虹色のオセロ
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#51 [ゆーちん]
私、このガキに全て見透かされてるの?


「ついでに追加すれば、この後バレーボール大変の準備しなきゃなんのいの、面倒だなって。」


クラス委員長は笑った。


「どうせ俺の名前覚えてないんでしょ?」

⏰:09/04/22 16:29 📱:SH901iC 🆔:8.MBcNuk


#52 [ゆーちん]
こいつには嘘ついても仕方ないかなって思った。


「覚えてない。」

「瀬川仁士です。」

「…クラス委員長のね」

「そういうのは覚えてるのに名前覚えてないなんて…先生変な人ですね。」

「…どっちが。」

⏰:09/04/22 16:31 📱:SH901iC 🆔:8.MBcNuk


#53 [ゆーちん]
私も笑った。


本当に17才か?ってぐらいの大人なオーラが出る瀬川仁士に、私は聞いた。


「私の本性探って、マニアか何か?」

「マニアよりタチ悪いよ、俺。」

⏰:09/04/22 16:32 📱:SH901iC 🆔:8.MBcNuk


#54 [ゆーちん]
「ふーん…おいで。ここじゃ何だから。」


私は、瀬川仁士を更衣室に連れて行った。


鍵も閉めた。

この前の栄之助の時と逆だね。


あ、でも別に変な事しないし。

話聞くだけ。


それと、ジャージに着替えるだけ。

⏰:09/04/22 16:33 📱:SH901iC 🆔:8.MBcNuk


#55 [ゆーちん]
「襲われるかもとか思わないんですか?」


私はジャージに着替える為、服を脱いだ。


下着だけになった。


「思わない。」

「どうして?俺も男ですけど。」

⏰:09/04/22 16:34 📱:SH901iC 🆔:8.MBcNuk


#56 [ゆーちん]
「でもあんたは私を女として見てないんでしょ?」

「あれ?わかっちゃいました?」


クラス委員長は眼鏡かけてるってイメージなんだけど、こいつは眼鏡なし。


そのうえ金髪だし。

⏰:09/04/22 16:35 📱:SH901iC 🆔:8.MBcNuk


#57 [ゆーちん]
でも頭いいんだよ。


別に派手な遊びもしてないし、何より雰囲気がかなり落ち着いている。


同じ歳の奴と話してるみたい。


「伊達に歳食ってないから、男の事はまぁまぁわかる」

「…今の言葉本当ですか?」

⏰:09/04/22 16:35 📱:SH901iC 🆔:8.MBcNuk


#58 [ゆーちん]
「え?」


ジャージに着替え、髪を結ぶ私に鋭い視線が向けられていた。


「男の事はわかるんですよね?じゃあ俺が今、何考えてるかわかります?」


…わかりません。


そもそも興味ありません。

⏰:09/04/22 16:36 📱:SH901iC 🆔:8.MBcNuk


#59 [ゆーちん]
更衣室に連れ込んだのだって、教室で誰かに盗み聞きされてちゃ面倒だったし、私着替えなきゃなんなかったし。


別に瀬川仁士が気になるからここに連れて来たわけじゃない。


だから何考えてるとか、わかんないし、わからなくてもいい。

⏰:09/04/22 16:37 📱:SH901iC 🆔:8.MBcNuk


#60 [ゆーちん]
「わかんない。」

「矛盾してますよ、言ってること。」

「んー、そうだね。」

「先生にお願いがあるんです。」

「お願い?」


瀬川仁士は、頭を下げた。

⏰:09/04/22 16:41 📱:SH901iC 🆔:8.MBcNuk


#61 [ゆーちん]
「金貸して下さい。」

「…え?」

「1万円。お願いします。来週必ず返すから…お願いします!」

「ちょっと、頭上げて。何なのよ、新手のカツアゲ?」

⏰:09/04/22 16:41 📱:SH901iC 🆔:8.MBcNuk


#62 [ゆーちん]
頭を上げようと引っ張ったけどピクリともしない。


「ちょっと!ねぇってば。」

「絶対返すから…お願いします。」

「1万ぐらいバイトしろよ。」

「前借り頼んだんですけど断られちゃって。」

⏰:09/04/22 16:41 📱:SH901iC 🆔:8.MBcNuk


#63 [ゆーちん]
「じゃあ親父かお袋に言え。頼むから頭上げてよ。頭下げられるの嫌いだから。」

「親、いないんです。」

「はぁ?」


瀬川仁士はやっと頭を上げてくれた。


「生徒資料見てもらえばわかります。俺、親いないんで。」

⏰:09/04/22 16:43 📱:SH901iC 🆔:8.MBcNuk


#64 [ゆーちん]
「何があったか知んないけど1万円ちゃんと返してくれんの?」

「約束します。」

「もし私が断ったら、どうしてたの?」

「強盗、カツアゲ、最悪…俺を買ってもらうとか。」

⏰:09/04/22 16:43 📱:SH901iC 🆔:8.MBcNuk


#65 [ゆーちん]
買ってもらうって…。


意味わかってんのかよ、ばかたれ。


「はぁ〜。面倒なことだけは起こさないでよ?私、貸すから。」

⏰:09/04/22 16:44 📱:SH901iC 🆔:8.MBcNuk


#66 [ゆーちん]
ありがとうございます、と言ってまた頭を下げた瀬川仁士。


「財布、職員室だから取って来る。教室で待ってて」

⏰:09/04/22 16:46 📱:SH901iC 🆔:8.MBcNuk


#67 [ゆーちん]
そのあと、新手のカツアゲなんだか本当に金が必要だったのかわからないけど、私と瀬川仁士以外に誰もいない教室で、自分の生徒に1万円を渡した。


で、バレーボールの準備に行くと、遅いと叱られた。


踏んだり蹴ったりだね。

⏰:09/04/22 16:46 📱:SH901iC 🆔:8.MBcNuk


#68 [ゆーちん]
翌日のバレーボール大会、本番。


この前の予行練習とまるっきり同じものが始まった。


「それではみなさん、正々堂々戦ってください。」

⏰:09/04/26 12:40 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#69 [ゆーちん]
体育教官の話、終わり。


みんな各自散らばってボールを地面に落とさないゲームを始める。


「マーマ。」

「…こら、二人きりのとき以外その呼び名禁止だよ。」

「大丈夫大丈夫。誰も聞いてないから。」

⏰:09/04/26 12:41 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#70 [ゆーちん]
「どうだか…それより試合行かなくていいの?」

「まだ時間あるから暇なんだ。ママとお喋りしようと思って。」

「あーら、調度よかった。ママも今から暇なんだ。バレーボール大会終わるまでっ!」

⏰:09/04/26 12:41 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#71 [ゆーちん]
教師はやることないのに何で準備手伝わされたんだって感じ。


今ジャージ着てる私、すっごい虚しい。


大会終わるまで生徒の安全を見張れだと?

⏰:09/04/26 12:47 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#72 [ゆーちん]
んなもん知るかぁ!


自分の身は自分で守れ。


「どっ…うしたの…ママ。機嫌悪いね。」


びびってんじゃないよ渡辺栄之助。

⏰:09/04/26 12:47 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#73 [ゆーちん]
「試合まで時間どれくらいあるの?」

「30分ぐらいかな。」

「ん。じゃあちょっと来い。」


私は栄之助を連れ、更衣室に向かった。

⏰:09/04/26 12:48 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#74 [ゆーちん]
更衣室に入り、鍵をかける。


言い忘れてたけど、この更衣室使うの私だけみたい。


女の教師もいるにはいるんだけど、もう年配の方だからわざわざ更衣室で着替えるって機会がなくなるみたい。

⏰:09/04/26 12:49 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#75 [ゆーちん]
だからこの更衣室は私だけの休憩所みたいな?


でもまぁ、たまーに掃除係の人が来るけどね。


「何?ママったらわざわざ鍵閉めて俺と何する気?」


バカ猿は子供みたいにはしゃいでいる。

⏰:09/04/26 12:49 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#76 [ゆーちん]
「どーしても栄之助と、やりたかったの。」

「…ほえ?」


下心まる見えの栄之助。

でもごめんね。

その気はない。


私が栄之助とやりたいのは、これ。

⏰:09/04/26 12:50 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#77 [ゆーちん]
「じゃーん!オセロゲーム」


ロッカーから大きいボードを取り出すと、栄之助はあっけらかんとした表情を浮かべた。


「親子の遊びっつったらオセロっしょ?」

「…そう、なの?」

「少なくとも柴田家はそうだった。」

⏰:09/04/26 12:54 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#78 [ゆーちん]
私は小さい時、よくお母さんとオセロゲームをして遊んだ。


私が勝つまでお母さんは相手してくれた。


どうってことない幼い記憶だけど、栄之助とオセロしてあげたいって思った私…

これって母性本能ってやつなのかなぁ。

んー…違うか。

⏰:09/04/26 12:55 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#79 [ゆーちん]
何にせよ久しぶりにオセロがやりたくなったのも一理あるし?


言っとくけど私、強いよ〜。


「はい、ママの負け。」

「…」


あっれー?

腕落ちたかな。

⏰:09/04/26 12:56 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#80 [ゆーちん]
「もう一回!」

「負けず嫌いだね。もう3回目だよ?」

「いいの、はい4回戦するよ。」

「その前に俺ボール遊びしてこなきゃ。」

「あぁ…そうだっけ。そんじゃあここで待ってるから試合終わったら来てよ。」

⏰:09/04/26 12:57 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#81 [ゆーちん]
「えぇ?俺のカッコイイ姿見に来ないの?」

「行かなーい。」

「応援してくんないの?」

「しなーい。」

「もうっ、ママ嫌い。行ってきます。」


ふて腐れながら更衣室を出て行く栄之助を、私はニンマリ笑顔で見送った。

⏰:09/04/26 12:57 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#82 [ゆーちん]
待ってる間、私は眠っていたらしい。


外は天気がよくて、太陽の温もりが更衣室に注ぎ込む。


心地よくて、ついつい居眠りしていたみたい。

⏰:09/04/26 12:59 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#83 [ゆーちん]
ふと目が覚めた時、オセロボードの上にメモが置いてある事に気付いた。


【起こしても起きないママきらい。息子は今から決勝戦です】


栄之助…ちゃっかり決勝まで進んだんだ。


つーか私そんなに爆睡してたのか。

⏰:09/04/26 12:59 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#84 [ゆーちん]
おかげで気持ち良かった〜。


学校で昼寝って何でかわかんないんだけど気持ちいいんだよね。


私は欠伸をしながら体育館に向かった。


…あれ?

ママ、ナイスタイミングかも?

⏰:09/04/26 13:00 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#85 [ゆーちん]
「栄之助!」

「あいよっ。」


高く上げられたトスを軽々しく、相手コートに打ち込む栄之助の姿。


自画自賛するはずだ。


カッコイイじゃん。

ガキのくせになかなかやるねぇ〜。

⏰:09/04/26 13:01 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#86 [ゆーちん]
と、相手チームを見ると…金髪頭発見。


チャラ男の栄之助よりも明るい髪ってどうなのよ、クラス委員長さん。


「仁士、打て!」

「ん。」


スポーツ万能の金髪王子はアタックを決め、チームメイトと笑顔のハイタッチ。

⏰:09/04/26 13:01 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#87 [ゆーちん]
こいつもなかなかカッコイイじゃん。


私、カッコイイガキんちょに目ぇ付けられちゃった感じ?


でも、だからって何かが変わる訳もなくこれからも退屈な毎日を過ごすんだろうなって、この頃は思ってた。

⏰:09/04/26 13:02 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#88 [ゆーちん]
「んあ〜。」

「ほら、栄之助。ダラダラしないで!」

「だってさ、まさか負けるなんて思わなかったんだもぉん。」

「てゆーか何で2C同士で争ってたの?」

「…ママ本当に教師?各クラス3チームほど作って、それで戦うの。だから同じクラスだろうが違うクラスだろうが、チームが違えば敵なわけ。わかった?」

⏰:09/04/26 13:03 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#89 [ゆーちん]
放課後、拍子ぬけしている栄之助は更衣室でダラダラと椅子にねっころがっていた。


「んー…わかるようで、わかんない。」

「はぁ〜。ショックぅ。」

「別に賞金や賞品が出る訳じゃないんだし、もういいじゃん。」

⏰:09/04/26 13:05 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#90 [ゆーちん]
「勝たなきゃ意味ないのぉ。」

「予行練習で優勝してたじゃん。」

「予行練習じゃ嫌!ママ〜、慰めてぇ。」

「無理。ママ眠いから早く帰りたい。だからさっさとこの部屋から出てって。」

⏰:09/04/26 13:05 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#91 [ゆーちん]
あれだけ爆睡してたじゃん、とブツブツ言う栄之助を外に追いやろうと背中を押した。


…ら、腕を引っ張られ抱きしめられていた。


「あー、もう、何?」

「甘えてんの。」

「痛いんだけど。」

⏰:09/04/26 13:06 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#92 [ゆーちん]
そう言うと、抱きしめる力が緩まり…唇を重ねてきた。


何でキスしてんの、こいつ。


「…っ、ちょっと。」


私が拒否しても、栄之助のキスは止まなかった。


何度も何度も唇を押し付けてくる。

⏰:09/04/26 13:07 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#93 [ゆーちん]
嬉しくもないし、嫌でもないキス。


どんどんどんどん、栄之助は加速して行った。


「…んっ、こら。」

「何?」

「親子のキスは、舌入れないよ。」

「…そっか。」

⏰:09/04/26 13:08 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#94 [ゆーちん]
キスが終わると、また抱きしめられた。


「慰めてよ、ママ。」

「やーだ。甘えるな。強い子になれ。」

「ヘヘッ。厳しいママだね。」


栄之助は笑顔を残し、そのまま更衣室から出て行った。

⏰:09/04/26 13:08 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#95 [ゆーちん]
―――


バレーボール大会の放課後のあの時から、栄之助はキスを求めてくるようになった。


軽いキスだけなら許してあげてた。


だけど舌はダメ。


入れて来たら殴ってやった。

⏰:09/04/26 13:29 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#96 [ゆーちん]
「いってぇ!」

「あんたがルール違反するから。」

「何でダメなのぉ?」

「だから言ってんじゃん。舌入れるなんて親子のキスじゃないもん。」

「ケチ!」

「ケチで結構、バカ猿。」

「もぉー!」

⏰:09/04/26 13:29 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#97 [ゆーちん]
叱られて怯んでも栄之助は懲りずに私にキスして来た。


何の感情もこもってないキスを更衣室でする。


それってどうなの、私。


「へぇ〜。そういう事。」

⏰:09/04/26 13:30 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#98 [ゆーちん]
あーあ、やっちゃった。


更衣室の鍵、閉めんの忘れた。


恐る恐る、扉の方を見ると…


「誰にも言わないで。」

「どうしよっかなぁ。クラス会議にでもかけようかな?」

「勘弁して下さい、委員長さん。」


瀬川仁士が立っていた。

⏰:09/04/26 13:35 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#99 [ゆーちん]
「イチャつくなら鍵ぐらい閉めろよな。」


そう言って瀬川仁士は扉を閉め、私に近付いた。


「…お願いだから内緒にしてね。それより何か用?」

「これ、助かった。ありがとね、センセ。」

⏰:09/04/26 13:35 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


#100 [ゆーちん]
瀬川仁士は私に封筒を手渡した。


「何…これ。」

「1万円。」

「あぁ。」

「先生にお願いしてよかったよ。」

「…ってか、この1万あげるから栄之助との事内緒にしててくんない?」

⏰:09/04/26 13:36 📱:SH901iC 🆔:FFIr2eIk


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