虹色のオセロ
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#541 [ゆーちん]
「まま…」


小さな声だったけど、その切なげな声は私たちの部屋まで届いて来た。


それを聞いて、いたたまれない気持ちになる。


あんな小さな子に、私は苛立ちをぶつけてしまったんだから。

⏰:09/05/08 11:19 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#542 [ゆーちん]
それでなくても親の愛が少ない子なのに。


「泣いてる?」

「いや、たぶん寝言」

「ちょっと私、見てくる」


隣の部屋である寝室に行き、蕾夢の様子を覗いた。

ごそごそと布団でもがいていた。

⏰:09/05/08 11:20 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#543 [ゆーちん]
「ママいるよ」


ママでもないのに、そう言って手を握ってあげると、蕾夢の動きが止まる。


嘘も方便。

⏰:09/05/08 11:20 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#544 [ゆーちん]
蕾夢に布団をかぶせ、仁士が待つ部屋に戻る。

2本目の煙草に火を点けていた。


「未成年の喫煙は法律で違反されてます」

「…棒読みだな。蕾夢は?」

「ん、大丈夫」

「そ。ありがと」

「うん」


私が椅子に座ると仁士はさっきの続きを喋り出した。

⏰:09/05/08 11:21 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#545 [ゆーちん]
「最近バイト大変でさ。学校にも行かなきゃで、寝不足続いてたんだ」

「…ふーん」


やっぱりね。

私が睨んだ通りだ。

⏰:09/05/08 11:22 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#546 [ゆーちん]
「家にいても蕾夢がいるから昼寝もできなくて…託児所に行くの嫌がるから無理矢理連れてく訳いかないし。蕾夢のこと好きだけど、でも…一緒にいすぎると疲れるんだ」


申し訳なさそうに仁士は呟いた。

パーフェクト人間が私に初めて溢した弱音。


「こんな兄貴最低だよな」

「あんたは偉いよ。兄貴って役目をちゃんと務めてんじゃん。最低なんかじゃない。最高の兄貴だよ」

⏰:09/05/08 11:23 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#547 [ゆーちん]
吸わない煙草からは、白い煙が虚しく立ち上っていた。


「自分がいくら辛くても蕾夢に当たらないのは偉いよ。私さっきあんたが飛び出してった後、蕾夢に冷たい態度取っちゃったんだ。八つ当たり。私の方が最低だよ。ごめんね」

⏰:09/05/08 11:23 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#548 [ゆーちん]
「いや、あれは俺が悪かったから…」

「ううん。違う。仁士が寝不足になるほど頑張ってんの私ちゃんと知ってたのに、助けてあげられなかったんだもん。副担任として情けないよね」

「副担任って…懐かしい響き。なんか七海が教師だってこと、たまに忘れる」

⏰:09/05/08 11:24 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#549 [ゆーちん]
「それって私がまだ17の少女みたいだって事?」

「は?違うし」

「私も仁士が生徒だってこと、たまに忘れるよ。つーかこんな厚かましい生徒なんて、なかなかいないよ普通」

「ハハッ、かもな」


仁士が笑う。

だから私も笑う。

⏰:09/05/08 11:24 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


#550 [ゆーちん]
「仲直りね」

「お互いごめん、って事で」


仁士が手を差し伸べたので、その手に応えた。

仲直りの握手。

変な教師と生徒。

⏰:09/05/08 11:25 📱:SH901iC 🆔:OrUQies.


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