
駅の近くまで行くと、
人も多くなる。

駅付近には商店街もあって老若男女で賑わっている。



‥ピンクの傘は恥ずかしい。


そんな羞恥心を持ちながらも、足を休めるこてはできない。
 

⏰:09/05/06 16:56 📱:N703iD 🆔:p8oeFPTc


#522 [七瀬]
 
 
 
が、俺の足は止まってしまった。


それは、痛くなったとか、疲れたとか、

ましてや、他の女に捕まったとかではない。



『‥ひめ!?』


愛しのお姫さまを見つけたから。

⏰:09/05/06 17:01 📱:N703iD 🆔:p8oeFPTc


#523 [七瀬]
 
 
そこには、商店街の隅っこで、雨宿りしている姫が。



『姫‥!』

もう一度、大きく叫ぶと、


「あ‥らい。」

小さく答えた。


『姫、
どこにいたんだよ!?』
 

⏰:09/05/06 17:56 📱:N703iD 🆔:p8oeFPTc


#524 [七瀬]
 
ぎゅっと小さい体を抱き締める。


‥冷たい。

びちゃびちゃに濡れた体は驚くほど、ひんやりしていた。


「雷こそ‥どこにいたのよ」


でも、その冷たさの中に、少し体温が感じられ、安心する。
 

⏰:09/05/06 18:00 📱:N703iD 🆔:p8oeFPTc


#525 [七瀬]
 
 
「ずっと‥探してたのに‥」

『ごめん‥っ、ひめ‥。』



安心したと同時に、


溢れる気持ち。



やっぱり、俺は姫が好き。


遊びなんかじゃなく、
本気で。

⏰:09/05/06 18:03 📱:N703iD 🆔:p8oeFPTc


#526 [七瀬]
 
 
お互い、雨に濡れていて、冷たかった。


でも、その中でも俺の胸が特に、濡れていたのは

「うっ‥うぅ〜‥‥ぐずっ‥」



お姫さまの涙のせい。


でも、その涙は
あったかかった。

⏰:09/05/06 20:49 📱:N703iD 🆔:p8oeFPTc


#527 [七瀬]
 
 
なんか‥


『ひめ‥ごめん‥‥』


俺も泣きそう。

ほんと、かっこわりぃ‥


「ふぇ‥ぐずっ‥‥」

ずっと泣いてる姫。


ゆかちゃん以上だな、これは。

⏰:09/05/07 07:03 📱:N703iD 🆔:ib47kqmk


#528 [七瀬]
 
 
『とりあえず、帰ろう。』


俺は姫を送ることにした。


電車の中、ふらふらな姫を座らせてあげたかったけれど、
びしゃ濡れだし、座るわけにもいかず、結局支えてあげるだけしかできなかった。


『姫‥大丈夫?』

「うん‥」

⏰:09/05/07 07:07 📱:N703iD 🆔:ib47kqmk


#529 [七瀬]
 
そんな、俺たちにやはり周りの目は痛かった。



いつもとは違って
弱気の姫。


それは冷めた体のせいだろうか。

それとも…


昨日の顔が忘れられない。 

⏰:09/05/07 07:12 📱:N703iD 🆔:ib47kqmk


#530 [七瀬]
 
 
 
ピンポーン

この家のインターホンを
実際に押したのは、昨日が初めて。



ガチャ


「あら‥雷くん‥‥」


扉を開けた真姫のお母さんは、目を大きくしていた。 

⏰:09/05/07 22:16 📱:N703iD 🆔:ib47kqmk


#531 [七瀬]
 
『いきなりすみません。』


「いや、いいのよ。
真姫は今、いないみた‥」

そこまで言って、
もう少しドアを開けると、

俺にぐったりと横たわっている真姫が目に入ったようで、


「真姫‥!!」

悲嘆する真姫のお母さん。 

⏰:09/05/07 22:40 📱:N703iD 🆔:ib47kqmk


#532 [七瀬]
 
 
「え‥あ、えと‥‥」

あたふたと混乱する、
真姫ママに、


『お風呂、お願いします』

姫を抱き抱えた。


「は‥はい‥」

混乱しながらも、駆け足でお風呂場に向かっていった。

⏰:09/05/07 22:44 📱:N703iD 🆔:ib47kqmk


#533 [七瀬]
 
 
玄関へ上がると


「大丈‥夫。
一人で歩けるから。」

弱々しく姫が立ち上がった。


『ほんとに大丈夫?
今、お母さんにお風呂沸かしてもらってるから。』


「うん‥大丈夫。
ありがと‥‥」
 

⏰:09/05/07 22:47 📱:N703iD 🆔:ib47kqmk


#534 [七瀬]
 
相も変わらず、弱々しい足取りで階段を上り始める姫を支える。


「ほんと‥ありがとね。」

やけに素直なところが、
余計に弱っているように見えた。


『いいから、早く自分の部屋行って、着替えて‥』


コクリて頷くだけだった。 

⏰:09/05/07 22:50 📱:N703iD 🆔:ib47kqmk


#535 [七瀬]
 
 
ふぅ

俺は姫の部屋の前で、
一息ついた。


今、姫は部屋で、着替えている。


バスタオルも渡したし、
後はお風呂に入って‥


そう思うと、少し安心した。

⏰:09/05/07 22:53 📱:N703iD 🆔:ib47kqmk


#536 [七瀬]
 
 
「らい‥」

カチャっと、ドアが開いて姫が顔を出した。

『お風呂、
もうちょっと待ってな。』

優しく微笑みかけた。


「うん。あのね‥雷。」


「お風呂、沸いたわよー」
 
姫がなにか言いかけた瞬間、下から声がした。

⏰:09/05/08 17:17 📱:N703iD 🆔:6lSCKeqg


#537 [七瀬]
 
 
『早く入っといで。』

「うん‥」


姫は階段を下りていった。





なにを
言いかけてたんだろう‥
 
 
 

⏰:09/05/08 18:56 📱:N703iD 🆔:6lSCKeqg


#538 [七瀬]
 
 
「真姫も、もう上がるだろうし雷くんも入ってって」

真姫ママがニコッと笑った。


『いや‥いいっすよ。』

「入って。」

風呂から、姫が出てきた。


『ひめ‥』

「風邪、引くから。」

⏰:09/05/09 19:36 📱:N703iD 🆔:pseT6E7s


#539 [七瀬]
 
『でも‥』

俺は傘があったから、姫ほど濡れてないし、

いきなり来て、迷惑だろうし、


『やっぱり‥』

「早く、入って。」

茶色い瞳に捕らえられる。


「上がったら‥話あるから」 

⏰:09/05/09 19:39 📱:N703iD 🆔:pseT6E7s


#540 [七瀬]
 
 
ドクン


心臓の音が聞こえた。




『‥‥わかった。』


風呂場へと、体を向けた。 
 

⏰:09/05/09 19:41 📱:N703iD 🆔:pseT6E7s


#541 [七瀬]
 
 
この、無駄にデカい風呂に入るのも二回目だなあ。


今はいらないけど、
歯ブラシの置き場所もわかるし、

もうシャンプーとリンスを間違えることもない。



冷えた体にシャワーを当てる。

温かい。

⏰:09/05/09 22:15 📱:N703iD 🆔:pseT6E7s


#542 [七瀬]
 
 
‥なんだろう、話って。


水の流れる音が耳に入る。


俺の小さなため息は、
その音にかき消された。



シャワーは、体を温めてはくれたけど、

前みたいに疲れを流してはくれなかった。
 

⏰:09/05/09 22:31 📱:N703iD 🆔:pseT6E7s


#543 [七瀬]
 
 
風呂から出ると、
湯気の立ったマグカップが2つ、テーブルに。


「体、冷えたでしょ?」

そして、一昨日豪華なディナーが並んだそのテーブルのイスには、真姫が一人。


『ありがとう。
あれ、お母さんは?』

ふと、その広いリビングを見渡すと俺ら以外だれもいない。

⏰:09/05/09 22:37 📱:N703iD 🆔:pseT6E7s


#544 [七瀬]
 
 
「ママなら、寝室でテレビ見てる。」

なんだかんだ言っても、
姫の家族は気を遣ってくれる。

あのシスコン野郎も前に、気遣ってくれたし‥


「あ、ちなみに真王は部屋で勉強してる。」

‥ほらな。
 

⏰:09/05/09 22:45 📱:N703iD 🆔:pseT6E7s


#545 [七瀬]
 
だてに、常識外れなセレブじゃなくて、

だてに、子供に関心がないわけではない


って、やっと気付いた。


周りから、見たら冷たいとか、ほったらかしとかいう風に見えるんだろう。

事実、俺も最初はそう思ってた。

なんて、
いい加減な親なんだって。

⏰:09/05/09 22:50 📱:N703iD 🆔:pseT6E7s


#546 [七瀬]
 
 
だけど、そうじゃなくて


これがこの家の、愛し方なんだって思ったんだ。



顔が全然似てなくたって、姫と姫のお母さんもお父さんも弟も


みんなみんな家族なんだって、やっと気付いたよ。
 

⏰:09/05/09 22:53 📱:N703iD 🆔:pseT6E7s


#547 [七瀬]
 
 
『‥俺、ダメだな。
姫のこと、全然分かってなかったよ。』

自分が憎い。


マグカップへ向かいかけてた姫の手が止まる。

俺の顔は下へ。

だけど、見てなくても
姫がこっちを見てるんだってオーラが伝わってきた。


「そうね。」

⏰:09/05/09 22:57 📱:N703iD 🆔:pseT6E7s


#548 [七瀬]
 
 
ポツリと広いリビングに響いた。



「雷は私のこと、全然理解してない。」


俺は顔を上げることが
出来ない。



「わたし‥“真姫”のことを分かってない。」
 

⏰:09/05/09 22:59 📱:N703iD 🆔:pseT6E7s


#549 [七瀬]
 
“真姫”のことを分かってない‥

頭の中で、何回も何回も、鳴り響いた。


「らい‥顔上げて。」


それでも、まだ見れない。姫を見れない。


「おねがい‥おねがいだから‥」

悲しそうな声。

⏰:09/05/09 23:21 📱:N703iD 🆔:pseT6E7s


#550 [七瀬]
 
「やっと上げてくれたね。」

姫のそんな声を聞きたくない。

その一心で顔を上げて、
また後悔する。


だって‥そんな顔するから。

それは、怒っているわけでもなく、悲しんでいるわけでもない。

昨日と同じ。

声と恐ろしく反対な表情。

⏰:09/05/09 23:25 📱:N703iD 🆔:pseT6E7s


#551 [七瀬]
 
 
“無表情”

まさしくそれ。


『ひめ?』

なにを考えているのか‥


まったく読めない。


心のブロックがあって、
入ろうとするのを邪魔する。

⏰:09/05/10 00:41 📱:N703iD 🆔:fjEZONms


#552 [七瀬]
 
「雷は、なにも分かってない。」

頭痛くなってきた。


「でもね。」

声が柔らかくなった。


「それは、雷が悪いんじゃないの。私なの。姫が全部悪いんだよ。」

今度は、姫が顔を下げた。

⏰:09/05/10 00:44 📱:N703iD 🆔:fjEZONms


#553 [七瀬]
 
「私ね‥ほんとはこんなんじゃないの。」

下を向いたまま、話す姫。


「いつも雷に意地悪してるけど、ほんとは違うの。」

声が震えていた。


「昨日だって、雷がゆかちゃんのところへ行っちゃうんじゃないかって怖かった。それは今も同じ。」
 

⏰:09/05/10 00:49 📱:N703iD 🆔:fjEZONms


#554 [七瀬]
 
不安なの‥だろうか。

『‥そんな顔だったから気付かなかった。』

「姫‥不安になると無表情になっちゃうから。」

ハハっと笑った。


『そう‥なんだ。』

ああ、
やっぱ、なんも分かってない。
 

⏰:09/05/10 00:53 📱:N703iD 🆔:fjEZONms


#555 [七瀬]
 
「だから‥っ!!」

姫が意を決したように、
顔を上げた。


「私は、ほんとのほんとの“真姫”は、バカで泣き虫で弱虫なの‥‥っっ!」


『そっ‥そう。』

すごい勢いで言うもんだから、びっくりした。

姫はイスから立ち上がって手は机についていた。

⏰:09/05/10 00:57 📱:N703iD 🆔:fjEZONms


#556 [七瀬]
 
『ちょ‥落ち着いて!』

「ああ、ごめん‥
ちょっと興奮しすぎた‥」

ふぅーと一息つくと、
またイスに座った。


自分も落ち着こうと、
マグカップへ、口を運ぶと甘さが広がった。


「でね、だから‥
私、不安なの。とっても」

茶色い瞳に自分の姿が映る。

⏰:09/05/10 14:09 📱:N703iD 🆔:fjEZONms


#557 [七瀬]
 
やはり、
不安だったようだ。


『気付いてあげられなくてごめん。』

瞳に映った自分自身を見ながら、言った。


『でも、今日終わらせた。ゆかちゃんとも、昔の俺とも。』


その中の俺が、ぼやけて見えてきたのは、さっきのあったかい涙のせい。

⏰:09/05/10 16:30 📱:N703iD 🆔:fjEZONms


#558 [七瀬]
 
 
『だから安心して。』

そう笑った。


「‥…ありがと‥う‥」

瞳は、ますます潤んで、 とうとう俺は完全に映らなくなってしまった。


不謹慎かも、しれないけど、
真っ白な雪のような頬に伝うひとすじの涙は、この世のものとは思えないほど、きれいだった。

⏰:09/05/10 19:56 📱:N703iD 🆔:fjEZONms


#559 [七瀬]
 
美里

ゆかちゃん

姫‥


“女の子は恋をすると、
きれいになる”

それはきっと、おとぎ話でも、童話でもない。

まぎれもない真実なんだ。


そして、俺も‥ね。
 

⏰:09/05/10 19:59 📱:N703iD 🆔:fjEZONms


#560 [七瀬]
 
 
姫も俺も、きっと同じだったんだ。


バカで
不安で不安定。

泣き虫で弱虫。



同じくらい成長もした。


人を好きになった。

本気で笑えた。

⏰:09/05/10 20:04 📱:N703iD 🆔:fjEZONms


#561 [七瀬]
 
 
 
「らい‥好き。」

そういうことに、気付いた時、

俺は改めてお姫さまに目覚めのキスをもらえるんだ。


でも、まだ夢は覚めない。


『ひめ‥俺も好き。』


これからが、ほんとの甘い悪夢の始まりだから。

⏰:09/05/10 20:08 📱:N703iD 🆔:fjEZONms


#562 [七瀬]
 
 
テーブル越しに触れ合ってた唇同士が離れる。


目と目が合う。

瞳には、俺がはっきりと映っている。



「‥足りない?」



ん‥?

もしや‥悪魔復活?

⏰:09/05/10 20:12 📱:N703iD 🆔:fjEZONms


#563 [七瀬]
 
以前と変わらない意地悪な笑みに、ふと疑問が浮かぶ。


けれど、


『‥‥足りない。』

以前と変わらないバカな俺がいることも事実。


「姫も‥足ーりない。」

そうクスクス笑う姫を見る限りではやっぱ悪魔復活?

⏰:09/05/10 20:17 📱:N703iD 🆔:fjEZONms


#564 [七瀬]
 
さっきの姫はどこへやら‥


でも、そんなことよりも、まだ姫と触れ合ってたい。


そんな欲望が勝っていた。



『じゃあ、
もっかい、ちゅーしよ?』

仕方なく俺からおねだり。


すると、満足そうに微笑む。

⏰:09/05/10 20:22 📱:N703iD 🆔:fjEZONms


#565 [七瀬]
 
「じゃあ、ごほーびね。」


そうやって、また唇を近付ける。


悔しいけど、嬉しい俺ってやっぱ‥M?


なんて思っていると、


「やっぱ‥ちゃんと話してから。」

ひょいと顔を逸らされた。

⏰:09/05/10 20:25 📱:N703iD 🆔:fjEZONms


#566 [七瀬]
 
 
お知らせがあるので、
感想板を見てくださいっ!!(o‘∀‘o)

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4276/
 
お願いしますm(__)m

⏰:09/05/10 21:23 📱:N703iD 🆔:fjEZONms


#567 [柚ちあ´ω`]
ぁげ☆

⏰:09/05/18 20:17 📱:913SH 🆔:yMhd95UY


#568 [七瀬]
柚ちあさん

あげありがとです(^^)!
 

⏰:09/05/19 22:01 📱:N703iD 🆔:VkWa23k.


#569 [七瀬]
みなさんお久しぶりです!!七瀬です(^^)

実は豚インのせいで学校が、日曜までお休みになってしまいました。

今週の木曜からテスト期間が始まる予定だったのですが…
試験も延期です(◎-◎;)

というわけで、少しずつですが、また更新を再開したいと思います。

※試験が延期された分、また更新ストップも延期するかもしれませんが、ご了承下さい。

⏰:09/05/19 22:11 📱:N703iD 🆔:VkWa23k.


#570 [七瀬]
 
 
 
「ふ〜ん」

‥どうしよう。


「へぇ〜」

‥めちゃめちゃ怒ってますよね?


「ゆかちゃんと、ホテルに行ったんだぁ〜」

‥‥やっぱり。
 

⏰:09/05/19 22:30 📱:N703iD 🆔:VkWa23k.


#571 [七瀬]
 
 
『いや‥でも‥‥でもね!行っただけで‥』

「部屋に入ったんでしょ?」


入りました。

「で、キスもした‥」


‥しました。
 
 
やばい‥
完全キレてるよ、姫。
 

⏰:09/05/19 22:33 📱:N703iD 🆔:VkWa23k.


#572 [七瀬]
 
 
「雷のばか」

フイとそっぽを向く姫。


『え〜‥あ、あの〜‥』

「なに」

俺の方をちっとも見ない。


『その‥ぜんぶ話し終えたけど‥‥』


「だからなに!」 
 

⏰:09/05/19 22:38 📱:N703iD 🆔:VkWa23k.


#573 [七瀬]
 
 
『‥ご褒美は‥‥』

「もう、そんなのないに決まってんじゃんっっ!」


‥ですよね。



はぁ‥

どうしよ。


イスにもたれた。
 

⏰:09/05/19 22:41 📱:N703iD 🆔:VkWa23k.


#574 [七瀬]
 
相も変わらず、
ぶすっとしたままの姫。

そんな顔してたら、
せっかくのかわいい顔が台無しだ。


…そんな顔させたのは、
俺だけど。



『‥姫、ごめん…』
 
 

⏰:09/05/19 22:44 📱:N703iD 🆔:VkWa23k.


#575 [七瀬]
 
正直に謝るしか、
姫に許してもらうすべが分からない。


「まあ‥いいけど。」

『‥ほんとに?』


「今回だけね。」

『‥うん。』


「次はもうしないでよ?」

『‥うんうん。』

⏰:09/05/19 22:47 📱:N703iD 🆔:VkWa23k.


#576 [七瀬]
 
「しょうがないなぁ。」

もう頷くしか出来ない。


何度も何度も首を縦に振った。



「じゃあ、はい。
仲直りの‥」

『‥キス?』


「…んなわけないでしょ」
 

⏰:09/05/19 22:51 📱:N703iD 🆔:VkWa23k.


#577 [七瀬]
 
『……ごめんなさい。』


そう少しうつむくと、


スッと白い手首が伸びてきた。


『…?』

「手。」


『え?』

「手。出して。」

⏰:09/05/19 22:54 📱:N703iD 🆔:VkWa23k.


#578 [七瀬]
 
ああ、なんだ。
そういうことか。

『仲直りのあくしゅ‥』


そうやって、
俺も手を出した。


その時だった。



ぎゅっ


「‥仲直りのハグね。」
 

⏰:09/05/19 22:57 📱:N703iD 🆔:VkWa23k.


#579 [七瀬]
 
その一言で、
俺はやっと、“仲直り”の意味を知った。


「あと、ご褒美も含めて。」


机越しに抱き合うと、
なんかぎこちない。


『‥最高のご褒美だ。』


だけど、今はそのぎこちなさが大切に思えた。

⏰:09/05/19 23:01 📱:N703iD 🆔:VkWa23k.


#580 [七瀬]
 
 
「でしょ?お馬さんには、もったいないかな。」

『ひどい、姫‥』


「これは、お仕置きね。」

そうやって、

クスクス笑うたびに漏れる息が、


首筋に当たって、くすぐったかった。
 

⏰:09/05/19 23:05 📱:N703iD 🆔:VkWa23k.


#581 [豪希]
ヤバい!!
おもしろすぎやしませんか?

⏰:09/05/20 01:31 📱:831P 🆔:BsbwZbbI


#582 [七瀬]
豪希さん

ヤバい!!!

その言葉、
うれしすぎやしませんか?^ー^)人(^ー^
 

⏰:09/05/20 19:00 📱:N703iD 🆔:TaVmUvNI


#583 [七瀬]
「ね、お二人さん。
いつまでそうしてるの?」


バッ

とっさに離れた。


「ちょっと真王、のぞきなんて、悪趣味ね。」

 

⏰:09/05/20 19:21 📱:N703iD 🆔:TaVmUvNI


#584 [七瀬]
「…いやいや、見たくて見たわけじゃないし。
そもそも迷惑だし。」

言ってること、正しいよ。真王くん。


「そういうことは、ホテルでやってくれ。頼むから」

そういうと、真王くんは冷蔵庫を開けた。


「おかげで、ここにも来づらい来づらい。」

⏰:09/05/20 19:23 📱:N703iD 🆔:TaVmUvNI


#585 [七瀬]
 
真王くんの注ぐジュースがとても色鮮やかだ。


「だって、雷。」

『え?』


「だから、真王はこう言ってるけど。」

『う、うん?』

よく意味が分からないまま頷いた。 
 

⏰:09/05/20 19:25 📱:N703iD 🆔:TaVmUvNI


#586 [七瀬]
 
「分かった?」

『うん。』


‥嘘。
分かんない。

「そっかぁ。じゃあ約束ね」


んん?

にっこり笑う姫に、疑問は増えてゆくばかり。
 

⏰:09/05/20 19:27 📱:N703iD 🆔:TaVmUvNI


#587 [七瀬]
 
「よかったよかった。」

でも、うれしそうな姫の姿に、“分かんない”なんて言えない。


『真王くん、これは‥』

仕方なく、弟にヘルプを求めた。


すると、例の弟くんは、

「ガンバレ」

姫と同じ顔して一言。
 

⏰:09/05/20 19:43 📱:N703iD 🆔:TaVmUvNI


#588 [七瀬]
 
 
ますます意味不明。



まあ‥なんとかなるだろう。


ただ、
安易にそう考えていた。



姫の笑顔の理由も、

弟の「ガンバレ」の意味にも気付かずに。
 

⏰:09/05/20 21:37 📱:N703iD 🆔:TaVmUvNI


#589 [七瀬]
 
 
「ら〜い〜」

今日も、姫の家で勉強している。


……が。

『はいはい。』

最近、やけに姫が甘えてくる。


『ここ教えて?』

今もぎゅーってしてくる。 

⏰:09/05/20 21:39 📱:N703iD 🆔:TaVmUvNI


#590 [七瀬]
 
これじゃ勉強にならない。


いや、俺はぜんぜん困らないよ?


むしろラッキーって感じ。

勉強はしなくていいし、
姫のかわいい姿を見れる。


だけど改めてこう甘えられると‥照れるんだよなぁ。


それに恥ずかしい。
 

⏰:09/05/20 21:41 📱:N703iD 🆔:TaVmUvNI


#591 [七瀬]
 
 
「もうっっ!」

俺から、離れる姫。


なにをそんなに、怒ってるんだ‥?


「ここは、こうして‥」

怒りながらも、
丁寧に教えてくれた。


だから、やっぱりまだ簡単に考えてた。
 

⏰:09/05/20 21:45 📱:N703iD 🆔:TaVmUvNI


#592 [七瀬]
 
 
『ひめ?ひーめっ!!
姫ってば〜、真姫ちゃん?』


今日は日曜日。

姫と家でのーんびり過ごす楽しい楽しい一日‥

のはずが…


「…………」


あれ?無視?
 

⏰:09/05/20 21:53 📱:N703iD 🆔:TaVmUvNI


#593 [七瀬]
 
『おーい、ひめ〜』

「…………」


また無視。

なんか機嫌悪いよな、姫。


最近、まったく甘えてくんないし。



‥寂しいじゃん。
 
 

⏰:09/05/20 21:55 📱:N703iD 🆔:TaVmUvNI


#594 [七瀬]
 
もう、知らない。


また沈黙が流れだす。


あつーい。
喉乾いたー。
アイス食べたーい。

気が付けば、
もう6月の下旬。


さすがにまだ蝉は鳴いてないけど、汗は滝に近いくらい溢れる。
 

⏰:09/05/20 21:59 📱:N703iD 🆔:TaVmUvNI


#595 [七瀬]
 
「雷。」

そんな、じめじめ暑い中、姫が口を開く。


『ん?』

なんか、姫の声聞くの久々かも。

軽くテンション上がりながらも、返ってきたのは意外な言葉だった。



「約束‥いつ守ってくれるの?」

⏰:09/05/20 22:03 📱:N703iD 🆔:TaVmUvNI


#596 [七瀬]
 
 
『‥約束‥?』


ってなんだ?

俺、なんか姫と約束してたっけ。


小さい小さい脳ミソを、
最大限に奮う。


『‥約束‥約束‥‥』
 
 

⏰:09/05/22 20:51 📱:N703iD 🆔:AuTS5hpo


#597 [七瀬]
 
 
‥ダメだ。

まったくわからない。


「もしかして、忘れちゃった?」


うっ…

頼むから、そんな目で見ないで。

そんな潤んだ目で見られたら、なにも言えなくなる。 

⏰:09/05/22 20:53 📱:N703iD 🆔:AuTS5hpo


#598 [七瀬]
 
最近、姫はよりいっそう、ズル賢さを増した。

前みたいに、強引だったり、命令するんじゃなくて


今みたいに、男心をくすぐるような、

支配するような。

そんな感じで、俺を言いなりにさせる。


これも、半ば命令みたいなもんだと思うけど。
 

⏰:09/05/22 20:56 📱:N703iD 🆔:AuTS5hpo


#599 [七瀬]
 
 
『‥ごめん。いっぱい考えたけど、わかんない。』


「もぉー、ほんとにわからないの!?」

またプリプリしだす姫。


『ごめ‥』

「雷の好きなこと」


『え?』
 

⏰:09/05/22 21:25 📱:N703iD 🆔:AuTS5hpo


#600 [七瀬]
 
「2つ目のヒントね。」

『だから、さっきから言ってること、わからな‥』


「ここじゃ出来ないこと。真王が嫌がるからね。」

『‥‥‥』



それって‥


『それって‥まさか‥』
 

⏰:09/05/22 21:26 📱:N703iD 🆔:AuTS5hpo


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