吸血鬼死重奏
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#25 [渚坂]
「た、たすけ――」
あぁ、もう声もでない。先ほどから響き渡る呻き声はだんだんと近づいてくる。
あ、私ここで死ぬんだ…。
頭の一部はどこか冷めていて、今私が置かれた状況を把握している自分がいる。そして、動かなかったと思っていた足はあっけなくバランスを崩し、私の膝は地面についた。
:09/05/12 20:22 :F905i :wyCCmGSs
#26 [渚坂]
「由、逃げろ!!」
死を覚悟した瞬間、骨が折れるんじゃないかって思うほど強い力で腕を掴まれ、ぐいっと引っ張り上げられた。
「しゃがみ込んでる隙はないぜ!!ほら行くぞ!!」
:09/05/25 20:05 :F905i :Kt2brzEY
#27 [渚坂]
そして、次の瞬間その声の主は私の腕を掴んだまま走り出した。風を切りながら、風を受けながら、風を感じながら、体育の成績が2だった私が「あれ?こんなに足速かったっけ」と疑問に思うぐらいのスピードで周りの風景が変わっていく。
それと比例するように先ほどまで続いていた呻き声が小さくなり、私自身も落ち着きを取り戻してきた。
:09/05/25 20:06 :F905i :Kt2brzEY
#28 [我輩は匿名である]
わ〜(^∪^)
更新されてる★
頑張ってください!
:09/05/25 20:54 :SO705i :hq2R5FC2
#29 [渚坂]
>>28ありがとうございます!!
更新遅くてすみません…;;;
ちまちま更新になるかと思われますが、これからもよろしくお願いします(/_;)
:09/05/26 19:24 :F905i :gJkM7LOU
#30 [渚坂]
「由、いったんあの木の後ろに隠れるぞ。それまで走れるな?」
声の主は私の腕を掴んでいない手で前方の木々を指差した。石やら木の根やらで足元は不安定だが、前方の木々まではなんとか走れそう。
「は、走れ、る……!!」
私の腕を引っ張る人物とは違って、必死で声を出したにも関わらず情けない声しか出なかった。仕方ない、私がこんなに走ってるなんて世にも奇妙な出来事なんだから。
:09/05/30 16:36 :F905i :3t9p8Xfg
#31 [渚坂]
そして足に急ブレーキをかけ、飛び込むように、いや、ほとんどなだれ込むようにして私たちは木の影へと身を滑らせた。うわっ、車は急に止まれないのよ!!……じゃなくて、私は急に止まれません!!
「よし、ここならちょっとは大丈夫だろ。……ったく、あの馬鹿野郎何回も出てくんじゃねーよ。毎回毎回、由を守るこっちの身にもなれって話」
:09/05/30 16:36 :F905i :3t9p8Xfg
#32 [渚坂]
聞くに耐えない悪態をつきながら、私の隣に腰を下ろしていた人物は木から顔を半分ずらし背後の様子をうかがっていた。
「あ…、ありが、と……」
情けなくも、まだ上手くしゃべれない。今の私は息を吐きたいのか、吸い込みたいのか分からずに口をぱくつかせるだけ。お礼を言いたいのに…。
:09/05/30 16:37 :F905i :3t9p8Xfg
#33 [渚坂]
「ほらほら無理すんなよ。ったく、お前はほんっとうに足おせーな」
……なっ!!
人がしゃべれないのをいいことに「鈍感」「短足」「馬鹿野郎」と、私の繊細で壊れやすいガラスのハートを踏みにじって来やがった。
:09/05/30 16:38 :F905i :3t9p8Xfg
#34 [渚坂]
「黙ってれば言いたいこと言って…!!助けてくれたお礼を言いたかったけど、もう口が裂けても言ってやらない!!!!」
「おお、そんだけ威勢があれば大丈夫だな」
そう言って隣に座っていた、つまり私を助けてくれた“綾辻 壊(アヤツジ カイ)”は私の頭を撫でた。その手つきがあまりにも優しかったもんだから、不覚にも一瞬ドキッとしてしまったことは秘密にしといてもらえるとありがたいです。
:09/05/30 16:39 :F905i :3t9p8Xfg
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