星とぽんず。
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#1 [七瀬]
「星とぽんず」の続編です!
マイペースやけど、
またがんばりまっす(^^)

あらし、中傷
やめてね゚。(p>∧<q)。゚゚
>>2-3 アンカー。
感想板、
『星とぽんず』
:09/05/25 19:37
:N703iD
:vnUiPhyQ
#2 [七瀬]
:09/05/25 19:38
:N703iD
:vnUiPhyQ
#3 [七瀬]
:09/05/25 19:41
:N703iD
:vnUiPhyQ
#4 [七瀬]
『はあ‥』
みなさん、
お久しぶりです。
「やぁね〜、この子ったら」
どうも、松田柚子です。
「ため息ばっか。
せっかくの夏休みなのに」
華の女子高生、一年目。
初の夏休み。
:09/05/25 19:45
:N703iD
:vnUiPhyQ
#5 [七瀬]
あたしの心はこのギンギン光る太陽のように熱い‥
『はあ〜〜‥』
はずが‥
「言ったそばから、もう‥」
楽しくないっっ!
夏休みに入って、
もう二週間。
飽きた。
:09/05/25 19:46
:N703iD
:vnUiPhyQ
#6 [七瀬]
最初は‥最初はね!
楽しかった‥
これから、始まる楽しいはずの日々にわくわくしてたよ。
でも、今は‥
『はあ〜〜〜‥‥』
「‥もう知らない。
お姉ちゃん、向こう行ってアイスでも、食べましょ」
:09/05/25 19:47
:N703iD
:vnUiPhyQ
#7 [七瀬]
アイスいいな〜。
でも動きたくないな〜。
『お姉ちゃん』
「持ってこないからね」
あ‥バレた?
『おねぇ〜ちゃ〜ん』
「食べたかったら、リビングおいで。」
‥鬼。
:09/05/25 20:07
:N703iD
:vnUiPhyQ
#8 [七瀬]
もう、いいや。
今はクーラーの前から
離れたくない。
せっかくの夏休み。
なのに、あたしったら
それを持て余しちゃってる。
もったいない。
そう思いながらも
なにもしたくない。
:09/05/25 20:08
:N703iD
:vnUiPhyQ
#9 [七瀬]
夏休みに入ってから、すぐに中学の友達と会った。
ひさびさの、ガールズトークに日頃のうっぷん晴らしたよ。
‥でも、そのうっぷんは2倍にも、3倍にもなって帰って来た。
みんなには、当たり前だけど、新しい友達ができ、彼氏ができ‥
もちろんその“新しい友達”ってのは女の子で。
:09/05/25 20:10
:N703iD
:vnUiPhyQ
#10 [七瀬]
とりあえず、あたしとは大違い。
毎日毎日、汗臭い男どもにまみれてるあたしとは。
その当たり前が、うらやましくてうらやましくて。
ほぼ男子校に通うあたしには夢のまた夢‥
友達ほしいよー!
ともだち!!
かわいい女の子の友達がほしい‥
:09/05/25 20:11
:N703iD
:vnUiPhyQ
#11 [七瀬]
うっぷんを晴らすどころか現在の自分の状況を再確認させられたっつうか‥
こんなことを考えてて、
ため息をつかないわけがない。
つまんない。
それプラス、憂うつ。
またそれにプラスして
アイツがいない。
アイツってのは‥
:09/05/25 20:12
:N703iD
:vnUiPhyQ
#12 [七瀬]
「ゆず〜!」
下から、声が。
『なに、お姉ちゃん!』
もう!
動きたくないんだってば!!
顔だけ、
階段の方へ向けた。
「まりちゃん来てるよ〜!」
まり?
ダルい体を起こして下へ。
:09/05/25 20:14
:N703iD
:vnUiPhyQ
#13 [七瀬]
「ゆっず〜!」
ひらひらと手をふる、
まりのすがたが。
『今日は彼氏さんとデートなんじゃなかったっけ?』
まりは、あたしをそんな憂うつな気分にさせた一人。
「うん、それがぁ〜
ダーリンはクラブでいきなり無理になっちゃって。」
おいおい。
あたしは暇な時の遊び道具じゃないぞ。
:09/05/25 20:16
:N703iD
:vnUiPhyQ
#14 [七瀬]
そう思いながらも、
『ふ〜ん。
で、なにしに来たの?』
普通に答える優し〜いあたし‥暇人なあたし。
「あ、うん。
今日来たのはね、同窓会のお知らせ伝えようと思って」
『同窓会のお知らせ?』
「うん。同窓会」
:09/05/25 20:18
:N703iD
:vnUiPhyQ
#15 [七瀬]
同窓会って‥
『まだ卒業して、半年も経ってないじゃん!』
「まぁね〜」
なんて呑気な。
「ま、来る予定だったら、メールして。日時、場所も言うから」
『あたし、宿題山盛りあるし、行けるかわからな‥』
:09/05/25 20:19
:N703iD
:vnUiPhyQ
#16 [七瀬]
「だから、行くんだったらメールして!ばいばーい」
『‥い』
最後の“い”まで、聞かずまりは帰ってった。
同窓会‥ねぇ。
そりゃ、もちろん‥
行くっしょ!
宿題山盛りあるとか言いながら、
ほんとは行く気満々!!
:09/05/25 20:21
:N703iD
:vnUiPhyQ
#17 [七瀬]
毎日毎日、暇なあたしが、行かないはずはない。
今から楽しみだぁー!
わーいわーい!
あ、まりにメールしとこ。
でも、
あんなこと言ちゃったし、すぐにメールするってのもなぁ‥
あれこれ悩んでるうちに、あたしの長い夜は更けてゆく。
:09/05/25 20:22
:N703iD
:vnUiPhyQ
#18 [七瀬]
あれから、結局まりにメールして、今その同窓会場へと向かっている。
‥って、
ただのファミレスだけど。
「あ、いたいた!ゆずー!」
『みんな久しぶり〜』
あ〜なんか懐かしい!
半年も経ってないのに!!
自然と笑顔に。
:09/05/27 05:46
:N703iD
:3SqaaO0A
#19 [七瀬]
やっぱ、このメンバーっていいな。
安心する。
今の二組とは大違い。
3ー2最高!
「よ、松田。」
『林原〜』
こいつとも、なんだか久しぶりな感じがした。
『久しぶりじゃん〜』
夏休みに入ってから一度も会ってなかったし。
:09/05/27 05:48
:N703iD
:3SqaaO0A
#20 [七瀬]
「“久しぶり”って、お前ら高校同じだろ!」
男子が口を挟んだ。
「ま〜、俺は部活で忙しかったからな。」
「えー、
林原なに部なわけ?」
みんなが林原へ視線を移動させた。
「剣道。」
:09/05/27 05:49
:N703iD
:3SqaaO0A
#21 [七瀬]
「へえ〜、そうなんだ〜」
歓声が上がった。
4ヵ月ほど前までは、ふつうのちょっとおとなしかった女の子たちが、
今では、
えっ、誰?って感じ。
みんな、校則に縛られてたのが、一気に解放されて、弾けてしまったんだろう。
特にうちの中学は厳しかったし‥
よくあることだよね。
:09/05/28 19:01
:N703iD
:G2b4JUyo
#22 [七瀬]
そんな子たちを中心として、林原の周りを囲んでいた。
「ちょっとちょっと、柚子!いいの?」
『へ?なにが?』
まりの鋭い目にたじろぐ。
「“なにが”って‥もぉ〜」
まりのため息に
ますます疑問が。
:09/05/28 19:03
:N703iD
:G2b4JUyo
#23 [七瀬]
「林原!盗られちゃうよ!」
小声だけど、脅すようなその一言でやっと、その意味に気付いた。
『盗られるもなにも‥』
「林原ってさあ、
高校入って、途端に人気でたよねぇ‥」
『え、そう?』
あたしがよっぽどマヌケな顔をしたのか、まりのため息が大きくなる。
:09/05/29 20:14
:N703iD
:9TMx6ROY
#24 [七瀬]
「あんたって子は‥」
まり‥
お母さんみたい。
‥じゃなくて。
「なんだか、この4、5ヵ月で、だいぶ雰囲気変わったよね。」
『そうかなぁ‥』
もう一度、女の子に囲まれた林原を見る。
:09/05/29 20:16
:N703iD
:9TMx6ROY
#25 [七瀬]
“変わった”といわれても別に、林原は
髪の色が明るくなったとか
ズボンを思いっきり下げてはくようになったとか‥
まあ、いわゆる高校デビューという奴ではない。
周りにいるような、そんなチャラチャラした奴じゃない。林原は。
だから、なにが変わったのか、分からない。
:09/05/29 20:18
:N703iD
:9TMx6ROY
#26 [七瀬]
「もうっ!ほんとに分かんないの!?」
『そんなこと言われても‥』
まりに押されつつ、思考を巡らせる。
変わったとこ
変わったとこ‥
強いていうなら
『あ、背のびた?』
まりのため息は途絶えることはなかった。
:09/05/29 20:21
:N703iD
:9TMx6ROY
#27 [七瀬]
『そんな目で見られても〜‥』
困りますよ、高田まりさん。
「よく見てっ!バカ柚子!」
そうやって、グイッ!と、首の位置を移動された。
目は自然と林原へ。
あ‥
「どう!?わかった?」
:09/05/29 20:22
:N703iD
:9TMx6ROY
#28 [七瀬]
『うん‥』
まりのいう意味がやっと分かった。
確かに、林原は変わったかも。
少なくとも‥ううん。
こうして改めて見ると、かなり変わったかも。
「ね?私の言ったこと分かったでしょ?」
『……』
:09/05/29 20:23
:N703iD
:9TMx6ROY
#29 [七瀬]
そこには、女の子たちに囲まれ笑ってる林原の姿。
「林原って、誰が話し掛けても、あんましゃべんなかったじゃん。
それが、あんなにしゃべってる。笑ってる」
『うん‥』
まりの言ってることは、
今、あたしが感じたことだった。
「私もびっくりしたわよ。」
:09/05/29 20:25
:N703iD
:9TMx6ROY
#30 [七瀬]
まりの一言一言が重い。
「林原は、いつもボーっとしていて、イマイチよく分かんないヤツだった。
それに、壁みたいなん感じたしね」
中学時代を思い出す。
「それが今はどう?」
まりの指す先を見る。
:09/05/29 20:27
:N703iD
:9TMx6ROY
#31 [七瀬]
林原はやっぱり笑ってた。目を反らしたくなる。
少し胸が痛んだ。
でも、昔の面影は残ってるみたい。
その証拠に、相変わらず、ほわんとしてたし、
なにより、林原が話している最中にも時々、
あの茶色い犬のような瞳が、あたしの目と合った。
そのことが、
痛みを軽くした。
:09/05/29 20:29
:N703iD
:9TMx6ROY
#32 [七瀬]
「ゆっず〜、
ひさしぶりぃ〜!」
『わ、み、みさき〜』
三咲が抱きついてきた。
三咲はまりと同様、
特に仲良しだった友達。
「まりとなに話してたの?」
『ん〜、別にたいした話じゃないよ』
「えー、なになに?気になるじゃん。
あ、もしかして恋バナとか!?」
:09/05/29 20:30
:N703iD
:9TMx6ROY
#33 [七瀬]
『ゲホッゲホッ‥ゲホ…』
「ちょっと柚子〜、汚い〜」
『ごめ‥』
「ああ〜もう。なにやってんの。はい、おしぼり。」
『ありがと‥』
まりに手渡されたおしぼりで机と手を拭いた。
三咲が、そんなこと言うから吹いてしまったではないか。
:09/05/29 20:31
:N703iD
:9TMx6ROY
#34 [七瀬]
「も〜、柚子はほんとわかりやすい。図星?」
呆れ半ば、三咲が笑う。
「見事に的中だね、まったく…」
『そんな‥まりまで…』
ハハハと3人の間に笑いが起きた。
「で?」
三咲のにっこり笑顔があたしに向けられる。
:09/05/29 20:33
:N703iD
:9TMx6ROY
#35 [七瀬]
『え?』
「だーかーら!
詳しく話なさいっ!詳しく!!」
‥オーマイガーっ!
三咲の好奇に満ちた目は、恐ろしく輝いていた。
どうなるの‥あたし‥‥
:09/05/29 20:34
:N703iD
:9TMx6ROY
#36 [七瀬]
「ふ〜ん、そういうこと」
「そういうこと」
『ちょ、
ちょっと待って‥』
あれから、三咲の拷問に合ったのはいいものの、
ほとんどってゆーか全部まりが答えてた。
おかげで、かなりフィクション入ってましたけど?
フィクションというか、そこまでいくと嘘なんじゃ…
:09/05/29 20:36
:N703iD
:9TMx6ROY
#37 [七瀬]
「でも、ミサはもうとっくに、柚子と林原くんは付き合ってると思ってた〜」
あたしの言葉を遮った上に爆弾発言ですよ、三咲さん。
「だよねー、私も見ててじれったいじれったい」
こら、まり。
便乗すんな。
『違うってばっっ!』
:09/05/29 20:37
:N703iD
:9TMx6ROY
#38 [七瀬]
思わず、叫びに近い声を上げてしまった。
「おいおい、なにが違うんだよ。松田」
当然、みんながあたしに注目したと思ったら、
この男子の発言でドッと笑いが起きた。
チラッと林原を見ると、
「相変わらず、松田はおもしろい」
クスクス笑っていた。
:09/05/29 20:39
:N703iD
:9TMx6ROY
#39 [七瀬]
林原まで〜!
ガタッ
また座りなおした。
「ほんと柚子は最高」
『まりと三咲が、そんなこと言うから‥』
すると、
2人がまた笑いだす。
もう!知んない!
:09/05/29 20:40
:N703iD
:9TMx6ROY
#40 [七瀬]
「ごめんごめん。
怒んないで、ゆず」
そんな含み笑いで、
言われて、誰が怒りを鎮めるかっつーの!
フイとそっぽを向いた。
と、その時
ピリリリリ…
「あれ、
誰か携帯鳴ってない?」
:09/05/29 20:41
:N703iD
:9TMx6ROY
#41 [七瀬]
『あ、あたしだ』
ディスプレイを見ると、
着信“お母さん”
なんだ、こんな時に‥
『もしもし?』
「ちょっと、柚子!
いったいどこでなにしてるの?」
電話に出た瞬間、
お母さんの通りのよい声がキーンと響いて、
思わず携帯から耳を少し遠ざけた。
:09/05/29 20:43
:N703iD
:9TMx6ROY
#42 [七瀬]
『なにって、
今日は同窓か…』
「いいから、牛乳買って来て!今すぐね、今すぐ!」
プツッ
それだけ言うと、電話を切られた。
今のあたしの耳には、
さっきのお母さんの声と正反対なくらい静かな
ツーツーツーツーという音が寂しげに響いている。
:09/05/29 20:44
:N703iD
:9TMx6ROY
#43 [七瀬]
『‥‥‥』
「ゆず?ゆ〜ず〜?
ゆずってばぁー!」
三咲の呼び掛けに
ハッと我に戻る。
『もうっっ!
なんで、うちのお母さんは、あんなに自己チューなのっっっ!?』
「わ、ちょっとゆず〜。
耳元で叫ばないでよ〜」
あ、いけない‥
またやってしまった。
:09/05/29 20:46
:N703iD
:9TMx6ROY
#44 [七瀬]
どうやら、あたしの悪い癖みたいだ‥
興奮すると、叫んじゃう。
…嫌な癖だな。
『ごめん、三咲、みんな。あたし帰るわ』
「え、ゆず。もう帰るの?」
『うん。お母さんから電話あって‥牛乳買ってこいって。しかも早急に。』
「相変わらず、松田のお母さんは強烈だな〜」
:09/05/29 20:47
:N703iD
:9TMx6ROY
#45 [七瀬]
男子の言葉に思わず苦笑い。
まったくだよ、ほんと‥
『ま、そういうことで、あんま遅くなると、また電話かかってくるから。
じゃねー、ばい』
「お疲れ〜」
「ゆず、またね!」
「気を付けてなぁ」
みんなに手を振り出口へ。
:09/05/29 20:48
:N703iD
:9TMx6ROY
#46 [七瀬]
『ばいば〜い』
最後にもう一度、みんなに手を振った。
その時、
「送ってくよ、松田」
今さっきまで、囲まれてた林原が立ち上がった。
わいわいうるさくって、
営業妨害に近かったくらいなのに、
それが嘘のようにシーンってなった。
:09/05/29 20:49
:N703iD
:9TMx6ROY
#47 [七瀬]
なんか‥前にもこんなことがあったような…
『いや‥いいよ。
林原は、もっと楽しんで』
あたし‥ちょっとヤキモチ妬いてたのかも。
変な意地張ってるもん。
「送ってく」
そんな、あたしをいとも簡単に対処しちゃう林原は
昔のまんまなのか、変わったのか。
:09/05/29 20:50
:N703iD
:9TMx6ROY
#48 [七瀬]
そう言うと、
林原は出口まで来た。
「じゃなー、みんな」
そうやって、みんなに笑って手、振るとことかも。
「松田、行こ」
なぜか、緊張した。
違う人と、並んで歩いてるような気持ち。
:09/05/29 20:53
:N703iD
:9TMx6ROY
#49 [七瀬]
やっぱり‥
林原と歩いていて、
気付いてしまった。
‥やっぱり、あたし、
意地張ってる。
ヤキモチ妬いてる。
だって、なんかイライラするもん。
モヤモヤするもん。
:09/05/29 20:55
:N703iD
:9TMx6ROY
#50 [七瀬]
時々、乾いた風が吹いて、林原の匂いが、鼻をくすぐる。
一緒に並んで、
また身長差できたなって、実感する。
そして、茶色い瞳が、
あたしに向けられる。
あの、高い声があたしを呼ぶ‥
「松田」
:09/05/29 21:00
:N703iD
:9TMx6ROY
#51 [七瀬]
あれ‥
「お前、見にこいよ」
声‥高くない。
「明日、学校の閣議室で」
なんか、寂しいな。
「部活、あるから」
またあの高い声で
呼んでほしい。
“松田”って。
:09/05/29 21:04
:N703iD
:9TMx6ROY
#52 [七瀬]
『………』
「松田?聞いてるか?」
『…え?あ、ああ!うん。聞いてた聞いてた!!』
「ほんとか?
じゃあ今、俺が言ったこと言ってみろよ」
『…………』
「ほーら、やっぱ聞いてなかったんだろー」
:09/05/29 23:05
:N703iD
:9TMx6ROY
#53 [七瀬]
違う。
違うよ、林原。
『‥明日、学校の閣議室で部活あるんでしょ』
あたしが、なにも言わなかったのは、
あんたのフッて笑った顔が
あまりにも大人っぽかったからだよ。
:09/05/29 23:09
:N703iD
:9TMx6ROY
#54 [七瀬]
林原は、少し目を丸くしたあと、また細めて笑った。
「成長したじゃん」
だからっ
『あたしはガキか!』
そんな顔で
笑わないでよ。
そして、またもう一つ。
重要なことに、気付いてしまう。
:09/05/29 23:11
:N703iD
:9TMx6ROY
#55 [七瀬]
あたしは、
林原に群がった女の子たちに嫉妬したんじゃない。
あたしは‥
コイツに嫉妬したんだ。
こんなに、大人っぽく笑う林原に。
:09/05/29 23:14
:N703iD
:9TMx6ROY
#56 [七瀬]
そして、
そんなコイツが、
離れていってるような気がして、
寂しかったんだ。
ものすごく。
ものすごく、ものすごく。
寂しい。
:09/05/29 23:16
:N703iD
:9TMx6ROY
#57 [七瀬]
「はははっ」
あたしって、
ほんとワガママだよね。
『‥笑うな!』
林原が「好き」って言ってくれたとき、答えられなかったくせに。
「ごめんごめん」
寂しがるなんて。
:09/05/29 23:19
:N703iD
:9TMx6ROY
#58 [七瀬]
『ありがと。
家まで、送ってくれて』
あっという間に家に到着。
「おう!女が夜道に一人は危ないからな」
またあの笑顔で、
そんなこと言う。
だから、ほらまた。
林原のそんな姿に嫉妬してしまう。
:09/05/29 23:22
:N703iD
:9TMx6ROY
#59 [七瀬]
そういえば‥
前に、アイツに送ってもらったときは、
“ぽんずちゃんも一応、女の子だから”
とか言われたっけ。
うん。
いつ思い返しても、腹立つぜ、この野郎。
:09/05/29 23:23
:N703iD
:9TMx6ROY
#60 [七瀬]
同じ意味のことを言ったのに、こうも違うなんて…
やっぱ林原は大人になった。
少なくともアイツの100倍‥ううん。1000倍は。
「じゃあ、おやすみ」
そうやって、暗闇の中、だんだん見えなくなっていくその姿を眺めながら、
なんだか切ない、
蒸し暑い日。
:09/05/29 23:25
:N703iD
:9TMx6ROY
#61 [七瀬]
『ただいま〜』
「おかえりー。牛乳買ってきてくれた?」
『うん、はい。』
林原に送ってもらう途中、“まつはし”に寄って牛乳を買った。
“まつはし”というのは、PM.11:00には、閉まってしまう個人営業のコンビニ。
あたしの家からは徒歩5、6分というところだ。
:09/05/30 00:01
:N703iD
:N5IrhVj6
#62 [七瀬]
24時間営業じゃないって…
さすが、
THE 田舎って感じ。笑
「ありがとー、ゆず」
すると、お母さんはビニール袋から、牛乳を取り出した。
あたしの手が、自然と、
低脂肪の牛乳に伸びたのは
「30円が惜しい!」っていうお母さんのドケチが移ったみたい。
:09/05/30 00:06
:N703iD
:N5IrhVj6
#63 [七瀬]
「これでやっと作れるわぁ」
そういって、台所に立ったケチんぼ、自己チュー
マイマザー。
『“大至急で牛乳”って、いったいなに作るのさ』
あたしが同窓会を放ってまで買ってきたんだから…
その牛乳の使いどころを、しっかり聞かせてもらおうじゃないですか。
:09/05/30 00:08
:N703iD
:N5IrhVj6
#64 [七瀬]
「んー、シチューを作るのよ。ホワイトシチュー」
ほ・わ・い・と!!
し・ち・ゅ・ー!?
『そ…そそそそ
それだけのために、わざわざあたしの同窓会を邪魔したの!?』
「だぁってねぇ〜」
お母さんは、じゃがいもとニンジンの皮を剥きながら何食わぬ顔で言った。
:09/05/30 00:11
:N703iD
:N5IrhVj6
#65 [七瀬]
「お母さん、柚子が同窓会行ってるなんて知らなかったし」
まりがうちに来たとき、
いたじゃないですか。
「だいいち、今日なんの日か知ってる?」
‥‥へ?
『なんの日なの??』
:09/05/30 00:12
:N703iD
:N5IrhVj6
#66 [七瀬]
「あら、やだ。
知らないの?柚子」
眉を寄せるお母さん。
カレンダーに目を向ける。
今日は8月4日。
ん?
8月4日?
:09/05/30 00:13
:N703iD
:N5IrhVj6
#67 [七瀬]
なーんか、引っ掛かるんだよなあ‥
8月4日
8月4日…
出かかってるのに、出なくて、もどかしい。
「お父さんの誕生日」
うしろから声が聞こえたと思ったら、
『お姉ちゃん‥』
鬼のマイシスターの姿が。
:09/05/30 00:14
:N703iD
:N5IrhVj6
#68 [七瀬]
「8月4日。
お父さんのバースデー」
『あっ、忘れてた』
再度言われ、ようやく脳が理解してくれたみたい。
「もぉ〜。お母さん、そんな親不孝な娘に育てた覚えないわよ〜」
‥親不孝で、どうもすみません。
:09/05/30 00:15
:N703iD
:N5IrhVj6
#69 [七瀬]
「ゆず〜っ、ひどいなあ〜!お父さん、ショック大!」
うん、古いよ。
死語だよ、パパ。
‥とりあえず、
お父さんは酔ってるみたいだし、
「ママのホワイトシチューはやっぱり最高だ」
あたしが完全に忘れてたこと、気にしてないみたいだし、いっか。
:09/05/30 00:22
:N703iD
:N5IrhVj6
#70 [七瀬]
これが、シラフだったら、お父さん、落ち込んでただろうな。笑
誕生日プレゼントには、
速急で、昔よく作った
“肩たたき券”をあげた。
行事のお知らせのプリントで。笑
「懐かしいなぁ〜」
って喜んでた。
これもシラフだったら‥
:09/05/30 00:26
:N703iD
:N5IrhVj6
#71 [七瀬]
「ははは〜、ママぁ〜!」
お母さんに、寄り掛かってるお父さん。
‥ラッキーってことで。
でも、ときどき思う。
あたしにも、この人の血が流れてるんだろうか。
‥流れてるんだろうが、
‥やだな。笑
:09/05/30 00:29
:N703iD
:N5IrhVj6
#72 [七瀬]
『‥お風呂入ろっと』
「もう入るの?」
『うん。明日、学校行かなきゃいけないし』
林原の部活、見に‥
「まー!まあまあ!
あんた偉いわぁ!自分から進んで補習受けるなんて。お母さん、見直しちゃった!」
:09/05/30 00:34
:N703iD
:N5IrhVj6
#73 [七瀬]
……ん??
『ほ‥ほほほ補習!??』
ななな、なにそれ!!
「えーと、明日から毎週水曜日。お盆は除く…
教科は数学、理科、英語。自由参加……」
お母さんの手には、
例の“肩たたき券”
:09/05/30 00:38
:N703iD
:N5IrhVj6
#74 [七瀬]
「午前9時から、11時まで…だって」
肩たたき券め!
肩たたき券のくせに!!
あたしのハッピー夏休みライフ…すいません。
あたしの!
毎日ゴロゴロぐーたらライフを邪魔するつもりか!
『あ‥あたし、無理だよ!林原の部活見に行くし!』
:09/05/30 00:42
:N703iD
:N5IrhVj6
#75 [七瀬]
「何時から?何時から始まるの?その部活」
『え?』
そういえば‥
『‥‥わかんない』
時間、聞いてない!
「じゃあー、行ったってしょうがないじゃない。おとなしく補習受けなさい」
それだけは、
ぜっっったい!いや!!
:09/05/30 00:47
:N703iD
:N5IrhVj6
#76 [七瀬]
『‥やだよ』
「行きなさい」
『やだやだやだ!』
「行きなさい!」
『やだったら、やだ!!』
お互い、一歩も譲らない
仁義なき戦い。
その戦いの終止符を打ったのは、この酔っぱらいオヤジ。
:09/05/31 00:36
:N703iD
:U4z37/x2
#77 [七瀬]
「ゆず〜、
肩マッサージしてくれ〜」
………。
『‥お風呂
はぁーいろ、っと‥』
「ちょっと待ちなさい!
柚子!!」
「ゆず〜、肩たたき券使えないのか〜!?」
今日は営業中止だ。笑
ってか、マッサージ屋は、潰れたっつーことで。
:09/05/31 00:41
:N703iD
:U4z37/x2
#78 [七瀬]
とりあえず、
あたしはお風呂に逃げ込んだ。
なんか、中3ぐらいから、お風呂があたしの居場所みたいになってる気がする。
だって、
いちばん落ち着くし。
ゆっくり、
安らげるというか‥
だいたい、うちの家族は、うるさすぎるんだ。
:09/05/31 00:44
:N703iD
:U4z37/x2
#79 [七瀬]
『ふぅ〜‥』
明日、どうしよ‥
いつから、
部活始まるんだろうか。
剣道部だし、
そんなに長いこと、閣議室使えるわけじゃないし‥
遅くても
昼過ぎまでだろう。
もーっ!
林原も肝心なこと忘れちゃダメじゃん。
:09/05/31 15:25
:N703iD
:U4z37/x2
#80 [七瀬]
補習は9時から、11時までって言ってたしなあ‥
‥アイツもくるんだろうか。
久しく会っていない
アイツ。
この長い夏休み。
どう過ごしているのかな。
:09/05/31 15:28
:N703iD
:U4z37/x2
#81 [七瀬]
あー、のぼせちゃう!
あたしは、
急いで湯ぶねから出る。
‥なに赤くなってんの。
長いこと、湯に浸かっていたからか、
‥アイツのことを考えてたからか。
鏡の中の、あたしの頬は火照っていた。
:09/05/31 15:33
:N703iD
:U4z37/x2
#82 [七瀬]
『‥明日‥補習行くよ』
「どうしたの、急に。
さっきまで、あんなにいやだって言ってたじゃない」
『べっ‥別に』
アイツも行くかも
ってわけじゃないから。
『ただちょーっとは勉強する気になっただけ』
「あら‥そう」
:09/05/31 18:28
:N703iD
:U4z37/x2
#83 [七瀬]
バスタオルで、頭を無造作に拭きながら、
目を大きくしているお母さんに
『おやすみ』
そう言って、
部屋へ向かった。
ドキドキを
胸に秘めながら。
:09/05/31 18:32
:N703iD
:U4z37/x2
#84 [七瀬]
あ〜‥、
なんか、ほんと久々だぁ‥
この長い長い時間、
電車に乗ったのも、
学校へ足を運んだのも。
一年の補習は、
一階の多目的室で行うらしい。
ちなみに、閣議室は、
三階のいちばん端っこにあって、体育館を3分の1の大きさにした感じ。
:09/05/31 19:10
:N703iD
:U4z37/x2
#85 [七瀬]
『‥おはようございまーす』
少し緊張気味に多目的のドアを開けると、
長テーブルが横2列、
縦5列に並んでいる。
‥が、
「松田、おはよう」
そこには、マッキーが一人、相変わらずのいかつい顔で座っていた。
:09/05/31 19:16
:N703iD
:U4z37/x2
#86 [七瀬]
『ま‥マッキー』
「久しぶりだな、松田」
多目的室には、
あたしとマッキーだけ。
『ちょ‥ちょっと早く来すぎちゃいましたかね』
だって、誰も来てないし。
「いーや、ちっとも早くない。遅すぎるくらいだ」
そうやって、マッキーは
9時ちょうどを指している時計を指差した。
:09/05/31 20:28
:N703iD
:U4z37/x2
#87 [七瀬]
てことは‥
「じゃあ、松田が来たことだし、始めるか。補習」
てことは、
てことは!!
『あの‥あたし一人で、
ですか?』
「当たりめーだろーが。
誰も来ないんだから」
や、やややっぱり‥
:09/05/31 20:30
:N703iD
:U4z37/x2
#88 [七瀬]
こうして、始まった補習。
アイツどころか、
誰も来ていない。
みんな、貴重な夏休みを補習に埋める気はないようだ。
‥って、当たり前か。
もぉ‥‥最悪‥
あたしは、3時間、
この黒板に一人で立ち向かわなければいけなかった。
:09/05/31 20:34
:N703iD
:U4z37/x2
#89 [七瀬]
マッキーが、一生懸命、
数学を説明している。
ていうか‥
マッキーって、技術の先生だったんじゃ‥。
「おい、聞いてるのか!?」
『え!?あ、は、はい!』
でも、数学の先生より、
分かりやすかったし、いっか。
この3時間、
いつもの無駄ばなしは、出てくることはなかった。
:09/05/31 20:40
:N703iD
:U4z37/x2
#90 [七瀬]
「よーし、10分早いが、
今日はここまでだ。
松田、一人でよく頑張ったな」
あれから、理科、英語を
教わって、やっと解放された。
『ありがとうございました』
そうやって、
多目的室を後にした。
:09/05/31 20:45
:N703iD
:U4z37/x2
#91 [七瀬]
このまま帰るのも
なんだし‥
一応、閣議室行ってみよっかな。
なんて、考えながら
ボンヤリ歩いていると
バンッ
『わっ!』
「ごっごめんなさい!」
誰かが、後ろから
ぶつかってきた。
:09/05/31 23:12
:N703iD
:U4z37/x2
#92 [七瀬]
「す、すいません!」
相手は、
頭を下げて謝る。
『そ‥そんな‥、あたし、大丈夫だし、どこも怪我してないし‥‥顔、上げて下さい』
制服を着ていることから、ここの生徒らしい。
「あの‥ほんとすいません」
あたしが、そう言うと
顔を上げた。
:09/05/31 23:17
:N703iD
:U4z37/x2
#93 [七瀬]
わ‥かわいー‥。
「あの‥怪我、ほんとにしてませんか?」
身長は、あたしくらいしかないみたい。
目は、おっきくて、
くりくりしている。
髪は、ふわふわしたショート。
あたしと、正反対の白い肌が真っ黒な瞳をより美しく引き立てていた。
:09/05/31 23:21
:N703iD
:U4z37/x2
#94 [七瀬]
『ほ‥ほんと大丈夫ですから‥』
「ごめんなさい。
急いでたものですから、走っててつい‥‥」
そうやって、
頬に手をかざす、その女の子は、やっぱりかわいい。
『その‥急いでたんなら、早く行ったほうが‥』
「あ、そうですね。
ほんと申し訳ありませんでした」
:09/05/31 23:25
:N703iD
:U4z37/x2
#95 [七瀬]
ハッとしたように、
その女の子は言った。
「早く行かないと、剣道の試合が始まっちゃう‥
そ、それじゃあ、失礼しましたっ!」
そうやって、あたしが行こうとした階段の方へ慌てて走っていった。
剣道の試合‥?
あ‥、まだやってるんだ。あたしも早く行かなくっちゃ。
あたしも、女の子と同じ方へ足を走らせた。
:09/05/31 23:32
:N703iD
:U4z37/x2
#96 [七瀬]
「頑張れー」
「ファイトー!」
わ、始まってんじゃん。
ドアを開けた瞬間、
熱い喚声と、むわ〜んとした空気が身を包んだ。
こんな30度を軽く超える日に、
こんなクーラーも扇風機もないところで、
あんなの着て、のぼせないのだろうか。
:09/06/01 22:11
:N703iD
:L5M3MJSg
#97 [七瀬]
ピピーッ!
ホイッスルが鳴った。
勝負が決まったみたい。
次の試合は‥
パッと見ると、いちばん小さい姿が、フィールド上に見える。
林原だ。
あたしは、すぐに確信した。
:09/06/01 22:13
:N703iD
:L5M3MJSg
#98 [七瀬]
顔が、覆われて見えないけど、あれは絶対林原だ。
あんなに見てきたすがただもん。
間違えるはずない。
『はやしばらー!
がんばれーっ!!』
そう周りも気にせず、
大声で叫んだ。
すると、振り返って
「遅ーんだよ」って笑った。
顔は見えなかったけど、
絶対絶対笑った。
:09/06/01 22:17
:N703iD
:L5M3MJSg
#99 [七瀬]
ほらー、やっぱ林原だー。
なんだか、
うれしくなった。
が、次の瞬間には、
不安があたしの胸を過った。
‥でかっ。
林原の対戦相手は、
かなり長身の細い男だった。
軽く185は超えてると思う。
:09/06/01 22:20
:N703iD
:L5M3MJSg
#100 [七瀬]
‥大丈夫かな、林原。
そんな不安をよそに、
始まりの合図が鳴り響いた。
いくら、林原がうまくてもこんなに身長差あるんじゃ勝ち目がない。
早くも押され気味だし。
顧問の先生も、もうちょいそういうとこ考えてくれても、いいのに。
20p近く差がある相手なんて‥
:09/06/01 22:24
:N703iD
:L5M3MJSg
#101 [七瀬]
『がんばれ!がんばれ!
林原ー!』
あたしは、我を忘れて
かなり応援した。
今、振り返ると、
顔から火が出そう。
でも、それだけ
林原を応援したい気持ちがあった。
あたしの、叫びが通じたのか、林原は相手と互角に張り合っている。
:09/06/02 04:15
:N703iD
:crs90Bzo
#102 [七瀬]
‥でも、
結果は負けだった。
『お疲れ、林原』
あたしが駆け寄ると、
林原は、「負けちゃったな」って笑った。
やっぱり身長差が
かなり大きかったみたいで一瞬の隙を突かれた。
でも‥頑張ったよ、林原。
:09/06/03 04:33
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#103 [七瀬]
暑い中、体を動かしたからか、林原の頬は赤く、少し息も荒かった。
『‥すごいよ。
あんな大きな相手に立ち向ってくなんて』
「でも、今回だけは勝ちたかったなー」
林原は悔しそう。
でも、きっとあたしが
いちばん悔しい。
:09/06/03 04:40
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#104 [七瀬]
隣を見ると、さっきの
林原の対戦相手が。
やっぱ、身長差が違いすぎる。
不公平だよ。
あたしは、
無意識に睨んでいた。
「‥‥ぷっ‥はははは」
すると、
いきなり笑いだした。
:09/06/03 15:58
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#105 [七瀬]
な‥なになに!?
なんで笑ってんの!??
頭が着いていかない。
あれ‥
この声って、まさか‥‥
「久しぶりだね。
ぽんずちゃん」
相手が面を外した瞬間、
あたしは、『あっ!』と、自然に声が漏れていた。
:09/06/03 16:01
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#106 [七瀬]
『‥‥あ‥歩志!?』
「驚きすぎ」
そうやって、
まだクスクス笑うアイツとは対象的に驚きを隠せないあたし。
だ‥だってだって!
『なんで、歩志がここにいんの?なんで、剣道してんの!?』
「質問攻めだね」
びっくりするじゃん。
:09/06/03 16:07
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#107 [七瀬]
「まず、最初の質問から、答えてくと、俺は剣道部だから、ここにいんの。」
うんうんと首を縦に振る。
「‥で、2つ目の質問にも、答えなきゃダメかな?
同じ答えなんだけど」
あ‥そういう皮肉混じりな言葉が歩志らしい。
『‥けっこう』
:09/06/03 16:11
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#108 [七瀬]
「理解してくれたなら、なにより」
あー‥‥やばい。
やばすぎ。
その顔とか、
その声とか。
久しぶりすぎて、
しかも、いきなりで。
免疫ないよ、あたし。
だから、
そんな笑顔見せんな〜っ‥
:09/06/03 16:15
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#109 [七瀬]
いきなりの不意打ちに、
かなりどきどきなあたし。
「だから、負けたくないって言ったの」
『‥林原』
いけない。
興奮しすぎて、忘れてた。林原のこと。
「でも、今日初めて対戦したけど、林原くん強いねー」
:09/06/03 16:20
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#110 [七瀬]
「嫌味かよ」
なんか‥ヤな雰囲気‥‥
「違うよ。もし俺と林原くんの身長差が10pしか変わらなかったら、負けてたね、俺。」
「‥やっぱ、嫌味じゃねーかよ」
それから、林原が牛乳を飲んでたのを、あたしはしばしば目的することになる。
:09/06/03 16:24
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#111 [七瀬]
『歩志が、剣道部だったなんて‥‥ほんっと意外!』
「‥‥‥‥」
『‥あれ、林原?
聞いてる?』
「‥‥‥‥‥‥」
今、あたしは林原と
二人で電車に乗っている。
歩志とは、方向が逆だから駅で別れた。
:09/06/03 16:31
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#112 [七瀬]
さっきから、
林原はなんも話さない。
『はやしば‥』
「お前さ」
『ん?』
やっと、しゃべってくれたので、あたしは少し身を乗り出した。
:09/06/03 16:34
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#113 [七瀬]
「‥さっきから、八田の話ばっか」
ぶっきらぼうな口調。
少しの沈黙のあと、
『‥ごめん』と、だけ謝った。
そりゃ、林原といるときに歩志の話ばっかじゃ、
聞いてる林原にとっちゃ気分は良くないよね。
:09/06/03 16:37
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#114 [七瀬]
「あのさ、ストレートに聞くけど、いい?」
また、しばしの沈黙も経て声が聞こえた。
相変わらずの
ぶっきらぼうな声。
『え‥う、うん‥‥』
なんだろう。
:09/06/03 16:41
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#115 [七瀬]
「八田と、付き合ってんの?」
‥‥‥‥。
『‥ぇぇええ!??』
‥っと、
いけないいけない。
電車の中の人々の
視線が痛い。
あたしは、口をつぐんだ。
:09/06/03 16:45
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#116 [七瀬]
林原は
小さなため息を落とす。
「‥どうなわけ?」
『‥“どうなわけ”って、あたしたちは別に‥』
付き合ってるわけじゃ‥
「ほんとか?」
林原の、
目があたしを捕らえる。
:09/06/03 16:57
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#117 [七瀬]
『ほんとだよ‥。
付き合ってない‥』
なぜか、声が小さくなってしまう。
目線を下げると、ひざの上のこぶしを強く握りしめてたことに気付く。
「松田‥」
『‥ってゆーか、付き合うもなにも、あたしと歩志はそんな関係じゃないし!』
:09/06/03 21:09
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#118 [七瀬]
夏休みに入るまえ、
歩志に
「好き」って言われた。
あたしは、疑った。
聞き間違えなんじゃないかって、自分の耳を。
からかってるんじゃないかって、歩志を。
でも、あたしの耳は
ちゃんと機能してて‥
:09/06/03 21:12
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#119 [七瀬]
あたしは、
すごくうれしかった。
歩志を見てると、
胸がいちいちうるさくって困った。
毎日、学校に行くのが
楽しみで楽しみで
仕方なかった。
でも‥
‥‥歩志は、からかってただけだったんだ。
:09/06/03 21:16
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#120 [七瀬]
だって、
あれからまったくといっていいほど、変化がない。
歩志はいつも通りだし‥
ただ違うのは、
あたしの気持ちだけ。
歩志にとって、
あの“好き”は、
ただの冗談だったんだ。
:09/06/03 22:31
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#121 [七瀬]
でも、その気まぐれが
あたしを、期待させるんだよ‥。
だって、今でも
歩志に会うと心臓が忙しくなるから。
今日だって‥‥
「じゃあ、まだ俺にもチャンスあるってことで」
:09/06/03 22:34
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#122 [七瀬]
『え?』
林原の思いもよらぬ言葉があたしを一気に現実に引き寄せた。
「だから、まだ俺にもあるんだろ?松田を振り向かせるチャンス」
あ‥あんたは、
そんなことをあっさりと‥
あまりの林原の、潔さに、思わず頷いてしまった。
:09/06/03 22:38
:N703iD
:Mpz7J7ZI
#123 [七瀬]
『今日も暑いなぁ‥』
一人つぶやく。
あれから毎日、学校に行っている。
先に言っとくけど、
別に毎日補習
ってわけじゃないからね!
:09/06/05 16:06
:N703iD
:79.tk/8A
#124 [七瀬]
剣道部を見に行ってる。
先週の水曜日から。
補習なんて、
そっちのけで。
お母さんに言ったら
殺されるね。確実に。笑
水曜は補習に行ってることになってるから。
なんで暑い中、たかが剣道部を見に、毎日学校、通ってるのかって?
:09/06/06 09:35
:N703iD
:5FlLND6Q
#125 [七瀬]
うん、それはね。
あたし、
帰宅部卒業しましたー。
イェーイ!
はい、お察しの通りです。
剣道部のマネージャーに
なりました。
つい3日前のできごと。
:09/06/06 19:12
:N703iD
:5FlLND6Q
#126 [七瀬]
林原から、
電話がかかってきた。
あまりのできごとだし、
ってか、初めて林原と電話するし‥
『なんで、あたしんちの、番号知ってんの!?』
これが、第一声。
「んー、なんでだろ」
しかも、あっさりスルー。
:09/06/06 19:15
:N703iD
:5FlLND6Q
#127 [七瀬]
それはまあ、小学生の時からの付き合いだし、
こんな田舎だし?
今まで、一度も電話したことないって方が不思議か。
『‥マネージャー!??』
が、そんなあたしの疑問は林原の一言で吹き飛ばされた。
:09/06/06 19:19
:N703iD
:5FlLND6Q
#128 [七瀬]
「そ。マネージャー。
ど?なってみない?」
『む‥むりむりむり!
あたし、洗濯とかできないし!』
今、思えば、
めんどくさかっただけかも。
あたし、責任感0だし。
「ははっ、大丈夫だよ。
洗濯なんて、しなくていーから」
:09/06/06 19:23
:N703iD
:5FlLND6Q
#129 [七瀬]
『え、そうなの?』
マネージャー=洗濯って、イメージしかなかったあたしは少女マンガの見すぎかもしれない。
『じゃあ、なにすんの?』
ま、とりあえず洗濯しなくていーみたいだし、話を聞こうじゃないですか。
あたしは、
電話に耳を傾けた。
:09/06/06 19:27
:N703iD
:5FlLND6Q
#130 [七瀬]
「んーと、とりあえず部活ある日は毎日来ないといけないな」
うんうん。
それでそれで?
「あとは、お茶沸かしたり全員の健康チェックぐらいじゃね?」
なんだ、簡単じゃん。
『やる!』
なんも考えず、言っちゃった。
:09/06/06 19:31
:N703iD
:5FlLND6Q
#131 [七瀬]
だって、
これで補習免れるしぃ〜。
それに
暇で暇でたまらなかった、憂うつな日々もちょっとは色づくんじゃないか。
そう思った。
‥もちろんアイツもいるしね。
剣道部の
マネージャー‥かぁ。
:09/06/06 19:41
:N703iD
:5FlLND6Q
#132 [七瀬]
ま、それほど
大変じゃなさそーだし。
適当にがんばるよ。
テキトーにね。
『これから、マネージャーします。松田柚子です。
よろしくお願いしまーす』
そんなこんなで、
初挨拶も、こんな感じで緩かったと思う。
:09/06/12 22:28
:N703iD
:WolmTlXQ
#133 [七瀬]
工業高校。
剣道部‥
前を見ても、
うしろを見ても、
右を見ても、左を見ても。
見渡すかぎり
男 男 男‥
:09/06/12 22:31
:N703iD
:WolmTlXQ
#134 [七瀬]
‥あたしが
言いたいのはね。
「‥‥‥‥‥‥」
空気空気!!
『‥お願いしまーす』
なにこのシーン‥
ってした空気!
:09/06/12 22:33
:N703iD
:WolmTlXQ
#135 [七瀬]
あたし、女だよ!?
かわいー‥‥くはないけど一応女の子だよ!??
こんな男臭いところで、
紅一点。
ふつうは、もっと盛り上がるもんなんじゃないの‥?
なんなのなんなの!!
この雰囲気といい、
みんなの表情といい。
もっと希望に溢れた顔をしても、おかしくないはず。
:09/06/12 22:37
:N703iD
:WolmTlXQ
#136 [七瀬]
「‥よろしくおねがいしまーす」
なに、その返事!
やっと返ってきた返事は、希望のカケラもなかった。
あんたら、
ほんとに運動部か!?
もっと、
でかい声は出せんのか?
そんなに、あたしが
気に食わんのか‥‥?
:09/06/12 22:43
:N703iD
:WolmTlXQ
#137 [七瀬]
「メン!」
‥どうやら、あたしが
気に食わんかったらしい。
練習に入ると、さっきとは比べものにならないくらいみんな、腹の底から、大きな声を出していた。
‥うん。
こいつらは確かに運動部だった。
そして‥正直者だった。
:09/06/12 22:47
:N703iD
:WolmTlXQ
#138 [七瀬]
もー!なんなのさ!
かわいい子が良かったな、って?
そういうこと‥
‥思ったより、
楽しくないかも。
林原の言ってたとおり、
特になにもすることがなく、ただその光景を、ボンヤリ眺めながら
そう思った。
:09/06/12 22:50
:N703iD
:WolmTlXQ
#139 [七瀬]
今日だって、
なーんにもすることがなく、見てるだけ。
この三日間、
ずっとこういう状態。
あたしがしたことといえばお茶を沸かしたことくらい。
『‥はぁ』
ため息は減るどころか
増えるばかり。
:09/06/13 15:23
:N703iD
:XsbPLW1s
#140 [七瀬]
「松田、どう?」
いつものように、眺めていると、
『んー‥ビミョー』
休憩時間に入ったみたいで林原が声を掛けてきた。
「微妙?」
『うん‥なんか思ったのと違うかも』
:09/06/14 20:50
:N703iD
:A0QwqCZY
#141 [我輩は匿名である]
「ふーん‥珍しいな」
林原は、丸い目を
よりいっそう丸くした。
「松田が、弱音吐くなんて」
『‥ん〜‥なんでだろ‥
暑いし、なーんもすることないし‥』
「要するにヒマ?」
『‥うん。忙しいと、それはそれで困るけど』
:09/06/20 18:21
:N703iD
:15LlxJw2
#142 [七瀬]
「じゃあ行くか!
久しぶりに!!」
『‥へ?』
な‥なにいきなり。
「だから」
ひとつ間を置いて
林原は言った。
「気分転換」
ものすごく
目を輝かせながら。
:09/06/20 18:26
:N703iD
:15LlxJw2
#143 [七瀬]
『ほんと久しぶりだね〜』
この部屋。
この雰囲気。
「だろ?長くご無沙汰だったもんな」
机の上には、
カルピスとコーラ。
そして、
あたしの大嫌いだったあれ。
:09/06/20 18:31
:N703iD
:15LlxJw2
#144 [七瀬]
「よしっ!じゃあ歌うか!」
そういって、
今は、嫌いじゃないそれを手にとった林原。
『うんっ!』
あたしも、
マイクを握った。
るんるん気分で。
:09/06/20 18:34
:N703iD
:15LlxJw2
#145 [七瀬]
『あぁ〜、
ストレス発散したぁ』
あれから、
もう一杯カルピスをおかわりして、
カルピスの氷が溶けて、水っぽくなるまで歌った。
『明日から、
またがんばれそう!』
両手を伸ばして、
背伸びをした。
:09/06/20 18:38
:N703iD
:15LlxJw2
#146 [七瀬]
「それはよかった」
にこって笑う林原に
負けないくらいの笑顔で
『ありがとう!林原』
言ってやった。
ドキドキさせられっぱなしなんて、やだし。
自分でも、よくわからない対抗心を抱きながら、
林原とバイバイした。
:09/06/20 18:43
:N703iD
:15LlxJw2
#147 [七瀬]
「ねー、ぽんずちゃーん」
林原とカラオケに行った
翌日のことだった。
『んー?
どうしたの?歩志』
あたしは、お茶を沸かしにやかんに水をくんでいるところだった。
「昨日、カラオケ行ったでしょー。林原くんと」
:09/06/20 21:07
:N703iD
:15LlxJw2
#148 [七瀬]
『‥行ったけど』
なんで知ってんだ、
コイツ。
「やっぱり。林原くんが、言ってたもん」
林原が‥。
「妬いちゃうかも」
ポツリと林原は言った。
:09/06/20 21:11
:N703iD
:15LlxJw2
#149 [七瀬]
訂正
×ポツリと林原は言った。〇ポツリと歩志は言った。
すいません><
:09/06/20 21:12
:N703iD
:15LlxJw2
#150 [七瀬]
『‥はははっ、
歩志、なに言ってん‥』
振り向いた瞬間
『‥の』
どきっとした。
だって、
ニヤッと口角を上げた意地悪な顔をしながらも
真剣なまなざしをした
歩志がいたから。
:09/06/20 21:16
:N703iD
:15LlxJw2
#151 [七瀬]
『‥‥‥』
しばらく、
なにも言えなかった。
ただ捕らわれたように、
その瞳を見ていた。
「なーんてね」
歩志が、おどけたように
舌を出すまで。
:09/06/20 21:18
:N703iD
:15LlxJw2
#152 [七瀬]
「‥‥明日」
『‥え?』
「あーしーた。
午後4時30分。駅前に来て」
歩志は、
いつもの口調で言った。
「じゃあ、
ぜんぶ許したげる」
:09/06/20 21:23
:N703iD
:15LlxJw2
#153 [七瀬]
許す‥‥?
「もうそろそろ行かなきゃ。じゃーねー」
歩志は、出ていった。
許す‥なにを‥‥?
部活が終わるまでの、
一時間と15分。
あたしの頭は、はてなで
いっぱいだった。
:09/06/20 21:26
:N703iD
:15LlxJw2
#154 [七瀬]
「ねー、お母さん。
浴衣出してくんない?」
その日の
夕方のことだった。
「浴衣?‥ああ。そういえば。今年も行くの?」
「うん、友だちと」
‥あ、まさか。
:09/06/20 21:33
:N703iD
:15LlxJw2
#155 [七瀬]
『夏祭り‥?』
まさかまさか。
「うん。駅前のー」
まさかまさかまさか!
「わかった。浴衣出しとけばいいのね」
『‥ま、待って!』
ガタンと立ち上がった。
:09/06/20 21:36
:N703iD
:15LlxJw2
#156 [七瀬]
『あ‥あたしの分も‥出しといてくれない‥かな?』
お母さんは、
目を大きくした。
「あら。去年、まりちゃんと行ったときは歩きにくいからって、着ていかなかったじゃない。どうしたの、急に。」
『‥え、あ、
‥い‥いやあ‥』
確か、そうだった。
:09/06/20 21:40
:N703iD
:15LlxJw2
#157 [七瀬]
『そうなんだけど‥』
でも‥
『たっ‥たまには、いーかなーと思って』
「‥そう。わかったわ」
ちょっと、女の子らしいとこ見てもらいたかったのかも。
:09/06/20 21:42
:N703iD
:15LlxJw2
#158 [七瀬]
あ、やば。
遅れちゃう。
でも
「ゆ〜ず〜!もうそろそろ出たほうが、いいんじゃない?4時半に待ち合わせしてるんでしょー?お友だちと」
『もうちょっと待って〜!すぐ行くから!』
鏡の前で
最終チェックする。
:09/06/20 21:52
:N703iD
:15LlxJw2
#159 [七瀬]
お母さんが出してくれた
浴衣は
おばあちゃんが去年に、あたしとお姉ちゃんに買ってくれたけど、
あたしは一回も着たことがなかった。
浴衣って、歩きにくいし。
かき氷のシロップつけて帰ったら、お母さんに100%怒られるし。
おもいっきり遊べないからって理由で、拒否してた。
:09/06/20 21:56
:N703iD
:15LlxJw2
#160 [七瀬]
でも、今日は‥
「ゆーーずー?まだ?」
『はぁい。今行くー』
初めて袖を通した浴衣は、柔らかくて、冷たくて。
新品独特の匂いがした。
山吹色に、うすいピンクは少しおとなっぽすぎたかも。
:09/06/20 22:00
:N703iD
:15LlxJw2
#161 [七瀬]
でも、
少しでもかわいいと思ってくれればいいな。
淡い色の浴衣と、淡い願いとともに家を出た。
電車ー。早く着けー。
そんな思いを乗せた電車は長く感じた。
:09/06/20 22:02
:N703iD
:15LlxJw2
#162 [七瀬]
駅に着くと、見えてくる、ちらほらと灯る明かり。
年に一度の行事、
夏祭り。
駅前‥着いたけど、
どこかな、歩志。
慣れない浴衣と、
おぼつかない足取りで
辺りを見渡す。
「あ、浴衣発見」
:09/06/20 22:54
:N703iD
:15LlxJw2
#163 [七瀬]
声が聞こえた。
「ってか、遅い」
あの声が。
『歩志!』
振りかえると
「何分待ったと思ってんの」
声はぶっきらぼうだけど、優しい笑顔だった。
:09/06/20 22:57
:N703iD
:15LlxJw2
#164 [七瀬]
『ご‥ごめん。思ったより時間かかっちゃって』
あわてて駆け寄ると
「待ちすぎて痛いよー」
今度は、声も顔も、
ぶっきらぼうな歩志。
『ほんっとごめ‥』
次の瞬間、
あたしは静止した。
:09/06/20 23:00
:N703iD
:15LlxJw2
#165 [七瀬]
「もう来てくんないかと、思った‥」
だって、
歩志の胸の中にいたから。
「だからさっきから、ドキドキしてた。やっぱ来てくんないかなーって。
だから、心臓痛い」
ちょっと笑って、
そう言った。
:09/06/20 23:02
:N703iD
:15LlxJw2
#166 [七瀬]
バカ‥。
まるで、時間も静止しているようだった。
ただ、心臓の音だけが、
ドキドキドキドキ‥と忙しく、鳴っていた。
あたしの方が痛いよ‥。
それが、
あたしの音なのか、
歩志の音なのか。
未だに、わからない。
:09/06/20 23:05
:N703iD
:15LlxJw2
#167 [七瀬]
でも、どっちでもいいや。
年に一度の夏祭り。
中学の友だちだって
お姉ちゃんだって
林原だって
来ているかもしれない。
見られるかもしれない。
でも、
すごく居心地よくって‥。
離れたくなかった。
:09/06/20 23:07
:N703iD
:15LlxJw2
#168 [七瀬]
「ってか、誰が祭り行くなんて言った?」
しばらくして、
歩志は離れた。
‥もうちょっと
ああしてたかったかも。
相変わらずの意地悪な顔。
:09/06/20 23:10
:N703iD
:15LlxJw2
#169 [七瀬]
『‥‥‥』
抱き合っていた恥ずかしさと
歩志のことばで沈黙する。
「まあいいや。
許したげるよ、ぜんぶ」
顔を上げた。
だから、なにを?
「行こっか」
:09/06/20 23:11
:N703iD
:15LlxJw2
#170 [七瀬]
‥またやられた。
あたしは
黙って歩志についていく。
大きな手に、
手を奪われながら。
なんで、あんなに
自然に手ぇ繋げんの?
ドキドキが止まる気配も
感じずに。
:09/06/20 23:15
:N703iD
:15LlxJw2
#171 [我輩は匿名である]
「暑いね〜」
恥ずかしくって
ずっと下を向いてたら
『う‥うん』
不意に声を掛けられた。
「ね」
『うん?』
「すごい汗だけど。手」
:09/06/26 19:09
:N703iD
:g7hoY3S6
#172 [我輩は匿名である]
『‥っ‥ごめん‥』
バッと
手を離そうとすると
「なんで離そうとするの」
逆に手を
強く握り返された。
「いいじゃん。
手、あったかくって」
は‥はずかしぃ〜‥‥
:09/06/26 19:14
:N703iD
:g7hoY3S6
#173 [我輩は匿名である]
この何分間で、
いったい、どのくらいドキドキしただろう。
リアルに心臓痛い‥
相変わらず、
休まるようすもなく
激しく跳ねる心臓を胸に
汗で少し蒸れた手を
感じながら
長い
長い長い夜が始まった。
:09/06/26 19:18
:N703iD
:g7hoY3S6
#174 [我輩は匿名である]
「ね〜ね〜、ぽんずちゃん。 あれ見て、あれ!」
珍しくはしゃぐ
歩志の指先には、
『かわい〜』
定番中の定番
金魚すくい。
「やろっか」
『うん!』
あたしたちは、
屋台に向かった。
:09/06/27 17:28
:N703iD
:f7P3rAuo
#175 [我輩は匿名である]
「お姉ちゃん。大人2人」
「はい、おおきに。
600円なります」
お金を渡すと
「勝負しよー」
歩志があたしを
ちらりと見て言った。
『‥いーけど‥‥歩志負けるよ?』
:09/06/27 17:32
:N703iD
:f7P3rAuo
#176 [我輩は匿名である]
「ふーん‥自信あるんだ」
あったりまえじゃん!
『あたし、こう見えても
金魚すくいはうまいの。
家族にも友だちにも
誰にも負けたことないんだからねー』
事実あたしは
負けという結果を出したことない。
全勝0敗。
これは、この15年間の
あたしの唯一の自慢できることだ。
:09/06/27 17:38
:N703iD
:f7P3rAuo
#177 [我輩は匿名である]
「じゃー、どうする?
負けたら」
へ?
「もし負けたら‥そーだなあ。俺、タコせん食べたいんだけど」
‥なるほど。
そういうことね。
『あ、あたしはかき氷!』
その勝負、受けて立とうじゃないですか。
:09/06/27 17:41
:N703iD
:f7P3rAuo
#178 [我輩は匿名である]
「‥楽しみだね」
歩志お得意の
意地悪な笑顔を合図に
勝負のチャイムは鳴った。
ひさびさの金魚すくいで
最初はちょっと
てこずったものの感覚はだいぶ戻ってきた。
横を見ると、
金魚たちが集まりやすい端にいつのまにか移動してる歩志が。
:09/06/27 17:46
:N703iD
:f7P3rAuo
#179 [我輩は匿名である]
下を見ると、
あたしに負けないくらいの金魚たち。
なかなかやるな、あいつ。
よーしっ!
あたしも頑張ろ!!
気合いを入れ直す。
なんかわかんないけど、
負けたくなかった。
悔しがるアイツの顔が
見たかったのかも。
:09/06/27 17:49
:N703iD
:f7P3rAuo
#180 [我輩は匿名である]
20分後
黄色いかき氷を持った
あたしの隣には
タコせんを一口かじる
歩志のすがた。
結局、
勝負は引き分けだった。
「あーあー。おごってもらう気満々だったのに」
『あたしだって』
:09/06/27 17:52
:N703iD
:f7P3rAuo
#181 [七瀬]
「まあ、今回は引き分けってことで」
あれ、
歩志が珍しく素直‥
「次は負けないけど」
‥‥やっぱり。
『‥ぷっ、ふふふ』
「なに笑ってんの?」
:09/07/01 23:06
:N703iD
:hNziI84M
#182 [七瀬]
『ううん、別に』
「なになに?」
『ほんとなんでもない。
気にしないで』
「よけい気になる‥」
いつもと
まるっきり逆パターン。
「ねーなに?なんなの?」
歩志は
しつこく聞いてくる。
:09/07/01 23:09
:N703iD
:hNziI84M
#183 [七瀬]
『ないしょー!』
‥ざまあみろ。
いつもの、あたしの
気持ちを味あわせてやる。
歩志はやっぱり素直じゃなくて笑えた。
でも、あたしが笑ったのは別の理由。
さかのぼること
30分前。
:09/07/01 23:12
:N703iD
:hNziI84M
#184 [七瀬]
――――――――
―――――
―――
『あー、破けたぁ‥』
あたしの紙は、歩志より
先に破けてしまった。
「もう破けたの?」
勝ち誇った顔に
ムカついて
ちょっと邪魔してやることにした。
:09/07/01 23:15
:N703iD
:hNziI84M
#185 [七瀬]
歩志はずいぶん慎重派。
バッとすくっちゃう
あたしと正反対で
金魚と
にらめっこしていた。
「‥‥」
かーなーり真剣なようすに邪魔できる雰囲気じゃなかった。
:09/07/01 23:17
:N703iD
:hNziI84M
#186 [七瀬]
もぉーっ!
暇だー!暇だ暇だぁー!!
あたしは歩志から離れたところにいき、金魚を眺めていた。
すると
「彼氏?」
横から声が。
:09/07/01 23:19
:N703iD
:hNziI84M
#187 [七瀬]
『ちっ‥違いますよ!』
いきなりだし、
びっくりしながら
声のするほうへ
目を向けると‥
「あ、ほんま?
ごめんなぁ。てっきり彼氏かと思たわ」
金魚すくいのお姉さんだった。
:09/07/01 23:22
:N703iD
:hNziI84M
#188 [我輩は匿名である]
『ど、同級生です』
そう言ったものの
「へぇ〜、友達‥なあ」
その女の人の目は
怪しむように光っている。
な、なにこの人。
いきなり‥いきなり
"彼氏?"だなんて。
あの時のあたし、
かなりテンパってた。笑
:09/07/02 14:54
:N703iD
:j6heonto
#189 [我輩は匿名である]
「あんたらみたいな子ら、よう見るわ」
あたしらみたい‥??
「あんたらみたいに仲いい子らってこと」
な‥‥っ!
『ち‥違うって言ってるじゃないですか!!』
「ごめんごめんー」
ほんと、なにこの人!
:09/07/02 14:58
:N703iD
:j6heonto
#190 [我輩は匿名である]
慣れない
関西弁だからだろうか。
この人‥なんか苦手だ‥。
「名前なんてゆーん?」
24、5歳くらいだろう。
耳に掛けた長い髪が妙に色っぽい。
『ゆ‥柚子です』
笑うと丸い目が横に細くなって、かわいいからきれいになる。
そんな人だった。
:09/07/02 15:05
:N703iD
:j6heonto
#191 [我輩は匿名である]
「柚子ちゃんかぁ。
おいしそーな名前やん!」
『それ、
誉めてるんですか?』
そう言うと
「ははははっ!」
豪快に笑った。
いやいや、
笑い事じゃないし!
:09/07/02 15:08
:N703iD
:j6heonto
#192 [我輩は匿名である]
「あんた、いーツッコミするなあ」
『は、はぁ‥ありがとうございます‥』
なんかよく、わかんないけど、とりあえずお礼を言っておいた。
「わたしはなぁ、まつりってゆーねん」
『まつりさん‥』
「そ。まつり」
:09/07/02 15:11
:N703iD
:j6heonto
#193 [我輩は匿名である]
キラキラ光る屋台が並ぶお祭り。
「ま、家がこーゆう仕事してるから、こんな名前がついたみたい。ちっさいころはいややったわー」
笑いながら言う
まつりさん。
「でも、今ではけっこう気に入ってる。おばあちゃんが付けてくれた名前やし」
『に‥似合うと思います』
:09/07/02 15:14
:N703iD
:j6heonto
#194 [我輩は匿名である]
自然に口を突いて出た。
『すっごくかわいいと思います』
お世辞でもなく、
その場しのぎでもなく。
あたしのなかの
素直な気持ちだった。
「‥‥」
黙って見ていた
まつりさんも
「ありがとーなぁ」
またあの笑顔で笑った。
:09/07/02 15:18
:N703iD
:j6heonto
#195 [我輩は匿名である]
『い‥いえ』
なんか言ったあとで
恥ずかしくなってきた。
少しうつむいて
金魚のほうに目を向けていると
「さっき、あそこの彼は友達やってゆーてたやん?」
まつりさんが口を開いた。
:09/07/02 15:20
:N703iD
:j6heonto
#196 [七瀬]
『はい‥』
「でも、好きなんやろ」
『‥‥はい‥』
なんでだろ。
さっきみたいに
素直にうなずけたのは。
頑なに否定してたことを
言ってみると、恥ずかしいけど、思ったほどではなかった。
むしろすっきりした。
:09/07/07 06:47
:N703iD
:C.9r4c4g
#197 [七瀬]
「うんうん。うんうんうんうん!」
認めると、まつりさんは
何度も首を縦に振った。
「やっぱりなぁ‥そう思たわ。いやー、こういう商売何年もしてたら、わかんねん。
ほら、金魚すくいって、お祭りデートの定番みたいやし?」
そして、マシンガンのように止まらなくなった。
:09/07/07 06:54
:N703iD
:C.9r4c4g
#198 [七瀬]
「でもまぁ、提供してるこっちがゆうのもなんやけど、なにがおもろいんかはわからんな、未だに。
金魚いじめて、なにが楽しいねん!みたいな。
一番の被害者は金魚やで!まったく‥」
まったく‥困った。
「ああ‥ごめんごめん」
唖然としてるあたしに気付いたのか、苦笑するまつりさん。
:09/07/07 06:58
:N703iD
:C.9r4c4g
#199 [七瀬]
あたしもつられて
苦笑した。
「‥でもまぁ、わたしの目から見たら、脈ありやで。脈あり」
『‥ほんとですか』
なーんか信じらんない。
「うん!ほんまほんま!」
『‥‥ほんまかい!』
:09/07/07 07:01
:N703iD
:C.9r4c4g
#200 [七瀬]
あ、
『す‥すいません!』
やば‥まつりさんの口調が移っちゃった。
はっはっは!と、また口を大きく開けてまつりさんは笑う。
「えーよえーよ!
柚子ちゃん、やっぱおもろい!連れて帰りたいわ!」
:09/07/07 07:04
:N703iD
:C.9r4c4g
#201 [七瀬]
『は‥はぁ』
曖昧にうなずく。
「ってか、一緒に地方回れへん!?」
『いや‥それはさすがに、ちょっと‥』
「冗談やん!冗談」
また笑うまつりさん。
:09/07/07 12:30
:N703iD
:C.9r4c4g
#202 [七瀬]
『‥長いんですか?その‥こういう仕事して‥』
「うーん、さっきもゆーたけど、家がやってたからなぁ。ちっさいころから来てたわ。軽いバイト感覚で」
ちょっと
うらやましいような、
そうでないような‥
:09/07/07 12:34
:N703iD
:C.9r4c4g
#203 [我輩は匿名である]
「今は独立したけど、懐かしいなぁ‥神野商会」
まつりさんは
しみじみしてるようす。
『"独立した"って‥』
「あー、やっぱいつまでも親のスネかじってられへんやん?」
まつりさんは「となり」と横に親指を向けて言った。
:09/07/07 12:37
:N703iD
:C.9r4c4g
#204 [我輩は匿名である]
その方向へ目を向けると、
いいにおいが
鼻をくすぐった。
「わたしの旦那」
:09/07/07 12:39
:N703iD
:C.9r4c4g
#205 [我輩は匿名である]
『‥旦那さん‥』
「ゆーきー!」
まつりさんの周りを、
気にせず叫ぶすがたに
少しびっくりしながらも
「なんやねん!」
二人を見てると、なんだか心があったかくなった。
:09/07/07 12:43
:N703iD
:C.9r4c4g
#206 [七瀬]
「カステラちょーだい!」
また叫ぶと、
"ゆうき"と呼ばれる
まつりさんの旦那さんが、持ってきてくれた。
「あんま、おっきー声出すなや。アユが起きるやろ」
「ごめんごめん」
当たり前だけど、
"夫婦"そのもののすがたになんだか感動した。
:09/07/07 12:49
:N703iD
:C.9r4c4g
#207 [七瀬]
まつりさんの旦那さんは、それだけ言うと、
カステラ屋に戻っていった。
「はい、これ食べ。柚子ちゃん」
『あ、ありがとうございます‥』
受け取ったそれは、
あたたかくって、ほかほかしてて。
口に入れると、
優しい甘さが広がった。
:09/07/07 12:54
:N703iD
:C.9r4c4g
#208 [七瀬]
『‥おいしい』
こっちまで、やさしい気持ちになった。
「せやろ?わたしの旦那、カステラだけはうまいねん、焼くの」
歯を見せて笑うまつりさんは、"女の子"だった。
それから数分、まつりさんと他愛もないことを話した。
:09/07/07 12:58
:N703iD
:C.9r4c4g
#209 [七瀬]
「あーー!」
『‥??』
歩志が変な声を上げたのはあたしとまつりさんが盛り上がっていたときだった。
「破れた」
:09/07/07 15:12
:N703iD
:C.9r4c4g
#210 [七瀬]
『へ、変な声あげないでよ!びっくりするじゃん!』
「ごめんごめん」
歩志が、破れたワッパを
まつりさんに渡した。
「二人とも、ありがとう。また来年しにきてな」
このことばは、別れのあいさつなんだなぁ、
と思うと寂しさが襲った。
:09/07/07 15:16
:N703iD
:C.9r4c4g
#211 [七瀬]
『ほんとにありがとうございました‥』
少し、しゅんって
なりながら、お礼を言って
その場を
あとにしようとすると、
「待って!」
歩志が引き止める。
:09/07/07 15:19
:N703iD
:C.9r4c4g
#212 [七瀬]
「まだ金魚数えてない!」
あたしが、キョトンとした顔をしたのか、
「勝負!勝負!」
歩志はムッとする。
『あぁ〜‥忘れてた』
だって、まつりさんと
夢中になって話してたんだもん。
:09/07/08 16:29
:N703iD
:yq2OZnQI
#213 [七瀬]
『ごめんごめん〜』
「しっかりしてよ、ぽんずちゃーん」
一匹ずつ、一匹ずつ。
慎重に数える歩志。
「1、2、3、4、5‥」
まるで、小学生。笑
:09/07/08 16:33
:N703iD
:yq2OZnQI
#214 [七瀬]
「‥‥19、20、21‥‥‥22匹!!」
『‥あたしと同じ』
輝かせていた目は、
瞬く間に、沈んでいく。
「ええ〜‥引き分けとか、つまんない‥」
「まぁ、ええやん!ええやん!二人でタコせんとかき氷食べれば」
:09/07/08 16:37
:N703iD
:yq2OZnQI
#215 [七瀬]
まつりさんのことばに
「ま、しょうがないか‥。勝負は勝負だし」
しぶしぶ
歩志も納得したよう。
『じゃあ、まつりさん』
今度こそ、別れのとき。
:09/07/08 16:40
:N703iD
:yq2OZnQI
#216 [七瀬]
『また!』
大きく手を振った。
瞬間
「待って待って!」
もぉ〜、次はなに〜!!
:09/07/08 16:42
:N703iD
:yq2OZnQI
#217 [七瀬]
「ちょっと柚子ちゃん!」
手招きをする
まつりさんに近寄ると、
こっそり耳打ちされた。
「歩志くん‥ゆーん?
彼、柚子ちゃんのこと、そーとー好きみたいやなぁ」
まつりさんの言葉に
耳が熱くなる。
:09/07/08 16:45
:N703iD
:yq2OZnQI
#218 [七瀬]
「さっきから‥ずーっと前から、柚子ちゃんとしゃべってたら、目ぇ合うねん」
チラッと
歩志のほうを見ると、
タイミングよく通った
おみこしを見ていた。
「‥最初はなんでかなぁ、思たけど‥」
おみこしの音がうるさくてよく聞こえない。
:09/07/08 16:48
:N703iD
:yq2OZnQI
#219 [七瀬]
クスッと笑った
まつりさんの息が、耳にかかってくすぐったい。
「柚子ちゃんのこと、気にしてたみたい」
なんでかなぁ。
こういうとき、
周りがもっとうるさくて
聞こえなかったら、
よかったのに。
:09/07/08 16:52
:N703iD
:yq2OZnQI
#220 [七瀬]
‥恥ずかしくって、
アイツの顔、まともに見れないじゃん。
「えーな。愛されてて。
うらやましぃ〜」
でも、助かった。
歩志がおみこし見ててくれて。
きっといま、あたし、
リンゴ飴状態だから。笑
:09/07/08 16:54
:N703iD
:yq2OZnQI
#221 [七瀬]
『なに言ってるんですか。まつりさんだって、素敵な旦那さんいるじゃないですか』
やられっぱなしは、
さすがにいやだから、
最後に一発言ってやって、ほんとにお別れした。
浴衣は、少し濡れてしまったけれど、
小さな風が吹いて
気持ちよかった。
:09/07/08 16:58
:N703iD
:yq2OZnQI
#222 [七瀬]
「なに話してたの?」
『え?』
「さっきの金魚すくいの、おばさんと」
『べっ‥べつに!
‥ってか"おばさん"って』
「だっておばさんじゃん」
‥まつりさんが聞いたら、キレちゃうだろーな。
:09/07/08 18:36
:N703iD
:yq2OZnQI
#223 [七瀬]
「‥ま、いーや」
すると、歩志はまたさりげなく
「買いにいきましょーか?約束通り、タコせんとかき氷」
あたしの手を奪った。
『うっ、うん!』
:09/07/08 18:38
:N703iD
:yq2OZnQI
#224 [七瀬]
‥というわけ。
まつりさんのことを
思い出すと、
自然と口が緩んでしまう。
「気になる‥」
アイツはまだ言ってた。
:09/07/08 18:44
:N703iD
:yq2OZnQI
#225 [七瀬]
『あ、見て見て歩志!』
「んー?ってあれ‥」
『うんうん!』
あたしの
輝く目線の先には
『リンゴ飴!!』
飴に包まれたフルーツたちは、宝石のようにキラキラしている。
:09/07/08 18:47
:N703iD
:yq2OZnQI
#226 [七瀬]
『歩志、確かりんご好きって言ってなかった?』
さっきと違って、
あたしがアイツの手を引っ張った。
『リンゴ飴、買う!?』
しかし、
「いや‥いいよ、俺は」
返事は思ったようなものじゃなかった。
:09/07/08 18:49
:N703iD
:yq2OZnQI
#227 [七瀬]
『ええー!?なんで?
なんでなんで!??』
買うだろうと、ほぼ確信していたあたしは驚いて聞いた。
「俺‥苦手なんだよね」
たくさんある宝石たちの中から、一つを指さす歩志。
「その"飴"が」
:09/07/08 18:52
:N703iD
:yq2OZnQI
#228 [七瀬]
『えー!
甘くておいしいのに‥』
「それに」
歩志は一つ、間を置いた。
「リンゴ飴なら、ここにあるじゃん」
‥ん?
『あ、あたし!?』
:09/07/08 18:59
:N703iD
:yq2OZnQI
#229 [七瀬]
「うん。さっきリンゴ飴みたいに真っ赤だった」
『さ、さささ‥さっきっていつよ?いつ!??』
「いつだったっけなぁ〜」
まつりさんに言われたときじゃないよね!?
あのとき、歩志
おみこし見てたじゃん!!
違う違うはず‥。
:09/07/08 19:02
:N703iD
:yq2OZnQI
#230 [七瀬]
「ぎゅっとしたときとか」
『な‥なんだ‥そのときのことか‥‥』
ちょっと安心。
ちょっと残念。
「なに?他にもあったの」
『ううん!なんでもない!なんでもないから、ほんとに!!』
ま、セーフということで。
:09/07/10 18:49
:N703iD
:9Oo/vUlM
#231 [七瀬]
あたしは、お母さんのおみやげに姫りんごを一つ、
すねるので、
お父さんにも、みかん飴を一つ、
自分用に、ぶどう飴といちご飴を買った。
お姉ちゃんは、お祭りにきてるはずだから、買わなかった。
あたしの両腕はふくろで、いっぱい。
:09/07/10 18:52
:N703iD
:9Oo/vUlM
#232 [七瀬]
右手が最後まで、
あったかかったのは、
まつりさんがくれた
カステラと、
アイツの熱のせい。
暑い熱い夏祭りだった。
:09/07/10 18:54
:N703iD
:9Oo/vUlM
#233 [七瀬]
―――――――――
―――――
―――
「なんか松田、今日きげんいいな」
夏祭りが終わって、
『え?そう?』
夏休みも半分切ったなぁとなんだか寂しい。
:09/07/10 18:58
:N703iD
:9Oo/vUlM
#234 [七瀬]
「うん。なんかいいことあった?」
『んー?なんもないよー』
でも、その残り20日もない夏休みも、
この"剣道部マネージャー"として使わなければならない。
「そういえばさあ」
:09/07/10 19:01
:N703iD
:9Oo/vUlM
#235 [七瀬]
『うん?』
でもまぁ、毎日ごろごろしてるより、いっかな。
「昨日の夏祭りさぁ、どうした?」
――どくん
心臓が大きく波打った。
:09/07/10 19:04
:N703iD
:9Oo/vUlM
#236 [七瀬]
『‥え?どうしたって‥』
顔を引きつるのを
感じながらも、
「いや、行ったのかな、って思って」
笑みを貼りつけずには
いられない。
『い‥行ったよ』
やっぱ林原の前では
嘘はつけない。
:09/07/10 19:08
:N703iD
:9Oo/vUlM
#237 [七瀬]
「ふーん。誰と?」
林原は汗をタオルで
拭いながら、言う。
『まりと三咲‥』
あたしが、
精一杯ついた嘘。
林原の表情が見えないのが助かった。
:09/07/10 19:11
:N703iD
:9Oo/vUlM
#238 [七瀬]
「そ」
それだけ言った。
『‥林原は?』
「俺は行かなかったよ。
暑かったし、人の多いとこって苦手」
『昨日は熱帯夜だったもんね。ってか、人ごみが嫌いなんて林原らしい』
少し笑って言った。
:09/07/10 19:15
:N703iD
:9Oo/vUlM
#239 [七瀬]
「松田」
面越しの林原の表情は
やっぱりわからなかった。
「‥‥なんか安心した」
ぽつり。
ほんとに、
ぽつりと言った。
ひとりごとのように、
ぽつり。
:09/07/10 19:17
:N703iD
:9Oo/vUlM
#240 [七瀬]
『‥へ?‥‥』
「ううん、なんでもない」
『‥そう』
「じゃ」
『うん、頑張って』
竹刀を握った林原を
見送った。
:09/07/10 19:20
:N703iD
:9Oo/vUlM
#241 [七瀬]
「……っても、まだまだ暑い日々は続きます。十分熱中症に注意して……」
『ふぁ〜あ』
華の女子高生?
一年目の夏休みは、
あっという間に過ぎていった。
なんだかんだで
忙しかったし。
:09/07/12 10:18
:N703iD
:mRdUytN2
#242 [七瀬]
「………夏休みが終わり、新しい2学期が始まります。まだ夏休みモードの人がいますが、頭を切り替え…」
教頭の話長いんだよー、
まったく‥。
校長より長い。
いや、むしろ校長の方が
あっさりしている。
いっとくけど
まだ9月だよ?
:09/07/12 10:22
:N703iD
:mRdUytN2
#243 [七瀬]
いくら
広ーい体育館だからって
こんなにすごい人口密度
――しかも男ばっか―
だったら、
すごい温度になるってことわかんないのかな!?
クーラーどころか、
扇風機すらないのに‥。
:09/07/12 10:25
:N703iD
:mRdUytN2
#244 [七瀬]
「……て、勉学に励んでください。以上です」
‥やっと‥やっとやっと‥
「あ、もう一点」
全生徒の一瞬、緩んだ顔がまたたくまに、げんなりした顔になる。
もちろん、
あたしもそのなかの一人。
もぉ〜!勘弁して〜〜!!
:09/07/12 10:29
:N703iD
:mRdUytN2
#245 [七瀬]
「しばらく、お怪我によりお休みされてた長江先生が2学期から復活されることになりました」
ん?
長江先生?
1学期当初のマッキーの
言葉を思い出す。
"副担任の長江先生はお休みだ"
:09/07/12 10:33
:N703iD
:mRdUytN2
#246 [七瀬]
‥ってことは、
あたしたちの副担?
「長江先生、こちらにどうぞ」
壇上に目を向けると、
「‥あ、みなさんお久しぶりです‥。長江です」
なんとも、
ひ弱そうなおっさん。
:09/07/12 10:35
:N703iD
:mRdUytN2
#247 [七瀬]
‥な、なんか、
マッキーの手下的な‥。
あたしの第一印象は
これだった。
のちのち、まったく
変わってしまうのだけど。
まぁ、とりあえず
マッキーとは正反対な人だった。
おどおどしてて、頼りなさそうな。
:09/07/12 10:38
:N703iD
:mRdUytN2
#248 [七瀬]
「これで、やっと体育が始まるね」
前から、声が。
『えっ?なんでなんで?』
「長江が復帰したからに、決まってんじゃん」
『え?え?』
ワケわかんないあたしに
歩志はため息をもらす。
:09/07/12 10:47
:N703iD
:mRdUytN2
#249 [我輩は匿名である]
「体育の先生が戻ってきたのに、体育が始まらないわけないでしょ」
『あ‥そっか』
あたしの学校には、
体育の教師は3人いる。
ダントツ多い男に2人、
涙が出るほど少ない女子には1人、
先生の授業を受ける。
:09/07/12 11:14
:N703iD
:mRdUytN2
#250 [我輩は匿名である]
そのなかの一人が長江先生で
さっき、教頭が言ったとおり、休んでたから体育ができなかった。
だから、1学期は、2学期にする保健を代わりにしていた。
要するに1学期は保健。
2学期は体育。
:09/07/12 11:17
:N703iD
:mRdUytN2
#251 [我輩は匿名である]
この説明をマッキーから
聞いたときの
『えええー!』って
叫んだ自分のすがたを思い出した。
「ど?思い出した?」
『うんっ!!』
長江先生があまりにも
貧弱そうで、体育の先生のように見えなかった。
:09/07/12 11:20
:N703iD
:mRdUytN2
#252 [七瀬]
でも、とりあえず
体育ができるしー!
いっか。
2学期は体育ざんまい。
よろこびでいっぱい!
「口緩んでるけど」
『だって、うれしーもん』
:09/07/12 11:22
:N703iD
:mRdUytN2
#253 [我輩は匿名である]
「ぽんずちゃんらしーね。でもよかったんじゃない?眠気、吹っ飛んだみたいだし」
『ははは!まーね!』
うん、とにかく歩志の
嫌味も気にならないくらいうれしかった。
だって、技術の
次に得意な科目だし!
――この2つしか得意分野ないんだけど―
:09/07/14 22:28
:N703iD
:E3cO4tsA
#254 [七瀬]
――――――――
―――――
―――
「おーい、みんな。
しゃべってないで早く席着けー」
このひとことで、
一斉にみんなを座らせる
マッキーの権力は
相変わらずだと思う。
:09/07/14 22:33
:N703iD
:E3cO4tsA
#255 [七瀬]
「さっき教頭先生から、お知らせがあったが、今日から復帰なさる長江先生だ」
みんながドアに注目する。
――ガララ―
ドアが開く音が聞こえた。
「あ‥どうも」
さっきの
弱々しい声と共に。
:09/07/14 22:38
:N703iD
:E3cO4tsA
#256 [我輩は匿名である]
「こちらに。どうぞ」
マッキーに促され、
たどたどしい足取りで
やってきた。
「長くお休みしてしまい、すみません‥。1ー2の副担の長江です」
至ってふっつーの
あいさつをした。
:09/07/14 22:43
:N703iD
:E3cO4tsA
#257 [七瀬]
「担当は女子の体育‥」
えーーっ!!
『女子の体育って、ふつうは女の教師がするもんなんじゃないの?』
心では、驚きつつも
ひそひそ声で歩志に問う。
「うーん‥ふつうはそうだね。ふつうは」
あれっ?あんま興味なし?
:09/07/15 06:49
:N703iD
:1V.eaxfY
#258 [七瀬]
『もー!
ちゃんと聞いてる?』
少し声量を大きくしたけど歩志は目に涙を溜めて答えた。
「きーてるよー」
‥ほんとかよ。
「しょーがないじゃん。
先生足りないんだから」
それだけ言って、
前を向いてしまった。
:09/07/15 06:53
:N703iD
:1V.eaxfY
#259 [七瀬]
やだなー。
あんなおっさんが担当なんて‥。
ちゃんとした体育できんのかなー。
それにしても
アイツは、昨日なんじに寝たんだ、いったい‥。
あんなに欠伸をしまくってる歩志を初めて見たものの
"長江担当女子体育"が
頭に焼き付いて、
あまり気にならなかった。
:09/07/15 06:59
:N703iD
:1V.eaxfY
#260 [我輩は匿名である]
―――――――――
―――――
―――
チャイムが
HRの終わりを告げ、
『歩志ー。行こー』
「うん、待って」
教室からは、
みんな出ていった。
:09/07/15 07:02
:N703iD
:1V.eaxfY
#261 [我輩は匿名である]
今日は、部活がある日。
『ちょっと
なにやってんの‥』
珍しく
歩志がもたもたしている。
「待って」
机やら、カバンやらを
あさっている。
『なに探してんの?』
歩志に近づく。
:09/07/15 07:05
:N703iD
:1V.eaxfY
#262 [七瀬]
「宿題がないんだよー。
数Aの」
『ふーん』
歩志が宿題を忘れるなんてことも初めてだった。
『あたしも一緒に探すよ』
そうやって、歩志に
近づいたときだった。
「あゆ!」
:09/07/15 19:36
:N703iD
:1V.eaxfY
#263 [七瀬]
落ち着いた、
だけど、少し高い声。
「‥‥はづき‥」
‥だれ??
ドアのそばに、小さい
女の子が立っている。
:09/07/15 19:41
:N703iD
:1V.eaxfY
#264 [七瀬]
あ、
「あゆ、これ‥」
あの子、たしか‥
「なんで、はづきが持ってんの」
頭の血を一気に巡らせる。
「ごめんなさい。
昨日、間違えてわたしが、あゆのノート持って帰っちゃったみたい」
:09/07/15 19:46
:N703iD
:1V.eaxfY
#265 [七瀬]
あ、あ、
『あーー!』
あたしが声を上げると、
驚いたように二人が見る。
‥やっぱり。
ふわふわしたショート。
白い肌に映える黒い瞳。
さっきの、歩志にノートを渡したときの手を頬にかざすしぐさとか‥。
:09/07/15 19:49
:N703iD
:1V.eaxfY
#266 [七瀬]
「どうしたの、ぽんずちゃん」
フラッシュバック。
『あの‥あのときの‥‥』
その子は首をかしげた。
『ほら‥夏休みに大廊下でぶつかった‥』
その子はピンときたようにもともと大きい目を、これでもかってくらい広げた。
:09/07/15 19:53
:N703iD
:1V.eaxfY
#267 [七瀬]
「ああ、あの時は‥。
どうもすいませんでした。急いでたものですから‥」
そういって、
手を頬にかざすすがたは
"女の子"そのもの。
『いえいえ!
気にしないでください!
あれは、あたしも悪かったし‥』
「なに?
二人とも知り合い?」
:09/07/15 19:58
:N703iD
:1V.eaxfY
#268 [七瀬]
「知り合いというか‥」
"はづき"と呼ばれる女の子は
ちょっと困ったように、
照れたようにあたしを見上げる。
『あ、あたし柚子ってゆーの!松田柚子!!』
「柚子さんですね。
わたしは、飯田はづきです。よろしくお願いします」
:09/07/15 20:02
:N703iD
:1V.eaxfY
#269 [七瀬]
『はづきちゃん!
よろしくね!!』
手を出すと、
「は、はい‥」
雪のような
手を差し出した。
「‥あの、二人の世界に入らないでくれる?」
:09/07/15 20:04
:N703iD
:1V.eaxfY
#270 [七瀬]
‥忘れてた。
『ごっごめんごめん』
「もー」
その光景にはづきちゃんはクスクスと笑った。
「おもしろいですね、柚子さん」
「でしょー。飽きないよ。からかいがいありすぎて」
:09/07/15 20:07
:N703iD
:1V.eaxfY
#271 [七瀬]
『もう!歩志のバカっ!!』
はははは、と笑いが
静かな教室に響いた。
『‥ってか、はづきちゃん。敬語じゃなくっていーよ。タメなんだし。
呼び方も"柚子"でいいし』
「‥いや‥でも‥」
口ごもるはづきちゃん。
:09/07/15 21:19
:N703iD
:1V.eaxfY
#272 [七瀬]
「はづきは18だよ」
そんな、はづきちゃんのようすを見て、歩志が、口を挟んだ。
『へ?18‥歳?』
「そ。俺らより2こ上」
『う、うそーー』
じぃーっと、恥ずかしそうにしている、はづきちゃんを見た。
:09/07/15 21:22
:N703iD
:1V.eaxfY
#273 [七瀬]
「はい‥そうなんです。
あゆの言うとおりです‥」
別に、はづきちゃんが
子どもっぽいってわけじゃない。
むしろ、そう言われれば、18歳に見える。
ただ、あたしくらいしか
身長がないし、
『てっきり同い年かと‥』
:09/07/15 21:26
:N703iD
:1V.eaxfY
#274 [七瀬]
「はづきは正真正銘の18歳だよ。ちなみに俺とはづきは幼なじみ」
‥へー、そうなんだぁ。
「あ、そうそう。言っとくけど、はづきは俺らと同じ1年生だから」
『えっ?なんで??』
:09/07/15 21:30
:N703iD
:1V.eaxfY
#275 [七瀬]
「2年間休学してました」
「はづきは、昔から体が弱かったからね」
たしかに、白い顔は
健康そうには見えなかった。
「でも、少し体調がよくなったから、
やっぱり、休みがちになっちゃうけど、学校来ようって思って‥」
:09/07/15 21:34
:N703iD
:1V.eaxfY
#276 [七瀬]
『そうなんですか‥』
その健気なすがたに
思わず、感動してしまった。
『あ‥なんかすいません。馴れ馴れしく呼び捨てにしてしまって‥』
「いーえー。いいんです」
はづきさんは
大きくかぶりを振った。
:09/07/21 00:29
:N703iD
:cWCs/.Bs
#277 [七瀬]
「正直うれしかったです」
『え?』
「ほら‥わたし、こうやって名前呼んでくれる友だちって、あまりいなかったから‥」
はづきさんは、
少し目線を下げた。
「うれしいです。
"はづきちゃん"」
照れくさそうに、言った。
:09/07/24 21:24
:N703iD
:.eR6q1vI
#278 [七瀬]
『は、はづきちゃん!』
はづきさんは、少し驚いたように、こちらを見た。
『こんなことで、喜んでくれるなら、いっくらでも呼んじゃいます!
‥‥‥"はづきちゃん"』
すると、また照れたように下を向いた。
:09/07/26 23:56
:N703iD
:T6L90Ygw
#279 [七瀬]
「‥ありがとう」
小さく言った
はづきちゃん。
歩志を見ると、少し微笑んでたように見えたのは、
気のせいだろうか‥。
「じゃあ、出しに行こっかな。ノート」
「あ、うん。
あゆ、ごめんね」
「もういいって」
:09/07/27 00:01
:N703iD
:tagz6t3s
#280 [七瀬]
あたしは、まりの言うとおり、ほんとうに鈍かった。
鈍感だった。
林原についても、
今、目の前にいる
二人についても。
だから、はづきちゃんが
手をかざした頬を赤く染める理由を
あたしはまだ知らない。
:09/07/27 00:08
:N703iD
:tagz6t3s
#281 [七瀬]
「じゃあ、はづき。
俺ら、部活だから」
『ばいばーい、はづきちゃん』
先生んとこに、ノートを
提出しに終えた。
「はい。あゆ、柚子さん。さようなら‥」
『あ、待って。はづきちゃん』
:09/07/27 00:14
:N703iD
:tagz6t3s
#282 [七瀬]
いきなり、呼び止め
戸惑うはづきちゃんを
よそに、あたしは
こっそり耳打ちをした。
『あたしのことは、呼び捨てでいいですから』
「え、でも‥」
より困惑する、はづきちゃんに
『もし、いやでしたら、
"柚子ちゃん"で』
:09/07/27 00:18
:N703iD
:tagz6t3s
#283 [七瀬]
少しくすぐったいくらい
笑い掛けた。
「また二人で‥なに話してんの」
歩志が口を挟む。
『ひーみーつっ!!』
人差し指で唇を押さえる
しぐさをして見せた。
「ちょっとー。
最近、"秘密"多いよー?」
:09/07/27 00:21
:N703iD
:tagz6t3s
#284 [七瀬]
『いいの!歩志は!
これは女同士の"秘密"なんだから!』
ね?って、はづきちゃんに視線を送ると
クスクス笑った。
「ケチー」
まだ歩志は、なんか言ってたけど‥笑
:09/07/27 00:24
:N703iD
:tagz6t3s
#285 [七瀬]
「じゃあ、今度こそ。
ほんとに、ばいばいです。あゆ‥‥」
ちょっと間ができる。
でも、いやな気分はしない。
「‥‥柚子ちゃん!」
むしろ、気持ちいい。
夏には似つかわしくない
さわやかな風が、あたしたち三人を包んだ。
:09/07/27 00:29
:N703iD
:tagz6t3s
#286 [七瀬]
「なるほどー。そういうこと」
はづきちゃんと別れ、
廊下を歩いていると、
「やるじゃん。"柚子ちゃん"」
歩志が笑って、言った。
『‥まーね』
心なしか、照れてしまった。
:09/07/27 13:22
:N703iD
:tagz6t3s
#287 [我輩は匿名である]
「でも、ありがとな」
『ん?なにが?』
「いや‥ほら。さっき言ってたけど、あいつにはそんな友だちいなかったから」
あ、
「はづき、ほんとにうれしそうだった」
やっぱ、気のせいじゃない。
:09/07/27 16:18
:N703iD
:tagz6t3s
#288 [我輩は匿名である]
柔らかい笑顔。
やさしい瞳の色。
メ
『よかった』
歩志が、そんな表情すると カ オ
あたしも、頬が緩む。
:09/07/27 16:21
:N703iD
:tagz6t3s
#289 [我輩は匿名である]
―――――――――
―――――
―――
『‥二時間目‥プール?』
「うん」
あっさり頷きやがったな、コイツ‥。
新学期がはじまって、
早くも一週間が過ぎた。
:09/07/27 16:25
:N703iD
:tagz6t3s
#290 [七瀬]
『うそーー!そんなの、あたし聞いてない!!』
「昨日、マッキーが言ってたじゃん。出張でいない長江先生の代わりに」
『‥うそぉ』
「ぽんずちゃん、聞いてなかったんでしょー」
『‥‥うん‥』
完全に聞いてなかった。
:09/07/27 16:29
:N703iD
:tagz6t3s
#291 [七瀬]
寝てたし、爆睡だし。
『どぉしよ‥』
「始まって、早々忘れ物ってことで。さあ、移動移動」
むぅ〜、冷たいな〜。
っあ!
『はづきちゃんに借りてこよっと!』
もしかしたら、はづきちゃんも今日プールかも。
:09/07/27 16:33
:N703iD
:tagz6t3s
#292 [七瀬]
「え?今日、水泳あるかって?」
二階、下の5組の教室に来たのは今日で3回目。
以前の2回は、
委員会でだった。
「ありますよ」
もしかしたら、もしかすると。
そう思って、少し遠いとこまで、来てみたけど、
その甲斐があったみたい。
:09/07/27 16:39
:N703iD
:tagz6t3s
#293 [七瀬]
『貸してください!』
手を合わせて、
お願いしてみる。
が、
「えっとぉ‥‥」
あまり、
反応がよろしくない。
顔を上げると、また頬に手を当てている。
:09/07/27 16:42
:N703iD
:tagz6t3s
#294 [七瀬]
「あのぉ‥」
『あ!まさか、はづきちゃんも忘れたの?』
それなら、
それで仲間意識。
「‥いえ。一応持ってきました」
ガクッ
一気にテンションDown。
:09/07/27 17:37
:N703iD
:tagz6t3s
#295 [七瀬]
「‥ごめんなさい」
そんな、あたしを見て
はづきちゃんは申し訳なさそうに、言った。
『ううん!元はと言えば、忘れたあたしが悪いんだし、気にしないで下さい!』
「いや‥貸してもいいんですけど‥‥わたし入れるかどうかわからないんで‥」
:09/07/27 17:40
:N703iD
:tagz6t3s
#296 [七瀬]
『あ、もしかして、はづきちゃんも二時間目?体育』
「はい。そうですよ」
あちゃー、忘れてた。
この高校は前にも言ったとおり、女子が圧倒的に少ない。
だから、女子体育は違う組と共同で行う。
今日は、あたしのクラスの2組とはづきちゃんのクラス5組が共同の日だった。
:09/07/27 17:44
:N703iD
:tagz6t3s
#297 [七瀬]
「‥やっぱり、貸しましょうか?」
ムンクになったあたしを見て、はづきちゃんは気を遣ってくれたよう。
でも
『いいよ、いいよ!
おとなしく怒られます!笑‥ってか、長江でしょ!?怖くなさそうだし、よゆーよゆー!』
にかーって
ブイサインをすると、
「ふふっ、わかりました」
:09/07/27 21:24
:N703iD
:tagz6t3s
#298 [七瀬]
控えめに、
ブイって返してきた。
か、か‥
かーわーいー!
な‥なんて、女の子なのかしら‥‥。
女のあたしも、
クラッとしてしまった。
:09/07/27 21:28
:N703iD
:tagz6t3s
#299 [七瀬]
ってか、今ぜぇったい
フェロモン出てた!
ふわーって!
やつの周りにだけ、
バラが舞ってた!!
ふわーってふわーって!
一人で興奮していると、
キーンコーン
カーンコーン
二時間目開始のベルが鳴った。
:09/07/27 21:31
:N703iD
:tagz6t3s
#300 [七瀬]
やばー!
次、視聴覚室じゃんっ!
『ごめんっ!次、移動教室みたいだから、行くね!
ありがと、はづきちゃん!また後で!』
なんとも、あわただしい
あいさつをして、
1ー5の教室を出た。
――はぁ、はぁ‥―
全力疾走!全力疾走!
:09/07/27 21:35
:N703iD
:tagz6t3s
#301 [七瀬]
視聴覚室は、3階にある。
一気に長ーい階段を上って、激しく息を吐いた。
「松田」
『‥はあ、はぁっ
‥‥??‥‥林原ぁ‥?』
そこには、のんびりと階段を降りてくる林原のすがたが。
「なにやってんの?」
:09/07/27 21:39
:N703iD
:tagz6t3s
#302 [七瀬]
なにやってんの、って‥。
『‥‥急いでんの!
見たらわかるじゃんっ!』
息を整えて言った。
「そう」
『‥そうですとも』
「そりゃ、ごくろーさん」
『‥ありがとう‥‥ございます‥』
:09/07/27 21:42
:N703iD
:tagz6t3s
#303 [七瀬]
なんか‥
『‥はぁ』
あきれた。
新学期早々、忘れ物、遅刻――しかけだったけど、今は急いでも完全遅刻―
それプラス、相変わらずの林原に相変わらず流されちゃうあたし。
:09/07/27 21:45
:N703iD
:tagz6t3s
#304 [七瀬]
「急がなくていいの?」
でも、いやじゃないんだよなー。
『‥いや‥急いでも遅刻だし、なんか気ぃ抜けたよ。あんたとしゃべってたら』
「そう」
むしろ、うれしいと思う
自分がいることを
やすやすと
認めてしまった。
:09/07/27 21:49
:N703iD
:tagz6t3s
#305 [七瀬]
『‥ん?林原も移動教室なの?』
あたしの横を並んで歩く
林原。
「ん。視聴覚室。松田もだろ?」
あ、そっか。
2学期から、
学科別の授業が始まる。
あたしと林原と歩志は、 電気工学。
:09/07/27 21:54
:N703iD
:tagz6t3s
#306 [七瀬]
1〜3組は、その授業についての説明があるから、
今、視聴覚室に集まっている。
『ってか、林原が授業遅れるなんて珍しい。なにしてたの?』
「トイレ」
と、
『トイレって‥』
:09/07/27 21:57
:N703iD
:tagz6t3s
#307 [七瀬]
林原らしいところを
また発見してしまい
一人で笑っていると
――なぜかツボに入ってしまった―
「‥しょーがねーじゃん。朝、牛乳飲んだら、腹壊しちまったんだから」
ブスッとしながら、
林原は言った。
‥やっぱ、
気にしてるのかな。
:09/07/27 22:01
:N703iD
:tagz6t3s
#308 [七瀬]
身長なんて、
『関係ないよ!』
林原は林原だもん。
『朝から、トイレ行きまくってても、林原は林原だから』
「うっせーな」
ちっちゃくても、
ちっちゃくても。
林原は林原。
:09/07/27 22:04
:N703iD
:tagz6t3s
#309 [七瀬]
でも、いつか。
林原が大きくなって、
身長もだけど、
"男"として、大きくなる日が来るんだろうな‥。
近ごろ、あたしは
林原の身長が少し伸びただけでも、
ちょっぴり遠く感じるのに
何年後かしたら、
まったくの他人になってしまいそうで…怖い。
:09/07/27 22:08
:N703iD
:tagz6t3s
#310 [七瀬]
「松田はなんで?」
『水着を忘れてて、貸してもらおうと…』
「うん」
『なによ』
「すっごく松田らしい」
『あほー』
こうやって、笑える時間が大切に思えた。
:09/07/27 22:11
:N703iD
:tagz6t3s
#311 [七瀬]
――ガラガラっ―
『失礼しまーす‥』
遅れて、林原と二人で
ドアを開けると、
「遅刻だ」
案の定、
怖い顔が待ち構えていた。
ひぇぇえ〜‥。
:09/07/28 08:56
:N703iD
:6aPx6RXw
#312 [七瀬]
「お前ら」
低い声が、
よりいっそ低い。
「俺の授業に、仲良く遅れてくるとはいい度胸だな」
殴られるっ!
殺されるっ!
「すいません」
「すっすいません!」
サッと頭を下げる林原に続いて、あたしも下げた。
:09/07/28 08:59
:N703iD
:6aPx6RXw
#313 [七瀬]
「‥まあいい。席に着け」
――ほっ
ひと安心。
言われたとおり、
出席番号順に座った。
ん?
ここで一つ、あたしは
気付いてしまった。
:09/07/28 09:02
:N703iD
:6aPx6RXw
#314 [七瀬]
出席番号順‥
出席‥番号‥順‥‥
と、いうことは。
前を向くと、
手を振る歩志と、
そのうしろで、
これでもかってくらいに、不機嫌な林原が。
ありゃりゃ。
どーしましょ。
:09/07/28 09:06
:N703iD
:6aPx6RXw
#315 [七瀬]
「じゃあ、8班は、八田、林原、福元、本谷、松木」
うん。
呉越同舟とは、こういうをいうのかしら?
「9班は、松田、三田、森岡、八下、山下、」
あたしは、
ギリギリセーフ?だった。
ま、お二人共、仲良く
やってくださーい。
あたしは逃げる。
:09/07/28 09:12
:N703iD
:6aPx6RXw
#316 [七瀬]
「これから一年間、共に過ごすチームだ。仲良くするように」
―――――――――
―――――
―――
「最悪」
「んな嫌がらなくても。
俺はうれしーけど?林原くんと同じ班」
「‥‥」
:09/07/29 22:29
:N703iD
:D5qFWnKo
#317 [七瀬]
「まあ、仲良くやろーよ」
「触んな」
「‥はぁ。あれ見てみ?」
「‥‥‥」
「さっきから、ぽんずちゃん、こっちばっか見てる」
「‥‥‥‥」
:09/07/29 22:37
:N703iD
:D5qFWnKo
#318 [名無し]
:09/07/30 18:29
:F801i
:xLfwmF7g
#319 [七瀬]
名無しさん
アンカー
ありがとうございます^^
:09/07/30 21:24
:N703iD
:tNFNnoDg
#320 [七瀬]
「ね、仲良く仲良く」
「‥わかった。でも」
「でも?」
「俺、負けねーから。
授業も剣道も、松田のことも」
「フッ‥望むところ」
:09/07/30 21:27
:N703iD
:tNFNnoDg
#321 [七瀬]
―――――――――
―――――
―――
「楽しみだねー。遠足」
1学期の終わりごろから、歩志と昼ご飯を食べるのが日課となっていた。
『…うん』
「どうしたの?ぜんぜん楽しそうに見えない」
:09/07/30 21:30
:N703iD
:tNFNnoDg
#322 [七瀬]
『ううん!そんなことないよ。めちゃめちゃ楽しみ』
ただ‥気がかりなんです。さっきの歩志と林原が。
「‥ふぅん。ならいーけど」
そうやって、
箸を口に運ぶ歩志。
「ね」
『うん?』
:09/07/30 22:16
:N703iD
:tNFNnoDg
#323 [七瀬]
「なにを、そんなに気にしてるわけ?」
運びかけてた箸が止まる。
『‥それは‥』
あたしの口も止まる。
「やっぱ気になる?林原くん」
:09/07/30 22:19
:N703iD
:tNFNnoDg
#324 [七瀬]
『そっそれは‥歩志が林原に突っかかるような態度とるから‥』
「それは誤解だよ」
誤解?
「むしろ突っかかってくるのは林原くん」
いや‥部活といい、さっきといい。
突っかかっているのは、あんたのほうだと思うんですけど‥。
:09/07/31 14:21
:N703iD
:Hvrvfru.
#325 [七瀬]
「さっきも俺、"最悪"って言われちゃったし」
『え!林原に!?』
「"負けない"って、宣戦布告されちゃったし」
うーんー‥
こりゃ重症だ。
「ぽんずちゃんからも言ってよー」
:09/07/31 14:25
:N703iD
:Hvrvfru.
#326 [七瀬]
『う、うん‥わかった!』
このとき歩志が、
ぺろっと舌を出したのを、
あたしは気にも止めませんでした。
―――――――――
―――――
―――
「いや、対抗的な態度とってるのは、あいつだろ」
:09/07/31 14:30
:N703iD
:Hvrvfru.
#327 [七瀬]
『え』
「あのバカにしたような目とか、見下ろしてる感とか」
支離滅裂。
どっちが、ほんとのことを言っているのか‥。
「ってか、松田」
『は、はい!?』
「なに吹き込まれたの?」
:09/07/31 14:34
:N703iD
:Hvrvfru.
#328 [七瀬]
『な‥なにって‥』
さっきの、昼休みのときの歩志との会話を説明した。
『林原が"負けない"って、宣戦布告したとか、どうとか‥』
「した」
‥したんかーいっ!!
:09/07/31 14:37
:N703iD
:Hvrvfru.
#329 [七瀬]
『ほ、ほほ‥ほんとにしたの!?林原が!??』
少し詰め寄ると、
「うん‥した」
ちょっと、
目を反らした林原。
な‥
『なんでっ!なんで、そんなことしたのよーっ!』
:09/07/31 14:40
:N703iD
:Hvrvfru.
#330 [七瀬]
「だって‥」
口籠もる林原。
『"だって"!?』
「林原ー。もうそろそろ休憩おわりー」
あたしが般若になったとき剣道部のコーチの声が聞こえた。
タイミング悪ーい‥。
:09/07/31 14:44
:N703iD
:Hvrvfru.
#331 [七瀬]
「あと松田!お茶なくなった!」
え、さっき炊いたばっかなのに。
『わ、わかりましたー』
半泣きになりながら、
講堂裏にいる林原を放ってコーチのもとへ向かった。
:09/07/31 14:48
:N703iD
:Hvrvfru.
#332 [七瀬]
こちらは
一人残された林原くん。
「お前が好きだからに決まってんじゃん」
顔が真っ赤です。笑
―――――――――
―――――
―――
「柚子ちゃん!」
『あ、はづきちゃん』
:09/07/31 14:50
:N703iD
:Hvrvfru.
#333 [七瀬]
「部活の帰り?」
『うん。
はづきちゃんも?』
はづきちゃんは、あたしが剣道部のマネージャーをしてることを知っている。
「うん」
ちなみに、はづきちゃんはクッキング部の副部長。
ふわふわした髪からは
甘いバニラエッセンスの
香りが微かにした。
:09/07/31 14:54
:N703iD
:Hvrvfru.
#334 [七瀬]
「あ、これ」
カバンから、白いものを
取り出したはづきちゃん。
「今日、作ったの」
キッチンペーパーに
包まれたそれは、はづきちゃんの髪と同じ香りがした。
「柚子ちゃん、食べて」
『え、いいの?』
:09/07/31 14:58
:N703iD
:Hvrvfru.
#335 [七瀬]
「うん。部活終わりって、お腹空くでしょ?」
にこっとほほえんだ。
はづきちゃん‥。
あなたは神です。
『ありがとう!』
紙を開くと、香りがより一層、濃くなった。
「これはね、紅茶のスポンジケーキ」
:09/07/31 15:01
:N703iD
:Hvrvfru.
#336 [七瀬]
それから、はづきちゃんはそのケーキの作り方を説明し始めた。
『へー、おいしー』
正直、食べるのに夢中で、はづきちゃんの話をあまり聞いていなかった。
が、次の瞬間
いやでも、耳に入ってしまうことになる。
「あゆの大好物なの」
:09/07/31 15:10
:N703iD
:Hvrvfru.
#337 [七瀬]
活発に動いていた
頬が止まった。
「今日もあげよっかなーって思ってて、待ってたの」
あ、だから、あたしが講堂出たときいたんだ。
『ご、ごめんなさい!
あたしが食べちゃって』
あわてて、残りのケーキをはづきちゃんに渡した。
:09/07/31 15:15
:N703iD
:Hvrvfru.
#338 [七瀬]
すると、はづきちゃんは、はっとしたように首を振った。
「ううん!気にしないで!あゆ、部活長引くみたいだったし、それに‥」
頬が赤らむ。
「また作って、あゆに持っていけばいいだけだし‥」
――ズキン
なにこれ。
:09/07/31 15:19
:N703iD
:Hvrvfru.
#339 [七瀬]
『‥は‥はは‥そっか』
そう言うのが、精一杯だった。
そんなあたしに気付いてるのか、そうでないのか。
わからないけど、はづきちゃんは話を進めた。
「前に言ったと思うけど、わたしとあゆは小さいころの幼なじみなの」
:09/07/31 15:21
:N703iD
:Hvrvfru.
#340 [七瀬]
あたし、なんて、
ヤな子なんだろう。
「ほら、あゆんちって、建築事務所でしょ?」
せっかく
できた友だちなのに。
「わたしの家も、あゆのところで創ってもらって、それからかな?わたしの家とあゆの家が仲良くなり始めたの」
はづきちゃんの話、聞きたくない。
:09/07/31 15:25
:N703iD
:Hvrvfru.
#341 [七瀬]
『そうなんだ』『へー』
『そう』
あたしは相づちを打つしかできない。
「あゆがりんご好きだって言うから、小さいころ、ママと一緒にアップルパイ作って持っていったの」
"そうなんだ"
「じゃあね、あゆ、アップルパイ食べれないんだって」
"へー"
:09/07/31 15:30
:N703iD
:Hvrvfru.
#342 [七瀬]
「あゆね、りんごは好きだけど、加工されたりんごは嫌いなんだって。生のりんごしか食べれないの」
"そう"
「おかしいでしょ?」
思い出すように
楽しそうに。
クスクス笑う
はづきちゃん。
:09/07/31 15:32
:N703iD
:Hvrvfru.
#343 [七瀬]
「柚子ちゃんも、そう思わない?」
そんな言い方しないで。
自分だけしか知らなかったような言い方。
あたしも知ってたよ。
歩志がりんご飴食べれないの。
でも、悔しい。
あたしが知る前から、
はづきちゃんは知ってたんだ。
:09/07/31 15:36
:N703iD
:Hvrvfru.
#344 [七瀬]
悔しい悔しい悔しい。
やだやだやだやだ。
そんな歩志、
思い出さないで。
見ないで。
:09/07/31 15:37
:N703iD
:Hvrvfru.
#345 [七瀬]
「柚子ちゃん?」
――ハッ
「大丈夫?顔‥青いけど」
あたしは、驚きを隠せずにいた。
『うん‥大丈夫だよ』
自分の中に、
こんなに汚い感情があったなんて。 キ モ チ
:09/07/31 15:40
:N703iD
:Hvrvfru.
#346 [七瀬]
―――――――――
―――――
―――
「ふつうじゃないの?」
『そう…なのかな』
Lサイズのポテトも三人で、食べたら、あっという間になくなる。
「そうだよそうだよ!まりの言うとおりだよ!」
:09/07/31 15:47
:N703iD
:Hvrvfru.
#347 [七瀬]
炭酸の抜けたコーラって、価値が一気に下がる気がする。
「ってか、なんなの!?
その"はづき"とかいう女は!」
そうわかっていながらも、ストローを加える。
「柚子!負けちゃだめだよ!」
まず…
氷が溶けて、薄まったコーラはまずさが増して、苦かった。
:09/07/31 15:51
:N703iD
:Hvrvfru.
#348 [七瀬]
「ちょ、落ち着いて。三咲」
「こーゆー、緊急事態に落ち着いてられる!?まり」
三咲は、かれこれ20分ほど前から、ずっとこの調子。
冷静なまりとは、正反対に興奮しっぱなしだ。
「こーなったら!あたしが一肌ぬ…」
:09/07/31 15:56
:N703iD
:Hvrvfru.
#349 [七瀬]
「落ち着きなさい、三咲」
めずらしく、真剣なようすのまりに、三咲はおとなしく座った。
「でも、まりぃ。やっぱ、あたしはムカつくよぉ!」
「ムカついても、しゃーない。とりあえず、柚子の話を聞こうじゃないの」
二人の視線が、
またあたしに注がれる。
:09/07/31 15:59
:N703iD
:Hvrvfru.
#350 [七瀬]
『いや‥だから、
さっきも言ったとおり、なんだけど‥‥』
「心の中に、今まで知らなかったいやな感情があって、どうすればいいかわからない‥んでしょ?」
『うん‥』
「あのね、柚子」
ふぅ、と一息入れるまり。
:09/07/31 16:03
:N703iD
:Hvrvfru.
#351 [七瀬]
「さっきも言ったんだけどそれはふつうのことだよ。あたしだって、好きな人のことをそんな風に言われたら腹が立つ。嫉妬するよ」
―――嫉妬?
『しっ‥と』
「そ。嫉妬」
:09/08/03 16:26
:N703iD
:xQiMWEfo
#352 [七瀬]
胸が熱くなる。
あたし‥嫉妬してたんだ。
「でも、以外だったなぁ。柚子はてっきり、林原くんが好きだと、ミサは思ってたのにぃ」
「それはあたしも同感」
「ねぇー!」
同意したまりに、
三咲は興奮を増す。
:09/08/03 16:30
:N703iD
:xQiMWEfo
#353 [七瀬]
「そしたら、いきなり
"好きな人ができた"とか言って呼び出されるしー」
「しかも、その好きな人は林原じゃない」
「びっくりだよねー」と、同時にうなずく二人に、
『あたしが、いちばんびっくり』と苦笑するあたし。
ほんと、何ヵ月前までは、こうなるなんて思っても、みなかった。
:09/08/03 16:34
:N703iD
:xQiMWEfo
#354 [七瀬]
ましてや、嫉妬なんて‥
「でも」
まりが、あたしを見る。
「油断大敵だよ、柚子」
その目は真剣そのもの。
「その子、そぉーとー柚子の好きな子が、好きなんだよ」
"その子"とは、はづきちゃんで、"柚子の好きな子"
ってーのが歩志。
:09/08/03 16:38
:N703iD
:xQiMWEfo
#355 [七瀬]
隣で、うんうんと
縦に首を振る三咲。
「だねー。ぼぉーっとしてたら、取られちゃう。
ましてや、柚子は鈍感なんだからー」
『鈍感?あたしって、鈍感なの?』
「え、気付いてなかったの?」
口をそろえて、言う二人。
:09/08/03 16:42
:N703iD
:xQiMWEfo
#356 [七瀬]
目を広げるあたしに
向かって、
「ま、そういうとこが、柚子らしいか」
まりは笑う。
「うんうん!柚子はそれでいーの!」
『あ、ありがと』
みょーに納得できないけどま、いっか。
二人に話して、すっきりした。
:09/08/03 22:02
:N703iD
:xQiMWEfo
#357 [七瀬]
あたしは、決心した。
高校入って、
新しくできた友だち。
念願だった、かわいい
女の子の友だち、
はづきちゃんを
大切にする。
そして、もう一つ。
歩志を、あきらめない。
:09/08/03 22:06
:N703iD
:xQiMWEfo
#358 [七瀬]
まりや三咲の言うとおり、ほんとうに、はづきちゃんが歩志を好きだったら、
この二人の決意をつらぬくことは難しい。
だけど決めたの。
あたし、
けっこう好きみたい。
アイツも。
はづきちゃんのことも。
:09/08/03 22:08
:N703iD
:xQiMWEfo
#359 [七瀬]
そして、もういっこ。
ちゃんと言うんだ。
林原に。
はっきりさせなきゃ。
いつまでも、林原に
依存してちゃいけない。
だって、林原も
けっこう好きだから!
:09/08/03 22:11
:N703iD
:xQiMWEfo
#360 [七瀬]
あたしの決断は
まちがってなかった。
そう思える日が来るまで、そう思える日を作るために
優柔不断で、アイツと林原に、うじうじしてた
過去のあたしは捨てます!
松田柚子、まだ暑さの残る日の想いだった。
:09/08/03 22:15
:N703iD
:xQiMWEfo
#361 [七瀬]
―――――――――
―――――
―――
「‥んだよ、それ」
部活終わりの、日が暮れて少し涼しくなってきた日。
「そんなの、ねーだろ」
辺りも、暗くなり始めている。
『ごめん、林原』
あたしは言った。
:09/08/04 17:03
:N703iD
:JmkDUx7w
#362 [七瀬]
『あたし、決めたの』
強く強く。
決心したことを、ちゃんと林原に聞いてもらうんだ。
『あたしは、やっぱり‥』
「アイツか」
林原の目が、あたしを捕らえる。
「八田歩志か」
:09/08/04 17:05
:N703iD
:JmkDUx7w
#363 [七瀬]
なにも言わず、
コクンとうなずく。
「‥ら」
小さく響く声。
「俺、ぜってー認めねーから!」
次は、大きく響いたと思ったら、
林原はだんだん小さくなっていった。
:09/08/04 17:08
:N703iD
:JmkDUx7w
#364 [七瀬]
『‥』
言った。
あたしは告った。
イ
"林原の気持ちには答えられない。好きな人がいる"
これでもかってくらい
大きく見開かれた目と、
わなわなと震える唇が
今でも、頭に残る。
:09/08/04 17:11
:N703iD
:JmkDUx7w
#365 [七瀬]
これで、
よかった‥んだよね?
あたしは
まちがってないよね?
頭に浮かぶ疑問符たち。
すっきりさせるつもりが、よけいにむしゃくしゃするのは、なぜだろう。
あたしには、わからない。
:09/08/04 17:14
:N703iD
:JmkDUx7w
#366 [七瀬]
―――――――――
―――――
―――
「どうしたの?」
『えっ?』
いきなりのことに、
少し声が上ずる。
「元気ないけど」
『そっ、そう?』
:09/08/04 21:33
:N703iD
:JmkDUx7w
#367 [七瀬]
「うん。すっごい悩んでるように見える」
うっそー。あたし、
そんなに顔に出てたかな?
『いや、そういうわけじゃないんだけど』
ほんとは
そういうわけであります。
「‥もしかして」
:09/08/04 21:36
:N703iD
:JmkDUx7w
#368 [七瀬]
グッと、
顔を近付ける歩志。
ちょうど練習を終えて、
今は、休憩時間。
男の子が運動しているときよりもしたあとの、汗をかいたすがたに、
きゅんとしてしまうのは、あたしだけじゃないはず。
『かっ‥顔近いよっ!』
少し押すと、やっと
元の位置に戻す歩志。
:09/08/04 21:42
:N703iD
:JmkDUx7w
#369 [七瀬]
「来てないから?」
目を反らして言うアイツ。
『‥へ』
「林原くんだよ。林原くん!」
あ‥うん。
実は、ここ一週間ほど、
林原は部活に来ていない。
:09/08/04 21:45
:N703iD
:JmkDUx7w
#370 [七瀬]
おととい、廊下で見かけたし、昨日、学科別授業にも出ていたし、
学校には来てるみたいだけど。
理由は‥たぶんあたし。
「心配?」
『‥‥うん‥』
:09/08/04 21:48
:N703iD
:JmkDUx7w
#371 [七瀬]
心配だよ。
心配に決まってんじゃん。
「‥そんなに心配なんだ。林原くんのこと」
ぽつりと言って、
歩志は練習を再開した。
今のあたしには、歩志の不機嫌そうな表情よりも、
林原が気になって気になって、しょうがなかった。
:09/08/04 21:58
:N703iD
:JmkDUx7w
#372 [七瀬]
―――――――――
―――――
―――
松田‥松田‥――
『林原?』
松田‥――
『どこ?林原ー?』
ここだよ、ここ‥――
『ここって、どこよー?』
:09/08/06 00:15
:N703iD
:DEW.EFwE
#373 [七瀬]
白く広い廊下。
前も後ろも、
右も左も、だれもいない。
人一人いないと、こんなに広くて静かなんだ、と感じると、ともに
松田‥――
林原の声が耳に響く。
『もー!
"ここ"って、どこ!?』
:09/08/06 00:19
:N703iD
:DEW.EFwE
#374 [七瀬]
答えない林原に、苛立つ。
お前のすぐ側――
『えっ?』
俺は離れていかないよ――
あたしの、
不安を包み込むような声。
ずっと、側にいる――
すがたが見えないけれど、林原がいるんだって、思う。
:09/08/06 00:23
:N703iD
:DEW.EFwE
#375 [七瀬]
たとえ、お前の心が、
他の奴のものだとしても―
なんで、そんな優しい声してるの‥‥林原‥。
だって、松田は俺の‥――
「―――‥‥い」
:09/08/06 00:27
:N703iD
:DEW.EFwE
#376 [七瀬]
松田は俺の‥――
ほほえむ林原を最後に
「起きなさい!!」
一気に、現実に戻される。
『う‥〜〜ん〜‥』
「柚子!遅刻遅刻!!」
『もぉ‥休むぅ‥』
ダメ元でも、寝呆けてた
あたしは言ってみる。
:09/08/06 00:31
:N703iD
:DEW.EFwE
#377 [七瀬]
「なに言ってんの!!
いいから、起きなさい!」
あー、やっぱりお母さんには通じないよね‥。
体を起こそうかなと、思いながらも、布団の誘惑に勝てず、渋るあたしも、
次の、お母さんの言葉で
飛び起きることとなる。
「遠足!今日遠足よっ!」
:09/08/06 00:35
:N703iD
:DEW.EFwE
#378 [七瀬]
‥‥‥‥遠足。
『ええぇぇえ!??』
うそーうそーうそー!!!
『なんで、起こしてくんなかったのよぉ!!!!』
あわてて、布団を蹴り飛ばし、体を起こす。
「‥お母さんも、お寝坊しちゃった」
:09/08/06 00:38
:N703iD
:DEW.EFwE
#379 [七瀬]
『‥‥‥』
年甲斐もなく、舌を出す
我が母に、疲れた瞬間。
「とりあえず!早く顔洗ってらっしゃい!」
言われたとおり、階段を降りて、洗面所へ向かった。
『あ‥お姉ちゃん』
「ごめん。今、混んでるから」
:09/08/06 00:46
:N703iD
:DEW.EFwE
#380 [七瀬]
パシャパシャと、顔を洗う我が姉のすがたと
「いやぁ〜〜柚子ごめん。次は、パパが並んでるんだぁ」
こんなときでも、ほんわか穏やかな、我が父。
『ま‥まさか‥』
「そのまさかだよ」
お姉ちゃんが、タオルに
顔を押しつけ、言った。
:09/08/06 00:50
:N703iD
:DEW.EFwE
#381 [七瀬]
「家族全員寝坊」
なんか‥中国語みたい‥。
「でも、めずらしいなぁ。しっかり者のお姉ちゃんまで、寝坊するなんて」
「あたしだって、寝坊ぐらいするわよ、寝坊ぐらい」
へらへら笑うお父さんと、てきぱき動くお姉ちゃん。
:09/08/07 20:00
:N703iD
:Rtsevn3Y
#382 [七瀬]
「でも、柚子は最悪ね。よりによって、こんな日に寝坊するなんて」
と、一言言って、お姉ちゃんは「いってきます」と出ていった。
うん。まったくそうだよ。
指定の時間に来ないあたしを心配したマッキーがかけた電話で、
お母さんが起き、
お姉ちゃんが起き、
お父さんが起き‥あたしも叩き起こされた。
:09/08/07 20:06
:N703iD
:Rtsevn3Y
#383 [七瀬]
「朝ごはん、さっさと食べて、着替えなさい」
目玉焼きの乗ったお皿を、コトンと置いて、お母さんは言う。
「駅まで、送っていったげるから」
『はぁい‥』
遅刻しました松田柚子は、直接現地で1-2のバスと、合流することになった。
:09/08/07 20:11
:N703iD
:Rtsevn3Y
#384 [七瀬]
電話に出たお母さんに、
マッキーは苦笑しながら、「休みますか」と聞いたそう。
しかし、うちのお母さん。
すかさず「行かせます。なにがなんでも」と。
「柚子、パパは先に行くな。お母さんごちそうさまー」
洗い物をするお母さんに、まだ口にウィンナーを詰めながら、お父さんはお姉ちゃんに続いて、家を出た。
:09/08/07 20:16
:N703iD
:Rtsevn3Y
#385 [七瀬]
さ、あたしも
早くしないと‥。
イスから立ち上がり、
自分の部屋へ急いだ。
―――――――――
―――――
―――
「じゃあ、気をつけて。
いってらっしゃい、柚子」
『うん。ありがと』
「まぁ、待ち合わせは12時の昼ご飯時だから、今から行っても余裕で間に合うと思うから」
:09/08/07 20:20
:N703iD
:Rtsevn3Y
#386 [我輩は匿名である]
「ぽいずん」
:09/08/07 22:40
:F904i
:FZTnqMX.
#387 [七瀬]
匿名さん
「ぽんず」と「ぽいずん」なんか似てますねー^^
:09/08/07 23:25
:N703iD
:Rtsevn3Y
#388 [七瀬]
ガタンゴトン
ガタンゴトン…
ひとり旅…
とか言っちゃって。
ほんとは
近所の山を登るだけ。
あまり高くない山。
んで、てっぺんでお弁当食べて、集合写真なんか撮っちゃって。
ちょっと遊んで帰る。
:09/08/07 23:40
:N703iD
:Rtsevn3Y
#389 [七瀬]
んー‥遠足というより、
ピクニックだな、こりゃ。
あたしは、けっこう冷めてた――ふりをしていた―
遠足の内容もわかりきっていたし――2週間前から、しおりをずっと読んでいたから―
おやつだって、そんな‥‥――限られた値段のなかで精一杯選びました―
‥‥とりあえず、すごく楽しみでした。かなり前から。はい、すみません。
:09/08/07 23:45
:N703iD
:Rtsevn3Y
#390 [七瀬]
いろんなことを考えながらいつもより長い時間乗った電車を降りた。
ミーンミンミンミン…
蝉の鳴き声が、耳を支配する。
―着いたら、ここに電話するのよ―
今朝、お母さんに渡された紙切れをポケットから取り出す。
:09/08/07 23:49
:N703iD
:Rtsevn3Y
#391 [七瀬]
切符を通して、外に出るとすぐ横に公衆電話があった。
くしゃくしゃになった紙を開いて、10円玉を握る。
ボックスのドアを開けるともわ〜んと、熱気が顔にかかった。
あっつい‥。
なんだ、ここは。
熱帯雨林か!?
暑さに耐えて、緑色の受話器に手を掛けた。
:09/08/07 23:54
:N703iD
:Rtsevn3Y
#392 [七瀬]
――カラン―
10円玉を通して、紙切れに書かれたとおりに、押してみる。
「090…」
プルルルルルルル…
しばらくすると、
繋がって
「はい」
ぶっきらぼうな声が聞こえた。
:09/08/07 23:58
:N703iD
:Rtsevn3Y
#393 [七瀬]
『ま、松田です』
「ああ松田。早かったな。今どこにいるんだ?」
『――駅の公衆電話の中です』
「わかった。迎えに行くから待ってろ」
電話が切れ、20分ほどすると、
「松田!」
マッキーがやってきた。
:09/08/08 18:37
:N703iD
:ndZ1OwLY
#394 [七瀬]
『あ‥すいません』
「ったくお前は。こんなときに遅刻するバカがいるかったく‥」
『‥あたしも今まで、そう思ってました‥』
「まぁ‥来たんだから、よしとするか」
ぶつぶつ文句を言われながらも、あたしとマッキーは山を登った。
:09/08/08 19:34
:N703iD
:ndZ1OwLY
#395 [七瀬]
:09/08/08 20:00
:N703iD
:ndZ1OwLY
#396 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age↑
:22/10/01 22:30
:Android
:rYsbLV12
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