吸血鬼死重奏
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#79 [渚坂]


私は手に持っていた十字架を誰太君の体に振り下ろした。
……が、私が腕を振り下ろした瞬間、あろうことか魔王はあれだけ密接に接触していた私の体を突き飛ばしてきた。

ゆっくりと視界が反転する。


「……へっ?」


あれだけ意気込んでいたにも関わらず、気の抜けるような声を発しながら私はしりもちをついてしまった。


⏰:09/08/17 00:00 📱:F905i 🆔:SlJXxl/w


#80 [渚坂]


「ははは!残念だったな。お前の考えなど手に取るように分かるぞ」


魔王の乾いた笑いが響く。
ごめん綾辻。私やっぱり何も出来なかった……。

「くっ……!!」

今はただ魔王を睨みつける。虚勢にしかすぎないのだけど、そうでもしないとこの毒々しい空気にのまれてしまいそうで……。

⏰:09/08/17 00:01 📱:F905i 🆔:SlJXxl/w


#81 [渚坂]


「おお!その挑戦的な顔いいな。俺は威勢のいい女は割と好きだぞ」

「五月蝿いっ!お前は綾辻を……」


私の火照った頬を冷やすように一筋の滴が流れ落ちた。泣いてもどうしようもないことぐらい分かってるけど、一回溢れ出した涙は止め処なく私の頬を濡らす。

⏰:09/08/17 00:01 📱:F905i 🆔:SlJXxl/w


#82 [渚坂]


「さて、邪魔者もいないことだ。思う存分いただくとしよう」

そして私は腕を捕まれ無理やり腰を上げた。先ほどと同じように腰に手を回され、互いの吐息が混じり合うほどに顔を近づけられた。


「や、だ…。やだぁ……!!」


必死で魔王の胸を押し返すも、残りの手で頭を押さえられ、抵抗も虚しく私はあっさりと唇を奪われた。

⏰:09/08/17 00:03 📱:F905i 🆔:SlJXxl/w


#83 [渚坂]


触れ合った“誰太君”の唇は氷のように冷たく、人間味のない無機質な感触がした。

「ふっ……!ん゙ん゙ー!!」

唇を塞がれたまま魔王の腕の中で暴れ回るが、より強い力で頭を押さえつけられ、より深く唇を当てられる。

⏰:09/08/20 18:49 📱:F905i 🆔:ZnOLqX92


#84 [渚坂]

今の吸血鬼は滅多なことがない限り首筋から血を吸ったりはしないと誰かが言っていた。
ということは、こうやって唇を合わせている間にも私の血はどんどん吸い取られている……のだろう。


あ、なんか眠たくなってきた……。雪山で寝てはいけないように、この状況で瞼を落としてしまったら完全に魔王の思うがままである。
しかし、容赦なく押し寄せる睡魔の波に頭が霞んでくる。ね、寝ちゃだ…め……

⏰:09/08/20 18:50 📱:F905i 🆔:ZnOLqX92


#85 [渚坂]






「……由から離れろ!」


不覚にも睡魔に負けそうになっていた意識の中で大きな声が響いたかと思うと、いきなり襟を引っ張られ私は魔王から体ごと唇を剥がされた。

「ふぉ……?」

と、同時に急に引っ張られせいで覚束ない足はバランスを崩し、また情けない声を上げながら私は盛大に後ろに倒れ込んだ。……と思ったら、私は後ろから抱き抱えられるようにしっかりと受け止められていた。肩にしっかりと私を掴む温かい手の感触を感じる。


⏰:10/01/24 11:48 📱:F905i 🆔:mTQM6q/E


#86 [渚坂]


「闇ノ宮、今だ!!」


頭のすぐ上から何者かの声が降り注ぐ。かと思えば、それかららは全てがドラマのように一瞬で片付いた。


私が一回瞬きをする度に草陰から私と同じ制服を着た人たちがぞろぞろと飛び出し、待ってましたと言わんばかりに魔王を取り囲んだ。
この間僅か2秒程度。

そして、輪の一歩外で腕組みをした少女が口を開いた。彼女の名前は闇ノ宮 サラ。腰まで伸びた長い髪が特徴の私の同級生で、もちろん吸血鬼である。


「目標は魔王。体は三國 誰太のだから力の加減は各自でお願いね!」


その言葉を合図に生徒たちが掌を魔王に向けた。



⏰:10/01/24 11:49 📱:F905i 🆔:mTQM6q/E


#87 [渚坂]


それからのことは……、なんと言えばいいのだろうか。本当に私は私の目を疑った。この世にこんな不思議が存在したなんて……。つまり、彼らの掌からは常識じゃ考えられないような大量の高エネルギーを放ったわけで……。


「ふぇ……」


常識じゃ考えられない事態に開いた口が塞がらない。私の間抜け面の目の前で数多の光線は魔王を包みこんだ。

⏰:10/01/24 11:50 📱:F905i 🆔:mTQM6q/E


#88 [渚坂]

「もう大丈夫だから」

呆気にとられていた私に、優しい声が舞い降りた。少しだけ首を後ろに回し、私を支えてくれていた人物の顔を見上げる。

「綾辻……?」

見上げたすぐそばに、彼のチャームポイントであるオレンジ色の髪が緩やかに風になびいていた。魔王にやられた時はどうしようかと思ったけど、無事でよかった。私の肩を掴む綾辻の温かい手に心の中のしこりが溶けていくような安堵を感じる。

「お前だいぶ血抜かれたみたいだな。顔が死んだ魚みたいだ……、ってそれはもともとか!あはは!」

……この口の悪さと軽快な笑い声は綾辻に間違いない。一瞬でもと安堵した私が馬鹿でした。

⏰:10/01/24 11:51 📱:F905i 🆔:mTQM6q/E


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