虹色のオセロ
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#602 [ゆーちん]
「栄之助、私だよ。聞こえる?」
「…え、ママ?なんで?」
「ごめんね。仁士の事、責めないであげて。私が無理矢理盗み聞きしてたの」
「アハッ…そっか」
泣きながら笑う栄之助が、フッと脳裏をよぎる。
「栄之助、私…あんたに何て言ったらいいか」
:09/05/09 13:02 :SH901iC :JSeFKct6
#603 [ゆーちん]
「何も言わなくていいよ。それより、いま二人は柴田家?」
「そうだけど」
「俺も行っていい?一人でいると虚しいんだ。ママと仁士の前でバカみたいに泣きたい気分」
鼻をすすりながら精一杯明るい声を出す栄之助。
:09/05/09 13:03 :SH901iC :JSeFKct6
#604 [ゆーちん]
「おいで。仁士と待ってるから」
「うん」
電話を切ると、仁士は眉を下げながら私に笑いかけた。
「俺と栄之助の友情が崩れたら、どう責任取ってくれんの?」
「…ごめんなさい。いてもたってもいられない状態になりまして」
:09/05/09 13:03 :SH901iC :JSeFKct6
#605 [ゆーちん]
仁士は優しく笑いながら
「いいママじゃん」
と言って私の頭をポンッと叩いた。
その手はそのままレオに行き、栄之助が来るまでの数分間、仁士はレオと、私は一人で過ごした。
私と仁士の間に、会話がなかった。
お互い、考え事をしていたからだと思う。
:09/05/09 13:04 :SH901iC :JSeFKct6
#606 [ゆーちん]
インターホンが鳴るなり、私はドアを開けて、目が潤んでいた栄之助を抱き締めた。
「はいはい、中でやれよ」
仁士は、私と栄之助が抱き締め合ってるのを見て呆れながら笑ってた。
:09/05/09 13:05 :SH901iC :JSeFKct6
#607 [ゆーちん]
ドアを閉めて中に入る。
私は、栄之助を抱き締めながら泣いていた。
この私が泣いていたんだよ?
生徒に興味のない私が、生徒の悲しい事実を知って、涙を流す。
私、変わっちゃったね。
:09/05/09 13:06 :SH901iC :JSeFKct6
#608 [ゆーちん]
「ママが叱ってくれたから、俺、納得するまですみれちゃんに説得したんだ。ウザがられても容赦なく」
「うん」
「そしたら、すみれちゃんため息吐きながら言ったんだ。栄之助の子供じゃない、って」
「…うん」
「舞い上がりすぎて、すみれちゃんと最後にそういう事した日忘れててさ。よく思い出したら日数が全然合わなくて。間違いなく俺の子供じゃないんだ」
:09/05/09 13:06 :SH901iC :JSeFKct6
#609 [ゆーちん]
「うん」
「でも赤ちゃん殺すなんて可哀想じゃん。だから俺の子供じゃなくてもいいからって言ったんだけど…ダメだった。昨日、勝手に手術してて…俺、もう訳わかんなくて」
「あんた偉いね。ママの誇りだよ」
「日曜から水曜まで粘って、木曜に赤ちゃんいなくなって…そんで今日。学校行く気にもなんなくて放心状態の俺にすみれちゃんから別れを告げられ…みたいな?笑っちゃうよね」
:09/05/09 13:07 :SH901iC :JSeFKct6
#610 [ゆーちん]
栄之助は泣きながら無理矢理笑顔を作ってた。
私は子供みたいに栄之助の手を握りながら泣いた。
仁士は何も言わず、ただ黙ってレオを抱っこしていた。
「笑わないよ。小さな命を守ろうとしたあんたを笑う奴がいるなら私がそいつ、ぶん殴る」
:09/05/09 13:07 :SH901iC :JSeFKct6
#611 [ゆーちん]
「怖っ」
泣き笑いする栄之助。
「栄之助、よく頑張ったね。あんたならまた素敵な女の子に出会って、小さな命にも出会えて、幸せになれるよ」
「…だといいね」
:09/05/09 13:08 :SH901iC :JSeFKct6
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