星とぽんず。
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#101 [七瀬]
『がんばれ!がんばれ!
林原ー!』
あたしは、我を忘れて
かなり応援した。
今、振り返ると、
顔から火が出そう。
でも、それだけ
林原を応援したい気持ちがあった。
あたしの、叫びが通じたのか、林原は相手と互角に張り合っている。
:09/06/02 04:15
:N703iD
:crs90Bzo
#102 [七瀬]
‥でも、
結果は負けだった。
『お疲れ、林原』
あたしが駆け寄ると、
林原は、「負けちゃったな」って笑った。
やっぱり身長差が
かなり大きかったみたいで一瞬の隙を突かれた。
でも‥頑張ったよ、林原。
:09/06/03 04:33
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#103 [七瀬]
暑い中、体を動かしたからか、林原の頬は赤く、少し息も荒かった。
『‥すごいよ。
あんな大きな相手に立ち向ってくなんて』
「でも、今回だけは勝ちたかったなー」
林原は悔しそう。
でも、きっとあたしが
いちばん悔しい。
:09/06/03 04:40
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#104 [七瀬]
隣を見ると、さっきの
林原の対戦相手が。
やっぱ、身長差が違いすぎる。
不公平だよ。
あたしは、
無意識に睨んでいた。
「‥‥ぷっ‥はははは」
すると、
いきなり笑いだした。
:09/06/03 15:58
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#105 [七瀬]
な‥なになに!?
なんで笑ってんの!??
頭が着いていかない。
あれ‥
この声って、まさか‥‥
「久しぶりだね。
ぽんずちゃん」
相手が面を外した瞬間、
あたしは、『あっ!』と、自然に声が漏れていた。
:09/06/03 16:01
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#106 [七瀬]
『‥‥あ‥歩志!?』
「驚きすぎ」
そうやって、
まだクスクス笑うアイツとは対象的に驚きを隠せないあたし。
だ‥だってだって!
『なんで、歩志がここにいんの?なんで、剣道してんの!?』
「質問攻めだね」
びっくりするじゃん。
:09/06/03 16:07
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#107 [七瀬]
「まず、最初の質問から、答えてくと、俺は剣道部だから、ここにいんの。」
うんうんと首を縦に振る。
「‥で、2つ目の質問にも、答えなきゃダメかな?
同じ答えなんだけど」
あ‥そういう皮肉混じりな言葉が歩志らしい。
『‥けっこう』
:09/06/03 16:11
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#108 [七瀬]
「理解してくれたなら、なにより」
あー‥‥やばい。
やばすぎ。
その顔とか、
その声とか。
久しぶりすぎて、
しかも、いきなりで。
免疫ないよ、あたし。
だから、
そんな笑顔見せんな〜っ‥
:09/06/03 16:15
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#109 [七瀬]
いきなりの不意打ちに、
かなりどきどきなあたし。
「だから、負けたくないって言ったの」
『‥林原』
いけない。
興奮しすぎて、忘れてた。林原のこと。
「でも、今日初めて対戦したけど、林原くん強いねー」
:09/06/03 16:20
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#110 [七瀬]
「嫌味かよ」
なんか‥ヤな雰囲気‥‥
「違うよ。もし俺と林原くんの身長差が10pしか変わらなかったら、負けてたね、俺。」
「‥やっぱ、嫌味じゃねーかよ」
それから、林原が牛乳を飲んでたのを、あたしはしばしば目的することになる。
:09/06/03 16:24
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#111 [七瀬]
『歩志が、剣道部だったなんて‥‥ほんっと意外!』
「‥‥‥‥」
『‥あれ、林原?
聞いてる?』
「‥‥‥‥‥‥」
今、あたしは林原と
二人で電車に乗っている。
歩志とは、方向が逆だから駅で別れた。
:09/06/03 16:31
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#112 [七瀬]
さっきから、
林原はなんも話さない。
『はやしば‥』
「お前さ」
『ん?』
やっと、しゃべってくれたので、あたしは少し身を乗り出した。
:09/06/03 16:34
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#113 [七瀬]
「‥さっきから、八田の話ばっか」
ぶっきらぼうな口調。
少しの沈黙のあと、
『‥ごめん』と、だけ謝った。
そりゃ、林原といるときに歩志の話ばっかじゃ、
聞いてる林原にとっちゃ気分は良くないよね。
:09/06/03 16:37
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#114 [七瀬]
「あのさ、ストレートに聞くけど、いい?」
また、しばしの沈黙も経て声が聞こえた。
相変わらずの
ぶっきらぼうな声。
『え‥う、うん‥‥』
なんだろう。
:09/06/03 16:41
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#115 [七瀬]
「八田と、付き合ってんの?」
‥‥‥‥。
『‥ぇぇええ!??』
‥っと、
いけないいけない。
電車の中の人々の
視線が痛い。
あたしは、口をつぐんだ。
:09/06/03 16:45
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#116 [七瀬]
林原は
小さなため息を落とす。
「‥どうなわけ?」
『‥“どうなわけ”って、あたしたちは別に‥』
付き合ってるわけじゃ‥
「ほんとか?」
林原の、
目があたしを捕らえる。
:09/06/03 16:57
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#117 [七瀬]
『ほんとだよ‥。
付き合ってない‥』
なぜか、声が小さくなってしまう。
目線を下げると、ひざの上のこぶしを強く握りしめてたことに気付く。
「松田‥」
『‥ってゆーか、付き合うもなにも、あたしと歩志はそんな関係じゃないし!』
:09/06/03 21:09
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#118 [七瀬]
夏休みに入るまえ、
歩志に
「好き」って言われた。
あたしは、疑った。
聞き間違えなんじゃないかって、自分の耳を。
からかってるんじゃないかって、歩志を。
でも、あたしの耳は
ちゃんと機能してて‥
:09/06/03 21:12
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#119 [七瀬]
あたしは、
すごくうれしかった。
歩志を見てると、
胸がいちいちうるさくって困った。
毎日、学校に行くのが
楽しみで楽しみで
仕方なかった。
でも‥
‥‥歩志は、からかってただけだったんだ。
:09/06/03 21:16
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#120 [七瀬]
だって、
あれからまったくといっていいほど、変化がない。
歩志はいつも通りだし‥
ただ違うのは、
あたしの気持ちだけ。
歩志にとって、
あの“好き”は、
ただの冗談だったんだ。
:09/06/03 22:31
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#121 [七瀬]
でも、その気まぐれが
あたしを、期待させるんだよ‥。
だって、今でも
歩志に会うと心臓が忙しくなるから。
今日だって‥‥
「じゃあ、まだ俺にもチャンスあるってことで」
:09/06/03 22:34
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#122 [七瀬]
『え?』
林原の思いもよらぬ言葉があたしを一気に現実に引き寄せた。
「だから、まだ俺にもあるんだろ?松田を振り向かせるチャンス」
あ‥あんたは、
そんなことをあっさりと‥
あまりの林原の、潔さに、思わず頷いてしまった。
:09/06/03 22:38
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#123 [七瀬]
『今日も暑いなぁ‥』
一人つぶやく。
あれから毎日、学校に行っている。
先に言っとくけど、
別に毎日補習
ってわけじゃないからね!
:09/06/05 16:06
:N703iD
:79.tk/8A
#124 [七瀬]
剣道部を見に行ってる。
先週の水曜日から。
補習なんて、
そっちのけで。
お母さんに言ったら
殺されるね。確実に。笑
水曜は補習に行ってることになってるから。
なんで暑い中、たかが剣道部を見に、毎日学校、通ってるのかって?
:09/06/06 09:35
:N703iD
:5FlLND6Q
#125 [七瀬]
うん、それはね。
あたし、
帰宅部卒業しましたー。
イェーイ!
はい、お察しの通りです。
剣道部のマネージャーに
なりました。
つい3日前のできごと。
:09/06/06 19:12
:N703iD
:5FlLND6Q
#126 [七瀬]
林原から、
電話がかかってきた。
あまりのできごとだし、
ってか、初めて林原と電話するし‥
『なんで、あたしんちの、番号知ってんの!?』
これが、第一声。
「んー、なんでだろ」
しかも、あっさりスルー。
:09/06/06 19:15
:N703iD
:5FlLND6Q
#127 [七瀬]
それはまあ、小学生の時からの付き合いだし、
こんな田舎だし?
今まで、一度も電話したことないって方が不思議か。
『‥マネージャー!??』
が、そんなあたしの疑問は林原の一言で吹き飛ばされた。
:09/06/06 19:19
:N703iD
:5FlLND6Q
#128 [七瀬]
「そ。マネージャー。
ど?なってみない?」
『む‥むりむりむり!
あたし、洗濯とかできないし!』
今、思えば、
めんどくさかっただけかも。
あたし、責任感0だし。
「ははっ、大丈夫だよ。
洗濯なんて、しなくていーから」
:09/06/06 19:23
:N703iD
:5FlLND6Q
#129 [七瀬]
『え、そうなの?』
マネージャー=洗濯って、イメージしかなかったあたしは少女マンガの見すぎかもしれない。
『じゃあ、なにすんの?』
ま、とりあえず洗濯しなくていーみたいだし、話を聞こうじゃないですか。
あたしは、
電話に耳を傾けた。
:09/06/06 19:27
:N703iD
:5FlLND6Q
#130 [七瀬]
「んーと、とりあえず部活ある日は毎日来ないといけないな」
うんうん。
それでそれで?
「あとは、お茶沸かしたり全員の健康チェックぐらいじゃね?」
なんだ、簡単じゃん。
『やる!』
なんも考えず、言っちゃった。
:09/06/06 19:31
:N703iD
:5FlLND6Q
#131 [七瀬]
だって、
これで補習免れるしぃ〜。
それに
暇で暇でたまらなかった、憂うつな日々もちょっとは色づくんじゃないか。
そう思った。
‥もちろんアイツもいるしね。
剣道部の
マネージャー‥かぁ。
:09/06/06 19:41
:N703iD
:5FlLND6Q
#132 [七瀬]
ま、それほど
大変じゃなさそーだし。
適当にがんばるよ。
テキトーにね。
『これから、マネージャーします。松田柚子です。
よろしくお願いしまーす』
そんなこんなで、
初挨拶も、こんな感じで緩かったと思う。
:09/06/12 22:28
:N703iD
:WolmTlXQ
#133 [七瀬]
工業高校。
剣道部‥
前を見ても、
うしろを見ても、
右を見ても、左を見ても。
見渡すかぎり
男 男 男‥
:09/06/12 22:31
:N703iD
:WolmTlXQ
#134 [七瀬]
‥あたしが
言いたいのはね。
「‥‥‥‥‥‥」
空気空気!!
『‥お願いしまーす』
なにこのシーン‥
ってした空気!
:09/06/12 22:33
:N703iD
:WolmTlXQ
#135 [七瀬]
あたし、女だよ!?
かわいー‥‥くはないけど一応女の子だよ!??
こんな男臭いところで、
紅一点。
ふつうは、もっと盛り上がるもんなんじゃないの‥?
なんなのなんなの!!
この雰囲気といい、
みんなの表情といい。
もっと希望に溢れた顔をしても、おかしくないはず。
:09/06/12 22:37
:N703iD
:WolmTlXQ
#136 [七瀬]
「‥よろしくおねがいしまーす」
なに、その返事!
やっと返ってきた返事は、希望のカケラもなかった。
あんたら、
ほんとに運動部か!?
もっと、
でかい声は出せんのか?
そんなに、あたしが
気に食わんのか‥‥?
:09/06/12 22:43
:N703iD
:WolmTlXQ
#137 [七瀬]
「メン!」
‥どうやら、あたしが
気に食わんかったらしい。
練習に入ると、さっきとは比べものにならないくらいみんな、腹の底から、大きな声を出していた。
‥うん。
こいつらは確かに運動部だった。
そして‥正直者だった。
:09/06/12 22:47
:N703iD
:WolmTlXQ
#138 [七瀬]
もー!なんなのさ!
かわいい子が良かったな、って?
そういうこと‥
‥思ったより、
楽しくないかも。
林原の言ってたとおり、
特になにもすることがなく、ただその光景を、ボンヤリ眺めながら
そう思った。
:09/06/12 22:50
:N703iD
:WolmTlXQ
#139 [七瀬]
今日だって、
なーんにもすることがなく、見てるだけ。
この三日間、
ずっとこういう状態。
あたしがしたことといえばお茶を沸かしたことくらい。
『‥はぁ』
ため息は減るどころか
増えるばかり。
:09/06/13 15:23
:N703iD
:XsbPLW1s
#140 [七瀬]
「松田、どう?」
いつものように、眺めていると、
『んー‥ビミョー』
休憩時間に入ったみたいで林原が声を掛けてきた。
「微妙?」
『うん‥なんか思ったのと違うかも』
:09/06/14 20:50
:N703iD
:A0QwqCZY
#141 [我輩は匿名である]
「ふーん‥珍しいな」
林原は、丸い目を
よりいっそう丸くした。
「松田が、弱音吐くなんて」
『‥ん〜‥なんでだろ‥
暑いし、なーんもすることないし‥』
「要するにヒマ?」
『‥うん。忙しいと、それはそれで困るけど』
:09/06/20 18:21
:N703iD
:15LlxJw2
#142 [七瀬]
「じゃあ行くか!
久しぶりに!!」
『‥へ?』
な‥なにいきなり。
「だから」
ひとつ間を置いて
林原は言った。
「気分転換」
ものすごく
目を輝かせながら。
:09/06/20 18:26
:N703iD
:15LlxJw2
#143 [七瀬]
『ほんと久しぶりだね〜』
この部屋。
この雰囲気。
「だろ?長くご無沙汰だったもんな」
机の上には、
カルピスとコーラ。
そして、
あたしの大嫌いだったあれ。
:09/06/20 18:31
:N703iD
:15LlxJw2
#144 [七瀬]
「よしっ!じゃあ歌うか!」
そういって、
今は、嫌いじゃないそれを手にとった林原。
『うんっ!』
あたしも、
マイクを握った。
るんるん気分で。
:09/06/20 18:34
:N703iD
:15LlxJw2
#145 [七瀬]
『あぁ〜、
ストレス発散したぁ』
あれから、
もう一杯カルピスをおかわりして、
カルピスの氷が溶けて、水っぽくなるまで歌った。
『明日から、
またがんばれそう!』
両手を伸ばして、
背伸びをした。
:09/06/20 18:38
:N703iD
:15LlxJw2
#146 [七瀬]
「それはよかった」
にこって笑う林原に
負けないくらいの笑顔で
『ありがとう!林原』
言ってやった。
ドキドキさせられっぱなしなんて、やだし。
自分でも、よくわからない対抗心を抱きながら、
林原とバイバイした。
:09/06/20 18:43
:N703iD
:15LlxJw2
#147 [七瀬]
「ねー、ぽんずちゃーん」
林原とカラオケに行った
翌日のことだった。
『んー?
どうしたの?歩志』
あたしは、お茶を沸かしにやかんに水をくんでいるところだった。
「昨日、カラオケ行ったでしょー。林原くんと」
:09/06/20 21:07
:N703iD
:15LlxJw2
#148 [七瀬]
『‥行ったけど』
なんで知ってんだ、
コイツ。
「やっぱり。林原くんが、言ってたもん」
林原が‥。
「妬いちゃうかも」
ポツリと林原は言った。
:09/06/20 21:11
:N703iD
:15LlxJw2
#149 [七瀬]
訂正
×ポツリと林原は言った。〇ポツリと歩志は言った。
すいません><
:09/06/20 21:12
:N703iD
:15LlxJw2
#150 [七瀬]
『‥はははっ、
歩志、なに言ってん‥』
振り向いた瞬間
『‥の』
どきっとした。
だって、
ニヤッと口角を上げた意地悪な顔をしながらも
真剣なまなざしをした
歩志がいたから。
:09/06/20 21:16
:N703iD
:15LlxJw2
#151 [七瀬]
『‥‥‥』
しばらく、
なにも言えなかった。
ただ捕らわれたように、
その瞳を見ていた。
「なーんてね」
歩志が、おどけたように
舌を出すまで。
:09/06/20 21:18
:N703iD
:15LlxJw2
#152 [七瀬]
「‥‥明日」
『‥え?』
「あーしーた。
午後4時30分。駅前に来て」
歩志は、
いつもの口調で言った。
「じゃあ、
ぜんぶ許したげる」
:09/06/20 21:23
:N703iD
:15LlxJw2
#153 [七瀬]
許す‥‥?
「もうそろそろ行かなきゃ。じゃーねー」
歩志は、出ていった。
許す‥なにを‥‥?
部活が終わるまでの、
一時間と15分。
あたしの頭は、はてなで
いっぱいだった。
:09/06/20 21:26
:N703iD
:15LlxJw2
#154 [七瀬]
「ねー、お母さん。
浴衣出してくんない?」
その日の
夕方のことだった。
「浴衣?‥ああ。そういえば。今年も行くの?」
「うん、友だちと」
‥あ、まさか。
:09/06/20 21:33
:N703iD
:15LlxJw2
#155 [七瀬]
『夏祭り‥?』
まさかまさか。
「うん。駅前のー」
まさかまさかまさか!
「わかった。浴衣出しとけばいいのね」
『‥ま、待って!』
ガタンと立ち上がった。
:09/06/20 21:36
:N703iD
:15LlxJw2
#156 [七瀬]
『あ‥あたしの分も‥出しといてくれない‥かな?』
お母さんは、
目を大きくした。
「あら。去年、まりちゃんと行ったときは歩きにくいからって、着ていかなかったじゃない。どうしたの、急に。」
『‥え、あ、
‥い‥いやあ‥』
確か、そうだった。
:09/06/20 21:40
:N703iD
:15LlxJw2
#157 [七瀬]
『そうなんだけど‥』
でも‥
『たっ‥たまには、いーかなーと思って』
「‥そう。わかったわ」
ちょっと、女の子らしいとこ見てもらいたかったのかも。
:09/06/20 21:42
:N703iD
:15LlxJw2
#158 [七瀬]
あ、やば。
遅れちゃう。
でも
「ゆ〜ず〜!もうそろそろ出たほうが、いいんじゃない?4時半に待ち合わせしてるんでしょー?お友だちと」
『もうちょっと待って〜!すぐ行くから!』
鏡の前で
最終チェックする。
:09/06/20 21:52
:N703iD
:15LlxJw2
#159 [七瀬]
お母さんが出してくれた
浴衣は
おばあちゃんが去年に、あたしとお姉ちゃんに買ってくれたけど、
あたしは一回も着たことがなかった。
浴衣って、歩きにくいし。
かき氷のシロップつけて帰ったら、お母さんに100%怒られるし。
おもいっきり遊べないからって理由で、拒否してた。
:09/06/20 21:56
:N703iD
:15LlxJw2
#160 [七瀬]
でも、今日は‥
「ゆーーずー?まだ?」
『はぁい。今行くー』
初めて袖を通した浴衣は、柔らかくて、冷たくて。
新品独特の匂いがした。
山吹色に、うすいピンクは少しおとなっぽすぎたかも。
:09/06/20 22:00
:N703iD
:15LlxJw2
#161 [七瀬]
でも、
少しでもかわいいと思ってくれればいいな。
淡い色の浴衣と、淡い願いとともに家を出た。
電車ー。早く着けー。
そんな思いを乗せた電車は長く感じた。
:09/06/20 22:02
:N703iD
:15LlxJw2
#162 [七瀬]
駅に着くと、見えてくる、ちらほらと灯る明かり。
年に一度の行事、
夏祭り。
駅前‥着いたけど、
どこかな、歩志。
慣れない浴衣と、
おぼつかない足取りで
辺りを見渡す。
「あ、浴衣発見」
:09/06/20 22:54
:N703iD
:15LlxJw2
#163 [七瀬]
声が聞こえた。
「ってか、遅い」
あの声が。
『歩志!』
振りかえると
「何分待ったと思ってんの」
声はぶっきらぼうだけど、優しい笑顔だった。
:09/06/20 22:57
:N703iD
:15LlxJw2
#164 [七瀬]
『ご‥ごめん。思ったより時間かかっちゃって』
あわてて駆け寄ると
「待ちすぎて痛いよー」
今度は、声も顔も、
ぶっきらぼうな歩志。
『ほんっとごめ‥』
次の瞬間、
あたしは静止した。
:09/06/20 23:00
:N703iD
:15LlxJw2
#165 [七瀬]
「もう来てくんないかと、思った‥」
だって、
歩志の胸の中にいたから。
「だからさっきから、ドキドキしてた。やっぱ来てくんないかなーって。
だから、心臓痛い」
ちょっと笑って、
そう言った。
:09/06/20 23:02
:N703iD
:15LlxJw2
#166 [七瀬]
バカ‥。
まるで、時間も静止しているようだった。
ただ、心臓の音だけが、
ドキドキドキドキ‥と忙しく、鳴っていた。
あたしの方が痛いよ‥。
それが、
あたしの音なのか、
歩志の音なのか。
未だに、わからない。
:09/06/20 23:05
:N703iD
:15LlxJw2
#167 [七瀬]
でも、どっちでもいいや。
年に一度の夏祭り。
中学の友だちだって
お姉ちゃんだって
林原だって
来ているかもしれない。
見られるかもしれない。
でも、
すごく居心地よくって‥。
離れたくなかった。
:09/06/20 23:07
:N703iD
:15LlxJw2
#168 [七瀬]
「ってか、誰が祭り行くなんて言った?」
しばらくして、
歩志は離れた。
‥もうちょっと
ああしてたかったかも。
相変わらずの意地悪な顔。
:09/06/20 23:10
:N703iD
:15LlxJw2
#169 [七瀬]
『‥‥‥』
抱き合っていた恥ずかしさと
歩志のことばで沈黙する。
「まあいいや。
許したげるよ、ぜんぶ」
顔を上げた。
だから、なにを?
「行こっか」
:09/06/20 23:11
:N703iD
:15LlxJw2
#170 [七瀬]
‥またやられた。
あたしは
黙って歩志についていく。
大きな手に、
手を奪われながら。
なんで、あんなに
自然に手ぇ繋げんの?
ドキドキが止まる気配も
感じずに。
:09/06/20 23:15
:N703iD
:15LlxJw2
#171 [我輩は匿名である]
「暑いね〜」
恥ずかしくって
ずっと下を向いてたら
『う‥うん』
不意に声を掛けられた。
「ね」
『うん?』
「すごい汗だけど。手」
:09/06/26 19:09
:N703iD
:g7hoY3S6
#172 [我輩は匿名である]
『‥っ‥ごめん‥』
バッと
手を離そうとすると
「なんで離そうとするの」
逆に手を
強く握り返された。
「いいじゃん。
手、あったかくって」
は‥はずかしぃ〜‥‥
:09/06/26 19:14
:N703iD
:g7hoY3S6
#173 [我輩は匿名である]
この何分間で、
いったい、どのくらいドキドキしただろう。
リアルに心臓痛い‥
相変わらず、
休まるようすもなく
激しく跳ねる心臓を胸に
汗で少し蒸れた手を
感じながら
長い
長い長い夜が始まった。
:09/06/26 19:18
:N703iD
:g7hoY3S6
#174 [我輩は匿名である]
「ね〜ね〜、ぽんずちゃん。 あれ見て、あれ!」
珍しくはしゃぐ
歩志の指先には、
『かわい〜』
定番中の定番
金魚すくい。
「やろっか」
『うん!』
あたしたちは、
屋台に向かった。
:09/06/27 17:28
:N703iD
:f7P3rAuo
#175 [我輩は匿名である]
「お姉ちゃん。大人2人」
「はい、おおきに。
600円なります」
お金を渡すと
「勝負しよー」
歩志があたしを
ちらりと見て言った。
『‥いーけど‥‥歩志負けるよ?』
:09/06/27 17:32
:N703iD
:f7P3rAuo
#176 [我輩は匿名である]
「ふーん‥自信あるんだ」
あったりまえじゃん!
『あたし、こう見えても
金魚すくいはうまいの。
家族にも友だちにも
誰にも負けたことないんだからねー』
事実あたしは
負けという結果を出したことない。
全勝0敗。
これは、この15年間の
あたしの唯一の自慢できることだ。
:09/06/27 17:38
:N703iD
:f7P3rAuo
#177 [我輩は匿名である]
「じゃー、どうする?
負けたら」
へ?
「もし負けたら‥そーだなあ。俺、タコせん食べたいんだけど」
‥なるほど。
そういうことね。
『あ、あたしはかき氷!』
その勝負、受けて立とうじゃないですか。
:09/06/27 17:41
:N703iD
:f7P3rAuo
#178 [我輩は匿名である]
「‥楽しみだね」
歩志お得意の
意地悪な笑顔を合図に
勝負のチャイムは鳴った。
ひさびさの金魚すくいで
最初はちょっと
てこずったものの感覚はだいぶ戻ってきた。
横を見ると、
金魚たちが集まりやすい端にいつのまにか移動してる歩志が。
:09/06/27 17:46
:N703iD
:f7P3rAuo
#179 [我輩は匿名である]
下を見ると、
あたしに負けないくらいの金魚たち。
なかなかやるな、あいつ。
よーしっ!
あたしも頑張ろ!!
気合いを入れ直す。
なんかわかんないけど、
負けたくなかった。
悔しがるアイツの顔が
見たかったのかも。
:09/06/27 17:49
:N703iD
:f7P3rAuo
#180 [我輩は匿名である]
20分後
黄色いかき氷を持った
あたしの隣には
タコせんを一口かじる
歩志のすがた。
結局、
勝負は引き分けだった。
「あーあー。おごってもらう気満々だったのに」
『あたしだって』
:09/06/27 17:52
:N703iD
:f7P3rAuo
#181 [七瀬]
「まあ、今回は引き分けってことで」
あれ、
歩志が珍しく素直‥
「次は負けないけど」
‥‥やっぱり。
『‥ぷっ、ふふふ』
「なに笑ってんの?」
:09/07/01 23:06
:N703iD
:hNziI84M
#182 [七瀬]
『ううん、別に』
「なになに?」
『ほんとなんでもない。
気にしないで』
「よけい気になる‥」
いつもと
まるっきり逆パターン。
「ねーなに?なんなの?」
歩志は
しつこく聞いてくる。
:09/07/01 23:09
:N703iD
:hNziI84M
#183 [七瀬]
『ないしょー!』
‥ざまあみろ。
いつもの、あたしの
気持ちを味あわせてやる。
歩志はやっぱり素直じゃなくて笑えた。
でも、あたしが笑ったのは別の理由。
さかのぼること
30分前。
:09/07/01 23:12
:N703iD
:hNziI84M
#184 [七瀬]
――――――――
―――――
―――
『あー、破けたぁ‥』
あたしの紙は、歩志より
先に破けてしまった。
「もう破けたの?」
勝ち誇った顔に
ムカついて
ちょっと邪魔してやることにした。
:09/07/01 23:15
:N703iD
:hNziI84M
#185 [七瀬]
歩志はずいぶん慎重派。
バッとすくっちゃう
あたしと正反対で
金魚と
にらめっこしていた。
「‥‥」
かーなーり真剣なようすに邪魔できる雰囲気じゃなかった。
:09/07/01 23:17
:N703iD
:hNziI84M
#186 [七瀬]
もぉーっ!
暇だー!暇だ暇だぁー!!
あたしは歩志から離れたところにいき、金魚を眺めていた。
すると
「彼氏?」
横から声が。
:09/07/01 23:19
:N703iD
:hNziI84M
#187 [七瀬]
『ちっ‥違いますよ!』
いきなりだし、
びっくりしながら
声のするほうへ
目を向けると‥
「あ、ほんま?
ごめんなぁ。てっきり彼氏かと思たわ」
金魚すくいのお姉さんだった。
:09/07/01 23:22
:N703iD
:hNziI84M
#188 [我輩は匿名である]
『ど、同級生です』
そう言ったものの
「へぇ〜、友達‥なあ」
その女の人の目は
怪しむように光っている。
な、なにこの人。
いきなり‥いきなり
"彼氏?"だなんて。
あの時のあたし、
かなりテンパってた。笑
:09/07/02 14:54
:N703iD
:j6heonto
#189 [我輩は匿名である]
「あんたらみたいな子ら、よう見るわ」
あたしらみたい‥??
「あんたらみたいに仲いい子らってこと」
な‥‥っ!
『ち‥違うって言ってるじゃないですか!!』
「ごめんごめんー」
ほんと、なにこの人!
:09/07/02 14:58
:N703iD
:j6heonto
#190 [我輩は匿名である]
慣れない
関西弁だからだろうか。
この人‥なんか苦手だ‥。
「名前なんてゆーん?」
24、5歳くらいだろう。
耳に掛けた長い髪が妙に色っぽい。
『ゆ‥柚子です』
笑うと丸い目が横に細くなって、かわいいからきれいになる。
そんな人だった。
:09/07/02 15:05
:N703iD
:j6heonto
#191 [我輩は匿名である]
「柚子ちゃんかぁ。
おいしそーな名前やん!」
『それ、
誉めてるんですか?』
そう言うと
「ははははっ!」
豪快に笑った。
いやいや、
笑い事じゃないし!
:09/07/02 15:08
:N703iD
:j6heonto
#192 [我輩は匿名である]
「あんた、いーツッコミするなあ」
『は、はぁ‥ありがとうございます‥』
なんかよく、わかんないけど、とりあえずお礼を言っておいた。
「わたしはなぁ、まつりってゆーねん」
『まつりさん‥』
「そ。まつり」
:09/07/02 15:11
:N703iD
:j6heonto
#193 [我輩は匿名である]
キラキラ光る屋台が並ぶお祭り。
「ま、家がこーゆう仕事してるから、こんな名前がついたみたい。ちっさいころはいややったわー」
笑いながら言う
まつりさん。
「でも、今ではけっこう気に入ってる。おばあちゃんが付けてくれた名前やし」
『に‥似合うと思います』
:09/07/02 15:14
:N703iD
:j6heonto
#194 [我輩は匿名である]
自然に口を突いて出た。
『すっごくかわいいと思います』
お世辞でもなく、
その場しのぎでもなく。
あたしのなかの
素直な気持ちだった。
「‥‥」
黙って見ていた
まつりさんも
「ありがとーなぁ」
またあの笑顔で笑った。
:09/07/02 15:18
:N703iD
:j6heonto
#195 [我輩は匿名である]
『い‥いえ』
なんか言ったあとで
恥ずかしくなってきた。
少しうつむいて
金魚のほうに目を向けていると
「さっき、あそこの彼は友達やってゆーてたやん?」
まつりさんが口を開いた。
:09/07/02 15:20
:N703iD
:j6heonto
#196 [七瀬]
『はい‥』
「でも、好きなんやろ」
『‥‥はい‥』
なんでだろ。
さっきみたいに
素直にうなずけたのは。
頑なに否定してたことを
言ってみると、恥ずかしいけど、思ったほどではなかった。
むしろすっきりした。
:09/07/07 06:47
:N703iD
:C.9r4c4g
#197 [七瀬]
「うんうん。うんうんうんうん!」
認めると、まつりさんは
何度も首を縦に振った。
「やっぱりなぁ‥そう思たわ。いやー、こういう商売何年もしてたら、わかんねん。
ほら、金魚すくいって、お祭りデートの定番みたいやし?」
そして、マシンガンのように止まらなくなった。
:09/07/07 06:54
:N703iD
:C.9r4c4g
#198 [七瀬]
「でもまぁ、提供してるこっちがゆうのもなんやけど、なにがおもろいんかはわからんな、未だに。
金魚いじめて、なにが楽しいねん!みたいな。
一番の被害者は金魚やで!まったく‥」
まったく‥困った。
「ああ‥ごめんごめん」
唖然としてるあたしに気付いたのか、苦笑するまつりさん。
:09/07/07 06:58
:N703iD
:C.9r4c4g
#199 [七瀬]
あたしもつられて
苦笑した。
「‥でもまぁ、わたしの目から見たら、脈ありやで。脈あり」
『‥ほんとですか』
なーんか信じらんない。
「うん!ほんまほんま!」
『‥‥ほんまかい!』
:09/07/07 07:01
:N703iD
:C.9r4c4g
#200 [七瀬]
あ、
『す‥すいません!』
やば‥まつりさんの口調が移っちゃった。
はっはっは!と、また口を大きく開けてまつりさんは笑う。
「えーよえーよ!
柚子ちゃん、やっぱおもろい!連れて帰りたいわ!」
:09/07/07 07:04
:N703iD
:C.9r4c4g
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