星とぽんず。
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#201 [七瀬]
 
 
『は‥はぁ』

曖昧にうなずく。


「ってか、一緒に地方回れへん!?」

『いや‥それはさすがに、ちょっと‥』


「冗談やん!冗談」

また笑うまつりさん。
 

⏰:09/07/07 12:30 📱:N703iD 🆔:C.9r4c4g


#202 [七瀬]
 
 
『‥長いんですか?その‥こういう仕事して‥』


「うーん、さっきもゆーたけど、家がやってたからなぁ。ちっさいころから来てたわ。軽いバイト感覚で」


ちょっと
うらやましいような、

そうでないような‥
 

⏰:09/07/07 12:34 📱:N703iD 🆔:C.9r4c4g


#203 [我輩は匿名である]
 
「今は独立したけど、懐かしいなぁ‥神野商会」

まつりさんは
しみじみしてるようす。


『"独立した"って‥』


「あー、やっぱいつまでも親のスネかじってられへんやん?」


まつりさんは「となり」と横に親指を向けて言った。 

⏰:09/07/07 12:37 📱:N703iD 🆔:C.9r4c4g


#204 [我輩は匿名である]
 
 
その方向へ目を向けると、



いいにおいが
鼻をくすぐった。





「わたしの旦那」
 
 
 

⏰:09/07/07 12:39 📱:N703iD 🆔:C.9r4c4g


#205 [我輩は匿名である]
 
 
『‥旦那さん‥』


「ゆーきー!」

まつりさんの周りを、
気にせず叫ぶすがたに

少しびっくりしながらも


「なんやねん!」


二人を見てると、なんだか心があったかくなった。
 

⏰:09/07/07 12:43 📱:N703iD 🆔:C.9r4c4g


#206 [七瀬]
 
 
「カステラちょーだい!」

また叫ぶと、

"ゆうき"と呼ばれる
まつりさんの旦那さんが、持ってきてくれた。


「あんま、おっきー声出すなや。アユが起きるやろ」

「ごめんごめん」


当たり前だけど、
"夫婦"そのもののすがたになんだか感動した。

⏰:09/07/07 12:49 📱:N703iD 🆔:C.9r4c4g


#207 [七瀬]
 
まつりさんの旦那さんは、それだけ言うと、
カステラ屋に戻っていった。


「はい、これ食べ。柚子ちゃん」

『あ、ありがとうございます‥』


受け取ったそれは、
あたたかくって、ほかほかしてて。

口に入れると、
優しい甘さが広がった。

⏰:09/07/07 12:54 📱:N703iD 🆔:C.9r4c4g


#208 [七瀬]
 
 
『‥おいしい』

こっちまで、やさしい気持ちになった。


「せやろ?わたしの旦那、カステラだけはうまいねん、焼くの」

歯を見せて笑うまつりさんは、"女の子"だった。


それから数分、まつりさんと他愛もないことを話した。

⏰:09/07/07 12:58 📱:N703iD 🆔:C.9r4c4g


#209 [七瀬]
 
 
「あーー!」

『‥??』


歩志が変な声を上げたのはあたしとまつりさんが盛り上がっていたときだった。



「破れた」
 
 

⏰:09/07/07 15:12 📱:N703iD 🆔:C.9r4c4g


#210 [七瀬]
 
 
『へ、変な声あげないでよ!びっくりするじゃん!』

「ごめんごめん」


歩志が、破れたワッパを
まつりさんに渡した。


「二人とも、ありがとう。また来年しにきてな」

このことばは、別れのあいさつなんだなぁ、

と思うと寂しさが襲った。

⏰:09/07/07 15:16 📱:N703iD 🆔:C.9r4c4g


#211 [七瀬]
 
 
『ほんとにありがとうございました‥』

少し、しゅんって
なりながら、お礼を言って

その場を
あとにしようとすると、



「待って!」


歩志が引き止める。
 

⏰:09/07/07 15:19 📱:N703iD 🆔:C.9r4c4g


#212 [七瀬]
 
「まだ金魚数えてない!」


あたしが、キョトンとした顔をしたのか、


「勝負!勝負!」

歩志はムッとする。


『あぁ〜‥忘れてた』

だって、まつりさんと
夢中になって話してたんだもん。

⏰:09/07/08 16:29 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#213 [七瀬]
 
 
『ごめんごめん〜』

「しっかりしてよ、ぽんずちゃーん」


一匹ずつ、一匹ずつ。

慎重に数える歩志。


「1、2、3、4、5‥」


まるで、小学生。笑
 

⏰:09/07/08 16:33 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#214 [七瀬]
 
 
「‥‥19、20、21‥‥‥22匹!!」


『‥あたしと同じ』


輝かせていた目は、
瞬く間に、沈んでいく。

「ええ〜‥引き分けとか、つまんない‥」


「まぁ、ええやん!ええやん!二人でタコせんとかき氷食べれば」
 

⏰:09/07/08 16:37 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#215 [七瀬]
 
まつりさんのことばに


「ま、しょうがないか‥。勝負は勝負だし」

しぶしぶ
歩志も納得したよう。



『じゃあ、まつりさん』


今度こそ、別れのとき。
 

⏰:09/07/08 16:40 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#216 [七瀬]
 
 
『また!』

大きく手を振った。



瞬間

「待って待って!」


もぉ〜、次はなに〜!!
 

⏰:09/07/08 16:42 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#217 [七瀬]
 
 
「ちょっと柚子ちゃん!」


手招きをする
まつりさんに近寄ると、

こっそり耳打ちされた。



「歩志くん‥ゆーん?
彼、柚子ちゃんのこと、そーとー好きみたいやなぁ」


まつりさんの言葉に
耳が熱くなる。
 

⏰:09/07/08 16:45 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#218 [七瀬]
 
 
「さっきから‥ずーっと前から、柚子ちゃんとしゃべってたら、目ぇ合うねん」


チラッと
歩志のほうを見ると、

タイミングよく通った
おみこしを見ていた。


「‥最初はなんでかなぁ、思たけど‥」


おみこしの音がうるさくてよく聞こえない。

⏰:09/07/08 16:48 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#219 [七瀬]
 
クスッと笑った
まつりさんの息が、耳にかかってくすぐったい。



「柚子ちゃんのこと、気にしてたみたい」



なんでかなぁ。


こういうとき、
周りがもっとうるさくて

聞こえなかったら、
よかったのに。

⏰:09/07/08 16:52 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#220 [七瀬]
 
 
‥恥ずかしくって、

アイツの顔、まともに見れないじゃん。


「えーな。愛されてて。
うらやましぃ〜」


でも、助かった。

歩志がおみこし見ててくれて。


きっといま、あたし、
リンゴ飴状態だから。笑

⏰:09/07/08 16:54 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#221 [七瀬]
 
 
『なに言ってるんですか。まつりさんだって、素敵な旦那さんいるじゃないですか』


やられっぱなしは、
さすがにいやだから、

最後に一発言ってやって、ほんとにお別れした。


浴衣は、少し濡れてしまったけれど、

小さな風が吹いて
気持ちよかった。

⏰:09/07/08 16:58 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#222 [七瀬]
 
 
 
「なに話してたの?」

『え?』


「さっきの金魚すくいの、おばさんと」

『べっ‥べつに!
‥ってか"おばさん"って』


「だっておばさんじゃん」


‥まつりさんが聞いたら、キレちゃうだろーな。

⏰:09/07/08 18:36 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#223 [七瀬]
 
 
「‥ま、いーや」

すると、歩志はまたさりげなく


「買いにいきましょーか?約束通り、タコせんとかき氷」

あたしの手を奪った。


『うっ、うん!』
 

⏰:09/07/08 18:38 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#224 [七瀬]
 
 
‥というわけ。


まつりさんのことを
思い出すと、
自然と口が緩んでしまう。



「気になる‥」


アイツはまだ言ってた。
 

⏰:09/07/08 18:44 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#225 [七瀬]
 
 
『あ、見て見て歩志!』

「んー?ってあれ‥」


『うんうん!』

あたしの
輝く目線の先には


『リンゴ飴!!』


飴に包まれたフルーツたちは、宝石のようにキラキラしている。
 

⏰:09/07/08 18:47 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#226 [七瀬]
 
 
『歩志、確かりんご好きって言ってなかった?』

さっきと違って、
あたしがアイツの手を引っ張った。


『リンゴ飴、買う!?』

しかし、


「いや‥いいよ、俺は」

返事は思ったようなものじゃなかった。

⏰:09/07/08 18:49 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#227 [七瀬]
 
 
『ええー!?なんで?
なんでなんで!??』

買うだろうと、ほぼ確信していたあたしは驚いて聞いた。


「俺‥苦手なんだよね」

たくさんある宝石たちの中から、一つを指さす歩志。



「その"飴"が」
 

⏰:09/07/08 18:52 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#228 [七瀬]
 
『えー!
甘くておいしいのに‥』


「それに」

歩志は一つ、間を置いた。


「リンゴ飴なら、ここにあるじゃん」



‥ん?


『あ、あたし!?』
 

⏰:09/07/08 18:59 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#229 [七瀬]
 
 
「うん。さっきリンゴ飴みたいに真っ赤だった」


『さ、さささ‥さっきっていつよ?いつ!??』

「いつだったっけなぁ〜」


まつりさんに言われたときじゃないよね!?

あのとき、歩志
おみこし見てたじゃん!!

違う違うはず‥。
 

⏰:09/07/08 19:02 📱:N703iD 🆔:yq2OZnQI


#230 [七瀬]
 
 
「ぎゅっとしたときとか」


『な‥なんだ‥そのときのことか‥‥』

ちょっと安心。
ちょっと残念。


「なに?他にもあったの」

『ううん!なんでもない!なんでもないから、ほんとに!!』

ま、セーフということで。

⏰:09/07/10 18:49 📱:N703iD 🆔:9Oo/vUlM


#231 [七瀬]
 
 
あたしは、お母さんのおみやげに姫りんごを一つ、

すねるので、
お父さんにも、みかん飴を一つ、

自分用に、ぶどう飴といちご飴を買った。


お姉ちゃんは、お祭りにきてるはずだから、買わなかった。


あたしの両腕はふくろで、いっぱい。

⏰:09/07/10 18:52 📱:N703iD 🆔:9Oo/vUlM


#232 [七瀬]
 
 
右手が最後まで、
あったかかったのは、


まつりさんがくれた
カステラと、

アイツの熱のせい。



暑い熱い夏祭りだった。
 
 

⏰:09/07/10 18:54 📱:N703iD 🆔:9Oo/vUlM


#233 [七瀬]
―――――――――
―――――
―――


「なんか松田、今日きげんいいな」

夏祭りが終わって、


『え?そう?』

夏休みも半分切ったなぁとなんだか寂しい。
 

⏰:09/07/10 18:58 📱:N703iD 🆔:9Oo/vUlM


#234 [七瀬]
 
 
「うん。なんかいいことあった?」

『んー?なんもないよー』


でも、その残り20日もない夏休みも、

この"剣道部マネージャー"として使わなければならない。


「そういえばさあ」
 

⏰:09/07/10 19:01 📱:N703iD 🆔:9Oo/vUlM


#235 [七瀬]
 
 
『うん?』

でもまぁ、毎日ごろごろしてるより、いっかな。



「昨日の夏祭りさぁ、どうした?」


――どくん

心臓が大きく波打った。

⏰:09/07/10 19:04 📱:N703iD 🆔:9Oo/vUlM


#236 [七瀬]
 
 
『‥え?どうしたって‥』

顔を引きつるのを
感じながらも、


「いや、行ったのかな、って思って」

笑みを貼りつけずには
いられない。


『い‥行ったよ』

やっぱ林原の前では
嘘はつけない。

⏰:09/07/10 19:08 📱:N703iD 🆔:9Oo/vUlM


#237 [七瀬]
 
 
「ふーん。誰と?」


林原は汗をタオルで
拭いながら、言う。


『まりと三咲‥』


あたしが、
精一杯ついた嘘。

林原の表情が見えないのが助かった。
 

⏰:09/07/10 19:11 📱:N703iD 🆔:9Oo/vUlM


#238 [七瀬]
 
 
「そ」

それだけ言った。


『‥林原は?』


「俺は行かなかったよ。
暑かったし、人の多いとこって苦手」


『昨日は熱帯夜だったもんね。ってか、人ごみが嫌いなんて林原らしい』

少し笑って言った。

⏰:09/07/10 19:15 📱:N703iD 🆔:9Oo/vUlM


#239 [七瀬]
 
 
「松田」

面越しの林原の表情は
やっぱりわからなかった。



「‥‥なんか安心した」


ぽつり。

ほんとに、
ぽつりと言った。


ひとりごとのように、
ぽつり。

⏰:09/07/10 19:17 📱:N703iD 🆔:9Oo/vUlM


#240 [七瀬]
 
 
『‥へ?‥‥』


「ううん、なんでもない」


『‥そう』

「じゃ」

『うん、頑張って』


竹刀を握った林原を
見送った。

⏰:09/07/10 19:20 📱:N703iD 🆔:9Oo/vUlM


#241 [七瀬]
 
 
 
「……っても、まだまだ暑い日々は続きます。十分熱中症に注意して……」


『ふぁ〜あ』


華の女子高生?

一年目の夏休みは、
あっという間に過ぎていった。

なんだかんだで
忙しかったし。

⏰:09/07/12 10:18 📱:N703iD 🆔:mRdUytN2


#242 [七瀬]
 
 
「………夏休みが終わり、新しい2学期が始まります。まだ夏休みモードの人がいますが、頭を切り替え…」


教頭の話長いんだよー、
まったく‥。

校長より長い。
いや、むしろ校長の方が
あっさりしている。


いっとくけど
まだ9月だよ?

⏰:09/07/12 10:22 📱:N703iD 🆔:mRdUytN2


#243 [七瀬]
 
いくら
広ーい体育館だからって

こんなにすごい人口密度
――しかも男ばっか―


だったら、

すごい温度になるってことわかんないのかな!?


クーラーどころか、
扇風機すらないのに‥。
 

⏰:09/07/12 10:25 📱:N703iD 🆔:mRdUytN2


#244 [七瀬]
 
 
「……て、勉学に励んでください。以上です」


‥やっと‥やっとやっと‥


「あ、もう一点」

全生徒の一瞬、緩んだ顔がまたたくまに、げんなりした顔になる。

もちろん、
あたしもそのなかの一人。


もぉ〜!勘弁して〜〜!! 

⏰:09/07/12 10:29 📱:N703iD 🆔:mRdUytN2


#245 [七瀬]
 
 
「しばらく、お怪我によりお休みされてた長江先生が2学期から復活されることになりました」


ん?
長江先生?


1学期当初のマッキーの
言葉を思い出す。


"副担任の長江先生はお休みだ"
 

⏰:09/07/12 10:33 📱:N703iD 🆔:mRdUytN2


#246 [七瀬]
 
 
‥ってことは、
あたしたちの副担?


「長江先生、こちらにどうぞ」


壇上に目を向けると、


「‥あ、みなさんお久しぶりです‥。長江です」

なんとも、
ひ弱そうなおっさん。

⏰:09/07/12 10:35 📱:N703iD 🆔:mRdUytN2


#247 [七瀬]
 
 
‥な、なんか、
マッキーの手下的な‥。


あたしの第一印象は
これだった。

のちのち、まったく
変わってしまうのだけど。


まぁ、とりあえず
マッキーとは正反対な人だった。

おどおどしてて、頼りなさそうな。

⏰:09/07/12 10:38 📱:N703iD 🆔:mRdUytN2


#248 [七瀬]
 
 
「これで、やっと体育が始まるね」

前から、声が。


『えっ?なんでなんで?』

「長江が復帰したからに、決まってんじゃん」


『え?え?』

ワケわかんないあたしに
歩志はため息をもらす。

⏰:09/07/12 10:47 📱:N703iD 🆔:mRdUytN2


#249 [我輩は匿名である]
 
 
「体育の先生が戻ってきたのに、体育が始まらないわけないでしょ」

『あ‥そっか』


あたしの学校には、
体育の教師は3人いる。


ダントツ多い男に2人、
涙が出るほど少ない女子には1人、

先生の授業を受ける。
 

⏰:09/07/12 11:14 📱:N703iD 🆔:mRdUytN2


#250 [我輩は匿名である]
 
 
そのなかの一人が長江先生で

さっき、教頭が言ったとおり、休んでたから体育ができなかった。


だから、1学期は、2学期にする保健を代わりにしていた。


要するに1学期は保健。
2学期は体育。
 

⏰:09/07/12 11:17 📱:N703iD 🆔:mRdUytN2


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