あの場所まで
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#38 [ミツバ]
歩きよりも、エスカーに乗る人の方が多かった。

その中に白い帽子を見つけた。

「あれ?」

紗代里はドキンと胸が鳴った。

⏰:09/07/04 15:03 📱:D904i 🆔:2xlbwZBE


#39 [ミツバ]
「優介、私もあれに乗りたい!」

紗代里は慌てて優介に言った。

「いいけど、体ツラいのか?」

心配そうに優介が聞いてくる。

「違うよ、元気だよ。私もあれに乗りたいの」

体のだるさなんて全く感じてはいなかった。

⏰:09/07/04 15:08 📱:D904i 🆔:2xlbwZBE


#40 [ミツバ]
一つしかない切符売り場に3人も並んでいた。

顔を見てみたい。

もう一度見渡すと白い帽子はもういなかった。

⏰:09/07/04 15:11 📱:D904i 🆔:2xlbwZBE


#41 [ミツバ]
━━━━━━━━━━

『おじいちゃん危ないから早く帰ってきて』

母から紗代里あてにメールが届いた。

夕暮れ時。

紗代里が高校3年生の秋だった。

⏰:09/07/05 10:22 📱:D904i 🆔:zokoJNWk


#42 [ミツバ]
まだ半袖のワイシャツを着て部活の帰りの事だった。

脈打つ心臓。

手は震えていた。

⏰:09/07/05 10:27 📱:D904i 🆔:zokoJNWk


#43 [ミツバ]
家に着く前にもう一通母からメールが届いた。

『やっぱりダメだった。病院から連れて帰るね』

紗代里は焦りのあまり自分の足を絡ませホームで崩れ落ちた。

「…もう会えないの?」

握りしめた携帯電話は何も応えない。

⏰:09/07/05 10:34 📱:D904i 🆔:zokoJNWk


#44 [ミツバ]
━━━━━━━━━━

紗代里は中学に上がり、部活が忙しくなった。

高校も中学以上に部活が忙しく、おじいちゃんとおばあちゃんの家にはもうめったに行かなかった。

もっと会いに行けばよかったのに、もっと…。

⏰:09/07/05 10:39 📱:D904i 🆔:zokoJNWk


#45 [ミツバ]
もうどうしようもない事を何度も何度も考えた。

それほどおじいちゃんっ子であったのだ。

エスカーはゆっくりと紗代里を上へと運んでいく。

⏰:09/07/05 10:45 📱:D904i 🆔:zokoJNWk


#46 [ミツバ]
エスカーから降りると、霧がかってはいるものの傘を差す必要はなかった。

茂る新緑は仄かに香る磯の匂いと混ざり合い、不思議な心地を醸し出す。

こぼれ落ちた雫が頭に当たる。

⏰:09/07/05 14:28 📱:D904i 🆔:zokoJNWk


#47 [ミツバ]
「展望台に行っても、これじゃああんま見えねぇな」

「本当にね」

2人は当たりを見渡しながら言った。

社を過ぎ、友好のために作られたあまり似つかわしくはない色鮮やかな中国風の建物を過ぎて目的の展望台の前やってきた。

エレベーターを中心に螺旋階段が巻き付くように聳えていた。

⏰:09/07/05 14:37 📱:D904i 🆔:zokoJNWk


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