虹色のオセロ

「栄之助。」

頭を押しやると、素直にどいてくれた。

「おはよう、ママ。」

「おはよう。朝っぱらから甘えたさんだね。」

皮肉たっぷりで言ったつもりなのに、栄之助は笑ってた。

「だって目が覚めたら目の前におっぱいがあんだよ？食い付かずにいれる奴なんていんの？」

「知らないよ。寝込み襲われたから今日の片付けは欠席したいですって保泉に言ったらどうなるかなー。」

「アハハ！ちょっとそれ面白い。」

寝起き早々、胸を舐められるのは嫌だけど、隣に笑顔の奴がいるのは悪くない。

特に、昨日と同じパンツで女物のルームドレスを着こなしてる奴だとね。

「笑ってないで起きて。学校遅刻するよ。」

「休もうよ。」

「ダメ。学校行ってサボるのはバレない限り給料に響かないけど、休んじゃうと給料明細見て泣く羽目になるから。」

「たった１日じゃん。」

「ダメったらダメ。しっかり片付けしなさいよ、渡辺栄之助くん？」

「わかりましたよ、柴田先生っ！」

納得していないバカ猿は、そそくさと支度を始めた。

ルームドレスを脱ぐ前に写真撮っとけばよかったな。

あんな面白いもの、滅多に見れないんじゃない？

10月３日、金曜日。

晴れ。

「うん、片付け日和！」

「片付け日和か？暑いだけじゃん。」

「おぉ、おはよう。委員長。」

登校中、仁士に会った。

「もう10月だってのに、絶対温暖化関係してるね。」

「へぇ、そうなの。」

「教師だろ、あんた。」

仁士は笑った。

「そうだ、カレーライスマンに質問。」

「どうしてネーミングセンス無いの？って質問なら受け付けない」

「歌詞に出てきた、Seven seaが笑ってくれるなら何だって出来る…だっけ？あれ私に向けてのメッセージですかぁ～？」

「ちょっと歌詞違うけど」

「そう？こんな感じだったよ」

「自惚れすぎじゃ？」

「そりゃ自惚れちゃうよ。７つの海なんて私に向けてとしか考えらんない。」

「あの歌詞は栄之助が考えたんだ。」

「通りで単純なわけだ。」

「でも良かっただろ？」

「…まあまあかな。」

「栄之助に言ってやりなよ。喜ぶぞ」

「ん」

今朝、本当は栄之助にも聞くつもりだったんだけどドタバタしてて忘れちゃってた。

だから今日、学校で会ったら言ってあげよう。

栄之助は仁士みたく、自惚れてるだなんて笑わないだろうから。