あの場所まで
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#15 [ミツバ]
おもちゃながらにフィルムも入れるとちゃんと撮れる赤いカメラは、もう手元にはないけれど買ってくれた時は嬉しくて夢中で遊んだ。
他にもきっと生まれた時から沢山の物を知らず知らずにもらっていたはずだ。
大人になって使われなくなった勉強机は荷物置き場へと化し、本来の役目を終えながらも今もあるそれは、確か両親とおじいちゃんとおばあちゃんが買ってくれたものだ。
:09/07/02 17:44 :D904i :VF6A2bjE
#16 [ミツバ]
頭の悪い子供だったから、机に向かって勉強をするなんてほとんどなかったような気がする。
今になってもっと使ってあげればよかったなと後悔した。
あんな立派な物を買ってくれたのに、ごめんね。
:09/07/02 17:46 :D904i :VF6A2bjE
#17 [ミツバ]
━━━━━━━━━━
ツー…
頬に流れる冷たいものにびっくりして紗代里は目が覚めた。
いつの間にか一緒に眠ってしまったようだ。
優介はまだ眠っていた。
:09/07/02 17:49 :D904i :VF6A2bjE
#18 [ミツバ]
紗代里は涙を拭った。
久しぶりにおじいちゃんの夢を見た。
会いたいな、そう思いながら電車は片瀬江ノ島駅へと流れ込んでいく。
:09/07/02 17:51 :D904i :VF6A2bjE
#19 [ミツバ]
久しぶりに来たなぁと紗代里は外に目を向けると改札に白い帽子をかぶるおじいちゃんが見えた。
「…似てる…」
夢を見たせいだろうか、紗代里はいるはずのない自分のおじいちゃんに見えた。
カタンッ、プシュー…
「終点片瀬江ノ島、忘れ物ございませんようお気をつけください」
車内にアナウンスが広がった。
:09/07/02 18:32 :D904i :VF6A2bjE
#20 [ミツバ]
「ん〜…紗代里?」
両手を上げ、ぐぐっと伸びをながら優介は目を覚ました。
あんな風格のおじいちゃんはどこにでもいる。
紗代里は優介に向き直って、にっこりと笑いながら言った。
「着いたよ、行こう」
:09/07/02 18:39 :D904i :VF6A2bjE
#21 [ミツバ]
電車を降りた瞬間から磯の香りがする。
海が近くにある証拠だ。
改札を出ると、優介が持ってきたビニール傘を紗代里の上に差し一緒に傘の中へ入った。
:09/07/03 16:30 :D904i :sF4vWAHo
#22 [ミツバ]
「島まで行こうか」
優介がそう提案したのと同時に紗代里もそう言おうとしていたので、やっぱり気が合うなと思いながら頷いた。
「一番高い所まで行きたいな」
紗代里は島の方を向いて優介の腕を引いた。
賑わうはずの駅前には梅雨のせいか人がいなかった。
:09/07/03 16:38 :D904i :sF4vWAHo
#23 [ミツバ]
降りてからも降るしとしと雨に少し嫌気を差しながらも、ピチョンと静かに聴こえる音は嫌いではない。
紗代里はそのまま腕を絡めて水溜まりを避けながら歩いた。
一緒に優介も同じように歩く。
:09/07/03 16:51 :D904i :sF4vWAHo
#24 [ミツバ]
ひと昔前の商店街のような少し古くなった店達を通り過ぎ、島へと続く橋がある。
すぐ左側には海が見える。
灰色の空と同じように、海もまた綺麗な色ではなかった。
:09/07/03 17:08 :D904i :sF4vWAHo
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