星とぽんず。
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#51 [七瀬]
あれ‥
「お前、見にこいよ」
声‥高くない。
「明日、学校の閣議室で」
なんか、寂しいな。
「部活、あるから」
またあの高い声で
呼んでほしい。
“松田”って。
:09/05/29 21:04
:N703iD
:9TMx6ROY
#52 [七瀬]
『………』
「松田?聞いてるか?」
『…え?あ、ああ!うん。聞いてた聞いてた!!』
「ほんとか?
じゃあ今、俺が言ったこと言ってみろよ」
『…………』
「ほーら、やっぱ聞いてなかったんだろー」
:09/05/29 23:05
:N703iD
:9TMx6ROY
#53 [七瀬]
違う。
違うよ、林原。
『‥明日、学校の閣議室で部活あるんでしょ』
あたしが、なにも言わなかったのは、
あんたのフッて笑った顔が
あまりにも大人っぽかったからだよ。
:09/05/29 23:09
:N703iD
:9TMx6ROY
#54 [七瀬]
林原は、少し目を丸くしたあと、また細めて笑った。
「成長したじゃん」
だからっ
『あたしはガキか!』
そんな顔で
笑わないでよ。
そして、またもう一つ。
重要なことに、気付いてしまう。
:09/05/29 23:11
:N703iD
:9TMx6ROY
#55 [七瀬]
あたしは、
林原に群がった女の子たちに嫉妬したんじゃない。
あたしは‥
コイツに嫉妬したんだ。
こんなに、大人っぽく笑う林原に。
:09/05/29 23:14
:N703iD
:9TMx6ROY
#56 [七瀬]
そして、
そんなコイツが、
離れていってるような気がして、
寂しかったんだ。
ものすごく。
ものすごく、ものすごく。
寂しい。
:09/05/29 23:16
:N703iD
:9TMx6ROY
#57 [七瀬]
「はははっ」
あたしって、
ほんとワガママだよね。
『‥笑うな!』
林原が「好き」って言ってくれたとき、答えられなかったくせに。
「ごめんごめん」
寂しがるなんて。
:09/05/29 23:19
:N703iD
:9TMx6ROY
#58 [七瀬]
『ありがと。
家まで、送ってくれて』
あっという間に家に到着。
「おう!女が夜道に一人は危ないからな」
またあの笑顔で、
そんなこと言う。
だから、ほらまた。
林原のそんな姿に嫉妬してしまう。
:09/05/29 23:22
:N703iD
:9TMx6ROY
#59 [七瀬]
そういえば‥
前に、アイツに送ってもらったときは、
“ぽんずちゃんも一応、女の子だから”
とか言われたっけ。
うん。
いつ思い返しても、腹立つぜ、この野郎。
:09/05/29 23:23
:N703iD
:9TMx6ROY
#60 [七瀬]
同じ意味のことを言ったのに、こうも違うなんて…
やっぱ林原は大人になった。
少なくともアイツの100倍‥ううん。1000倍は。
「じゃあ、おやすみ」
そうやって、暗闇の中、だんだん見えなくなっていくその姿を眺めながら、
なんだか切ない、
蒸し暑い日。
:09/05/29 23:25
:N703iD
:9TMx6ROY
#61 [七瀬]
『ただいま〜』
「おかえりー。牛乳買ってきてくれた?」
『うん、はい。』
林原に送ってもらう途中、“まつはし”に寄って牛乳を買った。
“まつはし”というのは、PM.11:00には、閉まってしまう個人営業のコンビニ。
あたしの家からは徒歩5、6分というところだ。
:09/05/30 00:01
:N703iD
:N5IrhVj6
#62 [七瀬]
24時間営業じゃないって…
さすが、
THE 田舎って感じ。笑
「ありがとー、ゆず」
すると、お母さんはビニール袋から、牛乳を取り出した。
あたしの手が、自然と、
低脂肪の牛乳に伸びたのは
「30円が惜しい!」っていうお母さんのドケチが移ったみたい。
:09/05/30 00:06
:N703iD
:N5IrhVj6
#63 [七瀬]
「これでやっと作れるわぁ」
そういって、台所に立ったケチんぼ、自己チュー
マイマザー。
『“大至急で牛乳”って、いったいなに作るのさ』
あたしが同窓会を放ってまで買ってきたんだから…
その牛乳の使いどころを、しっかり聞かせてもらおうじゃないですか。
:09/05/30 00:08
:N703iD
:N5IrhVj6
#64 [七瀬]
「んー、シチューを作るのよ。ホワイトシチュー」
ほ・わ・い・と!!
し・ち・ゅ・ー!?
『そ…そそそそ
それだけのために、わざわざあたしの同窓会を邪魔したの!?』
「だぁってねぇ〜」
お母さんは、じゃがいもとニンジンの皮を剥きながら何食わぬ顔で言った。
:09/05/30 00:11
:N703iD
:N5IrhVj6
#65 [七瀬]
「お母さん、柚子が同窓会行ってるなんて知らなかったし」
まりがうちに来たとき、
いたじゃないですか。
「だいいち、今日なんの日か知ってる?」
‥‥へ?
『なんの日なの??』
:09/05/30 00:12
:N703iD
:N5IrhVj6
#66 [七瀬]
「あら、やだ。
知らないの?柚子」
眉を寄せるお母さん。
カレンダーに目を向ける。
今日は8月4日。
ん?
8月4日?
:09/05/30 00:13
:N703iD
:N5IrhVj6
#67 [七瀬]
なーんか、引っ掛かるんだよなあ‥
8月4日
8月4日…
出かかってるのに、出なくて、もどかしい。
「お父さんの誕生日」
うしろから声が聞こえたと思ったら、
『お姉ちゃん‥』
鬼のマイシスターの姿が。
:09/05/30 00:14
:N703iD
:N5IrhVj6
#68 [七瀬]
「8月4日。
お父さんのバースデー」
『あっ、忘れてた』
再度言われ、ようやく脳が理解してくれたみたい。
「もぉ〜。お母さん、そんな親不孝な娘に育てた覚えないわよ〜」
‥親不孝で、どうもすみません。
:09/05/30 00:15
:N703iD
:N5IrhVj6
#69 [七瀬]
「ゆず〜っ、ひどいなあ〜!お父さん、ショック大!」
うん、古いよ。
死語だよ、パパ。
‥とりあえず、
お父さんは酔ってるみたいだし、
「ママのホワイトシチューはやっぱり最高だ」
あたしが完全に忘れてたこと、気にしてないみたいだし、いっか。
:09/05/30 00:22
:N703iD
:N5IrhVj6
#70 [七瀬]
これが、シラフだったら、お父さん、落ち込んでただろうな。笑
誕生日プレゼントには、
速急で、昔よく作った
“肩たたき券”をあげた。
行事のお知らせのプリントで。笑
「懐かしいなぁ〜」
って喜んでた。
これもシラフだったら‥
:09/05/30 00:26
:N703iD
:N5IrhVj6
#71 [七瀬]
「ははは〜、ママぁ〜!」
お母さんに、寄り掛かってるお父さん。
‥ラッキーってことで。
でも、ときどき思う。
あたしにも、この人の血が流れてるんだろうか。
‥流れてるんだろうが、
‥やだな。笑
:09/05/30 00:29
:N703iD
:N5IrhVj6
#72 [七瀬]
『‥お風呂入ろっと』
「もう入るの?」
『うん。明日、学校行かなきゃいけないし』
林原の部活、見に‥
「まー!まあまあ!
あんた偉いわぁ!自分から進んで補習受けるなんて。お母さん、見直しちゃった!」
:09/05/30 00:34
:N703iD
:N5IrhVj6
#73 [七瀬]
……ん??
『ほ‥ほほほ補習!??』
ななな、なにそれ!!
「えーと、明日から毎週水曜日。お盆は除く…
教科は数学、理科、英語。自由参加……」
お母さんの手には、
例の“肩たたき券”
:09/05/30 00:38
:N703iD
:N5IrhVj6
#74 [七瀬]
「午前9時から、11時まで…だって」
肩たたき券め!
肩たたき券のくせに!!
あたしのハッピー夏休みライフ…すいません。
あたしの!
毎日ゴロゴロぐーたらライフを邪魔するつもりか!
『あ‥あたし、無理だよ!林原の部活見に行くし!』
:09/05/30 00:42
:N703iD
:N5IrhVj6
#75 [七瀬]
「何時から?何時から始まるの?その部活」
『え?』
そういえば‥
『‥‥わかんない』
時間、聞いてない!
「じゃあー、行ったってしょうがないじゃない。おとなしく補習受けなさい」
それだけは、
ぜっっったい!いや!!
:09/05/30 00:47
:N703iD
:N5IrhVj6
#76 [七瀬]
『‥やだよ』
「行きなさい」
『やだやだやだ!』
「行きなさい!」
『やだったら、やだ!!』
お互い、一歩も譲らない
仁義なき戦い。
その戦いの終止符を打ったのは、この酔っぱらいオヤジ。
:09/05/31 00:36
:N703iD
:U4z37/x2
#77 [七瀬]
「ゆず〜、
肩マッサージしてくれ〜」
………。
『‥お風呂
はぁーいろ、っと‥』
「ちょっと待ちなさい!
柚子!!」
「ゆず〜、肩たたき券使えないのか〜!?」
今日は営業中止だ。笑
ってか、マッサージ屋は、潰れたっつーことで。
:09/05/31 00:41
:N703iD
:U4z37/x2
#78 [七瀬]
とりあえず、
あたしはお風呂に逃げ込んだ。
なんか、中3ぐらいから、お風呂があたしの居場所みたいになってる気がする。
だって、
いちばん落ち着くし。
ゆっくり、
安らげるというか‥
だいたい、うちの家族は、うるさすぎるんだ。
:09/05/31 00:44
:N703iD
:U4z37/x2
#79 [七瀬]
『ふぅ〜‥』
明日、どうしよ‥
いつから、
部活始まるんだろうか。
剣道部だし、
そんなに長いこと、閣議室使えるわけじゃないし‥
遅くても
昼過ぎまでだろう。
もーっ!
林原も肝心なこと忘れちゃダメじゃん。
:09/05/31 15:25
:N703iD
:U4z37/x2
#80 [七瀬]
補習は9時から、11時までって言ってたしなあ‥
‥アイツもくるんだろうか。
久しく会っていない
アイツ。
この長い夏休み。
どう過ごしているのかな。
:09/05/31 15:28
:N703iD
:U4z37/x2
#81 [七瀬]
あー、のぼせちゃう!
あたしは、
急いで湯ぶねから出る。
‥なに赤くなってんの。
長いこと、湯に浸かっていたからか、
‥アイツのことを考えてたからか。
鏡の中の、あたしの頬は火照っていた。
:09/05/31 15:33
:N703iD
:U4z37/x2
#82 [七瀬]
『‥明日‥補習行くよ』
「どうしたの、急に。
さっきまで、あんなにいやだって言ってたじゃない」
『べっ‥別に』
アイツも行くかも
ってわけじゃないから。
『ただちょーっとは勉強する気になっただけ』
「あら‥そう」
:09/05/31 18:28
:N703iD
:U4z37/x2
#83 [七瀬]
バスタオルで、頭を無造作に拭きながら、
目を大きくしているお母さんに
『おやすみ』
そう言って、
部屋へ向かった。
ドキドキを
胸に秘めながら。
:09/05/31 18:32
:N703iD
:U4z37/x2
#84 [七瀬]
あ〜‥、
なんか、ほんと久々だぁ‥
この長い長い時間、
電車に乗ったのも、
学校へ足を運んだのも。
一年の補習は、
一階の多目的室で行うらしい。
ちなみに、閣議室は、
三階のいちばん端っこにあって、体育館を3分の1の大きさにした感じ。
:09/05/31 19:10
:N703iD
:U4z37/x2
#85 [七瀬]
『‥おはようございまーす』
少し緊張気味に多目的のドアを開けると、
長テーブルが横2列、
縦5列に並んでいる。
‥が、
「松田、おはよう」
そこには、マッキーが一人、相変わらずのいかつい顔で座っていた。
:09/05/31 19:16
:N703iD
:U4z37/x2
#86 [七瀬]
『ま‥マッキー』
「久しぶりだな、松田」
多目的室には、
あたしとマッキーだけ。
『ちょ‥ちょっと早く来すぎちゃいましたかね』
だって、誰も来てないし。
「いーや、ちっとも早くない。遅すぎるくらいだ」
そうやって、マッキーは
9時ちょうどを指している時計を指差した。
:09/05/31 20:28
:N703iD
:U4z37/x2
#87 [七瀬]
てことは‥
「じゃあ、松田が来たことだし、始めるか。補習」
てことは、
てことは!!
『あの‥あたし一人で、
ですか?』
「当たりめーだろーが。
誰も来ないんだから」
や、やややっぱり‥
:09/05/31 20:30
:N703iD
:U4z37/x2
#88 [七瀬]
こうして、始まった補習。
アイツどころか、
誰も来ていない。
みんな、貴重な夏休みを補習に埋める気はないようだ。
‥って、当たり前か。
もぉ‥‥最悪‥
あたしは、3時間、
この黒板に一人で立ち向かわなければいけなかった。
:09/05/31 20:34
:N703iD
:U4z37/x2
#89 [七瀬]
マッキーが、一生懸命、
数学を説明している。
ていうか‥
マッキーって、技術の先生だったんじゃ‥。
「おい、聞いてるのか!?」
『え!?あ、は、はい!』
でも、数学の先生より、
分かりやすかったし、いっか。
この3時間、
いつもの無駄ばなしは、出てくることはなかった。
:09/05/31 20:40
:N703iD
:U4z37/x2
#90 [七瀬]
「よーし、10分早いが、
今日はここまでだ。
松田、一人でよく頑張ったな」
あれから、理科、英語を
教わって、やっと解放された。
『ありがとうございました』
そうやって、
多目的室を後にした。
:09/05/31 20:45
:N703iD
:U4z37/x2
#91 [七瀬]
このまま帰るのも
なんだし‥
一応、閣議室行ってみよっかな。
なんて、考えながら
ボンヤリ歩いていると
バンッ
『わっ!』
「ごっごめんなさい!」
誰かが、後ろから
ぶつかってきた。
:09/05/31 23:12
:N703iD
:U4z37/x2
#92 [七瀬]
「す、すいません!」
相手は、
頭を下げて謝る。
『そ‥そんな‥、あたし、大丈夫だし、どこも怪我してないし‥‥顔、上げて下さい』
制服を着ていることから、ここの生徒らしい。
「あの‥ほんとすいません」
あたしが、そう言うと
顔を上げた。
:09/05/31 23:17
:N703iD
:U4z37/x2
#93 [七瀬]
わ‥かわいー‥。
「あの‥怪我、ほんとにしてませんか?」
身長は、あたしくらいしかないみたい。
目は、おっきくて、
くりくりしている。
髪は、ふわふわしたショート。
あたしと、正反対の白い肌が真っ黒な瞳をより美しく引き立てていた。
:09/05/31 23:21
:N703iD
:U4z37/x2
#94 [七瀬]
『ほ‥ほんと大丈夫ですから‥』
「ごめんなさい。
急いでたものですから、走っててつい‥‥」
そうやって、
頬に手をかざす、その女の子は、やっぱりかわいい。
『その‥急いでたんなら、早く行ったほうが‥』
「あ、そうですね。
ほんと申し訳ありませんでした」
:09/05/31 23:25
:N703iD
:U4z37/x2
#95 [七瀬]
ハッとしたように、
その女の子は言った。
「早く行かないと、剣道の試合が始まっちゃう‥
そ、それじゃあ、失礼しましたっ!」
そうやって、あたしが行こうとした階段の方へ慌てて走っていった。
剣道の試合‥?
あ‥、まだやってるんだ。あたしも早く行かなくっちゃ。
あたしも、女の子と同じ方へ足を走らせた。
:09/05/31 23:32
:N703iD
:U4z37/x2
#96 [七瀬]
「頑張れー」
「ファイトー!」
わ、始まってんじゃん。
ドアを開けた瞬間、
熱い喚声と、むわ〜んとした空気が身を包んだ。
こんな30度を軽く超える日に、
こんなクーラーも扇風機もないところで、
あんなの着て、のぼせないのだろうか。
:09/06/01 22:11
:N703iD
:L5M3MJSg
#97 [七瀬]
ピピーッ!
ホイッスルが鳴った。
勝負が決まったみたい。
次の試合は‥
パッと見ると、いちばん小さい姿が、フィールド上に見える。
林原だ。
あたしは、すぐに確信した。
:09/06/01 22:13
:N703iD
:L5M3MJSg
#98 [七瀬]
顔が、覆われて見えないけど、あれは絶対林原だ。
あんなに見てきたすがただもん。
間違えるはずない。
『はやしばらー!
がんばれーっ!!』
そう周りも気にせず、
大声で叫んだ。
すると、振り返って
「遅ーんだよ」って笑った。
顔は見えなかったけど、
絶対絶対笑った。
:09/06/01 22:17
:N703iD
:L5M3MJSg
#99 [七瀬]
ほらー、やっぱ林原だー。
なんだか、
うれしくなった。
が、次の瞬間には、
不安があたしの胸を過った。
‥でかっ。
林原の対戦相手は、
かなり長身の細い男だった。
軽く185は超えてると思う。
:09/06/01 22:20
:N703iD
:L5M3MJSg
#100 [七瀬]
‥大丈夫かな、林原。
そんな不安をよそに、
始まりの合図が鳴り響いた。
いくら、林原がうまくてもこんなに身長差あるんじゃ勝ち目がない。
早くも押され気味だし。
顧問の先生も、もうちょいそういうとこ考えてくれても、いいのに。
20p近く差がある相手なんて‥
:09/06/01 22:24
:N703iD
:L5M3MJSg
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