虹色のオセロ

「ななみちゃん」

「何？」

「にいに、どうしたの？」

「知らないよ。ほら、蕾夢寝るんでしょ？ベッド行くよ。おいで」

蕾夢の手をひきながらベッドに向かう間も、はらわたが煮えくりかえっていた。

何であんなに偉そうなわけ、あのガキ！

起こしてあげただけでも感謝しろよ、ったく。

ベッドに入っても、思い出してはイライラしていた。

「ななみちゃん、てぇにぎって」

蕾夢が小さな手を出したので、何も言わずに握ってあげた。

すると、蕾夢は小さな声で私に言った。

「おこんないで」

心臓が跳ね上がった。

蕾夢に対して怒ってなんかないのに、蕾夢は私の怒りを感じ取っていたんだ。

蕾夢に当たるつもりはないのに、ちょっと口調がキツくなったかなって反省。

「ごめんね、蕾夢」

「もうおこんない？」

「怒んない。本当にごめんね」

蕾夢が眠り、冷静になってからよく考えてみた。

私、大人げなかったかも。

10も離れたガキの喧嘩を買って、その上２才の子供にも当たっちゃって…。

「ごめんねー」

スヤスヤと眠る蕾夢の柔らかな頬を撫でた。

気持ちが落ち着いたし、罪悪感さえ出てきた。

仁士だってまだ17才のガキなわけで、遊びたい盛りなんだ。

でも、裕福ではない家庭だからバイトに明け暮れてて…

勉強だって出来る奴だから、それなりに努力してるんだろうし。

バイトに勉強、その上、蕾夢の面倒を見ていると来た。

そりゃ大変極まりないよね。

私の人生に比べれば、仁士のが大変。

学校嫌いで、サボってばっかで、先生いじめた学生時代。

就職活動なんかもせずにフリーターしながら毎日過ごして、彼氏作って、浮気して、浮気されて、別れて…また彼氏作って。

結婚考えた相手もいたけど、でも結局ダメで。

で、数ヶ月前にいきなり教師になって。

教員免許を取ったのだって、ただのノリだったし。

その免許の噂を聞き付けて、私を採用した学校も変な学校だよね。

真剣に何か取り組んだ事ない、って言うか…気まぐれと行き当たりばったりで生きてきた私の人生と、仁士の人生を比べるのも可哀想だ。

仁士が帰って来たら、謝ろう。

素直に謝る女はモテる、って褒めてくれるかもしんないからね？

…なんちゃって。

深夜２時。

仁士が帰って来た。

「おかえり」

「うぉっ、起きてたの」

いつもは蕾夢と一緒に爆睡ぶっかましてる私だから、普通に起きている事にビックリしていた。