悪 魔 の 誕 生 日
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#51 [七瀬]
 
 
「あー、美味しかったあ」

クシャッと丸めてクレープの巻紙をゴミ箱に捨てた
彼女の顔は満足感で溢れていた。


『よし、
じゃあもう帰るか。』

そうベンチから立ち上がった。


「え…、もう…?」
 

⏰:09/04/12 23:37 📱:N703iD 🆔:uqDmmwIM


#52 [七瀬]
 
『“もう”って、
そろそろ日も沈むし…』

そう言いながら
彼女を見た。


「まだ…帰りたくない。」

『帰りたくない
って言われても……』



「私ね、遊園地に来たの、初めてなの。」

あの悲しそうな笑顔。

⏰:09/04/12 23:41 📱:N703iD 🆔:uqDmmwIM


#53 [七瀬]
 
 
「産まれた時から、
心臓が弱くって…
遊園地になんて、ろくに連れてってもらえなかった。

私が20歳まで生きられないのも、この心臓のせい。

だから死ぬ前に一度、
最初で最後の遊園地に来たかったの…」


ちょっと待って!

心臓弱いのに、あんなに走れるもんなのか!?

⏰:09/04/12 23:46 📱:N703iD 🆔:uqDmmwIM


#54 [七瀬]
 
「お願い…
もう少しだけ…」

そうは思ってもあの笑顔でお願いされちゃあなぁ。


『…分かった。
もう少しだけだぞ?』


「ありがとう!」

パアッと明るい笑顔に。


「で、ねぇ。次はこれに乗りたいんだあ!」

⏰:09/04/12 23:49 📱:N703iD 🆔:uqDmmwIM


#55 [七瀬]
 
 
 
そう指さす先には









ジェットコースター?
 
 
 

⏰:09/04/12 23:51 📱:N703iD 🆔:uqDmmwIM


#56 [七瀬]
 
「行くよっ!」

また引っ張られ走りだした。


『ちょ、ちょっと…』

これはさすがに
ダメでしょ!

心臓弱いのに
ジェットコースターって…

俺、なにがあっても
責任持てないよ?
 

⏰:09/04/12 23:53 📱:N703iD 🆔:uqDmmwIM


#57 [七瀬]
 
『待って!
待ってってば…』

そんな声も虚しく、
もう列に並んでいて、

夕方になって人が少なくなったからか、
列に並んですぐにジェットコースターに乗っていた。



しかも最前列。
 
 

⏰:09/04/12 23:57 📱:N703iD 🆔:uqDmmwIM


#58 [七瀬]
 
俺は、この時から…
と言うより、もっと前から

“20歳まで生きられない”

というのは嘘なんじゃないかと思っていた。


だって普通に考えたら、
そうなるだろ!?


あんなに走れて
しかもジェットコースターに乗るなんて…

心臓弱いのに、
あり得ないに決まってる。

⏰:09/04/13 00:01 📱:N703iD 🆔:6qm6G8Qs


#59 [七瀬]
 
いくらバカ高に通う俺だからって
それくらいは分かる。


なのに彼女のいいなりになってしまってる俺は





やっぱり
世界一バカなのかもしれない。
 
 

⏰:09/04/13 00:04 📱:N703iD 🆔:6qm6G8Qs


#60 [七瀬]
 
 
「キヤアァアアアーー!!」

隣のこの女…
すごい声だしやがった。

だから、もしかしたら心臓止まったんじゃねぇか
って思って見たら


ただ騒いでただけだった。


そんなこんなで
ジェットコースターが終わった後には
俺の方が心臓停止の状態だった。

⏰:09/04/13 00:39 📱:N703iD 🆔:6qm6G8Qs


#61 [七瀬]
 
 
「お疲れさまでしたー」

スタッフのこの一声に

“ほんと疲れたよ”

って言ってやりたかった。


『もう満足か?』

そうやってジェットコースターを降りた外人女の肩に手を置いた瞬間

「ハァ…ハア」

いきなり、しゃがみ込む。

⏰:09/04/13 00:46 📱:N703iD 🆔:6qm6G8Qs


#62 [七瀬]
 
『どうしたんだよ?』

「ハアハァ…大丈…夫。」

苦しそうに顔を歪ませるのを見て、俺はやっと事態の重大さに気付いた。

『大丈夫か!?』


「た……だのほっ…さ」

“発作”?


その間にも、
肩で大きく息を弾ませている。

⏰:09/04/13 06:48 📱:N703iD 🆔:6qm6G8Qs


#63 [七瀬]
 
 
ど…どどど、
どーすればいいんだ!?

正直、かなり混乱した。

だって、こんなことに
出くわしたのは人生初めてだし!

なかなか出くわさないでしょ。


ええ、えーと…
落ち着け、自分…

とりあえず、
自分に言い聞かせた。

⏰:09/04/13 06:52 📱:N703iD 🆔:6qm6G8Qs


#64 [七瀬]
 
『お、俺は
なにをしたらいいんだ?』


こういうことは、
本人に聞かなきゃわからない。


「カ…バン。カバ…ン
ハァハ…ァ」

段々、彼女の口から単語しか出てこなくなるのが
俺を余計に焦らせた。


カバン?
 

⏰:09/04/13 06:57 📱:N703iD 🆔:6qm6G8Qs


#65 [七瀬]
俺は、素早く
ジェットコースターの荷物置場にある彼女のカバンに手を伸ばした。


「あ…りがと。」

そうやって
白い粒、…多分錠剤みたいなものを口に運んだ。


「お客様、
大丈夫でしょうか!?」


それから、5分くらい
ジェットコースターの前にいた。

⏰:09/04/13 07:02 📱:N703iD 🆔:6qm6G8Qs


#66 [七瀬]
 
「フゥ…もう大丈夫。
行こっか。」

とりあえず歩けるみたいだし、さっきのベンチに戻った。


『やっぱり、もう帰ろう』

俺は、
彼女を見ずに言った。

責任は取れない。

これ以上、こいつの“ボーイフレンド”でいるのも
嫌だ。

⏰:09/04/13 07:06 📱:N703iD 🆔:6qm6G8Qs


#67 [七瀬]
 
「分かった。」

やけに素直だな。

「じゃあ最後に一つだけ。一つだけお願いがあるの」

はあ…
また“お願い”かよ。


『もうダメだ。
もうほんとに…』

彼女がジッと俺を見た。

今度は強引に引っ張るわけでもなく、俺の裾を掴むだけ。

⏰:09/04/13 07:10 📱:N703iD 🆔:6qm6G8Qs


#68 [七瀬]
 
 
「お願いよ…」


『…ほんとに最後だぞ。』


これに弱いんだよなあ、
俺は。

結局、こいつのいいなりじゃんかよ。


「ごめんね。」

だから
そんな風に改まれると
逆に手放せなくなるんだよ

⏰:09/04/13 07:14 📱:N703iD 🆔:6qm6G8Qs


#69 [七瀬]
 
 
俺たちは
彼女が希望したデートの最後を締めくくる定番らしい観覧車に乗った。


「……」

なにも話さず、外を見ている。


俺も“キレイだね”とか
“今日は楽しかった?”
とも聞かない。
 

⏰:09/04/13 07:18 📱:N703iD 🆔:6qm6G8Qs


#70 [七瀬]
 
 
「ねえ、今日はほんとにありがとう。」

彼女のこの一言で
もう最後なんだなって実感した。

この女に振り回されることもなく、
嘘か本当かも分からない
彼女の“発作”というなにパニくる必要もない。


なのに、
なぜか物足りない。

精々するはずなのに。

⏰:09/04/13 07:33 📱:N703iD 🆔:6qm6G8Qs


#71 [七瀬]
 
彼女の名前が知りたい。


そう思った。


一回デートしただけの女なのに。

一回寝た女の名前、誕生日はどうでもいいのに。


やっぱ俺、なんか変。

京介が見たら笑うだろうな。

⏰:09/04/13 07:37 📱:N703iD 🆔:6qm6G8Qs


#72 [七瀬]
 
 
「ねえ、あなた名前なんていうの?」

俺と同じこと考えてたんだ。


『君は?
なんてゆーの??』


「真実のお姫さま。」

ニコッと笑う。
 
 

⏰:09/04/13 18:35 📱:N703iD 🆔:6qm6G8Qs


#73 [七瀬]
 
真実のお姫さま……?


なにそれ。

ふざけてんのか?

外人女を見ると、
見下すように俺を見て笑っている。


…ふざけてんだな、
こんにゃろう。
 

⏰:09/04/13 18:38 📱:N703iD 🆔:6qm6G8Qs


#74 [七瀬]
 
 
『じゃー俺は悪魔くんだ』


「フフッ、なにそれ。」

おかしそうに笑う。





「マヒメ。」
 
 
マヒメ…?
 

⏰:09/04/13 18:54 📱:N703iD 🆔:6qm6G8Qs


#75 [七瀬]
 
 
「真実のお姫さまと書いて“真姫”」


『ま…ひめ。』

「あなたは?」


『俺は…』

呆然としてしまったのは


あまりにも彼女に
ぴったりな名前だと思ったから。

⏰:09/04/13 19:08 📱:N703iD 🆔:6qm6G8Qs


#76 [七瀬]
 
「私も言ったんだし…ね。あーくまくん?」


ニヤリと笑うお姫さま。


『雷だよ、雷。』

「雷。」


『いきなり呼び捨てかよ。年下のくせに。』

「年下?
なんで年下だって分かるのよ。
なにも言ってないのに。」

⏰:09/04/13 19:11 📱:N703iD 🆔:6qm6G8Qs


#77 [七瀬]
 
『えーと…』

第一印象ガキだからです。

とはさすがに…ねぇ。


今もガキだけど。


「平成4年生まれ。」

『ってことは…』


ええーぇっ!?
俺と同い年じゃん!!
 

⏰:09/04/14 07:03 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#78 [七瀬]
 
「そ。あなたと同じ17歳。」


嘘…だろ?

ぜってー嘘だ。


“心臓が弱い”という以上に信じらんない。


…が俺はここで一つ気付いた。

『それより、そっちこそ
なんで分かったんだよ。
俺が17歳だって。』

⏰:09/04/14 07:07 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#79 [七瀬]
 
「簡単なことよ。」

俺の胸元を指さした。


「このピンバッジ。
青でしょう?
あそこの高校は1年生は赤、2年生は青、3年生は緑のピンバッジをする。
じゃあ青のあなたは2年生でしょ。」


あ…なるほど。
 
と一人合点したと同時に
思う。

⏰:09/04/14 07:12 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#80 [七瀬]
 
 
この女…


あなどれない。


初めて会った時から
感じていたことだが、
ピンバッジのことを指摘され、改めて思った。


「雷、自分のことを
“悪魔”と言ったわね。
なぜ?」
 

⏰:09/04/14 18:33 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#81 [七瀬]
 
『分かんね。
周りが勝手にそう呼ぶだけ。

ただ、これだけは分かる』


「なになに?」

身を乗り出す彼女。


『“悪魔”ってゆーのは
毎日が誕生日なんだぜ。』

ニヤッと笑って言った。

⏰:09/04/14 18:37 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#82 [七瀬]
 
きょとんとする彼女。


「そう。
それは面白いわね。」

…が、すぐに
俺に負けないくらいの
意地悪な笑みを浮かべた。


「じゃあ今度、
誕生日プレゼントを持って来なきゃ。」
 
 
挑むような挑発的な態度は俺のハートに火を付けた。

⏰:09/04/14 18:42 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#83 [七瀬]
 
…っても
悪魔にハートもくそもねぇか。

『じゃあ俺も、
お姫さまに、お返しに
誕生日プレゼントを渡さなくっちゃな。』

目をジッと見て言った。


「それは、ありがたいことだわ。

けど残念ね。
私は悪魔さんとは違って、誕生日は年に一回しかないの。」

⏰:09/04/14 18:46 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#84 [七瀬]
 
そうやって肩をくすめる。


『そうだな。
じゃあ、姫の誕生日に渡すとするか。

いつなんだよ、誕生日。』


「さあ、いつでしょう。」

わざとらしい目付き。


『教えてくれよ。
でなきゃ、プレゼントをいつ渡せばいいのか分からない。』

⏰:09/04/14 18:50 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#85 [七瀬]
 
 訂正

そうやって肩をくすめる×

そうやって肩をすくめる〇 

⏰:09/04/14 18:52 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#86 [七瀬]
 
「あら、悪魔なのに分からないの?」


ジラすなあ。
もどかしくて仕方ない。

そんな俺の様子を
この女は楽しんでるみたいだ。


『悪魔だって、分からないことの1つや2つあるだろ。


頼むよ、姫。』
 

⏰:09/04/14 18:56 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#87 [七瀬]
 
「しょうがないわね。」

手を合わしてる俺は
顔を上げた。



「2月24日。」


『うっそ!
俺と同じじゃん!!』

って、いつもみたいに
決まり文句を言った…


はずだった。

⏰:09/04/14 18:59 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#88 [七瀬]
 
 
ただ


“いつも”と違ったのは



俺の反応。


目は見開き、
口は開いたまま、
すっとんきょうな声…
 
 
 
いつものわざとらしい
演技は微塵も無かった。

⏰:09/04/14 19:03 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#89 [七瀬]
 
 
「あら、本当?
悪魔と同じ誕生日だなんてなんだか気が引けるわ。」

そうやって、
窓の外を見た彼女。


日はとっくに沈んでいて
キラキラとイルミネーションが美しかった。


『……』

俺はなにも言えないでいる。

⏰:09/04/14 19:06 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#90 [七瀬]
 
 
時折、少しウェーブがかかった長くて細い髪を掻き分ける彼女の姿が

観覧車越しに見える町並みより、美しかったのは
確か。



いつのまにか
観覧車は天辺まで来ていた。
 
 

⏰:09/04/14 19:10 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#91 [七瀬]
 
 
が、今俺の頭にあるのは







本当の本当に


“真姫と同じ誕生日”

だということだけ。
 
 
 

⏰:09/04/14 19:12 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#92 [七瀬]
 
 
 
ガチャ

「ありがとうございました」


観覧車は一回転して、
また戻って来た。


俺は、まだ誕生日のことをぼんやり考えていた。


降りようとした時、
また彼女が俺の裾を掴む。 

⏰:09/04/14 19:29 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#93 [七瀬]
 
まだなにかあるのか?


そう振り向いた。





その瞬間を



俺は二度と忘れないだろう。
 
 
ってか忘れられない。
 

⏰:09/04/14 19:56 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#94 [七瀬]
 
 
ググッと俺はネクタイを
引っ張られた。


声を出す暇もない。

本当に一瞬だった。


フワリと良いにおいが
したと思ったら





彼女の顔が目の前に。
 

⏰:09/04/14 19:59 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#95 [七瀬]
 
ちゅーされたのかと
思ったけど、

俺の唇には、彼女の髪がかかっているだけだし、

お姫さまの唇には人差し指が。

もちろん俺の指じゃない。




「実はね、
“20歳まで生きられない”っていうのは嘘なんだ。」 
 

⏰:09/04/14 20:04 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#96 [七瀬]
 
 
は…?


「よし!
もーそろそろ帰ろっ!!」

なにもなかったように
歩く女。





この瞬間と
あの時の悪魔の顔と
俺のマヌケな顔…

今でも鮮明に残っている。

⏰:09/04/14 20:13 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#97 [七瀬]
 
 
“20歳まで生きられない”というのは嘘…



一本やられた。

さっきまで

“嘘じゃねーの?”
って疑ってて、


でも、あの発作を見て
疑ったことを後悔した。
 
 

⏰:09/04/14 20:22 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#98 [七瀬]
 
それなのに…嘘??



俺って


さすがバカ高に通うだけのことはある!!


じゃねぇっ!


こう…なんというか
俺、勉強は出来ねぇけど
女のことは分かっている

…つもりだった。

⏰:09/04/14 20:25 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#99 [七瀬]
 
うん。
そのつもりだったし。


それなのに、


この俺がやられた?

納得いかねえ。


“悪魔”と呼ばれてる俺がこんな女に…



一人、軽やかな足並みの
前のヤツを見て思った。

⏰:09/04/14 20:29 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


#100 [七瀬]
 
 
『なあ!』

「ん?」


『嘘って…

じゃあ、あの発作はなんだったんだよ!!』


「なにって…

冗談に
決まってんじゃ〜ん!!
演技だよ、え・ん・ぎ!」

アハハと笑う。

⏰:09/04/14 20:32 📱:N703iD 🆔:iZekniZY


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