虹色のオセロ
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#401 [ゆーちん]
「明日のバンド、ちゃんと聞いてね?」

「んー、忘れてなかったらね。」

「俺と仁士のツインボーカルなんだ。俺はママのために歌うからね!」


恋人とか好きな人にそんな事言われたら嬉しいんだろうけど、栄之助に言われても本当に子供に言われてるようなもんだった。

⏰:09/05/04 12:07 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#402 [ゆーちん]
「何時から?」

「午後から。時間はまだわかんない。」

「そ。まぁ頑張ってよ。」

「うん。」


キスは栄之助の腕の中でした。

⏰:09/05/04 12:07 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#403 [ゆーちん]
応援キスは、どんどん熱くなり、いつもながらの舌がグイグイと入って来る。


私はその舌を受け入れるだけ。

応えたりはしない。


栄之助の手は私の胸に。


お決まりパターンなんだけど、なぜか栄之助にされると新鮮な気持ちで溢れ返っちゃうんだよね。

⏰:09/05/04 12:09 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#404 [ゆーちん]
ボタンを外し、まさにブラジャーも脱がされるって時だった。


「もうペチャパイは見たくないから、そこまでね。」


栄之助の手は止まり、口から舌が抜かれて唇も離れた。


「あれ…仁士どしたの?」

不思議そうな栄之助に、仁士は答えた。

⏰:09/05/04 12:10 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#405 [ゆーちん]
「お前のママに頼まれたの。」


仁士はベンチの上に、財布とビニール袋を置いた。


中身は見なくてもわかる。


たこ焼き、焼きそば、林檎飴、それからたい焼き。

⏰:09/05/04 12:11 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#406 [ゆーちん]
「ありがと。随分時間かかったね。」

「写真撮ってって頼まれたり、逆ナンされたり、俺もいろいろ大変なの。」

「あっそ。ありがとうね、委員長。」

「どういたしまして、先生。」

⏰:09/05/04 12:12 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#407 [ゆーちん]
仁士に買ってきてもらったものを3人で食べながら、私と栄之助vs仁士のオセロをして過ごした。


仁士はさすが仁士であって、私と栄之助より一枚も二枚も上手でこてんぱんにやられた事は、文化祭での唯一の心残りだった。

⏰:09/05/04 12:12 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#408 [ゆーちん]
放課後にバンド練習はしないのかを聞くと、しないと言った。


前日にまで練習するほど俺らは追い込まれてないから、って。


へぇ〜、カッコイイじゃん?


「バンド名は?」

「カレーライスマン。」

「は?」

「俺らみんなカレーライス大好きだから、カレーパンマン文字ってカレーライスマン。」


バンド名はダサすぎだけど、とりあえず頑張れカレーライスマン。

⏰:09/05/04 12:13 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#409 [ゆーちん]
「続きまして2年C組のみなさんです。内容はバンドで、バンド名はカレーライスマンだそうです。ユニークなバンド名ですね!それでは盛り上げていただきましょう、カレーライスマン!」


司会の紹介と共にカレーライスマンが登場。

⏰:09/05/04 12:19 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#410 [ゆーちん]
文化祭2日目。

場内は黄色い声に包まれた。

そりゃそうだ。


世間一般でいう男前2人がツインボーカルのバンドなんだから。


「カレーライスマンでーす。カッコイイバンド名で、みんな驚いてるでしょ?」

栄之助の問いかけに、今度は笑い声が響いた。

⏰:09/05/04 12:19 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#411 [ゆーちん]
「まぁバンド名は適当なんだけど、曲のほうはマジなんで。それじゃあ聞いて下さい。」


仁士の発言で、今度は拍手が飛びかった。


ドラマーがカウントを取り、4のあとに演奏が始まった。

ノれる曲だった。

栄之助は煽るのが上手く、場内は一気に盛り上がった。

盛り上げ上手とは、このことだ。

⏰:09/05/04 12:21 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#412 [ゆーちん]
2曲目はちょっとしっとりしたラブソング。


会場はクールダウンし、みんな聞き入っていた。


3、4曲目はまた盛り上げソング。


忙しい奴らだ、カレーライスマン。

⏰:09/05/04 12:21 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#413 [ゆーちん]
5曲目も明るく元気な歌だった。


それで一回退場したけど、サクラなのか本物なのかわからないけどアンコールの声が湧いたので、アンコールを2曲。


「アンコール、ありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しい。」


ツインボーカルが戻って来ると黄色い声が、また飛びかう。

ドラムやベース、それからギターの奴らがちょっと可哀想だぞ。

まぁ、私には知ったこっちゃないけどね。

⏰:09/05/04 12:22 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#414 [ゆーちん]
「今までの5曲は全部、有名な歌手が歌ってたやつじゃん?それもそれで楽しいんだけど、俺らもちょっとカッコつけたくなっちゃって…なんと、作っちゃいました!」


栄之助の紹介に続き、仁士も場を沸かす。


「作詞作曲カレーライスマンです。曲名はまだ決まってないんですけど、とりあえず聞いてみてください。」

⏰:09/05/04 12:23 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#415 [ゆーちん]
仁士の合図にドラマーがカウントする。


そして優しいメロディーが流れ始めた。


さすが自分たちで作詞作曲しただけある。


栄之助と仁士の声を考えて作られたようなメロディーと歌詞だった。

⏰:09/05/04 12:23 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#416 [ゆーちん]
演奏が終わると、お褒めの言葉がわんさかと飛びかった。


「めちゃくちゃいいじゃーん!」

「売れる売れる〜。」

「着うた欲しいよ!」


当然、気分がよくなるカレーライスマン。

⏰:09/05/04 12:25 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#417 [ゆーちん]
「ありがとう、ありがとう、ありがとうー!」


栄之助のお礼の投げキッスは女子たちに拾われて、最後の曲紹介となった。


「次の曲も作詞作曲カレーライスマンだから。今みたいなバラードじゃなく、アゲアゲな感じだからノリノリで行くよーん!」

⏰:09/05/04 12:26 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#418 [ゆーちん]
最後の最後の曲。


なかなかのカリスマ性があるかもしれない、カレーライスマン。


場内を盛り上げるオリジナル曲は、リズムは凄くよかった。


ただ歌詞に一つ引っ掛かるとこがあったから、あとで仁士か栄之助に聞いてみようと思う。

⏰:09/05/04 12:27 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#419 [ゆーちん]
そんなこんなで文化祭2日目が終わった。


カレーライスマンのおかげで準優勝を貰いました。

優勝は3年生のバンドだった。


カレーライスマンがこのまま練習積み重ねて、来年の文化祭で披露するんだったら、って考えるとちょっとは学校で仕事をし続ける楽しみが出来るかも。

⏰:09/05/04 12:27 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#420 [ゆーちん]
後夜祭は、暗くなった運動場で花火やらフォークダンスをするらしい。


残念ながら、舞台発表を真面目に鑑賞していたせいで体力の限界。


「保泉先生。」

「あぁ、ななみん先生。2C準優勝でしたねぇ!」


テンションの高い担任に、体調が悪いと伝えてやった。

⏰:09/05/04 12:29 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#421 [ゆーちん]
「なら、もう帰った方がいいですね。」


一気にテンションが低くなる保泉。

喜怒哀楽が激しい男ってわかりやすいから、嫌いじゃないよ。


「でもこれから後夜祭が。」

「大丈夫です、後夜祭は生徒が勝手にやってる事ですので。だから何人かの先生はもう帰ってるはずです。」

えぇー…そんなラフでいいの?

⏰:09/05/04 12:30 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#422 [ゆーちん]
「生徒が勝手って言っても一応は監視しておかないといけないんで、若い教師が残るのが暗黙のルールになってるんです。」

「そうなんですか…」

「でもななみん先生、体調悪いんでしたら後の事は気にしないで、本当に帰ってくれてもいいですから。ゆっくり休んでください!」

⏰:09/05/04 12:31 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#423 [ゆーちん]
優しいねー、ほずみんは。

いやらしい目じゃなけりゃ尚更いいのに。


「すみません。ではお言葉に甘えさせてもらいます。」

「明日からまた元気なななみん先生の姿、期待してます。」

「アハッ…それじゃあ、お先に。」

⏰:09/05/04 12:31 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#424 [ゆーちん]
ちょろいなー、保泉。

人を疑う心がないんだな。

おかげで助かった。


レオたん、今帰るよ。


別にたいして体力も使ってないくせに、やけに体がクタクタだった。


だから家に到着してすぐに風呂入って、さっさとベッドに入った。

⏰:09/05/04 12:32 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#425 [ゆーちん]
確かまだ22:00

いくらなんでも寝るの早すぎって感じだけど、なぜか体がダルくって。

生理前なのかな。


「レオ、おやすみ。」


私は簡単に夢へと落ちた。

だけど、静かな部屋に突如と鳴り響くインターホンにすぐ叩き起こされたんだけどね。

⏰:09/05/04 12:33 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#426 [ゆーちん]
無視していたら、電話が鳴った。

仁士、蕾夢、栄之助。

さぁ、どーれだ。


「寝てまーす。」

「起きてんじゃん!開けてよ。」

「やだー。」

私も甘くなったもんだから、いやだって言いながらも結局は迎え入れてやってんの。

⏰:09/05/04 12:34 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#427 [ゆーちん]
「可愛いパジャマ。」

「ルームドレスよ。」

「今日の俺たちかっこよかったっしょ?」

「見てないからわかんなーい。」

「嘘つき。柴田七海の熱視線感じたよぉ。」

⏰:09/05/04 12:34 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#428 [ゆーちん]
ちょっぴり寝ぼけながらしたキス。


栄之助の唇はすでに暴走し始めていた。


ルームドレスの下は、何も無かった。


さすがに、下着をつけていなくて驚いたらしく一瞬手が止まった。


「ノーブラはわかるけど、ノーパンはダメだよ。」

⏰:09/05/04 12:35 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#429 [ゆーちん]
「何で?」

「ママとして見れなくなる。」

「フフッ、何それ。」

「…わかってるくせに。」

「わかんないよ。わかったら、栄之助のママがいなくなるからさぁ。」

「…優しいね。」

⏰:09/05/04 12:36 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#430 [ゆーちん]
気付いてたよ、んなもんとっくに。


ママの役目をもらったし、相手はガキ猿だし、教師だしって事で栄之助の気持ちを知らんぷりしてた。


だけどあんなキスばっかされてたら、誰でも気付くよ。


私を好きなんだよね、ママ変わりじゃなくて…女として。

⏰:09/05/04 12:37 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#431 [ゆーちん]
「ヤッてもいいけどママを失うよ?」


その言葉に、栄之助はマジな顔して考えていた。


しばらくして栄之助は口を開いた。

「ママ、ママ、ママ。」

「何、連呼しなくても聞こえるよ。こんな近いのに。」

「ママを失うのはやだ」

⏰:09/05/04 12:38 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#432 [ゆーちん]
栄之助の選んだ道は正解だと思う。


ヤッちゃったら終わりだもん、うちらの関係ってのは。


「これからもママでいてね。」

「ならママの言う事は、ちゃんと聞きましょう。もう寝んねの時間だから、栄之助も一緒に寝る?」

⏰:09/05/04 12:38 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#433 [ゆーちん]
「もう寝るの?」

「夜更かしはお肌に悪いし。」


これからもママだから、別に何があるってわけじゃない。


ママっていうのも、ただの口実で栄之助は私とキスしたいだけ。

そんなの、わかってる。

私ももういい歳なんだから。

⏰:09/05/04 12:39 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#434 [ゆーちん]
栄之助はただ寂しいだけなんだ。


寂しいから、甘える相手が欲しくって手頃な私に頼んで来ただけ。

だからヤッちゃだめ。

モラルとか将来性とか考えて。

私も昔、バカな事してたけど、痛い目にあったぶん成長してるんだから。

⏰:09/05/04 12:40 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#435 [ゆーちん]
「お風呂は?」

「…まだ。」

「汚い!シャワー浴びてきな。体綺麗にして、ベットインしなさーい。」

「服とかないもん。」

「私の服、入るっしょ。栄之助細いし。丈は無理だけど。戸棚の服、適当に着ていいよ。」

「…ん。」

「じゃあ私は先に寝るー。おやすみ。」

⏰:09/05/04 12:40 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#436 [ゆーちん]
猿がルームドレスだよ?

想像したら笑えるね。


でも想像する元気のない私は、再びレオと眠りについた。


人の気配を感じ、薄ら目を開けた時、栄之助が眠っていたので抱きしめてあげた。

こういうのがママの役目だからさ。

⏰:09/05/04 12:41 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#437 [ゆーちん]
翌朝。


目覚ましアラームが鳴る前に、栄之助の唇で起こされた。


昨日、一線を越えちゃいけない事を遠回しに叱ったはずなのに、どうしてこんなにお盛んなんでしょう。


私だって、色々我慢してんだ。

⏰:09/05/04 12:47 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#438 [ゆーちん]
「栄之助。」


頭を押しやると、素直にどいてくれた。


「おはよう、ママ。」

「おはよう。朝っぱらから甘えたさんだね。」


皮肉たっぷりで言ったつもりなのに、栄之助は笑ってた。


「だって目が覚めたら目の前におっぱいがあんだよ?食い付かずにいれる奴なんていんの?」

⏰:09/05/04 12:47 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#439 [ゆーちん]
「知らないよ。寝込み襲われたから今日の片付けは欠席したいですって保泉に言ったらどうなるかなー。」

「アハハ!ちょっとそれ面白い。」

⏰:09/05/04 12:48 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#440 [ゆーちん]
寝起き早々、胸を舐められるのは嫌だけど、隣に笑顔の奴がいるのは悪くない。


特に、昨日と同じパンツで女物のルームドレスを着こなしてる奴だとね。


「笑ってないで起きて。学校遅刻するよ。」

⏰:09/05/04 12:50 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#441 [ゆーちん]
「休もうよ。」

「ダメ。学校行ってサボるのはバレない限り給料に響かないけど、休んじゃうと給料明細見て泣く羽目になるから。」

「たった1日じゃん。」

「ダメったらダメ。しっかり片付けしなさいよ、渡辺栄之助くん?」

「わかりましたよ、柴田先生っ!」

⏰:09/05/04 12:51 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#442 [ゆーちん]
納得していないバカ猿は、そそくさと支度を始めた。

ルームドレスを脱ぐ前に写真撮っとけばよかったな。

あんな面白いもの、滅多に見れないんじゃない?

⏰:09/05/04 12:52 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#443 [ゆーちん]
10月3日、金曜日。

晴れ。


「うん、片付け日和!」

「片付け日和か?暑いだけじゃん。」

「おぉ、おはよう。委員長。」


登校中、仁士に会った。

⏰:09/05/04 12:52 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#444 [ゆーちん]
「もう10月だってのに、絶対温暖化関係してるね。」

「へぇ、そうなの。」

「教師だろ、あんた。」


仁士は笑った。


「そうだ、カレーライスマンに質問。」

「どうしてネーミングセンス無いの?って質問なら受け付けない」

⏰:09/05/04 12:53 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#445 [ゆーちん]
「歌詞に出てきた、Seven seaが笑ってくれるなら何だって出来る…だっけ?あれ私に向けてのメッセージですかぁ〜?」

「ちょっと歌詞違うけど」

「そう?こんな感じだったよ」

「自惚れすぎじゃ?」

「そりゃ自惚れちゃうよ。7つの海なんて私に向けてとしか考えらんない。」

⏰:09/05/04 12:53 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#446 [ゆーちん]
「あの歌詞は栄之助が考えたんだ。」

「通りで単純なわけだ。」

「でも良かっただろ?」

「…まあまあかな。」

「栄之助に言ってやりなよ。喜ぶぞ」

「ん」


今朝、本当は栄之助にも聞くつもりだったんだけどドタバタしてて忘れちゃってた。

⏰:09/05/04 12:54 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#447 [ゆーちん]
だから今日、学校で会ったら言ってあげよう。


栄之助は仁士みたく、自惚れてるだなんて笑わないだろうから。

⏰:09/05/04 12:55 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#448 [ゆーちん]
「あーぢぃー」

さぁさぁ生徒諸君。

お祭りが終わったからと言ってダラけるな!

片付けろ!


あんたらが騒いで散らかしたんだから片付けんの当たり前でしょ?


「ななみーん、俺もう無理」

「俺もぉ。疲れたー」


はぁ?

甘えてんじゃねぇ!

自分のケツは自分で拭け。

⏰:09/05/04 12:55 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#449 [ゆーちん]
「頑張ろうよー、早く片付けが終わったら早く帰れるんだよ?」

「え、そうなの?」

「マジかよ、知らなかった」

「だから頑張ろう、ね?」

「ななみんが言うなら、しゃーねぇなぁ」


暑いのを我慢して、爽やかな笑顔を浮かべている私だけど、心の中じゃ今すぐ逃げ出したくて仕方ないって言う…。

⏰:09/05/04 12:56 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#450 [ゆーちん]
でも明日から休みだし、頑張ろう。


だから私に愚痴りに来るんじゃない、ガキどもめ。


「何、今の。ななみんスマイル?キモーい」


なんだよ、クラス委員長。


「みんな、ななみんが好きみたい。ちょろいガキだわ」

⏰:09/05/04 12:57 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#451 [ゆーちん]
「本性こんななのに、なんであいつらは気付かないんだろ」

「私の演技がハリウッド級だから?」

「…」

「ボケたのにツッコめよ。滑ったよ私」

「それよりさぁ」

「話変わっちゃうのかよ」

「栄之助からメール来てさ、今日サボるんだって。ママから叱ってやってよ。こんな日にサボるなんて卑怯な奴」

⏰:09/05/04 12:58 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#452 [ゆーちん]
はい?

そうなの?

サボってんの?

信じらんなーい。


せっかくカレーライスマンの歌詞の事でお礼しようと思ってたのに。


「つーか今日行っていい?」

「いや」

「いやよいやよも好きのうち、っつーことで蕾夢と行くから」

⏰:09/05/04 12:59 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#453 [ゆーちん]
っとにもぉ、どいつもこいつも!


「お土産付き。8時頃行くね」


それだけ言って、仁士は去って行った。


はぁーあ。

今日も疲れそう。

明日が土曜日でよかった。

⏰:09/05/04 12:59 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#454 [ゆーちん]
「ななみちゃん、れお、こんばんわぁ」


8時だよ、全員集合ー!

…って古い?


「こんばんは。今日もエラ可愛いね蕾夢」


蕾夢はさっそくレオとじゃれ始めた。


「エラ可愛い?」

蕾夢の兄が言う。

⏰:09/05/04 13:00 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#455 [ゆーちん]
「偉い可愛いの略」

「い、しか略してねぇじゃん」

「うっせ、早く入れ」

「お邪魔しまーす」


慣れたように入って来た仁士。


「今日は何の用」

「用がなきゃ来ちゃいけないの?」

「いけないの」

「つまんねぇ女」

⏰:09/05/04 13:00 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#456 [ゆーちん]
仁士はこのタイミングを待ちわびていたかのように、私の機嫌を治すお土産を出した。


「何これ」

「お土産」

⏰:09/05/04 13:01 📱:SH901iC 🆔:RBZ4yaF.


#457 [ゆーちん]
机の上に置かれたお酒。


「未成年飲酒を見逃せってか?」

「ちげーよ。七海へのプレゼント」

「私に?」

「バイト先の人がくれたんだ。俺のこと学生って知らなかったみたいでさ。未成年だからいらないって断ったら親にあげてって言われたけど…酒癖の悪い両親にエサ与える訳にいかねぇし」

⏰:09/05/06 16:39 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#458 [ゆーちん]
「で、私に?」

「そ。もしかしてお酒嫌い?いらないなら他の人にあげるけど」

「いや、あの…大好きです。お酒」

「酒飲み女もモテない女の条件だよなー」

「んあ?」


仁士にニヤリ笑われてしまったけど、素直に貰ってよかったよ。

ガキにはわからないだろうけど、このお酒、めちゃめちゃ美味しいって有名でしょ?

⏰:09/05/06 16:40 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#459 [ゆーちん]
「…ありがと」

「素直な女はモテる」

「あっそ」


蕾夢にはリンゴジュース。

仁士にはアイスティーを出してあげた。

私はさっそくもらったお酒を!


…飲みたいところだけど、さすがにそこまでお酒好きではないから仁士と同じアイスティー。

⏰:09/05/06 16:41 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#460 [ゆーちん]
「別に飲んでもよかったのに」

「さすがに未成年の前で飲めないでしょ。ましてや私、教師ですから」

「へぇー、教師なんだ。知らなかった」


そんな冗談ぶっかましの仁士は携帯電話を開き、いきなり私に手渡した。

⏰:09/05/06 16:43 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#461 [ゆーちん]
「何」

「読んで。栄之助から」


画面はメール受信BOXが表示されていた。

差出人は栄之助。

《ママに俺の気持ちバレた》


「何これ」

私が聞くと、仁士は眉を寄せた。

「こっちの質問なんだけど」

⏰:09/05/06 16:44 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#462 [ゆーちん]
蕾夢がテレビに夢中になってるうちに、私と仁士の会話は進む。


仁士は常にクールビューティーを保っていました。

堂々と煙草を吸いながら。

私もキャラ崩壊してたけどね。


「ママにバレたんだって。何バラしちゃったの?」

⏰:09/05/06 16:45 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#463 [ゆーちん]
「何もバラしてないし、栄之助の気持ちなんか…あ」

「今の、あ、は明らかに何か思い出した、あ、だよね」


そうだ、昨日の夜の事だ。

口には出さなかったけど、やっぱり栄之助も気づいちゃったんだ。

私が、栄之助の好意に気づいてる事。

⏰:09/05/06 16:46 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#464 [ゆーちん]
「思い出した」

「何、教えてよ」

「…昨日、栄之助ここ泊まったんだよね」


仁士は表情を崩し、呆れ顔になった。

⏰:09/05/06 16:47 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#465 [ゆーちん]
「ヤったの?」

「違う。ヤってない。ヤるわけないじゃん」

「ただ眠っただけ?」

「そ。あんたと蕾夢みたいに」

「あの栄之助と一晩を共にしたのに、襲われなかったあんたは魅力ゼロって事か」

「あ?ちげーし。襲ってきたけど拒否ったの。ヤってもいいけどママを無くすよ、って」

⏰:09/05/06 16:47 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#466 [ゆーちん]
蕾夢がテレビで笑う中、私たちは話を続けた。


仁士の野郎は、まるで自分んちかのようにリラックスムードで椅子に座ってやがる。


「したら?」

「性欲より、童心のが勝ったみたいでさ。ママを無くすのはヤダからっておとなしくなった」

⏰:09/05/06 17:54 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#467 [ゆーちん]
「つーまーりー、七海とマジでヤろうとしたから、栄之助は自分が七海に好意があるっつーのがバレてしまった、と思ってる訳か?」

「…え、何。ごめん、もっとわかりやすく説明して」

「お前本当に教師か?」

「教師じゃ…ないのかも」

⏰:09/05/06 17:54 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#468 [ゆーちん]
「ったくよー。だから、栄之助は七海が好きなんだよ。わかる?」

「ママとして?」

「んなわけねーだろ。女として」


…あぁ、やっぱりそうなんだ。

⏰:09/05/06 17:55 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#469 [ゆーちん]
「ずっと七海には内緒で、栄之助はその恋心を隠してきました。でも、昨日我慢の限界で七海を襲って。
で、その時七海がなんか余計な事を言ったため、七海に自分の気持ちがバレちゃったから、俺にメールしてきたんだな」

「余計なことって…何」

「知らねーよ、バカ!自分のペチャパイに手ぇ当てて聞いてみろ」

⏰:09/05/06 17:55 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#470 [ゆーちん]
「でもさ、結局は私とヤんなかったんだよ?つまりママを選んだってことじゃん」

「んー、まぁそうなのか」

「そこまでして、ママに執着する意味は何?やっぱ母親に甘えたことないから?」

「たぶんそうなんじゃね?あいつ今までもママいっぱいいたよ。でも過去のママとはみーんなヤっちゃってたけどね」

⏰:09/05/06 17:56 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#471 [ゆーちん]
「何それ。何で私とはヤんなかったんだろ。やっぱ‥」

「魅力がねーから」

「はぁ?」

「もしくは、本気で七海に惚れてるか、だな」


うっそぉー。

後者だとしたら、相当面倒だよ?

どうすればいいの。

⏰:09/05/06 17:57 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#472 [ゆーちん]
「ママに執着する意味はそんなに考えなくてもいいんじゃね?やっぱ甘え知らずで育ったから、その反動かもしんないし」

「もしくは、ただの口実。ママっていう役割に頼ってキスとかしてくる為だけの」

「俺が選ぶなら、もーっちょっと色気のある女をママにするけどな」

⏰:09/05/06 17:58 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#473 [ゆーちん]
「…喧嘩売ってんの?」

「うん」

殴ってやろうか、ガキめ。


「とりあえず栄之助の話はわかった。そういう訳ね」

「ただの友達なのに、あんたは優しいねー。男でそんな友達想いは珍しいよ。もしかしてソッチ系?」

⏰:09/05/06 17:59 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#474 [ゆーちん]
「あらやだ、僕疑われてるのかしら」

「だってさ、前に1万貸してって言われたときも、断られたら体売るって言ったし。男が体売るって意味わかってんのー?」

「わかってるよ。冗談に決まってんじゃん。金なくてもそこまでしねーし」

「ふーん、どうだか」

⏰:09/05/06 17:59 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#475 [ゆーちん]
「栄之助とは、小さいときから仲良くて同じ歳なのに弟みたいな奴でさ。友情っていうか愛情入ってんのかも。家族愛っつーの?蕾夢への愛情と似てんだよ、栄之助のは」


へー、私だけじゃないんだ。

「それわかる。私も蕾夢への感情と栄之助への感情が似てんだよね」

⏰:09/05/06 18:00 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#476 [ゆーちん]
「そうなの?なら栄之助の奴、七海を想ってても意味ねぇじゃん。結局は母性愛みたいなもんだろ?」

「んー…なのかも」

その後も、ぐだぐだと話をした。

アイスティー何杯おかわりしたんだろう。

かなりの量を飲んだ気がする。

⏰:09/05/06 18:01 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#477 [ゆーちん]
「にいに、おちっこ」

テレビが終わった蕾夢が言った。


「ん」

仁士はトイレに連れて行き、ズボンとパンツを脱がした。


「…ぐふっ」

「変態七海」

「だって可愛くって」

「一種のセクハラだな」

⏰:09/05/06 18:01 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#478 [ゆーちん]
トイレから出ると、二人は帰ると言った。

なので、お見送り。


「蕾夢、七海ちゃんにバイバイは?」

「ばいばーい」

ちーっちゃい手がヒラヒラ揺れる。

かっ、可愛すぎる。


「蕾夢、いつでもおいで。でも兄貴のほうはいらないよー」

「何でだよ」

「仁士が来たって役に立たないもん。蕾無は私の癒し系アイドルだから」

⏰:09/05/06 18:02 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#479 [ゆーちん]
蕾夢ともう一度バイバイをして、仁士にも一応お酒のお礼を。

で、帰ってった。


ここからはレオとの時間。

「ねぇレオ。栄之助、何思ってるんだろうね」

わかんないよ、ってレオが言う。

⏰:09/05/06 18:02 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#480 [ゆーちん]
「私を好きなのは確かなんだよね。これは自惚れとかじゃなく。でも、好きなら何で恋人じゃなくママを選んだんだと思う?」


んー、ってレオが考える。

⏰:09/05/06 18:03 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#481 [ゆーちん]
「何にせよ、栄之助とまた話さなくちゃなぁ。よくわかんないや。仁士が何考えてるのかも」


そんな金曜日の夜。

明日は、休みだ。

色々と一人で考える時間はたくさんある。

⏰:09/05/06 18:03 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#482 [ゆーちん]
―――

週明けの月曜日。

今日から普通の授業だ。

眠いー、だるいー、うざいー。


「事件でーす」


んな軽い口調で知らせるなよ、委員長。


「何〜。朝からテンションの下がるような話はいやだから」


ていうか、登校中によく会うよねー。

⏰:09/05/06 19:41 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#483 [ゆーちん]
「…二日酔い?」

「あー、バレた?昨日、あんたにもらった酒を飲んだのよ〜。めちゃ美味かった。完食ならぬ完飲」

「一人で?」

「まさか。友達と」

「だよな、さすが一人だと引く‥」

「でもその友達ってのがお酒ダメな子でさぁ」

「ドン引きです、柴田先生」

⏰:09/05/06 19:42 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#484 [ゆーちん]
んな、全開で引かなくても。

私と仁士の仲じゃん、ねぇ〜?


「なんか悩み事とか聞いて貰いながら飲んでてさ、いつのまにか飲みきってた。アハハ…自分でもビックリ」

「悩みって…栄之助?」

⏰:09/05/06 19:44 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#485 [ゆーちん]
「プラス、うざいクラス委員長」

「へぇー、そんな委員長いるんだ」

「…で、何よ事件って」

「その悩みの種の委員長じゃない方、壊れた」

「は?日本語で説明して」

「いや、日本語だけど」

⏰:09/05/06 19:45 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#486 [ゆーちん]
「栄之助が壊れたの?」

「うん」

「ぬあ?」


仁士は淡々と話す。

「朝電話あってさ、出てみたら弱った声でいきなり、ここどこ〜?って」

「はぁ?」

「んなもん俺が知る訳ねぇじゃん。だから詳しく聞けばさぁ、夕べ羽目外しすぎちゃったらしいんだよね」

⏰:09/05/06 19:46 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#487 [ゆーちん]
「羽目って…どのくらい?」

「未成年の飲酒、喫煙、不純異性交友」


一気に青ざめた、ママ。


「まさか警察に?」

「いや、警察沙汰にはなってなくて。朝起きたら知らないホテルに寝てて〜みたいな」

「なんだ、警察沙汰になんなくてよかった」

⏰:09/05/06 19:46 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#488 [ゆーちん]
いや、でも問題は他にもあるっしょ。


「私が拒否ったから手当たり次第ヤったのかなぁ」

「かもねぇ」

「栄之助、今日学校来るって?」

「あぁ、たぶん。詳しくは本人に聞いて。まぁでももしかしたら避けられちゃうかもだけど」

⏰:09/05/06 19:47 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#489 [ゆーちん]
「んー、あり得るね」

「二日酔いになってる場合じゃないね、マーマ」


仁士はニッと笑い、そのまま私を置いて友達と学校に入ってった。

⏰:09/05/06 19:48 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#490 [ゆーちん]
さーさーさー。

栄之助、あんたに聞きたい事が山ほどあるよー。

だから早く登校しろっ!

⏰:09/05/06 19:50 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#491 [ゆーちん]
その願いが通じたのは6時間目だった。


《栄之助、来たぞ》

登校してきたらメールちょうだいって仁士に頼んでおいてよかった。

ちゃんと報告してくれてありがと、さすが委員長。

…にしても登校遅っ。

⏰:09/05/06 19:51 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#492 [ゆーちん]
授業のなかった私は職員室で待機。

てゆーか抜き打ちテストの作成。

抜き打ちテスト嫌いだったなぁ〜、なんて思いながら黙々と作った。

一時間なんてあっという間。

結局テストは作りきれなかったから途中で作成放棄。

急いで2Cに向かった。

⏰:09/05/06 19:52 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#493 [ゆーちん]
「ななみんバイバーイ」

「また明日ねぇ」

えっ、ホームルーム終了?

早く行かないと栄之助に帰られるっ!


「さよなら〜」

教室から出て行く生徒に挨拶をしたななみんは、慌て教室に入った。

⏰:09/05/06 19:53 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#494 [ゆーちん]
よっし!

仁士ナイス!


「渡辺くーん」

仁士が栄之助を引き止めてくれていたおかげで、まだ教室に残っていた。


私が呼び掛けると栄之助は振り返り、どんな反応をするのかとドキドキした。

⏰:09/05/06 19:54 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#495 [ゆーちん]
「先生久しぶり〜」

…あら、いつも通りだし。

あからさまに避けたりするとか思ってたんだけどな。

「これから時間ある?」

「んー、ちょっとだけなら」

「色々聞きたい事あるんだ」

「うん、いいよ」


いつもの笑顔で、言う事聞いてくれた栄之助はとても昨日ぶっ壊れてたようには思えなかった。

⏰:09/05/06 19:55 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#496 [ゆーちん]
仁士にお礼を言ってから、私と栄之助は教室を後にした。


「更衣室?」

「うん」


周りを気にしてから、二人で更衣室に入る。

ここからは素でいられるから楽なんだ。

⏰:09/05/06 19:56 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#497 [ゆーちん]
「あのさママ」

最初に声を出したのは栄之助だった。


「金曜、学校サボってごめんね」

「…別にいいけど。何でサボったの?」

「ママに会いたくなかったから」

正直なんだか、意地悪なんだか。

⏰:09/05/06 19:57 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#498 [ゆーちん]
「朝まで一緒だったのに?」

「うん」

「嫌いになったの?私のこと」

「ううん、全然。これからもママでいてねー」


屈託のない笑顔だった。

色々聞きたかったのに、一気にやる気が失せる。


仁士に送ったあのメールでの、バレたってのは私が予想してる答えで合ってるのか聞きたかった。

⏰:09/05/06 19:59 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#499 [ゆーちん]
でも、よく考えるとさ、それを聞いたら、仁士が私にチクったのが栄之助に知られるんだよね。


二人の仲を悪くさすつもりなんてないから、聞けなかったよ…色々と。

⏰:09/05/06 20:01 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#500 [ゆーちん]
でも1つだけ、ちゃんと聞けた。

「カレーライスマンのアンコール曲、あれ私に作ってくれたんでしょ?」

「アハッ、バレたかぁ〜」

「バレバレ。でもありがとう。普通に嬉しいよ」


この【バレた】じゃないんだよね?

栄之助が仁士に送ったメールの【バレた】は。

⏰:09/05/06 20:08 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#501 [ゆーちん]
「来年も期待してる」

「うん」


喫煙、飲酒、叱りたい事だらけだけど、これも仁士からのタレコミだから言えなかった。

てゆーか禁煙してたんじゃないの、栄之助。

禁煙してたのに吸っちゃうぐらい、荒れる事があったんだろうな。

で、その原因ってやっぱ…私なのかな。

⏰:09/05/06 20:09 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#502 [ゆーちん]
何も言えなくなってしまい、沈黙になる更衣室。


また、先に沈黙を破ったのは栄之助だった。


「ママさ、俺の気持ち知ってんでしょ?なのに避けたりしなくて、ありがとね」


あらら、自分から言ったよ。


「あのさ、その栄之助の気持ちって、やっぱ…」

⏰:09/05/06 20:10 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#503 [ゆーちん]
私を女として好きなの?って質問は、栄之助に遮られた。


「言わないで」

「…」

あぁ、じゃあそうなのか。


「もう襲ったりしないからさ、これからもママでいてよ」

⏰:09/05/06 20:11 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#504 [ゆーちん]
「栄之助はそれでいいの?私が聞くのも変だけどキスしたりして、歯止め効く?」

「効く。女としてより、柴田七海にはママとして、いて欲しいから」

「あんたがそれほどママに執着する意味って何?」

「…反動かな。甘え知らずだったから」

ふーん、私と仁士の考えはビンゴじゃん。

じゃあやっぱ、その執着心は深く考えなくていいのか。

⏰:09/05/06 20:12 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#505 [ゆーちん]
「わかった、これからもママするよ」

「で、俺また彼女できたんだ。彼女いるから、もうママに変な事しないよ。でもたまに甘えさせてね」


栄之助の笑顔はいつもと違った。

無理してる。

ママだからわかるんだよ。

⏰:09/05/06 20:13 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#506 [ゆーちん]
「うん、了解」

「たまぁにチューとかさせてね?んじゃ」


栄之助はそう言って逃げるように更衣室から出て行った。

なんか…不完全燃焼。

⏰:09/05/06 20:13 📱:SH901iC 🆔:aLDiVks2


#507 [ゆーちん]
いつの間にか冬になっていた。

ビデオの早送り?ってぐらい早かった。


あれから、栄之助とも仁士とも相変わらず。


たまに更衣室で甘えん坊になる栄之助とオセロして、キスする。

⏰:09/05/08 10:58 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#508 [ゆーちん]
もう襲ってこなかったし、キス以外をする事もなかった。


もちろん、家に来る事もなければルームドレス姿を見れる事なんかない。


栄之助に変わり、仁士がよく家に来るようになった。

⏰:09/05/08 10:58 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#509 [ゆーちん]
バイトまでの時間潰しだとか、蕾夢預かってだとか。

今じゃ蕾夢とはすっかりラブラブな私。

お風呂デビューもしちゃったぐらいだもん。

すっかりベビーシッターなんだ。

面倒だと思ってた子守りがだんだん楽しくなってくる。

でもやっぱり教師だけは楽しくなんないけどね。


そして冬休みが来た。

なんだか波乱万丈な予感。

⏰:09/05/08 10:59 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#510 [ゆーちん]
夏休み同様、生徒のいない学校は寒さを除けば快適だった。

授業もない、補習もない。

超ラク!


「柴田先生」

学年主任だ。


「はい」

「すみませんが職員室のストーブの灯油の補充、お願いします」


げぇー。

やだよ〜、面倒だよ〜、寒いよ〜。

だなんて断れる訳もなく、

「はーい」

渋々了解した。

⏰:09/05/08 11:00 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#511 [ゆーちん]
外にある灯油置き場までダッシュ。

寒い、寒い、寒い!

灯油補充って地味だし臭いから大嫌い。


「ぶーっさいくな顔になってますよぉ」


…なぜ、いる。


「うるせぇやい」

「今日蕾夢と行くね」

「てゆーか冬休みなんじゃないんですか委員長。なんでいんの」

⏰:09/05/08 11:00 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#512 [ゆーちん]
夏休みにも、普通に学校にいたもんなこいつ。


「生徒会の集まりですけど」


うちの学校は、各クラス委員長が生徒会部員という風になっている。


だったらクラス委員長会って名前にすればいいのに、生徒会だなんてカッコイイ名前付けちゃってさ。

⏰:09/05/08 11:01 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#513 [ゆーちん]
「あぁ、なるほど!休み中も集まりとかあるんだ」

「休み明けのイベント考えないとだし」

「イベント?」

「マラソン大会」

「げぇー。最悪。私マラソン大嫌い。いっつもバックレてたなぁ」

⏰:09/05/08 11:02 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#514 [ゆーちん]
遠い日を思い出す私に、仁士は言う。


「七海みたいな奴がいるから今年はマラソンじゃなく登山にしよっかって案もある」

「登山?」


これまた斬新なアイデアですこと。


「でも費用が足りないから結局はマラソン大会になりそう。行き詰まったから、とりあえず今日は解散っつーことで、そこ歩いてたら不細工なおばさんが見えたから来てみたって訳だ」

⏰:09/05/08 11:02 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#515 [ゆーちん]
「…最後の方、喧嘩売りまくりだね、あんた。」

「買わないの?」

「寒いから買わない。つーか、またうち来るの?」

「夜間バイトだから蕾夢見ててね」

「また夜間?今日は冷え込むらしいから気を付けろ〜。蕾夢連れて来る時も暖かい格好させて来なよ」

⏰:09/05/08 11:03 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#516 [ゆーちん]
「あいあい。んじゃまた後で」

仁士は小走りで帰ってった。

だから私も小走りで職員室に戻る。

職員室ではニンマリ笑顔の学年主任が私を待ちわびていたので、わざとらしく寒い寒い騒いでやると、お茶を出してくれた。

ラッキー。

⏰:09/05/08 11:03 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#517 [ゆーちん]
夕方、さっさと帰宅するとタイミングを見計らったように瀬川兄弟が来た。


バイトが始まるまで仁士は私の家でくつろいで行くって魂胆か、この野郎。


「なんで自分んちでくつろがないのよ」

「狭いから」


…はい、会話終了。

何か機嫌悪い?

さっきは小走りするぐらい元気だったのに。

⏰:09/05/08 11:04 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#518 [ゆーちん]
「仁士?」

「何」

「何か怒ってる?」

「別に」

んー、テンション低い。

異様に低い。


「蕾夢ぅ、にいに機嫌悪いの?」

「きげん?」

「うん。にいに怒ってる?」

「わかんない」


だよねー。

2才がわかるわけないか。

ソファーにでかでかと寝転がる金髪にいには、一体何時からバイトなのかは知らないが、しばらくするといびきをかいて眠っていた。

⏰:09/05/08 11:05 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#519 [ゆーちん]
「蕾夢、にいに寝ちゃったね」

「ななみちゃん、らいむ、おなかちゅいた」

出ました〜、おなかちゅいた。

可愛すぎて溶けちゃいそう。


ばっちりスープパスタの準備ができていた私は、いつものようにレオにご飯をあげてから蕾夢と二人でいただきますをする。

⏰:09/05/08 11:06 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#520 [ゆーちん]
ソファーで寝てる奴は放っておく。

それが私流。

「おいち」

ズキューン。

蕾夢の笑顔にやられました。


「いっぱい食べなよ」

「うん」


そんな癒され夕食タイムが終わり、しばらくテレビを見てから、お風呂の時間。

⏰:09/05/08 11:06 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#521 [ゆーちん]
なーんで私が生徒の弟を風呂に入れてんだって感じだけど、同情が愛情に変わったっていう話だ。


今じゃ蕾夢は余所の子とは思えないね。


蕾夢ラブ!

⏰:09/05/08 11:07 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#522 [ゆーちん]
「らいむね、あした、にいにと、じゃんけんする」


めちゃくちゃ意味わかんねぇし、主旨もわかんねぇ〜。

じゃんけんぐらい勝手にすればいいのに、いちいち私に教えてくれんだよ、この子。


可愛くて可愛くて、泣かずにいられないって感じ。

⏰:09/05/08 11:08 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#523 [ゆーちん]
「七海ちゃんともじゃんけんしようよ」

「いいよ」

湯船に浸かりながらじゃんけんをした。

不器用なチョキが可愛くて吹き出してしまう。


「らいむのかちー」


その笑顔が見たくて、後だしして負けてやってんだよ2才児!

本当、可愛い。

⏰:09/05/08 11:08 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#524 [ゆーちん]
お風呂から出ると19:30だった。

仁士はまだ寝てる。


「仁士、バイト何時から?」

「んー…はちじ」


何、蕾夢みたいな甘えた声出してんだよ。

お前は栄之助か?


「あと30分だよ」

「ん」

って言ってまた寝ちゃった。

寝不足で機嫌悪かったのかな?

⏰:09/05/08 11:09 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#525 [ゆーちん]
蕾夢が持ち込んで来たアニメDVDを2才児と真剣になりながら見ていると、蕾夢が私の膝に寝転がって来た。


「どした?眠い?」

蕾夢は目をゴシゴシかきながら頷いた。


「寝よっか」

また蕾夢が頷く。


DVDを止め、テレビを消し、寝室に行く準備をする。


ふと振り替えればすぐ後ろにソファーがあって、そこには仁士が弟より先に眠ってる。

⏰:09/05/08 11:10 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#526 [ゆーちん]
…ん?

眠ってる?

時計は20:30になろうとしていた。

完全に遅刻じゃんか!


「仁士、起きて!起きろってば」

「…痛い痛い。何」

「8時回ってるよ?バイト遅刻」

「えっ…えぇ?」


意識を戻した仁士は慌て起き上がった。

⏰:09/05/08 11:10 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#527 [ゆーちん]
「何で起こしてくんなかったんだよ!」

…何で私が叱られてんのよ。


「はぁ?起きなかったあんたが悪いんでしょ?」

「普通起こすだろ!鈍感!」

「人のせいにするなよ!」

「あぁー、もういいよ。七海と騒いでても意味ないしな!」

⏰:09/05/08 11:11 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#528 [ゆーちん]
うっざー。


「ふざけんな、バカたれガキんちょ!」

「ババアに言われたくないね!」

そう、捨て台詞を吐いて仁士は出て行った。

何なの、あれ。

本気でうざい。

何様?

⏰:09/05/08 11:11 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#529 [ゆーちん]
「ななみちゃん」

「何?」

「にいに、どうしたの?」

「知らないよ。ほら、蕾夢寝るんでしょ?ベッド行くよ。おいで」


蕾夢の手をひきながらベッドに向かう間も、はらわたが煮えくりかえっていた。


何であんなに偉そうなわけ、あのガキ!

起こしてあげただけでも感謝しろよ、ったく。

⏰:09/05/08 11:12 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#530 [ゆーちん]
ベッドに入っても、思い出してはイライラしていた。


「ななみちゃん、てぇにぎって」

蕾夢が小さな手を出したので、何も言わずに握ってあげた。


すると、蕾夢は小さな声で私に言った。


「おこんないで」


心臓が跳ね上がった。


蕾夢に対して怒ってなんかないのに、蕾夢は私の怒りを感じ取っていたんだ。

⏰:09/05/08 11:13 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#531 [ゆーちん]
蕾夢に当たるつもりはないのに、ちょっと口調がキツくなったかなって反省。


「ごめんね、蕾夢」

「もうおこんない?」

「怒んない。本当にごめんね」

⏰:09/05/08 11:13 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#532 [ゆーちん]
蕾夢が眠り、冷静になってからよく考えてみた。

私、大人げなかったかも。

10も離れたガキの喧嘩を買って、その上2才の子供にも当たっちゃって…。


「ごめんねー」


スヤスヤと眠る蕾夢の柔らかな頬を撫でた。

気持ちが落ち着いたし、罪悪感さえ出てきた。

⏰:09/05/08 11:14 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#533 [ゆーちん]
仁士だってまだ17才のガキなわけで、遊びたい盛りなんだ。


でも、裕福ではない家庭だからバイトに明け暮れてて…

勉強だって出来る奴だから、それなりに努力してるんだろうし。

⏰:09/05/08 11:14 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#534 [ゆーちん]
バイトに勉強、その上、蕾夢の面倒を見ていると来た。

そりゃ大変極まりないよね。

私の人生に比べれば、仁士のが大変。

⏰:09/05/08 11:15 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#535 [ゆーちん]
学校嫌いで、サボってばっかで、先生いじめた学生時代。


就職活動なんかもせずにフリーターしながら毎日過ごして、彼氏作って、浮気して、浮気されて、別れて…また彼氏作って。


結婚考えた相手もいたけど、でも結局ダメで。

⏰:09/05/08 11:15 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#536 [ゆーちん]
で、数ヶ月前にいきなり教師になって。


教員免許を取ったのだって、ただのノリだったし。


その免許の噂を聞き付けて、私を採用した学校も変な学校だよね。


真剣に何か取り組んだ事ない、って言うか…気まぐれと行き当たりばったりで生きてきた私の人生と、仁士の人生を比べるのも可哀想だ。

⏰:09/05/08 11:16 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#537 [ゆーちん]
仁士が帰って来たら、謝ろう。


素直に謝る女はモテる、って褒めてくれるかもしんないからね?


…なんちゃって。

⏰:09/05/08 11:16 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#538 [ゆーちん]
深夜2時。

仁士が帰って来た。


「おかえり」

「うぉっ、起きてたの」


いつもは蕾夢と一緒に爆睡ぶっかましてる私だから、普通に起きている事にビックリしていた。

⏰:09/05/08 11:18 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#539 [ゆーちん]
「何か飲む?」


今日も泥だらけ。

汚い格好のクラス委員長。


「冷たいお茶ちょうだい」

「ん」


仁士はフーッとため息をつきながら椅子に座り、せっせと煙草を吸い始めた。

⏰:09/05/08 11:18 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#540 [ゆーちん]
「ん」

「どーも」


お茶を飲む仁士。

それを眺める私。

…無言。


そんな空気にしびれを切らしたのは仁士だった。


「言い訳していい?」

「…何を?」


仁士が口を開こうとした時、寝室から蕾夢の声がした。

⏰:09/05/08 11:19 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#541 [ゆーちん]
「まま…」


小さな声だったけど、その切なげな声は私たちの部屋まで届いて来た。


それを聞いて、いたたまれない気持ちになる。


あんな小さな子に、私は苛立ちをぶつけてしまったんだから。

⏰:09/05/08 11:19 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#542 [ゆーちん]
それでなくても親の愛が少ない子なのに。


「泣いてる?」

「いや、たぶん寝言」

「ちょっと私、見てくる」


隣の部屋である寝室に行き、蕾夢の様子を覗いた。

ごそごそと布団でもがいていた。

⏰:09/05/08 11:20 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#543 [ゆーちん]
「ママいるよ」


ママでもないのに、そう言って手を握ってあげると、蕾夢の動きが止まる。


嘘も方便。

⏰:09/05/08 11:20 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#544 [ゆーちん]
蕾夢に布団をかぶせ、仁士が待つ部屋に戻る。

2本目の煙草に火を点けていた。


「未成年の喫煙は法律で違反されてます」

「…棒読みだな。蕾夢は?」

「ん、大丈夫」

「そ。ありがと」

「うん」


私が椅子に座ると仁士はさっきの続きを喋り出した。

⏰:09/05/08 11:21 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#545 [ゆーちん]
「最近バイト大変でさ。学校にも行かなきゃで、寝不足続いてたんだ」

「…ふーん」


やっぱりね。

私が睨んだ通りだ。

⏰:09/05/08 11:22 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#546 [ゆーちん]
「家にいても蕾夢がいるから昼寝もできなくて…託児所に行くの嫌がるから無理矢理連れてく訳いかないし。蕾夢のこと好きだけど、でも…一緒にいすぎると疲れるんだ」


申し訳なさそうに仁士は呟いた。

パーフェクト人間が私に初めて溢した弱音。


「こんな兄貴最低だよな」

「あんたは偉いよ。兄貴って役目をちゃんと務めてんじゃん。最低なんかじゃない。最高の兄貴だよ」

⏰:09/05/08 11:23 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#547 [ゆーちん]
吸わない煙草からは、白い煙が虚しく立ち上っていた。


「自分がいくら辛くても蕾夢に当たらないのは偉いよ。私さっきあんたが飛び出してった後、蕾夢に冷たい態度取っちゃったんだ。八つ当たり。私の方が最低だよ。ごめんね」

⏰:09/05/08 11:23 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#548 [ゆーちん]
「いや、あれは俺が悪かったから…」

「ううん。違う。仁士が寝不足になるほど頑張ってんの私ちゃんと知ってたのに、助けてあげられなかったんだもん。副担任として情けないよね」

「副担任って…懐かしい響き。なんか七海が教師だってこと、たまに忘れる」

⏰:09/05/08 11:24 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#549 [ゆーちん]
「それって私がまだ17の少女みたいだって事?」

「は?違うし」

「私も仁士が生徒だってこと、たまに忘れるよ。つーかこんな厚かましい生徒なんて、なかなかいないよ普通」

「ハハッ、かもな」


仁士が笑う。

だから私も笑う。

⏰:09/05/08 11:24 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#550 [ゆーちん]
「仲直りね」

「お互いごめん、って事で」


仁士が手を差し伸べたので、その手に応えた。

仲直りの握手。

変な教師と生徒。

⏰:09/05/08 11:25 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#551 [ゆーちん]
最初は同情だった。

可哀想な兄弟だから、って。

私にできる事あるなら助けてあげるよ、って。

偽善者だよね、私。

でもね、今日仁士と喧嘩して蕾夢の寝顔を見てから、何かちょっと考え変わったんだ。


で、仁士と仲直りの握手をした瞬間から私の中にあった同情心が完全に消えた。

⏰:09/05/08 11:25 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#552 [ゆーちん]
こいつらの役に立ちたい、って素直に思えた。

カッコつけてるわけじゃない。

本当に、二人の幸せに貢献したいって思えた。

友情だとか母性愛だとか、どの愛なのかもわかんないけど…とにかく純粋にそう思ったんだ。

⏰:09/05/08 11:26 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#553 [ゆーちん]
「すみれちゃんが妊娠したかも」

「…はぁ?」


冬の更衣室は冷える。

だから私のおサボり場所は屋上に変更。


日中は太陽が温かくて気持ちいいんだ。

⏰:09/05/09 12:16 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#554 [ゆーちん]
ま、晴れてる日限定のおサボり場所なんだけどね。


「生理が来ないって」

「避妊しなかったの?」

「ちゃんとしたよ」


他の生徒におサボりがバレないように、ちょいと入り組んだ場所でのおサボりだけど、ここはここでまた気持ちいいから満足してた。

⏰:09/05/09 12:16 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#555 [ゆーちん]
「検査は?」

「まだ」


日光浴中の私に、見慣れた顔が隣に座り、いきなり何を言い出すかと思ったら、彼女の妊娠疑惑。


最近、あんまりキスとかしてこなくなったと思えば、これだからなぁ…バカ猿め。

⏰:09/05/09 12:17 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#556 [ゆーちん]
「話は検査してからだよ。ちゃんと病院で診てもらいな」

「…なんか最近ママ冷たいね」

「何で?そんなことないよ。最近やっと親離れしたと思っていた子供が、子供できたかもって言って来た事は悲しいけどね」

「…仕方ないじゃん。頼れるのはママしかいないんだから」

⏰:09/05/09 12:18 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#557 [ゆーちん]
そうやって、しょげてる顔なんてまだまだガキそのもの。


ガキがガキ作っただなんて、もし本当だったらどうすんのよ。

ママは今から頭が痛いよ。


彼女にちゃんと病院行くように説得して、結果がわかったらまた教えて、と約束し、栄之助は授業に戻って行った。

⏰:09/05/09 12:19 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#558 [ゆーちん]
帰りぎわ、久しぶりにキスしてくれた。


これは浮気?

それともマザコン?

いや、彼女からすれば浮気だろうな。

でも栄之助からすれば、マザコンなだけ。

私からすると…どうなんだろ、わかんない。

⏰:09/05/09 12:19 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#559 [ゆーちん]
数日後、栄之助から真夜中に電話がかかってきた。


「…はい」

「ごめん、起こした」

「本当だよ。今3時だよ?」

「もうすぐママんちに着くんだ。鍵開けて」


…いきなりだな、おい。


「やだー」

「凍え死ぬから絶対開けてよ?それじゃ」

⏰:09/05/09 12:20 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#560 [ゆーちん]
久しぶりに栄之助の強引さを目の当たりにした真冬の真夜中。


眠い目をこすり、起き上がって玄関の鍵を開けようとしたら、ちょうどチャイムが鳴った。

ナイスタイミング。

⏰:09/05/09 12:20 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#561 [ゆーちん]
扉を開けると、トナカイさん並みに真っ赤なお鼻の栄之助がいた。


家に上げた途端、栄之助は私を抱き締めた。


「どした?」

「…」


何も言わない。


「私に話したい事あるんでしょ?今すぐ聞かせたい?それとも朝イチ?」

⏰:09/05/09 12:22 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#562 [ゆーちん]
私的には朝イチがいいな。

眠くて眠くて頭が回らない。

「ママ、睡魔に弱いから朝イチでいいよ」

「あら、ママ想いね」

「当たり前じゃん」

「お風呂入って来る?またルームドレス姿見たい」

私が笑うと、栄之助も笑ってた。

⏰:09/05/09 12:22 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#563 [ゆーちん]
「俺のルームドレス姿似合ってた?」

「とっても」


栄之助をバスルームに放り込み、私はベッドに戻って、またすぐに夢へと落ちた。


栄之助の温もりの中で眠っていた事に気付いたのは、それから5時間後の朝8時だった。

⏰:09/05/09 12:23 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#564 [ゆーちん]
「遅刻!…って、土曜だった」


慌てて起きた私は相当虚しい奴だ。


土曜だって事をすっかり忘れていたなんて、栄之助にバカだなんて言えない。

⏰:09/05/09 12:23 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#565 [ゆーちん]
まだ気持ちよさそうに眠っている栄之助をベッドに残し、そそくさと着替えや歯磨きを済ませた。


「おはよ、レオ。栄之助まだ寝てるからシーッね」


レオとじゃれながら栄之助が起きてくるのを待った。

最近の若者は遅寝遅起きだね。

お肌に悪いぞー。

⏰:09/05/09 12:25 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#566 [ゆーちん]
「…おはよ」


頭ボサボサの栄之助が起きて来たのは13:00を回ってからだった。

残念、ルームドレスは着ていなかった。


「おはよ。私のスウェット着れちゃうなんて、どんだけ細身なの」

「んー、丈は短いけど」

横幅は全然余裕なのに縦幅がアウト。

⏰:09/05/09 12:26 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#567 [ゆーちん]
足首や手首が見えまくっているスウェット姿には、ルームドレスの時よりも笑えた。

すぐに、昨日着ていた服に着替えた栄之助。

また写真に収め忘れちゃったよ。

⏰:09/05/09 12:26 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#568 [ゆーちん]
「お腹すいたね。何か食べる?」

「うん」


昼ご飯を用意してあったので、朝昼兼用ご飯を食べる事に。


「いただきます」

「召し上がれ」


簡単手間いらずのオムライスを栄之助は美味い美味いと食べてくれた。

⏰:09/05/09 12:29 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#569 [ゆーちん]
和やかなムードを一転させたのはテレビのニュースだった。


妊婦がたらい回しにされた、というニュース。


さすがに【妊婦】だなんて言葉に反応しないはずなかった。

⏰:09/05/09 12:29 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#570 [ゆーちん]
「食べ終わったら話すね」

「ん」


ちょっと気まずい雰囲気のまま、ごちそうさま。


栄之助はソワソワしながら煙草に火をつけた。


「禁煙は?」

「失敗…って、何で知ってんの?」

「仁士に聞いた」

「…そう」

⏰:09/05/09 12:30 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#571 [ゆーちん]
「私も禁煙中なんだよ?精神的に辛くなると手が出るんだけど、もう絶てたかも。10ヶ月ぐらい吸ってない」

「凄いね。俺は1ヶ月もしないうちにアウト」

「精神的に追い込まれてるからでしょ?禁煙失敗したの」

栄之助は頷いた。

⏰:09/05/09 12:30 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#572 [ゆーちん]
「生徒の喫煙見逃す教師なんて、やっぱ違法?」

「ママが捕まったら保釈金出すよ」


苦笑いの二人。

なかなか本題に入れない。


「…栄之助」

「俺、パパになるつもりだったんだ」

⏰:09/05/09 12:31 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#573 [ゆーちん]
煙草を持つ手が震えていた。

いきなり入った本題に、私の気持ちも震えてた。


「すみれちゃんと病院行ったよ。見事妊娠しててさ。だから腹くくったんだ」

「うん」

「でも、すみれちゃんは母親になる気ゼロで…堕ろすの一点張り」

⏰:09/05/09 12:32 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#574 [ゆーちん]
栄之助は煙草の火を消した。


「…それで?」

「手術代ちょうだいって。親父に金ぐらいもらうのは簡単だけど、その金渡しちゃったら…もう赤ちゃんいないんだよ」

「そうだね」

⏰:09/05/09 12:33 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#575 [ゆーちん]
「俺すみれちゃん好きだったけど、赤ちゃんに対してやけに冷たかった事知って、一気に萎えてさ。
本当は産んで欲しいんだけど母親が、すみれちゃんが、子供なんかいらないって邪魔者扱いする姿見て…正直幻滅。
これから一緒にやってく自信ないけど、赤ちゃん産んで欲しいし…でも無理だろうしで、どうしていいか」

⏰:09/05/09 12:33 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#576 [ゆーちん]
何も言えないよ。

二人の問題なんだから、私が口を出す権利なんてない。


「17と18の子供が、子供産むのなんて簡単じゃないのはわかってるけど…」


へぇ、すみれちゃんって年上なんだ。

⏰:09/05/09 12:34 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#577 [ゆーちん]
栄之助が混乱している時に、私の頭は妙に冷静だった。


「すみれちゃんに、ちゃんと伝えたんだ。赤ちゃん産んで、って。殺すなんて耐えられない、って。そしたら…ウザイって言われちゃった。本当ビックリ。
せっかく芽生えたすみれちゃんへの恋愛感情一気にダウン。でも赤ちゃんだけは諦めらんない」

⏰:09/05/09 12:34 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#578 [ゆーちん]
どうしたもんかね。


どうにもできないよ。


「説得してもすみれちゃんは聞く耳持たない」

「で、私にどうして欲しいの?すみれちゃんに説得しろと?」

「違うよ。ただの報告…と17の少年の悲痛な声」

⏰:09/05/09 12:35 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#579 [ゆーちん]
「栄之助、ここがあんたの正念場だよ。ウザがられても、お互いが納得する結果を導かなきゃ。こうしてる間にも、あんたとすみれちゃんの子供は生きてんだよ。早くママとパパに会いたいな、って腹の中で成長してんだよ」

⏰:09/05/09 12:36 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#580 [ゆーちん]
栄之助は泣いていた。


「産む、産まない、どっちにしろ栄之助は今現在の時点で父親なんだよ?
泣いてる暇なんか無いくらい、わかってんでしょ?」

「…うん」

「赤ちゃんとすみれちゃんと、あんたの為にも決断は早いに越した事はない」

⏰:09/05/09 12:37 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#581 [ゆーちん]
栄之助はコクリコクリと何度も頷いた。


「ほら、行きな」


栄之助に手を差し伸べた。

ギュッと握り返してくる手のひらは、しっかりとした男の手。

私に甘えまくってた男の手とは、違って見えた。

⏰:09/05/09 12:37 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#582 [ゆーちん]
「大丈夫、大丈夫」


鼻をすする栄之助を抱き締めてあげた。


ママから子への応援ハグ。


栄之助が抱き締め返してくる事はなかった。


「ありがとう、ママ」

⏰:09/05/09 12:38 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#583 [ゆーちん]
それだけ言って、涙を拭いた栄之助は帰ってった。


きっと今からすみれちゃんのところに向かうに違いない。


まだまだ未熟なガキんちょに、幸あれ。

⏰:09/05/09 12:39 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#584 [ゆーちん]
―――

栄之助とすみれちゃんが結局どうなったのか、わからないまま週が開けた。


月曜日の朝はとても寒い。

火曜日の朝もとても寒い。

そして水曜日の朝ももちろん寒かった。


「ななみん、おはよう」

ガキは朝から元気だ。

おばちゃんは足先が冷えて泣きそうだよ。

⏰:09/05/09 12:45 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#585 [ゆーちん]
「ななみん先生、おはようございまーす」

…このおっさんも朝から元気だ。


「おはようございます、保泉先生」

「もうすぐ期末テストですよ〜」

「あ、そっか。このテストで進学とか留年とか決まってくるんですよね」

⏰:09/05/09 12:46 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#586 [ゆーちん]
懐かしい〜。

毎年必死だったっけ、私。


「留年ギリギリの奴らにはラストチャンスみたいなもんですね」

「なるほどー」


なるほど、なんて言ってるけど学年末テストの大変さを一番味わって来た私なんだ。

わからない訳がない。

⏰:09/05/09 12:49 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#587 [ゆーちん]
「でも、その前にマラソン大会ですね」

「…あぁ。結局マラソン大会に決まったんですか」

「予算が足りないらしくて、例年通りのマラソン大会なんです。教師はマラソンコース誘導とかです」

「了解しました」

⏰:09/05/09 12:50 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#588 [ゆーちん]
保泉はさ、変態だけど新人の私に色々教えてくれるから、ありがたいんだよね。


まぁ、その気づかいもできないんじゃ、ただの変態男か。

⏰:09/05/09 12:51 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#589 [ゆーちん]
「はい、それじゃあ今日はここまでです。委員長の瀬川くん、この資料を職員室まで運ぶの手伝ってね」

「…はーい」


2Cでの授業が終わり、起立、礼、休み時間。


仁士は私を睨みながら教壇に向かって来た。

⏰:09/05/09 12:53 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#590 [ゆーちん]
「せっかくの休み時間がパシりで終わっちゃいまーす」

「エヘッ、ごめんねぇ」


そんなブリっ子、可愛くねぇぞってな目で睨み、資料を持ってくれた。


廊下を歩く。


周りの生徒に聞かれないように小声で喋った。

⏰:09/05/09 12:54 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#591 [ゆーちん]
「登山ダメだったんだね」

「予算がアウト」

「ふーん、ドンマイ」

「…まさか、それ言う為に俺をパシりにした?」

「そうだよ」

「…最悪」

「なんで、いいじゃな〜い。それより、栄之助…」

「あぁ、うん。今日も来てない」

⏰:09/05/09 12:54 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#592 [ゆーちん]
仁士も栄之助にすみれちゃんの妊娠の話は聞いたらしく、気になっていたようだ。


「今日水曜だから、休み始めて3日だね」

「七海んちに行ったのって金曜だろ?」

「正確には土曜の真夜中」

「じゃあ今日で4日か。ママの喝、効いてるといいんだけど」

⏰:09/05/09 12:55 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#593 [ゆーちん]
あの日、私の家に来た事は栄之助から直接聞いたらしく、月曜日の朝イチで私のところに飛んできた仁士。


結局どうなったのかを聞きたくても、当の本人が姿を現さないんじゃ話にならない。


おサボり3日目。

明日こそは登校しろ、と願いながら今日も一日、教師という苦痛を乗り切った。

⏰:09/05/09 12:56 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#594 [ゆーちん]
結局栄之助はその週、学校に来なかった。


あれからちょうど一週間。


気になってはいたけど、自分から電話なんかする気分でもなく、もう一人の方に電話をかける事にした金曜日の21:00前。

⏰:09/05/09 12:57 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#595 [ゆーちん]
「集〜合〜」


有無を言わさず呼び付けた。

金髪頭はご機嫌ななめで来てくれた。


「栄之助に電話しよ」

「自分でしろよ。何で呼び出されてんの俺」

「栄之助だって私より仁士の方が言いやすいよ」

「…で、その栄之助と仁士の会話を盗み聞きするつもり?」

「うん」

「最悪な教師だな」

⏰:09/05/09 12:57 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#596 [ゆーちん]
冷たい事言いながら、顔は笑ってんの。

ドS疑惑。


「気にならないの?もう一週間だよ」

「気にはなるけど無理に聞き出すのも悪いじゃん」

「そうだけど…でも栄之助はきっと聞いて欲しいって思ってるに違いない」

⏰:09/05/09 12:58 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#597 [ゆーちん]
「何でわかんだよ」

「ママの勘」


仁士は小さく笑ってから、栄之助に電話をかけた。


「七海が一緒だって事は内緒だからな。黙ってろよ」

「了解」


完全なる盗み聞きだね。


仁士は共犯者って事で、ちょっと申し訳ない。

⏰:09/05/09 12:59 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#598 [ゆーちん]
2コール目で栄之助は電話に出た。


スピーカー機能にしてもらい、私は黙って二人の会話を聞く。


「もしー、生きてんの?」

「死んでる〜」

「あっそ。今どこ?」

「部屋だけど」

「どうなったの、彼女と子供」

⏰:09/05/09 13:00 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#599 [ゆーちん]
しばし無言。


「おーい、栄之助」

「うん」

「言いたくねぇんなら別にいいけど」


栄之助はまた無言になった。

しばらくすると、悲しい音が聞こえた。

⏰:09/05/09 13:00 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


#600 [ゆーちん]
「おい、泣くな」

「あのさ…笑うなよ?」

「おう」

「俺の子供じゃないんだって」


落胆した。

私も泣きたくなった。

そんな展開、誰も望んでないよ。


「何…で、だよ」

仁士もひどく動揺していた。


「すみれちゃんがそう言うんだから、そうなんだよ。それに、日数も合わない」

⏰:09/05/09 13:01 📱:SH901iC 🆔:JSeFKct6


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